最近ハジカオ要素が少ないらしいから、ハジカオ要素が多分出てくる話まで、一緒に投稿してやったぜ!
そうして、ハジメが工房に所属してから一週間と少しが経った。この間に、ハジメの練度はかなり上昇した。
工房において、まだ入ったばかりのハジメは見習いといった立場だ。他の錬成師の仕事を補佐し、知識や技術を学ぶという段階である。
ウォルペン工房は、王国でもトップクラスの工房であることから、多くの仕事が入ってくる。それ故に、見習いであるハジメの仕事もかなり多かった。そこから学ぶことも、当然多い。
そうしてハジメは、鉱石の性質、合金の作り方、錬成の効率の上げ方等、様々な知識や技術を教わった。中には体系化されていない感覚的なものもあったが、それは数をこなして覚えていった。
最終的に二週間経った今、ハジメのステータスはこうなっていた。
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:8
天職:錬成師
筋力:15
体力:15
耐性:15
敏捷:15
魔力:30
魔耐:20
技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+消費魔力減少][+鉱物融解][+鉱物凝固][+遠隔錬成][+鉱物融合][+鉱物分離][+高速錬成][+錬成範囲拡大]・言語理解
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特筆すべき点としては、やはり派生技能の数だろう。クラスメイトの中でここまで技能を派生させたのは、メルド団長いわくハジメだけなのだという。
しかし技能の数だけではなく、その上でさらに練度も良い意味で狂っていた。
例えば、錬成師であれば誰でも持っている“錬成”の技能。ハジメの場合は練度が異常なほどに高いため、通常の“錬成”にも関わらず、その上位技能である“精密錬成”と同等の精度を引き出すことができる。
他の技能に関しても、特に精密性に関しては、明らかに練度が桁違いなのだ。ハジメの技能は、通常のワンランク上の精度と言っても過言ではなかった。
そして今、ハジメは雫からの依頼を受け、日本刀を作っていた。
雫の天職は剣士。その名の通り、剣を使った戦闘を得意とする天職なのだが、トータスにある剣では妙に使い勝手が悪いようで。一応神の使徒なのでアーティファクトの強力な剣を使えるが、それでも扱いにくさの方が嫌なようだ。
元々雫は、道場で剣術を修めていた。それは剣道だけでなく、本格的な居合等もやっていたらしく、日本刀の扱いには長けているらしい。なので彼女は、自分が最も扱いやすい日本刀を作って欲しいと、そう言ってきたのだ。
見習いとはいえ、直接の依頼が来たのだ。ウォルペンからは了承を得たので、早速作業に取り掛かっていた。
「う~ん、硬度を最大にするためにはどうすればいいことやら……」
しかし、金属を精製する段階から悩み込んでいた。問題は、どの金属を使うか、金属をどの割合で混ぜるか等だ。
特に割合に関しては、コンマ単位であっても硬度に影響をもたらす。故に慎重に、最高の割合を探していたのだが、納得する値は見つけられない。どんな値にしてみても、すぐに刃こぼれが起きてしまうのだ。
そんなこんなで悩み続け、依頼を受けてから三日ほど経っていた。太陽ももうすぐ沈みそうになっている。
「よぉ小僧。調子はどうだ?」
悩み悩んで百面相していたら、ハジメが使用している工房に、棟梁のウォルペンが入ってきた。
「あっウォルペンさん。いやぁ……難しいですよ。なんせ日本刀はこの世界の剣とは構造も使い勝手も違いますからね……普通じゃダメなんです」
「まぁそうだろうな。にしても……日本刀、俺達の世界の剣とは違って、切れ味で戦う剣か」
「はい。でも魔物がいる以上、単に切れ味が良いだけではいけません。皮膚や肉が硬い魔物もいますから」
ハジメは、日本刀は基本的には柔らかい部位を斬るもの、包丁のように扱う剣だと思っている。しかし魔物相手だと、硬い部位が多かったり、皮が硬くて肉が斬りにくいといったこともある。
実際に試作したもので魔物の死体を斬ってみても、ハジメの腕も影響しているのだろうが、かなり斬りにくかった。その上、数度で刃こぼれしてしまう。これなら、トータスで日本刀に似た剣があまり使われない理由も分かるというものだ。
「それにしてもなぁ……日本刀ってのは、ここまで刃が薄いのか? これじゃあ一瞬で刃こぼれしそうなもんだけどなぁ」
ウォルペンはそう言いつつ、ハジメの試作した日本刀を手に取る。その刃は非常に薄く、わずかでも皮膚に当てられたら、切れそうなほどだ。
しかし同時に、脆そうでもある。かなり薄いので、いつ刃こぼれしてもおかしくないという感じだった。
そもそもハジメは、日本刀というものを直に見たことがない。もちろん写真では見たことがあるが、それでは細かい部分は分からないため、見様見真似の劣化品、なんちゃって日本刀になってしまうのだ。
「いっそのこと、もうちょい刃の部分を丈夫にしてみたらどうだ? 切れ味も良いけど、これじゃあすぐ刃こぼれして使えなくなるぞ?」
「……それもそうですね。何度か前の試作型で、強度と切れ味がそこその両立できているものがあったので、それをもう一度作ってみます」
そう言って、ハジメは錬成を始める。まずは刀身に使っていた金属を“鉱物融解”の技能を使って溶かす。この技能を使って溶かす場合は、融点を一切気にしなくて済むのが良い点だ。
そうして溶かすと、今度は“遠隔錬成”を利用し、液体金属を操作。こうして少しずつ、再び刀身を形成していく。この際に気をつけるのが、ウォルペンに言われた通り、刃の部分を薄くし過ぎないという点だ。
「……よし、これでいいかな?」
「どれどれ……まぁ、見た目はいいんじゃねぇか? これで多少は刃の部分も丈夫になっただろうし」
ハジメが作った日本刀に、ウォルペンはそう評価を下す。メンテナンスが必要ではあるが、これならある程度は丈夫になっただろうと。
「そして魔法陣は……確か必要無かったか?」
「はい。というか魔法陣を彫ろうにも、この日本刀だと流石に……」
「今のお前じゃ難しいだろうな。錬成の腕は凄いが、魔法陣彫りだけに関しては、お前はまだまだひよっ子だからな」
そう言われたものの、完成は完成だ。ハジメは手伝ってくれたウォルペンにお礼を言い、王宮の方へと走っていった。
◆◇◆◇
ハジメは刀を持って王宮へ戻ってきた。しかし、そもそも雫がどこにいるか分からない。
「確かこの時間は……まだ訓練中だっけ?」
とりあえず、雫が最もいそうな場所である訓練所に向かってみるハジメ。
だがどうやら、既に訓練は終わっていたようで、クラスメイト全員がいるわけではないようだ。残っているクラスメイトは談笑したり自主練したりしていた。
しかし訓練所を見て回っても、雫の姿は見えなかった。ついでに言うと、しばしば雫と一緒にいる香織の姿も見えない。
「おっハジメ、こっちにいるなんて珍しいな」
しかしその幼馴染である光輝はいたようだ。彼は辺りを見渡しているハジメを見つけると、近づいてきた。
「ああ、光輝……八重樫さんを探してるんだけど、どこにいるか分かる?」
「雫? ならけっこう前に、工房の方に行ったけど」
「あ〜……入れ違いかぁ。依頼された剣を届けに来たんだけどなぁ」
おそらく雫の方も、剣を取りに向かったのだろう。しかし自分まで戻ってしまえば、もう一度入れ違いになってしまう可能性もある。
それはそれとして、光輝はハジメの作った日本刀に興味を示した。
「それにしても……これは日本刀か?」
「見た目だけはね。本物とは製法も素材も違うし、なんちゃって日本刀でしかないけど。まぁある程度の強度と切れ味はあるはずだよ。何度も実験したし」
「……よくこんなものを作れるな」
「まぁうん。戦闘訓練じゃないけど、こっちも頑張ったからね。そういえば光輝はどんな感じ?」
そうハジメが尋ねると、光輝はステータスを見せてきた。
生産職で最も成長したのは――というか生産職はハジメと愛子先生しかいないのだが、最も成長したのはハジメだろう。派生技能がたくさん出ているから。
だがそれ以外の、戦闘系と呼ばれる天職持ちで最も成長したのは、光輝と言える。ステータス的にも、技能的にも。
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天之河光輝 17歳 男 レベル:15
天職:勇者
筋力:280
体力:280
耐性:280
敏捷:280
魔力:280
魔耐:280
技能:全属性適性[+発動速度上昇]・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術[+斬撃速度上昇][+身体強化]・剛力・縮地・先読・高速魔力回復[+瞑想]・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
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「すっご! なにこのステータス……」
「別に凄くはないよ。派生技能のほとんどは、友達のを見様見真似で繰り返しやっていたことだし、ステータスも、毎日コツコツ訓練してたからこうなったんだ」
元々光輝の才能は非常に高い。周囲を観察し、他人の技術を消化して自分のものにするのが、彼は非常に上手いのだ。
実を言うと、この派生技能の数々も、元々は他のクラスメイトが得たものだったりする。仲間をひたすらに観察し、自分でも利用できるように試行錯誤し、結果として光輝は、仲間の技能を自分も習得した。
「俺一人じゃあ、ここまで強くなるのはできなかったと思う。皆が色々手伝ってくれたおかげだ」
「そうか」
「あっと。それとハジメに言っとかないといけないことが――」
と、光輝が続けようとした所で、訓練所に「ハジメくん!」と声が響く。後ろの方だ。
振り向いてみるとそこには、香織と雫がいた。汗をかいていることか、おそらくは工房に行って、また走って戻ってきたのだろう。
「もう、こっちに来てたのね……なら待っとけばよかったかしら……」
肩で息をしながらも、雫は言う。そこそこ走ったようで、かなり疲れているらしい。
「すみません、もう少し待っといた方が良かったかもしれないね。それで……これが依頼の剣だよ。本物の作り方とかは分からないから、強度とか切れ味は劣るかもしれないけど……」
そんな雫に、ハジメは完成した日本刀を渡した。雫はそれを受け取ると、一度鞘から剣を抜いた。
剣は、見た目だけなら日本刀に酷似している。流石に鉱石や製法までは真似でいていないだろうが、それでも丁寧に作られていることは、雫にはすぐに分かった。
「……ううん、大丈夫。無茶な依頼だったかもだけど、本当にありがとね」
「いやいや、これくらい全然」
と、礼を言う雫にハジメは言う。しかしハジメからしてみれば、依頼を受けてそれを達成するという、当たり前のことをやっただけだ。
「そういえば、ねぇハジメくん」
「うん? どうしたの香織?」
そうしてやるべきことをやり終えると、香織が尋ねてくる。
「明日のこと聞いてる? 私達、オルクス大迷宮に行くって」
「あ、そうなの? 多分その時、僕いなかったからなぁ」
その内容とは、明日、オルクス大迷宮での実戦訓練を行うために、王宮を出るというものだった。戦闘員であるクラスメイトが、実戦訓練を行うのは当然ではある。
「それ、ハジメくんも参加するんだよ?」
だが次の香織の言葉で、ハジメは一瞬だけ固まってしまった。
「え? 僕、戦闘員じゃないんだけど……戦闘訓練もほぼしてないし、何もできないんだけど……」
「ああいや、そこは大丈夫! あくまでハジメくんは、生産系の錬成師だから。後方で武具とかの整備を担当してもらうんだって」
「あ、なるほどね……」
「それと。ハジメくんは私達のパーティーに入ることになってるけど、それでいい?」
香織が言うには、ハジメが所属する予定のパーティーメンバーは、光輝、龍太郎、香織、雫、恵里、鈴とのことだ。そこにハジメを入れた七人だ。
別に嫌ということは無いので、ハジメは二つ返事で了承した。
-追記-
この作品のオリジナル技能について。
『鉱物融解』鉱物を液体化させる。この時、物体にかかる圧力や熱は考慮されず、無条件で液体化させることができる。
『鉱物凝固』液体の鉱物を固体にする。この時、どれだけ液体が熱くても、発動すれば固体にすることが可能。
オルクス大迷宮のボスであるヒュドラ。その幻覚魔法は香織かユエのどっちに対して使ってほしい?
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白崎香織
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ユエ
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どっちも