ありふれた錬成師は治癒師と共に   作:木崎楓

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投稿遅れてすみません!

ここ最近は、大学の方でテストがありまして、その勉強で忙しかったんです。必修で赤点取ったらアウトですからね。


ユエの実力

「……にしても、サソリの魔物の甲殻は鉱物だったのか」

 

 ユエを可愛がりつつも、ハジメは色々と分析をし、新たな武器を制作していく。その際に興味を惹いたのが、サソリの魔物の甲殻だった。

 どうやら鉱物になっているらしく、それがサソリの魔物が異常に硬かった理由にもなっていた。

 

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シュタル鉱石

魔力との親和性が高く、魔力を込めた分だけ硬度を増す特殊な鉱石

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 このシュタル鉱石というのが、甲殻を形成する主成分だった。おそらくは、サソリの魔物は魔力を甲殻に溜めて、硬化させていたのだろう。

 

「……ハジメ、なにしてるの?」

 

 色々と金属をいじっているハジメに、ユエが尋ねる。少し声がした方に顔を向けると、ほとんど密着しながら覗き込んできていた。

 

「ん、ああ。武器作ってんだ。対物レールガンっていう……僕が使ってた拳銃の強化版。今までは、これ以上威力を上げるのは強度的に無理だったけど、このシュタル鉱石があれば実現できそうなんだ」

 

 拳銃型のメリットは、何よりも取り回しやすいことだ。装填数はそれなりにあり、反動も小さめだ。しかしデメリットとして、構造上、威力が出しにくいというものもある。

 そんなデメリットを取っ払ったのが、レールガン型だ。こちらは取り回しやすさを犠牲にした結果、一発一発の威力を極限まで上げることに成功した。今までは強度的に不可能だった威力も、シュタル鉱石がある今、実現可能なレベルになっていた。

 

 一度拳銃を作った経験が活きたからなのか、このレールガンは比較的すぐに完成させることができた。試行回数は三百回くらいなので、拳銃の時の半分くらいの時間で完成させることができた。

 他にも、今まで使っていた拳銃をシュタル鉱石製にして、強度を上げることにも成功した。結果として、威力を上昇させることにも成功したのであった。

 

ジュウウゥゥウ……

 

 それと同じくらいに、肉が焼ける音と匂いがした。匂いに関しては、肉食? の魔物のものなのでかなりキツいがハジメや香織はもう慣れていた。

 

「ハジメくん、ご飯できたよ!」

「おっ。ありがとうね香織」

 

 そうして香織が焼いた肉をハジメは受け取ったが、そこで一つ、疑問が生じた。

 

「そういえば、ユエはどうするんだ? 魔物の肉を食べさせるわけにもいかないし……」

「食事はいらない……大丈夫」

「……本当に?」

「あ、うん。私の血を吸ったから、ユエちゃんならもう大丈夫だよ」

 

 ユエに関しては、香織が説明してくれた。どうやらユエ、というか吸血鬼族は、他者の血を吸うことで栄養の補給ができるのだという。もちろん普通に食べることも可能だが、血を吸う方が効率がいいのだという。

 

「なるほどねぇ。……ってか、香織の方は血を吸われて大丈夫?」

「うん、全然大丈夫だよ。血を吸うって言っても、割と少ないし」

「ならいいんだ」

 

 そうして食事を食べるハジメと香織。それが終わると今度はユエが、ハジメの首筋に歯を立てて血を吸い取ることで食事をした。

 どうもその味は、濃厚なスープのような味だったらしい。ただ、香織のよりもかなりあっさりしている感じ立ったとか。ともかく、人間のハジメにはよくわからない感覚だった。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 そうして装備を整え、ユエも連れて五十層を出発したわけなのだが……

 

「“緋槍”」

 

 ユエの一言で、手元に現れた炎は渦を巻いて円錐状の槍の形をとり、一直線に魔物を目掛けて飛翔し、あっさり突き刺さって貫通させた。

 

「わぁお」

「ユエちゃんの魔法……凄すぎ……」

 

 しばらくは、ユエが無双していた。何がえげつないかといえば、まず詠唱無しで高火力の魔法を連発できる点だろう。

 どうもユエは魔力量がかなり多いらしく、超高火力の最上級魔法を連発しても、そこまで魔力を消耗しない。この最上級魔法というのがとんでもなく強力で、対単体でも対集団でも、容易に一掃できてしまう。

 

 この階層は、十メートルを超える木々が鬱蒼(うっそう)と茂る、樹海のような階層だ。空気はジメジメしているが、暑くはないのが救いだろう。

 出てくるのは、今の所はティラノサウルスのような魔物だ。しかしその頭には、一輪の花を咲かせている。しかもこの魔物、数がかなり多い。

 

「おっと……」

 

 とはいえ、どうやら探知系の技能は持っていないらしい。こういう場面では、ハジメの戦法が有効だった。

 ハジメは“気配探知”により、魔物が集まってきているのを察知した。それを受けて、急いで周囲に鉱物手榴弾をいくつか投げる。これも以前から改良しており、手榴弾丸ごと気体化するようにしてあった。

 

「シャァァアア!!」

 

 そんかことをしていると、ハジメ達を取り囲むかのように、ティラノサウルスの魔物が現れた。見える限りだと、最低でも十体はいる。

 しかし……

 

「ガスブレード」

 

 ハジメがそう呟くと、魔物は口から血を吐き出し倒れ、ピクピクと痙攣し、やがて動かなくなった。そうして死んだ魔物から花は落ちる。

 ハジメの攻撃である“ガスブレード”は、言ってしまえば気体化させた鉱物による攻撃だ。気体を吸い込ませて、臓器にダメージを与える。ある程度ゆとりができたので、なんとなく名前を付けてみたのだ。

 

 香織に関しても、ユエに魔法を教わり、光属性限定ではあるが、最上級魔法を詠唱無しで扱うことができるようになった。なので殲滅力はかなり高い。

 

 こうして三人とも戦えるわけなのだが、如何せん敵の数が多すぎる。なので三人は走り、急いで階層の出口、あるいは隠れられるような場所を探していた。

 

 そうして走っていると、またしてもティラノサウルスのような魔物が接近してくる。そのどれもが、等しく鼻の上に花を咲かせていた。

 

「あ~もう! 数が多すぎる!」

 

 敵が現れる。それも数十体単位で一斉に。ここにいる三人なら普通に倒せはするが、あまりにも面倒だ。

 

「ここは私が……“凍獄”!」

 

 今回はユエが攻撃する。魔法のトリガーを引いた瞬間、ハジメ達のいる樹を中心に眼下が一気に凍てつき始めた。ビキビキッと音を立てながら瞬く間に蒼氷に覆われていく。

 一瞬にして到達した氷の柩に、周囲の魔物は囚われる。それから秒も経たずに、魔物の血肉は絶対零度まで到達し、生命活動を停止させた。

 

「はぁ……はぁ……」

「助かるよユエ。でも……」

「ん、どうしたのハジメくん?」

「いや、なんかさ……魔物の動き、おかしくないか?」

 

 冷静になって考えてみると、魔物の動きがどこかおかしいことに、ハジメは気づいた。

 

「この階層に入ってから倒した魔物の数って、軽く百は超えてるよね?」

「あ、うん。数えてないけど、多分そうだと思う」

「……じゃあその魔物はどこから来たんだ? かな~り離れた場所から僕達を探知をして来たってこと? しかもこんな一斉に? 流石におかしいよ」

 

 今も魔物は接近している。数は相変わらず多い。しかも行動の仕方というか何というか……それが今までとほとんど変わらない。

 この階層の魔物が、ハジメには野生生物のようには見えなかった。あえて表現するならば……そう、出来の良い機械を相手しているような、そんな感じがしていた。

 

「う~ん……操られてる、とか?」

 

 数秒考えた後に、ハジメはそう結論づけた。香織とユエも、ハジメの言葉には賛同した。

 

「よし。とりあえず操ってる本体を探すか。いなかったらそれでいいけど」

 

 ハジメ達は物量で押しつぶされる前に、おそらく魔物達を操っているのであろう魔物の本体を探すことにした。

 このまま戦い続けても、物資と魔力は消費し続けるためジリ貧だ。いつかはやられる。だから急いで本体を倒すか、階下への道を見つけなければならなかった。

 

ドドドドドドドドドドドドドドドッ!!

 

 そんな音が、どんどん近づいてきている。

 

「ヤバい! ユエ、担ぐぞ!」

「えっ」

 

 ハジメは、おそらくステータス的に身体能力が劣っているユエを背負い、猛ダッシュで駆け出した。もちろん香織もそれについていく。

 背の高い草むらに隠れながら魔物が併走し、四方八方から飛びかかってくる。それを迎撃しつつ、探索の結果一番怪しいと考えられた場所に向かいひたすら駆けるハジメと香織。ユエも魔法を撃ち込み致命的な包囲をさせまいとする。

 

 目星をつけたのは、樹海を抜けた先、草むらの向こう側にみえる迷宮の壁、その中央付近にある縦割れの洞窟らしき場所だ。

 こちら側に向かえば向かうほど、()()()敵の追撃が普段から増して激しくなるのだ。まるで何かを守るかのように動いている。

 

 そうして猛ダッシュで洞窟に向けて走り、ついに洞窟内に滑り込んだ。もちろん錬成を利用して、入り口に蓋はしておく。

 

「よし。これで問題無いはず」

「はぁ~、疲れたぁ」

「……お疲れさま」

 

 そう言って、ユエはハジメから降りる。表情を見ると、少し残念そうにしている。居心地が良かったのだろうか。

 ちなみにだが、走っていると間、ユエはハジメから何度も血を吸っていたりした。しかしハジメはそれに一切の文句を言わなかった。

 

「魔物の気配は無いけど……」

 

 嫌な予感はしたが、進むしかない。そういうわけで、警戒しながら洞窟を進んでいくと、広い部屋の中央にまでやって来た。その時だった。

 

 全方位から緑色のピンポン玉のようなものが無数に飛んできたのだ。数は、軽く百を超えている。

 即座に迎撃に移る三人だったが、数はどんどん増えるばかり。飽和してきて対処が難しくなってきた所で、ハジメは錬成で石壁を作り出し防ぐことに決めた。石壁に阻まれ貫くこともできずに潰れていく緑の球。威力はそこまでではないようだ。

 香織とユエの方も問題なく、香織は得意の光属性魔法で、ユエは速度と手数に優れる風系の魔法で迎撃していく。

 

「……絶対これ本体の攻撃でしょ。香織、ユエ、敵はどこかにいるぞ」

「うん、分かってる」

「……」

「……ユエ?」

 

 香織は反応した。しかしユエは反応しない。若干訝しみながらも、ハジメはユエに近づいてみる。

 

「……にげて……ハジメ!」

 

 いつの間にかユエの手がハジメに向いていた。ユエの手に風が集束する。本能が激しく警鐘を鳴らし、ハジメは、その場を全力で飛び退いた。刹那、ハジメのいた場所を強力な風の刃が通り過ぎ、背後の石壁を綺麗に両断する。

 

「ま、マジか……これは……!」

 

 見てみると、ユエの頭の上にも真っ赤な薔薇が咲いていたのだ。魔物の時とは種類が違うようだが、操られていることには変わりない。

 

「香織! そっちは大丈夫か!?」

「私は大丈夫だから、それよりもユエちゃんを!」

 

 とりあえず、ユエに対する行動操作をなんとかしなければならなかった。

 倒せば一応なんとかなるが、しかしそれではユエを傷つけてしまう。流石にそれは、ハジメも香織もあまりやりたくないことだった。

 

「ハジメ……香織……うぅ……」

 

 ユエが無表情を崩し悲痛な表情をする。感情はあるのだろう。おそらくは、意識はそのままに、体の自由だけを奪う効果なのだろう。

 

 攻撃で花だけを落とす、というのも考えたが、かなり難しかった。ユエを巻き込まないようにと考えると、どうしても攻撃できなかったのだ。

 

 ハジメ達の逡巡を察したのか、それは奥の縦割れの暗がりから現れた。

 

 見た目は人間の女なのだが、内面の醜さが溢れているかのように醜悪な顔をしており、無数のツルが触手のようにウネウネとうねっている。その口元はニタニタと笑っている。アルラウネ、とでも言えばいいだろうか。

 

 ハジメはすかさずアルラウネに銃口を向けた。しかし、ハジメが発砲する前にユエが射線に入って妨害する。

 

「ハジメ……香織……ごめんなさい……」

 

 悔しそうな表情で歯を食いしばっているユエ。操られているとはいえ、自分が恩人であるハジメと香織を殺そうとしているという事実が耐え難いのだろう。今も必死に抵抗しているはずだ。口は動くようで、謝罪しながらも引き結ばれた口元からは血が滴り落ちている。

 

 しかしハジメは、わずかに口角を上げると、適当に自分の周りに鉱物手榴弾を投げた。それはすぐに溶け出し、気体の鉱物へと変わっていく。

 

 それをゆっくりと、ユエの攻撃を回避しつつ、錬成を用いて気体の鉱物をアルラウネに接近させる。しかしこれには反応を見せない。

 

「おっ? ……っしゃ!」

 

 そうして、アルラウネは鉱物を吸い込んだ。吸い込んでしまった。ある程度吸い込んだ所を確認した所で、ハジメはアルラウネの内臓、特に脳を中心にぐちゃぐちゃに引き裂いた。

 脳を潰されたアルラウネは、一切の声を上げることもなく、痙攣すら起こすこともなく、そのまま倒れて動かなくなった。

 

 それと同時に、ユエの頭部の花はみるみるうちに枯れていき、ポトリと地面に落ちた。

 

「ユエちゃん!」

 

 真っ先にユエに近づいたのは香織だった。彼女はユエの目線までしゃがみ込み、安否を確認する。

 

「ユエちゃん、体は大丈夫? 痛い所とかない?」

「……大丈夫、香織。……それと、ごめんなさい」

「ううん。魔物の洗脳みたいなものだし、仕方ないよ。もしかしたら、私がユエちゃんみたいになってたかもだし」

 

 そう香織は言うが、彼女とハジメに関しては、あのアルラウネの攻撃は一切効かなかった。彼らは知らないことだが、アルラウネの攻撃は、一種の麻痺毒に分類される。しかし二人は、魔物を食べた際に“毒耐性”という技能を得ているため、もし当たっても効かなかったわけだ。

 

「うんうん。そう自分を責めなくていいんだよ、ユエ」

「ハジメ……また助けてくれて、本当に……ありがとう」

「いいや。仲間なんだ、これくらい普通だよ」

 

 こうして三人は、とりあえずの安息を得たということで、ホッと一息ついた。




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