ありふれた錬成師は治癒師と共に   作:木崎楓

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弟子入り

「ウォルペン工房?」

「ああ。そこへ紹介状を出しておいた」

 

 召喚されて三日後の昼、ハジメはメルド団長に呼び出され、王宮のとある一室にやって来ていた。話の内容としては、今後の訓練の話だった。

 

 今までのハジメは、ほとんど座学のみしか行ってこなかった。戦闘訓練は全く行っていない、というわけではないが、学んだのはせいぜい護身術程度だ。

 故に自由時間は他の生徒達よりも多かったわけだが、その時間の大半は、錬成に関する知識や技術の修得のために割いた。流石に一日二日程度では成果は出ていないが、知識だけはそこそこ身についていた。

 錬成のやり方から、このトータスに存在する鉱石の性質や用途など、まずはその知識を身につけた。他には魔法の感覚を掴むために、実際に錬成を行ってみたりもした。

 

 しかし、メルド団長は錬成師の工房への紹介をしてくれたらしい。しかもハイリヒ王国でもトップクラスと名高いウォルペン工房にだ。それは、トータスにやってきたばかりのハジメでさえ知っていた。

 

「あのウォルペン工房にですか……」

「ああ。技術力だけで言えば、王国で一番と言ってもいいだろうな。あそこは他と比べたら規格外だ。まぁその分変わり者も多いんだけどな」

 

 そう評価するメルド団長。どうやらウォルペン工房は、技術革新に余念がなく、それにより王国随一の技術力を持っている。

 しかし逆に言えば、技術のためなら手段を選ばないという性質もあり、どのような人間でも――盗賊や奴隷や罪人でも、技術やアイデアがあれば引き入れてしまう。故に、変人の集まりと呼ばれることも多い。

 それで許されているのも、ウォルペン工房の高い技術力があるからこそである。

 

「どうだ。お前がいいと言うなら――」

「行きます」

 

 そんな工房なのだ。ハジメが断るわけもなく、即断で行くことを決めた。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 昼食を食べ終えたハジメは、メルド団長の案内で工房へ向かったのだが、そこは王城から離れた郊外にあった。

 炉を温めているのか、排煙管から灰色の煙が昇っており、キンコンカンと鉄を打つ音と匂いが広がっている。一度だけやって来たことはあったが、初めて見た時から、ハジメはこの雰囲気を気に入っていた。

 

「すっご……これが錬成師の……!」

 

 特に興味を惹いたのは、工房に所属する職人の仕事っぷりだ。事前に錬成に関する基礎的な知識を取りこんでいたからこそ、その仕事の凄さがハジメには分かった。

 何度か錬成を試したからこそ分かる。その速さや正確性は飛び抜けていた。制作している道具も素晴らしい。魔法陣は丁寧に掘られており、見た目と機能性に優れている。全ての調和が取れた、これぞ一流といった仕事ぶりに、ハジメは感動していた。

 

「……坊主、早く行くぞ。ウォルペンが待ってるんだぞ」

「あっはい。こういうのを直で見るのは初めてだったもので……」

「……やはり錬成師には、こういう技術の凄さが分かるものなのか? 俺はこういうのに詳しくないからサッパリだ」

「普通に凄いと思います。まだ詳しくはないですけど、錬成そのものの技術もそうですし、作る道具も精密で使いやすい感じになってて、かつ見た目も良い」

「なるほどなぁ……とにかく行くぞ」

 

 そうして工房を歩いていくハジメだったが、様々な珍しい鉱石や高い技術、その他様々なものを目の当たりにした。それによる興奮をなんとか抑え、ようやくウォルペンの工房の前にたどり着いた。

 

「着いたぞ、ここがウォルペン専用の工房だ。食事時でもなければ、奴は大体この部屋にいる」

 

 お前から入れと促すメルド団長。確かにこれから工房に所属するかもしれないのだ、自分から入るべきなのだろう。

 ハジメは一度、大きな深呼吸をして、扉を勢いよく開けて足を踏み入れた。

 

「初めまして! ウォルペン工房に入門を希望します、南雲ハジメといいます!」

「……」

「……うん?」

 

 そして大声を上げて言ったのだが、工房内にいる人物は、一切の反応を示さない。なら何をしているのかと思って見てみると、何らかの作業をしているのだとが分かった。端から見ても、かなり集中しているのが分かる。

 それを妨げないように近づき、静かに観察してみるハジメ。近づいてみて分かったが、現在は魔法陣を掘る段階、すなわち道具を魔道具にする重要な段階に入っているようだ。

 

(近くで見ると本当に……! 魔法陣に歪みが無いし、そもそもの魔法陣もコンパクト、それを可能にする錬成の練度も……!)

 

 それを見て、ハジメは目を輝かせる。生の錬成師の技術に触れたというのもあるが、技術の高さというのも、感動させる要因の一つだった。

 

 そうして作業を終わらせたのか、男はフゥと息を吐いて、ハジメの方を向くが、わずかに目を細めて言う。

 

「……あん? 小僧、何の用だ?」

「え? あ、初めまして! ウォルペン工房に入門を希望します、南雲ハジメといいます!」

 

 そうしてもう一度自己紹介をすると、男は「あ~……」と声を上げて何度か頷いた。

 

「そういえば、なんか紹介状が来てたなぁ……ま、その前に自己紹介だ。俺はこの工房の棟梁、ウォルペン・スタークだ。よろしくな」

 

 そう軽く自己紹介を終えると、ウォルペンはメルド団長の方にも目を向ける。

 

「でだ。メルド、こいつの実力はどんな感じだ? 錬成師とは聞いてるが、腕はあるのか?」

「いや。まだこの世界に来て数日だ、錬成については何も教えてない。でも独学で少しやってみたとは言っていたな……」

「ほう? 小僧、本当か?」

「は、はい。錬成の基礎知識や鉱石の性質等は覚えましたし、個人的なものではありますが、実際に錬成を使用しての訓練というのもやっていました」

「……なるほど」

 

 ウォルペンは立ち上がると、工房のさらに奥の方へ入っていった。そしてしばらくすると、手に一つの金属の塊を持って戻ってきた。

 

「じゃあこいつに錬成を使って、球体にしてみろ」

「はい……“錬成”!」

 

 緊張しつつも、言われた通りにハジメは錬成を行う。すると一瞬で魔法陣が形成され、同時に金属は柔らかくなり、粘土のようにうねり、球状へと変化していった。

 

「はい、できました……」

「ああ……ああ、合格だな」

「え?」

「独学でこれほどの錬成ができるのであれば、将来性も申し分無しだ」

 

 ハジメは困惑していた。工房に入るために何らかのテストがあるだろうと思ってはいたが、そのテストがここまで簡単だとは、流石に予想すらできなかった。

 どうやらそれは、メルド団長も同じようで、ウォルペンに尋ねる。

 

「……意外だな。お前の性格なら、何か作ってみろと言うものだと思ったが」

「普通ならな。だがこの小僧の才能は段違いだ、今まで見た中では一番と断言してもいい。独学でここまでの錬成ができるのなら、今は何も言うことはない」

 

 そうして、ウォルペンはハジメの凄さを長々と語り始めた。

 まず何と言っても、ハジメは独学にも関わらず、錬成におけるクセが小さかった。このクセというのは、錬成師であれば誰でも持っているものだが、大抵が悪い方向に働く。独学であれば、その傾向はかなり大きく、クセもつきやすいが、ハジメはそうでなかった。

 その上で、練度もそこそこ高かった。実際にモノを作るとなると勝手は違うだろうが、ある程度鍛えれば、勝手に伸びていくだろう。

 

 ここまで堂々と言われてしまうと、ハジメも恥ずかしくなってしまい、顔を赤くしていた。

 

「……とまぁ、小僧、お前にはとんでもないほどの才能がある。このまま鍛えていけば、その内何か物凄い偉業を成し遂げるかもな。頑張れよ」

「……! はい!」

 

 こうして、ハジメはウォルペン工房にて働きながら、技術を磨くことになった。




独学でベヒモスの動きを封じるレベルの錬成ができるんだから、ハジメの錬成師としての才能は狂ったレベルで高いと思います。
多分ハジメの錬成は、トータスにおける通常の錬成師が行う精密錬成に匹敵するか、あるいはそれ以上だと考えられます。

もちろん、魔物の肉を食べた場合等は例外でしょうが。肉体や体内魔力にあそこまで影響が出てるのなら、魔法適性にも影響が出てないとおかしいですからね。ただ再生魔法があれば、この適性の変化をどうにかできるかもしれません。
そして影響が出ているとすれば、おそらく錬成の適性は下がっているでしょう。素の適性が高すぎるため、どうあがいても適性が下がるのです。


それと、ここからは評価者のコーナー。
大菊寿老太様  くーるMAX様  らりりり様
シュティトル様  せろりん様

感想ありがとうございます。今回で、評価数が五十を超えました。これも皆さんの応援のおかげです。これからも頑張っていきますので、応援よろしくお願いします。

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