オルクス大迷宮を攻略してから、約二ヶ月の時が経った。死と隣り合わせの迷宮を攻略して気が抜けたハジメ達は、とにかく幸せな日々を送っていた。それこそ傍からその様子を見ると、砂糖を吐きそうになるほどに。
もちろん、各々が自分の鍛錬を行ったりもしていた。ハジメは様々な武器を作り出し、それを扱う練度を上げるように鍛錬した。香織とユエは、それぞれが得意とする魔法分野を伸ばしていった。
そうして上昇したハジメのステータスがこれだ。
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:100
天職:錬成師
筋力:16700
体力:18520
耐性:16240
敏捷:19950
魔力:21570
魔耐:21570
技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+消費魔力減少][+鉱物融解][+鉱物凝固][+遠隔錬成][+鉱物融合][+鉱物分離][+高速錬成][+錬成範囲拡大][+鉱物昇華][+鉱物系探査][+複製錬成][+圧縮錬成][+構造分析]・魔力操作[+魔力強化Ⅴ][+遠隔操作][+魔力放射][+魔力圧縮]・胃酸強化・纏雷[+威力上昇][+身体強化][+神経強化][+瞬光]・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪[+三爪][+飛爪][+斬撃速度上昇]・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・金剛・威圧・念話・追跡・高速魔力回復・魔力変換[+体力変換][+治癒力変換][+電力変換]・限界突破・生成魔法・言語理解
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ヒュドラの肉をたくさん食べた結果として、ステータスが異常なほどに上昇していた。派生魔法抜きの技能数もかなり増え、まさしく最強と言ってもいいほどだった。ステータスプレートが無いので分からないが、香織も似た感じになっていることだろう。
技能面で特筆すべき点としては、やはり“纏雷”の派生技能だろう。単純に威力が上昇し、電気の力を上手く肉体に作用させることで、身体強化を行うことに成功した。最終的には、神経を強化し脳機能を高め、知覚能力を上げる“瞬光”を修得した。その性質上、長期間の使用は難しいが、それでも強い技能であることには変わりない。
他にも様々な技能の練度が上がっており、技能では見えない範囲でも、様々なことができるようになっていた。
ちなみに現在のハジメは、オスカーの宝物庫に保管されていた義手を装着している。この義手の性能は中々のもので、魔力を操作することで、通常の腕と同じように動かすことができる優れものだ。これのおかげもあり、今まで以上の精密作業ができたと言ってもいい。
「むぅぅ……できないな」
そんなハジメだが、ここ最近――とはいえ一ヶ月近くの間ずっと、神結晶を作ろうとしていた。神結晶といえば、数千年を経て形成される鉱物だ。今まで天然で見つかったことがないのか、伝説扱いされているほどだ。
それを、奈落に落ちてすぐの時に見つけた神結晶を元にして作り出そうとしていた。が、流石に難しいのか、難航していた。
神結晶は、魔力が数千年かけて結晶化したもの。つまり原材料は固体化した魔力である。そこでまずは、魔力を圧縮しまくって、固体化させようとした。
しかしそれで完成したのは、非常に不安定な神結晶だった。圧縮を止めてしまうと、数分後には気体に戻ってしまうので、結果失敗に終わった。
第二に、神結晶から出てきた神水を固体化させることを思いついた。神結晶が魔力の塊ならば、それから作り出される神水も魔力の塊だ。なのでそれを圧縮して神結晶を作り出そうとした。
結果としてだが、一応この方法は上手く行った。しかし消費した神水はコップ三杯程度の量だ。だからなのか、欠片くらいの大きさにしかならなかったが、まぁ一応成功ではある。
しかし、これはハジメの望んだものではなかった。ハジメは、最初に見つけたバスケットボールくらいの大きさの神結晶を作り出そうとしていたのだ。よって研究は続行することとなった。
そうして様々な実験を繰り返して、おそらく今回で、実験回数は二百回を超えた。
ここでハジメは、少々方法を変えることにした。それは、神結晶から神水を強制的に生成させるような環境を作り出す、というものだ。
様々なアーティファクトを作り、香織とユエの模擬戦を見て、ハジメは思いついたのだ。『魔力が炎や風や電気に変換できるのなら、その逆も可能ではないのか』と。
要するに、熱エネルギーや電気エネルギーから魔力を作り出せるのではないかと、そう考えたわけだ。
この実験に関しては、見事に成功した。数回の試行錯誤によって、電力を魔力へ変換する機構を作り上げたのだ。
電力に関しては、滝を利用することにした。この空間の壁には大きな滝があるので、水力発電と似たような感じに発電することにした。そうして得た電力を、魔力へと変換するのだ。
そうして魔力の濃度が高くなった場所に神結晶を設置すると、神水はどんどん生成されていった。常に膨大な魔力に包まれているからなのか、一時間に約45リットル、一日に1000リットルの神水を生成することに成功していた。
「……!」
この時のハジメは、思わず無言でガッツポーズをしていた。さらには涙を流していたとかなんとか。
後は、そうして作った神水を圧縮し、神結晶にするだけ。これに関しても、魔力濃度が高い場所でやった方が上手くいくので、滝の近くでやったりした。
どんどん増えていく神水を利用して、最初に発見した神結晶と同等の大きさのそれを繰り返し生成した。そして最終的には、一日で5キロを超える量の神結晶を作れるほどになっていた。
最後に、これらを武器に組み込むのだ。神結晶は魔力の塊であるが故に、生成魔法との相性は良く、また魔力バッテリーのような役割を担うこともできる。その性質を利用して、武器の強化も行った。
オスカーが所持していた“宝物庫”という指輪型アーティファクトがあるので、持ち運びの利便性などを気にすることなく威力や速度を上げることができるようになった。
とはいえ、大層な武器は作っていない。というか、現状のハジメの技量では作れなかった。作ったのは、現在所持する武器の強化版と、そのマイナーチェンジモデル程度だ。
とりあえず、持ち運びを気にする必要が無くなったので、バレルを伸ばしてレールガンの威力と弾速と射程を上げた。
また、拳銃に関しても強化を施した。ただこちらに関しては、弾丸の強化と言った方が正しいかもしれない。様々な状況に対応できるよう、様々な弾種を作った。貫通力の高い徹甲弾、着弾点で爆発を起こす炸裂弾、突き刺さると急速に熱を奪う氷結弾等……場合によって使い分けられるようにした。とはいえ、普段使うのはほとんど徹甲弾なのだが。
それと新武器として、機関砲も作り上げた。これは電磁加速により、秒間二百五十発、一分で一万五千発を発射することができる。生成魔法で作った鉱物を利用した高性能の冷却装置も付けているので、弾丸が尽きるまで永遠に撃ち続けることができる。
ちなみに弾丸に関しては、様々な実験の結果、生成魔法で単なる土や石から鉱石を作れるようになったため、実質無限である。デメリットは、弾丸の装填が少し面倒というくらいだろうか。
もちろん武器の他にも、様々なモノを作り上げた。その中でも、移動手段となり得るモノが、魔力駆動車だ。通常モデルのオープンカーモデルの二種を作ったが、どちらも性能はほぼ変わらない。文字通り、魔力を、正確には神水を燃料にして動く車だ。
通常の自動車を作るのは難しいが、魔法を利用できるとなれば話は別だ。生成魔法を利用して動きをプログラムし、内部には神結晶と魔力生成装置を突っ込むことで、燃料の神水を無限生産できる機構を用意してある。
他にもバイクも作ろうかと考えていたが……三人ということもあり、制作を断念した。移動手段としては、車で充分だからだ。
そして最後。大量生産の方法が確立した神結晶を用いてネックレスやイヤリング、指輪などのアクセサリーを作った。これらは神結晶の一部を利用するというよりかは、神結晶をまるごと圧縮して作っているので、性能は狂ったほどに高い。
まず、桁違いの容量の魔力タンクになっている。その性能は、最上級魔法を五百発発動しても魔力が尽きることは無かった、と言えば容易に理解できるだろう。
次に魔法の威力上昇や消費魔力の減少。香織のは光属性と回復魔法限定ではあるが、その割合が非常に高くなっている。ユエのは上昇割合が、香織のと比べると低めではあるが、代わりに全属性の魔法に効果が適応されるようになっている。
もちろんだが、アクセサリーのデザインも大まかには同じだが、細かな部分が異なっている。例えば指輪等は、香織のは神結晶部分がサファイアのような蒼色になっており、ユエのはイエローダイヤモンドのような黄金色をしている。
そんな感じのアクセサリー一式を、香織とユエに贈った。
「これ……えへへ、ありがとうハジメくん」
「ん、私もうれしい……ハジメ、ありがとう」
「どういたしまして」
「それでね。一つだけお願いがあるんだけど……」
そう言うと、香織は指輪をハジメに一旦渡して、左手を出して言う。
「ハジメくんに、薬指につけてほしいなぁって」
「あ、それ私も……お願い」
「ハハハ……いや、流石にできないなぁ。
もちろんハジメも、香織の言っていることの意味は理解していた。しかし分かった上で、あえて断った。本気で作ったものではあるが、今回はそういう意図で作っていなかったからだ。
しかし、あくまで“
「うん……ハジメくん、ありがとう。大好き」
「私も……だいすき」
「……」
面と向かって大好きと言われ、ハジメは思わず赤面して目をそらしてしまう。ちなみに、その日の夜はとても熱かった。
◆◇◆◇
それから十日後、遂に準備は完了。ハジメ達は、外に出ることとなった。
装備の整備はできている、神結晶は全て詰め込んで、神水は三十リットルのタンク百本分は溜め込んだ。食料もある程度用意して、冷凍保存してある。
全ての準備を整えたハジメは、三階の魔法陣を起動させながら、香織とユエに静かな声で問いかける。
「……僕達の目的は、地球への帰還。だけどそのためには、妨害してくるであろう神……エヒトを倒さなければならないだろう」
「うん」
「……ん」
「この世界の神を倒すんだ。ここからは、世界全てを敵に回してしまうかもしれない、危険な旅になる。……それでも、僕についてくるかい?」
その問いに、香織とユエは確固たる意思を持って頷き答えた。
「もちろん。ハジメくんを守るためにも――一緒に戦うよ。ついていくよ、何があっても」
「私も……私の居場所は、ここだけだから」
ハジメの表情も揺らぐことはない。言葉を聞いて軽く頷くと、ゆっくりと口を開く。
「三人なら、超えられない壁は無い。三人で一緒に、地球へ帰ろう」
「うん!」
「んっ!」
ハジメの言葉に、香織とユエは共に花が咲くような笑みを浮かべて返事をした。
ゲーム様 ajmwtg1822様
評価していただき、ありがとうございます。次回の幕間が終われば、三章に入ります。これからも応援よろしくお願いします。