(完結)二人の緋皇 ―閃の軌跡Ⅱ―   作:アルカンシェル

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予約投降を試してみました。

今回、ルーファスがあるキャラ達に血も涙もない悪魔の如き所業を行いますのでご注意ください。






15話 そして帝国へ

 

 

 

 まだ人が寝静まっている日も昇らない早朝。

 クロスベル国際空港の一角に彼らは集まっていた。

 

「本当にこれ、貰って良いんですか?」

 

 《紅の翼》程ではないが巨大な飛行艇を前にクリスはレクターに確認する。

 

「ああ、ルーファス総督が使って良いから役に立ててくれってよ」

 

 忙しくてこの場にいないルーファスに変わってレクターが説明する。

 元は翡翠色だったと聞く、黒一色の大型飛行艇。

 それは元々貴族連合に所属していたルーファスに与えられていた機甲兵運搬用の彼の専用機。

 ルーファスやオーレリアなど地位が高く、武勇に優れた者達を効果的に運用することを目的に、格納エリアを多く取った輸送スペースには最大三機の機甲兵を搭載できる。

 《ティルフィング》のように戦術殻に格納できない《テスタ=ロッサ》にはありがたい支援だとクリスは喜ぶ。

 

「操縦に関してはスウィンが一通り覚えてくれたから任せればいい。給料はルーファス持ちだから気にすんな」

 

「その分後が怖いですけどね」

 

 至れり尽くせりの支援。

 その分、後で何を要求されるのかクリスは恐ろしさを感じる。

 

「まあ手段を選んでられる余裕はないんだけど」

 

 特務支援課の公開処刑が終わった後、クリスはルーファスを交えて様々な話し合いをした。

 キーアやワイスマンによって語られたクロスベルの《碧の大樹》の中での出来事。

 零の空間というものがどんなものかは想像することしかできないが、《黒》の罠でもあったのなら《彼》の帰還は絶望的だった。

 しかし、それによってクリスは心の奥に残っていた甘さを捨てられた気がした。

 

「それでも、これは僕がやらないといけないことなんだ」

 

 《彼》はどれだけ“力”を持っていても身分的には地方の男爵の息子でしかない。

 特別であってもこの内戦の行く末を背負って行動しなければならない義務などない。

 義務があるのはそれこそ次期皇帝であるセドリックなのだ。

 

「それにしても良く許したな」

 

「キーアのことですか?」

 

 レクターの指摘に飛行艇に搭乗させるために歩いている《灰》をクリスは見る。

 

「まあ……言いたいことは色々あったんですが……」

 

「ですが?」

 

「ルーファス総督の一言で……まあ、納得はできませんでしたが呑み込めました」

 

 激昂した自分を宥めた言葉を思い出してクリスは唸る。

 

『何を怒る必要がある?

 例え次元の彼方へと飛ばされた所で彼は《超帝国人》なのだよ!

 更なる進化をして戻って来るのに彼女を責める理由などあるのかい?』

 

 そして付け加えられた一言。

 

『それとも君は《超帝国人》が彼女の様な小娘に負けたままで終わると本気で思っているのかな?』

 

 自分が一番彼の事は分かっていますと言わんばかりの態度に丸め込まれてことに気付いたのはだいぶ後だった。

 

「はあ……やっぱりまだまだだな」

 

 既にクリスが内戦に関わるためのシナリオさえ用意されており、夜逃げされたということでアルバレア家に報告が行くようになっている。

 全てがルーファスの掌の上だと、クリスは自分の力で内戦を切り拓く決意が萎えそうになる。

 

「ところでレクターさん。ルーファス総督の部下という人はまだですか?」

 

「……ああ、もう少しかかるだろう」

 

 含みのある言葉にクリスは首を傾げる。

 

「って言うか、結局姫様も一緒に行くのか」

 

「ええ、どうやらキーアのことをだいぶ気に入ってしまったようです。我が姉ながら情けない」

 

 飛空艇に乗るのはクリスとキーア。他にまずアルフィン。

 彼女もまたクロスベルに留まることを認めず、同行する決意を固めていた。

 キーアの事を気に入り、冷遇する自分を責めて来たのはきっと関係ないと思うが、彼女との距離を測りかねている今ありがたくもある。

 

「アルフィンの付き人としてエリゼさん、二人の護衛としてアルティナ」

 

 飛行艇の操縦と管理、待機要員としてスウィンとナーディア。

 エステルとヨシュアは途中までは同乗するものの、別行動でルフィナを探すことになった。

 

「ちょっと忘れてないわよね」

 

「も、もちろんだよセリーヌ」

 

 足元からの抗議にクリスは動揺を悟られないように応える。

 

「と、ところでレクターさん! ルーファス総督はあの人の専用機まで貸してくれるらしいですけど、どんな機体ですか?」

 

「それは――見た方が早いんじゃないか?」

 

 答えようとしたレクターは後ろを振り返る。

 飛行場のゲートをくぐり、足のローラーで低速で走って来る機甲兵。

 

「…………え……?」

 

 その風貌にクリスは目をこする。

 そこにいたのは《ピンク》だった。

 

「待たせたようだな」

 

 胸のハッチが開き、操縦席から現れた男もまた機甲兵に負けず劣らずの奇怪な姿をしていた。

 黒い仕立ての良い貴族然とした服装。

 立ち姿からも育ちの良さが分かり、携えているのは騎士剣。

 そこまでは良いが、注目すべきは頭。

 黒いヘルメットですっぽりと頭を覆い隠している姿はかつて対峙したテロリストを思い出す。

 

「あ、貴方がルーファス総督の部下の人ですか?」

 

「ああ、仮面についてはご容赦願えるかな殿下、いやクリス君……

 ルーファス総督程ではないが、私も貴族連合に顔が割れている身、表立って君と行動すると実家に迷惑を掛けてしまうからね」

 

「は……はぁ……」

 

 歯切れの悪い言葉を返し、クリスはルーファス専用だった機甲兵に目を向ける。

 バリアハートを想起させる翡翠のシュピーゲルと聞いていたが色も形も原型がない。

 武骨で動き辛そうな追加装甲が至る所に張り巡らされ、ピンクの塗装で彩られている。

 いくら身分を隠すためとは言え、やり過ぎではないかとクリスは頭痛を感じる。

 

「これがルーファス総督の専用機……こんなしょぼそうな機甲兵が……」

 

「しょぼそうな……神を畏れない暴言だよなぁ……」

 

「…………まさか……いや……そんな……」

 

「ん? 二人ともどうかしましたか?」

 

「いや、何でもねえよ。あの機甲兵はあれだ。こいつと同じで身分を隠すためにあり得ない塗装と追加装甲で誤魔化してんだよ」

 

「……何でもないわ。たぶん気のせいよ」

 

「不安にさせてしまってしまったようだが、安心するといい」

 

 仮面の男は機甲兵から飛び降りてクリスの前に立つ。

 

「君達の補助をルーファス総督から指示されたものだ。よろしく頼む」

 

「え、ええ……こちらこそ」

 

 求められた握手にクリスは応じて、尋ねる。

 

「名前はこの場では聞かない方が良いんですよね。では何と呼べば良いんですか?」

 

「ふむ……そうだな。では私のことは《C》とでも呼んでもらおう」

 

「《C》……」

 

 名乗ったその名にクリスは目を細める。

 

「ふふ、中々に皮肉だろう? 貴族連合の協力者と同じ名を名乗る存在が君の味方となるのは」

 

「…………どうやら貴方とルーファス総督は仲がよろしいようですね」

 

 名前一つで敵味方問わずに混乱させるようとしているやり口はルーファスらしいとさえ思えてしまう。

 

「ちっ――やっぱり俺も同行したかったぜ」

 

 そんなクリスの様子にレクターは舌打ちをして嘆く。

 

「さて、クリス君。これから帝国へ向けて出発するわけだが、最初に何処を目指すつもりかな?」

 

 挨拶を切り上げて《C》が今後の方針を確認する。

 

「そうですね……まずは行き先は――」

 

 いつ間に集まっていたこれからの仲間達にクリスは向き直り、行く先を口に――

 

「へえ……どこに行くつもりなの?」

 

 その瞬間、獣のようなプレッシャーがクリスに襲い掛かった。

 

「あ……ああ……」

 

 まるで虎に出会ったようにクリスはその身を震わせる。

 

「ねえ……シャーリィを置いて何処に行くつもりなのかな?」

 

 巨大なSウェポンを肩に担いで、ウルスラ医科大学病院に入院していたはずのシャーリィ・オルランドは笑顔で質問を重ねた。

 

「えっと……」

 

 咄嗟に言い訳を考える。

 そもそもクリスが目を覚ましたのは一昨日であり、昨日特務支援課と戦い、その翌日の早朝が今である。

 無事に意識を取り戻して元気でいるという報告を受けていたから、すっかり意識の隅に行ってしまっていた彼女を宥める方法を探してクリスは必死に思考を回す。

 そんな風にしどろもどろになるクリスを見兼ねて《C》が言葉を掛ける。

 

「あまりからかってやるな。ルーファス卿から連絡は受けていたのだろう? それで乗り遅れたのなら君の責任だ」

 

「ちぇ、もうちょっとからかわせてくれても良いのに」

 

「ル、ルーファス総督がシャーリィに連絡を……ぐぬぬ……」

 

 その事実に感謝すると同時に言いようのない敗北感をクリスは感じてしまう。

 クロスベルの統治に特務支援課への処遇。更に自分の支援。

 多忙を極める中、細部まで配慮を行き届かせるルーファスの先見の明にクリスは兄や“彼”と違った劣等感を刺激される。

 そして、そんな彼に不穏な目を向ける者が一人。

 

「ルーファスさんに嫉妬するセドリック……それに……」

 

 アルフィンは自分を忘れたことを理由に彼をいじるシャーリィに注目し、その視線を隣のエリゼに移す。

 

「姫様?」

 

「姉の立場の危機? いえ、セドリックの本命はいったい」

 

 いろんなものに姉は苦悩するのだった。

 

 

 

 

 






 大雑把に事情は共有できたということにして、とりあえず出発させました。
 要望が多ければ飛空艇内で絆イベントが発生します。
 簡単に特務支援課のことを語ると、セルゲイが全て自分の指示だったと主張して処罰を一身に引き受け、ロイド達は逮捕を免れる。
 ロイドはクロスベル軍警察に、ランディはタングラム門の警備隊、ティオはエプスタイン財団にそれぞれ引き取られる。
 エリィに関してはマリアベルの親友だったこともあり、監視も兼ねてルーファスの秘書官となる。
 クルトに関しては、ここではあえて語りません。





シュピーゲル・アサルト
元はルーファス専用の翡翠色の機甲兵。今は彼の部下と名乗る《C》が操縦者。
クリスの支援者の身バレを防ぐために大幅に改装し、全身をピンクに塗装。
さらに追加装甲を各部に取り付けて、外見はむしろヘクトルに近い。しかし――

灰のヴァリマール
「……」

緋のテスタ=ロッサ
「……」

ピンクのシュピーゲル・アサルト?
「……」

灰のヴァリマール
「…………」

緋のテスタ=ロッサ
「…………」

ピンクのシュピーゲル・アサルト?
「…………」

灰のヴァリマール(半壊中)
「もしや――」

ピンクのシュピーゲル・アサルト?
「言うな」

緋のテスタ=ロッサ(憎悪の汚染中)
「これはあまりにも……お労しや兄上……」

ピンクの■■・■■■■
「言うなっ」





クロスベル議会
ルーファス
「や、やあ、諸君。おはよう」

クロスベル議員A
「お、おはようございます。ルーファス総督……?」

クロスベル議員B
「おい、どういうことだ? 何か今日のルーファス総督が一回り小さく見えるぞ」

クロスベル議員C
「今まで完璧過ぎて近寄り難いカリスマのオーラがなくなっている?
 今の彼を見ていると何故か手助けをしたくなってしまう! この保護欲をくすぐられる佇まいはなんだ!?」

クロスベル議員D
「以前の超然とした大人の微笑みも良かったが、今は少年の様な初々しさとあどけなさを感じる微笑み……これはこれで良い!」

ルーファス?
「……………うぐぐ……胃が痛い」


 ………………
 …………
 ……

レクター
「よしっ!」

クレア
「良しじゃありません。全く貴方達は……はぁ……」

エリィ
「どうしてこんなことに……」






選択肢
 ルーレ
 ラインフォルト社の爆発事件を境に街に正体不明の辻斬りが現れ、ノルティア州の首都とは思えない程に街は閑散としていた。
 先行していたガイウスと合流したクリス達は戦闘音を追い駆けて街を駆け回り、吊るされた紫電の遊撃士を発見する。

 レグラム
 クロイツェン州に属するレグラム、アルゼイド家は先日のケルディックの暴動のこともありアルバレア公爵家への恭順を求められていた。
 父、ヴィクターがいないことでラウラは答えをはぐらかして来たが、時間稼ぎも限界が訪れる。
 武の双璧であるアルゼイド流を尊重し、同時に武を尊ぶ帝国の風潮から貴族らしく決闘を挑まれることになる。
 そして、アルバレア家の代表はユーシスだった。
 決闘の方式は未定。ただし機甲兵を含み武器は自由になるのは最低条件にするつもりです。

 セントアーク
 正規軍の部隊が各地から集まり、戦力の増強に伴い街には貴族を批難する声が大きくなっていく。
 オリヴァルトの方針でセントアークに未だに残っている貴族も高まって行く反貴族の意識に危機感を抱く。
 帝都奪還作戦が着々と進められている中、集まった兵士たちの士気を上げるための楽師団が結成され、そこで演奏をしていたのはエリオットだった。




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