ありふれた錬成師は治癒師と共に   作:木崎楓

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ほんっと、びっくりしましたよ……

春よすの作品自体も、作者も突然消えちゃったんですから、本当に悲しい限りです。

まぁ、うん。とりあえず、私はこれからも頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いします。


亜人族

 樹海の中で人間族と亜人族が共に歩いている。

 

 その有り得ない光景に、目の前の虎の亜人と思しき人物はカム達に裏切り者を見るような眼差しを向けた。その手には両刃の剣が抜身の状態で握られている。周囲にも数十人の亜人が殺気を滾らせながら包囲網を敷いているようだ。

 

「あ、あの私達は……」

 

 カムが何とか誤魔化そうと額に冷汗を流しながら弁明を試みるが、その前に虎の亜人の視線がシアを捉え、その眼が大きく見開かれる。

 

「白い髪の兎人族…だと? ……貴様ら……報告のあったハウリア族か……亜人族の面汚し共め! 長年、同胞を騙し続け、忌み子を匿うだけでなく、今度は人間族を招き入れるとは! 反逆罪だ! もはや弁明など聞く必要もない! 全員この場で処刑する! 総員か――」

 

ドパンッ!!

 

 虎の亜人が問答無用で攻撃命令を下そうとしたその瞬間、ハジメは片腕を上に向け、空砲を撃った。もちろん空に向けて撃ったので、誰にも当たるわけではないが、聞き慣れない大きな音に、ハジメ達やハウリア族を囲う亜人族達は動きを止めた。

 

「失礼、流石にこのままではまともに取り合ってくれなさそうなので、威嚇射撃をさせてもらいました。とりあえず、まずはこちらの話を聞いていただけますか?」

 

 とりあえず、相手を刺激しないような丁寧な口調で、指示を出そうとしていたリーダーらしき虎の亜人に向けて言う。

 

 しかし虎の亜人は、人間の言葉など聞き入れない。彼らにとって、人間は憎むべき敵なのだから。ある意味当然のことではあるが、ハジメに対する殺意をさらに強める。

 

「何故我々の同胞の命を奪っていく人間族の話を聞かねばならんのだ! 問答無用――」

「動くな」

 

 ゾクリと、ハジメの発した一言で空気が凍りつく。特に表情も変えず、銃を構え、淡々と言っただけ。しかし違うのは、言葉に魔力が込められている点だ。ハジメは“威圧”という固有魔法で、言葉に魔力を込めたのだ。

 

「動くな、そのまま話を聞け。お前達が魔物のような知性の無い獣でないのならばな」

「……」

 

 亜人族達は震えるしかなかった。最初は小柄で若い人間だと、正直に言うとナメていた。しかしそんな相手が、おぞましい気配を発している。驚くと同時に、恐怖するしかなかったのだ。

 

 ここで“威圧”を解いて、ハジメは続ける。

 

「僕達の目的は、樹海の深部、大樹の下へ行くことだ。ここにいる兎人族に案内を任せている。聞いた話だと、大迷宮の入口があるとしたら、そこが最も可能性が高い」

「……何を言っている? 七大迷宮とは、この樹海そのものだ。一度踏み込んだが最後、亜人以外には決して進むことも帰る事も叶わない天然の迷宮だ」

「いや、それはあり得ない。一度大迷宮を攻略したから言えるけど……大迷宮と呼ぶには、ここの魔物は弱すぎる。それに、大迷宮はそもそも“解放者”の作った試練だ。もし仮に樹海そのものが迷宮だとしたら、樹海の住人である亜人族に対する試練としては成り立たない。だから、樹海そのものが迷宮っていうのはおかしいんだ」

「……」

 

 とは言ったものの。亜人族からしてみたら、ハジメ達が本当に大迷宮を攻略したのかは分からない。いやむしろ、身体的にはそこまで強くなさそうな人間が、大迷宮を攻略できるのは思わなかった。

 

「まぁそれはともかくとして……僕達の目的は、あくまで大樹の所まで行って、大迷宮を攻略すること。だから、今は何もせずに通してもらえれば、こちらとしてはありがたい」

「……それは不可能だろう」

「何故?」

「……兎人族に案内を任せているというのに、聞いていないのか? 大樹の周囲は特に霧が濃く、亜人族でも方角を見失う。一定周期で霧が弱まるから、大樹の下へ行くにはその時でなければならん。次に行けるようになるのは……大体十日後だったはずだ。亜人族なら誰でも知っているはずだが?」

 

 ハジメ達は、兎人族からはそんなことを一度も聞いていない。しかしこんな所で嘘を言うかといえば、そもそも嘘をつく場面ではない。

 ハジメはチラッと、カムの方を見る。するのカムはわずかに慌てた様子で早口で言った。

 

「も、申し訳ないハジメ殿。私も小さい時に行ったことがあるだけで、周期のことは頭から抜けており……」

「いや、別に責めるわけじゃないから。まぁでもこの状況だ……この樹海で野営して過ごすのも中々に面倒だぞ?」

 

 なんせ敵が多い。魔物だけであれば余裕で対処できるが、多くの亜人族も、兎人族とは敵対中だ。集団で攻められれば、流石に面倒と言わざるを得ない。

 

「それは困ったものだなぁ……亜人族の国、フェアベルゲン滞在が一番楽ではあるが……」

「……なんだ? フェアベルゲンに入りたいと、そう言うのか?」

「はい。それと先に断っておきますが、この兎人族との契約期間は終わっていないので、兎人族の命を脅かす敵が現れた場合、その時は誰であろうと倒します。フェアベルゲン内であっても」

「……つまり、何が言いたい?」

「神樹にたどり着くまでは、兎人族に手を出さないでほしい、ということです。神樹にたどり着いた後であれば、もう契約期間外なので知りませんが」

「……」

 

 亜人族も、血の気が多い種族が目立つことはあるが、頭が悪いわけではないし、ちゃんと理解力もある。虎の亜人族は少し考えると、使いを送った。

 

「まずは本国に指示を仰ぐ。故にしばらくは、ここで待っていてもらう」

「分かりました」

 

 とりあえず、拳銃を下ろすハジメ。すると臨戦態勢に入る、殺意を見せる亜人族も出てくる。もちろんハジメがそれを察知しないわけがなく、そちらに無言で拳銃を向けると、すぐに殺意は消えていった。

 

 それから時間にして一時間と言ったところか。ハジメや香織は、急速に近づいてくる気配を感じた。場に再び緊張が走る。

 

 霧の奥からは、数人の新たな亜人達が現れた。彼等の中央にいる初老の男が特に目を引く。流れる美しい金髪に深い知性を備える碧眼、その身は細く、吹けば飛んで行きそうな軽さを感じさせる。威厳に満ちた容貌は、幾分シワが刻まれているものの、逆にそれがアクセントとなって美しさを引き上げていた。何より特徴的なのが、その尖った長耳だ。彼は森人族、いわゆるエルフなのだろう。

 

「ふむ、お前さんが件の人間族かね? 名は何という?」

「南雲ハジメです。あなたは?」

「私は、アルフレリック・ハイピスト。フェアベルゲンの長老の座を一つ預からせてもらっている。さて、お前さんの要求は聞いているのだが……その前に聞かせてもらいたい。“解放者”とは何処で知った?」

 

 目的などではなく、解放者の単語に興味を示すアルフレリック。それに少し訝しみながらも、ハジメは返答を返す。

 

「オルクス大迷宮の奈落の底、解放者の一人、オスカー・オルクスの隠れ家です。そこを攻略し、色々と知りました」

「ふむ、奈落の底か……聞いたことがないがな……」

「一応、迷宮で手に入れたモノ等は見せることができますが、どうしますか?」

「ふむ。では見せてもらうとしよう」

 

 そういうわけで、ハジメはオルクス大迷宮で回収した魔石と、それとオルクスの指輪をアルフレリックに渡した。

 アルフレリックは、魔石等にも軽く驚いていたが、特に指輪に刻まれた紋章を見て目を見開き驚愕した。そして、気持ちを落ち付かせるようにゆっくり息を吐く。

 

「なるほど……確かに、お前さんはオスカー・オルクスの隠れ家にたどり着いたようだ。他にも色々気になるところはあるが……よかろう。取り敢えずフェアベルゲンに来るがいい。私の名で滞在を許そう。ああ、もちろんハウリアも一緒にな」

 

 アルフレリックの言葉に、周囲の亜人族達だけでなく、カム達ハウリアも驚愕の表情を浮かべた。虎の亜人を筆頭に、猛烈に抗議の声があがる。それも当然だろう。かつて、フェアベルゲンに人間族が招かれたことなど無かったのだから。

 

「彼等は、客人として扱わねばならん。その資格を持っているのでな。それが、長老の座に就いた者にのみ伝えられる掟の一つなのだ」

「そうですか。……では一つ、ここで約束してもらってもいいですか?」

「何かね?」

「最低でも、僕達が兎人族の案内で神樹にたどり着く()()。それまでは、兎人族に手を出さないでほしい」

「…………なるほど、了解した」

 

 期間を強調して、ハジメは兎人族の安全を保証するように頼むと、アルフレリックは、割とすぐに答えを出して、了承してくれた。




硯猫様  シューレム様  おれお様

評価していただき、ありがとうございます。これにて評価数が100に到達しました。正直、ここまで来るとは思いもしませんでした。皆さん、ここまで本当にありがとうございました!

シアの立ち位置、どうする?

  • 原作通りにハーレム入り。
  • 原作より少し遅れてハーレム入り。
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