(完結)二人の緋皇 ―閃の軌跡Ⅱ―   作:アルカンシェル

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30話 獣たちの狂宴

 

 

 

 その声は戦場に唐突に響き渡った。

 

「愚かな逆賊へ告ぐ。我々の手の中にはフィオナ・クレイグの身柄がある。彼女の無事を望むなら今すぐに武装を解除して投降せよ」

 

 突然の降伏勧告に思わず手を止めたのは正規軍だけではない。

 

「何をしているっ!?」

 

 眼前の“ティルフィング”の存在を忘れウォレスは機甲兵を振り向かせながら叫ぶ。

 戦車の傍らに立ち、後ろに手を縛った女に剣を突き付ける将校の姿にウォレスは目を剥く。

 

「貴様っ! 護るべき民間人に刃を向けるなど! それが軍人の――帝国男児がすることかっ!」

 

「黙れっ!」

 

 ウォレスの声に負けじと将校が怒鳴る。

 

「貴様が帝国男児を語るなっ! たかが士官学生の一人も仕留めることのできない無能が!」

 

「っ――」

 

 思わずウォレスは無能はそちらの方だと叫び返したくなるのを堪える。

 

「ふんっ! 役立たずはそこで見ていろ」

 

 黙り込んだウォレスに気を良くして将校は改めて正規軍に向けて勧告する。

 

「繰り返す、この《紅毛のクレイグ》の娘の命が惜しくば直ちに武装を解除しろっ!」

 

「っ――エ、エリオット……」

 

 喉元に刃を突き付けられ、顔を蒼褪めさせているフィオナの声が拡声器を通して戦場に響く。

 その光景に正規軍は一様に眦を吊り上げ、怒りに染まる。

 しかし、それでも理性を持って戦闘を中断する。

 

「ふん、それで――」

 

「っ――」

 

 将校がその光景に満足した瞬間、ウォレスが乗るヘクトルがティルフィングの大剣によって吹き飛ばされた。

 

「何をしているエリオット・クレイグッ!?」

 

 十字槍を犠牲にしてその一撃から身を守ったウォレスは戦闘を止めようとしないティルフィング――エリオットに怒鳴る。

 

「あれが見えないのか!? 彼女はお前の姉、命が惜しくないのか!?」

 

「何を言っているの?」

 

 通信機から聞こえて来た冷たい少年の声にウォレスは背筋を凍らせる。

 

「ここで戦闘を止めたとして、貴族連合が姉さんを無事に返してくれる保証がどこにあるの?」

 

 返す刃がヘクトルの左腕を斬り飛ばす。

 

「くっ――」

 

 ウォレスは仰け反るヘクトルの姿勢を保つために必死に操縦桿を操作する。

 その間にもエリオットの声は続く。

 

「戦いをやめて、貴方達は僕達を皆殺しにするんだろ?」

 

 たたらを踏んで転倒を免れたヘクトルの頭を大剣が貫く。

 

「父さんは貴方達が支援していたテロリストに最後まで戦った……

 そんな父さんの娘である姉さんが、卑劣な脅しに屈して自分だけ生き残りたいなんて言うはずないっ!」

 

 倒れたヘクトルを踏みつけ、ティルフィングは大剣を掲げる。

 

「ええいっ! 何が《黒旋風》だっ! 良いだろうならば――」

 

「《黒旋風》討ち取ったり! 正規軍のみんなっ! この剣に続けっ!」

 

 領邦軍の将校が戦場に響かせた声をエリオットの声に搔き消される。

 

「うおおおおおおっ! クレイグ中将の息子が覚悟を示したぞっ!」

 

「我らの英雄に続けっ!」

 

「卑劣な貴族連合を許すなっ!」

 

 一度は降伏を考えた彼らは士気を今まで以上に燃やし、突撃する。

 

「くそっ!」

 

「何やってんだあの将校はっ!」

 

「ウォレス将軍をお助けしろっ!」

 

 士気を昂らせる正規軍に対し、領邦軍の士気は逆に落ちる。

 《黒旋風》を討ち取られたこと、その原因を作った人質を使っての降伏勧告。

 それに納得できる者は決して多くはなかった。

 

「うおおおおおおおおおっ!」

 

 止まっていた戦場が再び動き出す。

 拮抗状態だった戦場は鬼気迫る正規軍の猛攻によって崩れる。

 《機甲兵》に生身のまま集団で群がり、一機、また一機と《機甲兵》はその動きを止めていく。

 

「エリオット……」

 

 その光景を見せつけられたフィオナは呆然と彼らを扇動した弟の名を呟く。

 自分の命を軽んじる言葉を聞かされたが、オーラフ・クレイグの娘としてどんなことをされても命乞いをしない覚悟はフィオナもできていた。

 もしも父が生きていたのなら、エリオットと同じ事を言っていただろう。

 それを薄情だとは感じない。

 むしろエリオットに亡き父の面影と軍人として成長したことを嬉しく思う。

 

「でもどうして……どうしてこんなに哀しいの……?」

 

 弟の成長を喜び切れないフィオナはただ呆然と戦争の光景の前に立ち尽くす。

 

「うわああああっ!」

 

「た、助けてくれ! 大人しく投降するから…………」

 

 ティルフィングの大剣によって機能を停止した《機甲兵》の中から命乞いの声が響く。

 その声と言葉の内容にエリオットは顔を不快に歪めて、追い打ちを掛ける。

 

「ぎゃあっ!」

 

「君達にそんなことを言う資格があると思っているの?」

 

「…………どうか……どうか命ばかりは……」

 

 必死の命乞いにエリオットは眉を潜める。

 

「そんなに死にたくないんだ……」

 

 ティルフィングは突き付けた大剣を下ろす。

 その様子に機甲兵のパイロットは安堵の息を吐き――

 

「だったら戦わなければ良いんだっ!」

 

 大剣に代わってティルフィングは両肩に設置されたダブルバスターキャノンを向ける。

 

「エリオットッ!?」

 

 命乞いをする相手に止めを刺そうとする光景にフィオナは悲鳴を上げる。

 

「そこまでだっ!」

 

 引き金が引かれる直前、背後からヴィクターが乗る《機甲兵》がティルフィングの肩を掴み引き倒す。

 野太い二条の光線が機甲兵から逸れて街道の横の木々を薙ぎ払う。

 

「アルゼイド子爵……邪魔をするなっ!」

 

 攻撃を逸らされ激昂したエリオットは振り返り様に大剣を薙ぐ。

 

「っ――落ち着くんだエリオット君っ! 敵は降伏している。命までを取る必要はないっ!」

 

「こいつらは父さんをテロリストを使って殺したんだっ!」

 

 諭す言葉にエリオットは声を張り上げて言い返す。

 

「こいつらが始めた戦争なのに! こいつらのせいで沢山の人が死んでいるのに! こいつらが姉さんを人質にしたのに! 何が死にたくないだ!」

 

「エリオット君……」

 

 叩きつけられる言葉の気迫にヴィクターは目を見張る。

 Ⅶ組の中でも大人しく、目立たない純朴な優しい少年が黒い瘴気を纏う程の憎悪を滾らせると誰が想像できただろうか。

 

「っ――何が《光の剣匠》だ」

 

 ヴィクターは己の二つ名と共に自分の未熟さを恥じる。

 彼が危険だという兆候は気付いていた。

 あえて彼を戦場に立たせたのは、彼の希望と正規軍の期待を背負わせ亡き父の責任を想像させることで彼の理性を繋ぎ止める腹積もりだったのだが、その思惑は裏目に出てしまった。

 父を殺されたこと。

 姉を人質にされたこと。

 軍人として、亡き父を想像し毅然として態度で姉を切り捨てる判断をしてしまったこと。

 そして好き放題していた敵が恥を忍ばずに命乞いをしたこと。

 それらが絡み合った結果、エリオットは憎しみが爆発した。

 

「聞けっ! エリオット・クレイグッ!」

 

 同じ帝国貴族として恥を感じながら、それでもとヴィクターはエリオットに呼び掛ける。

 

「憎しみで剣を振るうなっ! そんなことをすれば《修羅》に堕ちて戻れなくなるぞっ!」

 

「でもっ! あいつらはっ!」

 

 まだ聞く耳があるエリオットにヴィクターはまだ間に合うと言葉を重ね――

 

「きゃあっ!」

 

 その悲鳴が戦場に響いた。

 

「姉さんっ!?」

 

 振り返れば人質にされたフィオナがシュピーゲルに乱暴に掴まれ持ち上げられる所だった。

 

「ええい、この場は撤退だっ! この場を放棄する!」

 

 フィオナを掴んだシュピーゲルは、先程の将校の声で叫ぶ。

 

「各自、散開してドレックノール要塞に帰還せよっ!」

 

 そう言うと一目散にシュピーゲルは街道から東の森へと逃げ込んだ。

 

「フィオナッ!」

 

 その背中をその場にいる誰よりも早く一機の――正規軍側の《機甲兵》が追い駆けて森に入る。

 

「な……」

 

 ヴィクターはあまりのことに言葉を失ってしまう。

 

「くっ……撤退! 撤退だっ!」

 

 そして数秒遅れて我先に逃げ出した将校に代わって誰かが叫ぶと領邦軍は蜘蛛の子を散らすように

 

 

「ふ……ふざけるなっ!」

 

 そして今度こそ完全にエリオットの最後の一線が崩壊し、彼の纏う黒い気が伝播するように正規軍達に広がる。

 

「逃げるな卑怯者っ!」

 

「貴様らっ! どこまで恥知らずなのだっ!」

 

「エリオットの姉君を救い出せっ!」

 

 それは煉獄のような風景だった。

 飛び交う怒号。

 統率もなく撤退を始めた貴族連合軍は我先にと仲間を押し退けるように鬼のような形相の正規軍に背を向ける。

 

「鎮まれっ! 鎮まれっ!」

 

 ヴィクターの声はその煉獄の喧騒に空しく掻き消される。

 

「鎮まれっ! 皆の者!」

 

「ヴィクター・S・アルゼイド」

 

 誰も耳を貸さない中、背後から自分を呼ぶ声にヴィクターは一人でも己の声が届いたことに安堵して振り返り――

 

「言ったよね? 邪魔をしないでって」

 

 振り返った《機甲兵》の画面に映るのは光を湛えたダブルバスターキャノンの二つの砲門の輝き。

 最後の一線が切られ、箍が外れたエリオットは目の前の邪魔者を排除するために――引き金を引いた。

 

 

 

 

 

「何だ……これは……?」

 

 そこに辿り着いたマキアスは言葉を失ってしまう。

 破壊された街道。

 機甲兵や戦車の残骸。

 貴族連合軍と帝国正規軍のそれぞれの兵が入り混じり無造作に倒れて血の海を作り出している惨状。

 それだけならまだ耐えられた。

 

「何なんだこれはっ!?」

 

 堪らず叫ぶ。

 そうしなければ吐いてしまう程に凄惨な光景がそこにはあった。

 それは一方的な虐殺だった。

 戦う力を奪われ、降伏して白旗を上げる貴族連合を正規軍は一方的に嬲り殺しにしていく。

 悲鳴を上げ、命乞いをしてもそれを嘲笑い踏みつけているのが正規軍だと言う事にマキアスは目を疑ってしまう。

 

「何で……こんなことに……」

 

 戦争なのだから人が死ぬ。

 その光景を見る覚悟はできていた。これが貴族側の虐殺だったならやはり貴族は最低だと納得して憤ることができた。

 だがそこにあった光景はマキアスにとって同胞とも言える平民、革新派側の兵士による虐殺だった。

 

「何で……何で……」

 

 狭い《機甲兵》の操縦席でマキアスは何故と繰り返す。

 Ⅶ組として貴族も平民も人であることは変わらないと学んだ。

 だが、学んだだけだったのだと思い知らされる。

 同胞の獣じみた咆哮の数々にマキアスは人の本質がそれなのだと突き付けられる。

 

「むぅ……呪いとはこれ程のものだったとは」

 

「あ……」

 

 聞こえて来た言葉にマキアスは一欠けらの希望を見つけたと言わんばかりに顔を上げる。

 《機甲兵》の外、肩に仁王立ちするレオマスクもまたマキアスと同じように煉獄のような光景に覆面の下の顔をしかめていた。

 

「そ、そうだ……“呪い”だ……全部“呪い”のせいなんだ……」

 

「いや……“呪い”の後押しがあったとしてもこの光景は彼らの憎悪が作り出したものだ」

 

 マキアスの現実逃避の言葉をレオマスクは否定する。

 

「長年に渡る貴族への不満の爆発……

 この場が異界化する程にここには負の想念が満ちている」

 

「……確かに計器では上位三属性の力が強まっていますけど……」

 

「マキアス君、君はそこから出て来るな。出れば君もこの瘴気に中てられて正気を失うだろう」

 

「っ――それなら貴方は?」

 

 ドラッケンの頭を動かし、肩に乗るレオマスクをマキアスは見る。

 

「私は平気だ。なんと言っても鍛えているからな」

 

 ははは、と自信満々に笑うレオマスクにマキアスは場違いながら深い安堵を感じてしまう。

 もしも一人でこの場にいたら、《機甲兵》に乗っていても果たして正気を保てていたかマキアスは自身を持てなかった。

 

「それよりも二番コンテナのミサイルを上空に撃ってくれ」

 

「ミ、ミサイル!?」

 

 突然の物騒な指示にマキアスは驚く。

 

「安心するが良い。ミサイルの中身はこんなこともあろうかと用意された暴徒鎮圧用の催眠誘導弾だ……

 まだ《黄昏》が本格化していない今なら、彼らの“呪い”は意識を奪えばそこで途切れる」

 

「そ、それなら……」

 

 マキアスは言われた通り《機甲兵》を操作してミサイルを上空に撃つ。

 空高くで炸裂したミサイルは雨を降らせ、大地に降り注いだ液体は瞬く間に気化して辺り一帯に白い煙で包む。

 撃ち上げられたミサイルに見向きもせず貴族連合を嬲っていた正規軍も必死な命乞いをしていた貴族連合も等しく、眠りにいざなわれて獣の喧騒が鎮まりマキアスは安堵のため息を吐く。

 

「これでこの戦争も終わるのか?」

 

「いや、これはこの場の対処療法でしかない……

 この戦いにおける“呪い”の発生源は他にいる。その者を止めなければ再び彼らは“呪い”に呑み込まれるだろう」

 

「まるで病原菌だな……」

 

 人から人へ感染するような扱いにマキアスは言い得て妙だが納得する。

 

「時に少年、君もまた一度“呪い”に吞まれたことがあったらしいな?

 君はいったいどうやって正気に戻った?」

 

「僕の場合は……女神のようなシスターに出会って道を示してもらったんです」

 

「それだけか?」

 

「え……?」

 

 ドラッケンの目を通してレオマスクはマキアスの目を覗き込む。

 

「本当に君を“呪い”から救ってくれたのはそのシスターだったのか?」

 

「…………え、ええ……いや……」

 

 マキアスは首肯して、首を横に振って記憶を反芻する。

 

「僕はシスター・リースに救われて――いや違う。彼女に懺悔を聞いてもらったけど……僕は……僕は……そうだ■■■に……」

 

 ノイズが走った思考にマキアスは眉を顰める。

 

「■■■って誰だ?

 ■■■……■■■……■■■・オズボーン……そうだ!

 僕はオズボーン宰相に助けてもらったんだ!」

 

 思い出した記憶にマキアスは耳障りなノイズが消えたような晴れやかな気持ちになる。

 

「…………本当にそうなのかね?」

 

「ええ、僕が自分の中の“呪い”を払ってくれたのはオズボーン宰相です。オズボーン宰相のおかげで僕はⅦ組に居続けられたんです」

 

 先程まで記憶を絞り出そうとしていた苦悩がなかったかのようにマキアスは軽い調子で、深い感謝を思い出し――

 

「そうだ……全部オズボーン宰相のおかげなのに……貴族がまた奪った……」

 

「もう良いっ!」

 

「はっ――」

 

 レオマスクの一喝で暗い思考に堕ちかけたマキアスは我に返る。

 

「あれ……僕は何を……?」

 

「何を呆けている? 初めての戦場で怖気づいたか?」

 

「そ、そんなわけないっ!」

 

 困惑するマキアスを嘲笑うレオマスクの声にマキアスは精一杯の強がりを返す。

 

「それなら結構……本当の鉄火場はこの先なのだからな」

 

「え……?」

 

 レオマスクの物言いにマキアスは首を傾げ、遠くから鳴り響いた砲撃の音が大気を震わせた。

 

「な、何だっ!」

 

「森だっ! どうやら主戦場は森の中に移っていたようだ」

 

 レオマスクは木々が薙ぎ倒されて横道を指して叫ぶ。

 そしてそれを示すように森の向こうでまた砲音が響き、黒煙が立ち昇る。

 

「この音……もしかしてティルフィングのダブルバスターキャノン?」

 

 聞こえて来る砲撃の音に聞き覚えがあったマキアスはこの先でエリオットが戦っているのだと察する。

 

「怖いか少年?」

 

「ぐっ……」

 

 不意のレオマスクの指摘にマキアスは思わず怯む。

 ここの最前線だが大勢が決した終わった戦場に過ぎない。

 この先には戦場を狂わせた“呪い”の感染源がいる。

 直前に見た煉獄のような光景以上のものが待ち構えているのだと思うと、腰が引ける。

 

「この先で戦っているのは僕のクラスメイトなんです」

 

「ふむ…………」

 

 マキアスの突然の独白にレオマスクは静かに頷く。

 

「エリオットはⅦ組の中で一番優しくて、戦うよりも音楽が好きな奴で……

 本当ならティルフィングに乗って、矢面に立って戦うような人じゃないんだ」

 

「…………もしかすれば、そのエリオットが“呪い”に侵されているかもしれないのだぞ?」

 

「それなら、尚更行かないと……」

 

 あの時、どん底に堕ちた自分を救い上げてくれたシスターのように。

 あの時、“呪い”によって暴走する自分を止めてくれたオズボーン宰相のように。

 

「今度は僕が救う番なんだ!」

 

 マキアスは決意を叫び、左半身が熱線で抉られ黒焦げになって倒れた《機甲兵》を跳び越えて、木々が薙ぎ倒されてできた森の道に踏み込んだ。

 

「くっ……良い友達を持ったなエリオット」

 

 何故か感激しているレオマスクの声はマキアスの耳に届くことはなかった。

 

 

 

 

 








 ユミルが閃Ⅱで最大の山場で、その後は大人しめの話にするつもりだったのに何故かユミルに匹敵しそうな修羅場になっていた……

 初期プロットだと一進一退のサザーランド州の攻防戦のおりに、セントアークでエリオットと合流。
 英雄として扱われているエリオットは出撃時以外では避難民に音楽を奏でていた。
 しかしその音楽は人の戦意を煽るものであり、エリオット自身も戦う事に積極的になっていた。
 そんなものはエリオットの音楽ではないということから口論になり、ならばとオリヴァルトの一声で音楽対決が始まるのだった。

 と言うのが初期プロットだったのに気付けば黒エリオットが降臨してしまいました。
 いや、閃Ⅳで音楽で呪いを浄化するなら、これくらいのことを乗り越えて欲しいと思ってはいたんですけどね。




 ハイアームズ家についての考察
 この家は閃Ⅱでは内戦が始まった段階で民間人の保護に徹していたため、戦後処理の処罰を最小限にして免れていました。
 自分はこれまで貴族連合、革新派、どちらが勝っても良いような立ち回りをしてずる賢く立ち回ったという印象がありました。
 ですが、考察を深めたらハイアームズ家は違う見方が出て来たので、この場を借りてまとめさせていただきます。

 まず最初に百日戦役の戦後処理を行ったオズボーンはハーメルの悲劇と言うハイアームズ家にとって致命的な弱点を握られることになります。
 これがあるため、ハイアームズは四大名門でありながらオズボーンに強く意見をすることはできなくなります。

 またハーメルの秘密がいつ漏れるか分からない不安があり、万が一を考えそれまでの典型的な貴族の態度を改めることにします。
 平民を使う貴族から、平民を支える貴族という体制への切り替え、後に四大名門の良心、人格者と呼ばれるようになるのはこれが原因です。

 オズボーンに強く意見を言えないこと、平民に優しくするハイアームズは、他の四大名門から軽んじられ、下位の貴族はその空気を察してハイアームズ家を落ち目と見下し始めた。

 ハイアームズ家の当主はそう言った誹謗中傷を甘んじて受け止め、平民に寄り添う貴族のスタンスを貫いた。
 そう言った背景から、貴族史上主義を改めて十年の時を経て、振る舞いは板につき、当主自身も古い貴族制度と現代の発展した文化の折り合いを受け入れ、オズボーンの急激な変革の全てではないものの、変革自体には前向きに捉えていた。


 内戦においては、四大名門としては発言力はほぼなく冷遇され、下位の貴族はここで功績を上げてハイアームズ家を押し退けて新たな四大名門になろうと画策する者もおり、四大名門でありながら貴族連合の中では孤立していた。
 四大名門であることから貴族連合から離反することは許されず、民間人の保護を優先して戦火を抑えることに徹したのはハイアームズ家なりの抵抗だったのかもしれません。


 またパトリックの兄二人はハーメルの悲劇の事についての情報共有をして、平民に優しい貴族というスタンスに納得して振る舞いを改める。
 しかし、当時まだ幼かったパトリックにはハーメルの悲劇のことを知らされなかった。
 これによりパトリックの視点では父がオズボーンの下手に出て、平民にへりくだり、貴族社会では他の貴族から落ち目と見下されている背中を見て育ってしまう。
 彼の貴族然としようとする在り方は父や兄への反発であり、自分が落ち目のハイアームズを救ってやるという気持ちが逸ったしまったものである。


 ちなみに侯爵家でありながら、閃Ⅰで男爵家の主人公に自分から声を掛けたのは、社交界で冷遇されているシュバルツァー家に少しだけ共感を持ち、純粋に仲良くなりたいと思ったからであったからかもしれません。
 が、パトリック自身にその自覚は薄く、パトリックが想像する貴族然とした態度で接してしまったため原作のような空回りをする羽目になってしまったのではないでしょうか。


 閃Ⅱにおいてトールズに引き籠っていながらも、考えを改められたのは自分が考える理想の貴族の姿と現実の貴族の姿の乖離が激しかったから。
 父からハーメルの悲劇の事を伏せられたまま、ハイアームズ家の事情をある程度説明され現状に悩み抜いて、彼なりの折り合いを見つけた結果なのかもしれません。



 以上がハイアームズ家のバックボーンをパトリックの在り方を踏まえて想像してみた結果になります。
 閃や内戦だけで見るとオズボーンと対等にやり合える狡猾な人という印象でしたが、ハーメルの悲劇のことを踏まえて考えるとオズボーンと貴族連合の板挟みを喰らったかなりの苦労人という印象に変わりました。
 これが正解だとは言い切ることはしませんが、人格者と呼ばれるという意味では納得できる理由を付けられたと考えております。



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