ありふれた錬成師は治癒師と共に   作:木崎楓

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ステータスプレート

 訓練には参加するとは決めた以上は、そうせねばならない。ハジメ達は上位世界からやって来た存在であるが故に、規格外の力を潜在的に持っている。とはいえ元々は、戦闘経験など無い高校生だ。

 

 これに関しては、教会側も最初から予想していたらしく、この聖教教会本山がある【神山】の麓の【ハイリヒ王国】にて受け入れ態勢が整っているらしい。

 

 そんなハイリヒ王国の王宮に到着したハジメ達は、真っ直ぐに玉座の間に案内された。

 

 美しい意匠の凝らされた巨大な両開きの扉の前に到着すると、その扉の両サイドで直立不動の姿勢をとっていた兵士二人がイシュタルと勇者一行が来たことを大声で告げ、中の返事も待たず扉を開け放った。

 イシュタルは、それが当然というように悠々と扉を通る。光輝等一部の者を除いて生徒達は恐る恐るといった感じで扉を潜った。

 

 扉を潜った先には、真っ直ぐ延びたレッドカーペットと、その奥の中央に玉座があった。玉座の前で覇気と威厳を纏った初老の男が立ち上がって待っている。

 その隣には王妃と思われる女性、その更に隣には十歳前後の金髪碧眼の美少年、十四、五歳の同じく金髪碧眼の美少女が控えていた。更に、レッドカーペットの両サイドには左側に甲冑や軍服らしき衣装を纏った者達が、右側には文官らしき者達がざっと三十人以上並んで佇んでいる。

 

 玉座の手前に着くと、イシュタルはハジメ達をそこに止め置き、自分は国王の隣へと進んだ。

 

 そこで、おもむろに手を差し出すと国王は恭しくその手を取り、軽く触れない程度のキスをした。どうやら、教皇の方が立場は上のようだ。

 

 そこからはただの自己紹介だ。国王の名をエリヒド・S・B・ハイリヒといい、王妃をルルアリアというらしい。金髪美少年はランデル王子、王女はリリアーナという。

 後は、騎士団長や宰相等、高い地位にある者の紹介がなされた。ちなみに、途中、美少年の目が香織に吸い寄せられるようにチラチラ見ていたことから香織の魅力は異世界でも通用するようである。

 

 その後、晩餐会が開かれ異世界料理を堪能した。見た目は地球の洋食とほとんど変わらなかった。たまにピンク色のソースや虹色に輝く飲み物が出てきたりしたが非常に美味だった。

 

 その時、ランデル殿下がしきりに香織に話しかけていたが、香織がハジメと付き合っていると知ると、今度はハジメに絡み出し、それを姉のリリアーナ姫が止めて……と、そんな事態があったりもしたが、晩餐会は何事も無く終わった。

 

 王宮では、ハジメ達の衣食住が保障されている旨と訓練における教官達の紹介もなされた。教官達は現役の騎士団や宮廷魔法師から選ばれたようだ。

 

 そうして晩餐が終わり解散になると、各自に一室ずつ与えられた部屋に案内された。天蓋付きベッドに愕然がくぜんとしたのはハジメだけではないはずだ。ハジメは、豪奢な部屋にイマイチ落ち着かない気持ちになりながらも、それでも怒涛の一日で溜まった疲れがどっとやって来たのか、ベッドにダイブするのと同時に意識を落とした。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 翌日から早速訓練と座学が始まった。

 

 まず、集まった生徒達にスマホ程度の大きさの銀色のプレートが配られた。不思議そうに配られたプレートを見る生徒達に、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。対外的にも対内的にも“勇者様一行”を半端な者に預けるわけにはいかないということらしい。

 

「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

 非常に気楽な喋り方をするメルド。彼は豪放磊落な性格で、「これから戦友になろうってのにいつまでも他人行儀に話せるか!」と、他の騎士団員達にも普通に接するように忠告するくらいだ。

 最初はハジメもそれでいいのかと思ったが、遥かに年上の人から慇懃(いんぎん)な態度を取られるよりはマシだ。そうされると居心地が悪いだろうから。

 

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 “ステータスオープン”と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」

「アーティファクト?」

 

 アーティファクトという地球ではあまり聞かない単語に、光輝が質問をする。

 

「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」

 

 そんな話を聞きながら、生徒達は指先に針を刺し、プクと浮き上がった血を魔法陣に擦りつける。ハジメも同様にやると、

 

 

 

===============================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1

天職:錬成師

筋力:10

体力:10

耐性:10

敏捷:10

魔力:10

魔耐:10

技能:錬成・言語理解

===============================

 

 

 

 このように表示された。

 

 まるでゲームのキャラにでもなったようだと感じながら、ハジメは自分のステータスを眺める。他の生徒達もマジマジと自分のステータスに注目している。

 

 ここで、メルド団長からステータスの説明がされた。

 

 まず第一に“レベル”の欄。これの最大値は100であり、100ともなれば、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということらしい。日々の努力を積み重ねることで上昇していくらしく、ゲームのように経験値といった概念は存在しないらしい。

 

 次に各種ステータス。これもゲームとは違い、レベルと連動しているわけではない。基本的には努力で上昇するが、魔法や魔法具で上昇させることもできるらしい。

 

 そして最後に“天職”について。これは持っている人の方が珍しい、天賦の才能である。特に戦闘系の天職は数が少ない傾向があるのだという。生産系の天職も珍しいには珍しいが、戦闘系よりは人数が多いらしい。

 

 そして……ステータスの平均値は10であると、最後に言われた。

 

「……」

 

 ハジメの体から冷や汗が噴き出る。なんせ彼のステータスは、ほぼほぼ平均値だったのだから。辛うじて魔力と魔耐の値は平均値以上だが……少なくとも、思い描いていたかのようなチートではない。

 加えて、天職も技能も戦闘系とは思えない。そもそもステータスが低いのに、戦闘なんてできるのか、という話ではあるのだが。

 

 そうして、ステータスを報告することとなった。ステータスを知らなければ、どういえ訓練をすればいいのか分からないから当然ではあるのだが……ハジメには憂鬱でしかなかった。

 

「ねぇねぇハジメくん、ステータスどうだった?」

 

 そうしてある程度周囲が騒がしくなると同時に、香織が駆け寄ってくると、まずは彼女自身のステータスを見せてきた。

 

 

 

====================================

白崎香織 17歳 女 レベル:1

天職:治癒師

筋力:20

体力:40

耐性:30

敏捷:40

魔力:150

魔耐:150

技能:回復魔法・光属性適性・高速魔力回復・言語理解

====================================

 

 

 

 高い。それがハジメの最初の感想だった。いや他の生徒達がどれくらいのステータスか分からないので、ステータスの高低がどうとはまだ言えないが、ハジメ基準だと非常に高いのは事実だった。

 

 ハジメの方も、無言でステータスを見せる。このステータスには、流石の香織もなんともいえない表情になった。

 

「……うん。でもまだ、錬成の技能が分からないじゃん」

「いやまあそうだけど……戦闘じゃ使えない気がするんだよなぁ……」

 

 一応天職がある時点で、この世界の人達よりは圧倒的に優位に立っているのはハジメも分かっている。だが、それはそれでこれはこれだ。

 

 そうしてハジメの番になる。 今まで、格外のステータスばかり確認してきたからだろうか、メルド団長の表情はホクホクしている。多くの強力無比な戦友の誕生に喜んでいるのだろう。

 

 その団長の表情が「うん?」と笑顔のまま固まり、ついで「見間違いか?」というようにプレートをコツコツ叩いたり、光にかざしたりする。そして、ジッと凝視した後、もの凄く微妙そうな表情でプレートをハジメに返した。

 

「ああ、その、なんだ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」

 

 歯切れ悪くハジメの天職を説明するメルド団長。それにはハジメも「ああ、うん……」としか言えなかった。

 

「ということは、生産系の天職ってことですか……?」

「まぁそうなるな。余程のことがない限り、ほぼ全ての錬成師は鍛治職に就くからな」

「……じゃあ、僕も鍛治職に就くということですか?」

 

 そう尋ねてみると、メルド団長は「んー……」と唸り、頭をポリポリとかきながら答える。

 

「あー、まぁ……多分そうなるだろうな。生産系が出ることをあまり想定してなかったから、今後どうなるかはまだ分からないが……」

「そうですか」

「お前に関しちゃ他とは違って生産職だ。だから訓練内容も当然変わってくる。それに関しては追々相談ということにしよう」

 

 生産職という特性上、訓練内容は当然異なってくる。そもそも生産職の戦闘が苦手なタイプの人に戦闘をさせることなどありえない。その人が足を引っ張り、周囲に迷惑をかけてしまうから。

 

 というわけで、ハジメの訓練は他の生徒達とは異なるものとなるのであった。




面倒なので、光輝とか愛子先生のステータスはカットです。どうせ原作とは全く変わらないし、他の二次創作作品でも基本はそのまんまだし。


影龍 零様  TSK BRAVER様  すばら様
松影様  enforcer様  通りすがりの暇人様
Charles・F様  Brahma様
ヴェルザ・ダ・ノヴァ様  籠城型・最果丸様
nonohoho様

評価ありがとうございます! 今後も頑張っていきたいと思います!

オルクス大迷宮のボスであるヒュドラ。その幻覚魔法は香織かユエのどっちに対して使ってほしい?

  • 白崎香織
  • ユエ
  • どっちも
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