(完結)二人の緋皇 ―閃の軌跡Ⅱ―   作:アルカンシェル

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大変遅くなって申し訳ありません。
モチベーションか、それとも別の何かなのか、とにかく書くことは決まっているのに指が動かないという感じなかなか書けませんでした。

次回の更新がいつになるか分かりませんので、気長に待っていてください。





48話 秘密基地

 

 

 

 リベール王国にとって、エレボニア帝国の内戦は決して対岸の火事として他人事で済ませれるものではなかった。

 十二年前に起きた《百日戦役》で交わした密約のこともあり、果たして内戦の勝者が再びリベールに侵攻してこないと言う保障はない。

 出来る事ならリベールに友好的なオリヴァルト皇子に勝ってもらいたいのだが、情勢は彼に不利だという状況だった。

 《機神》という存在はあるものの、その数は《機甲兵》と比べて圧倒的に少なく、《蒼の騎神》と戦えるのかどうかについても未知数。

 正しい方が勝つ。などというのは物語の中の話に過ぎない。

 とは言え、他国でしかないリベールは表立ってオリヴァルトを支援することはできず、せいぜい戦争によって住む場所を失った難民の避難を受け入れる程度のことしかできないのが現状だった。

 表向きは――

 

「あははっ! リーシャとは一度こうして戦ってみたかったんだよねっ!」

 

 カレイジャスが駐留している格納庫の前の広場でシャーリィは《テスタ=ロッサ》を振り回しながら歓声を上げる。

 

「私は別に貴女の事なんてどうでも良いんですけど……」

 

「そんなこと言わないでよ……クロスベルですれ違った時は何か違うと思ったけど、今のリーシャは凄く良いよ」

 

「…………と言うか、名前を連呼するのはやめてくれませんか?」

 

 今の自分の何がシャーリィの琴線に触れたか考えず、リーシャはチェーンソーが起動していない“テスタ・ロッサ”を斬馬刀で受け止めながら彼女の言動を咎める。

 イリアの退院を見届けて、“彼”への借りを少しでも返すためにクリスに協力することを決めた《銀》――リーシャは隠していた名前を連呼するシャーリィにため息を吐く。

 おかげで《銀》であることを隠すことは出来ず、素顔を晒すことになってしまった。

 

「ええぇ……あんな大胆な体晒しておいてそんなこと言われても、あの体を見れば誰だってリーシャが《銀》だって気付くでしょ?」

 

「そんなの貴女かイリアさんくらいです」

 

「そうかな? うちの先輩だとできそうなんだけどなぁ」

 

「……それよりどうして私は貴女と手合わせをしなければいけないんですか?」

 

 視界の向こうでは《剣帝》が少年と少女を鍛えると名目で剣を交えているが、リーシャは突然シャーリィに襲われた。

 

「それはほら、一応クリスの味方をするならリーシャの実力の確認をしないといけないでしょっ――!」

 

 役得だと言いながら、シャーリィは鍔迫り合いから刃を外し、右足を軸にその場で独楽のように回る勢いに任せて“テスタ・ロッサ”を振り抜いた。

 

「っ!?」

 

 思わぬ衝撃にリーシャは目を見張りながらも後ろに跳んで、剣戟を受け止める。

 

「リベールの頃から随分と腕を上げたみたいですね」

 

「あの時は“テスタ・ロッサ”はなかったけど。今ならリーシャに勝てるかもしれないよ」

 

「そんな挑発には乗りませんよ」

 

 これはあくまでも手合わせの範囲だとリーシャはシャーリィの挑発を受け流す。

 そんなリーシャにシャーリィは唇を尖らせて、何かを思い出したように口の端を吊り上げた。

 

「リーシャはさ。どうして《痩せ狼》がアルカンシェルを襲ったのか知ってる?」

 

「それは私がいたから……」

 

「うん、そうだけど……どうして《痩せ狼》がアルカンシェルに《銀》がいると知っていたと思う?」

 

「それは……まさか……」

 

「うん、シャーリィがリーシャ・マオが《銀》だって《瘦せ狼》にばらしたんだよね」

 

「っ!」

 

「帝国政府の依頼を受けたシャーリィにはもういらない情報だから――おっと」

 

 これまで受けてばかりだったリーシャの殺気が乗った横薙ぎをシャーリィは後ろに跳んで避ける。

 

「…………あの事件は私の“業”が呼び込んだもの。貴女を責める資格は私にはありません」

 

「それにしては今の一撃は殺気がこもってなかった?」

 

「あの程度の一撃に反応できないのなら、ここで貴女は退くべきではないですか? ええ、クリス君のサポートは私がして上げますから」

 

「あははっ! 面白いこと言うねリーシャはっ!」

 

 “テスタ・ロッサ”を振り被りシャーリィは一閃する。

 激しい剣戟の音を響かせながら二人は己の刃を殺意を込めて振る。

 

「二人とも、程々にしてくださいね」

 

 余人が入り込む隙がない手合わせをする二人にクリスは離れた場所から忠告を飛ばす。

 

「分かってるって!」

 

「問題ありません」

 

 普通に二人は剣を振りながらクリスに返事をする。

 傍目には殺意しかない手合わせだが、シャーリィは“テスタ・ロッサ”を剣以外の機能を使わず、リーシャも暗器を使う様子はない事から大丈夫なのだろうとクリスは判断してその場を離れた。

 

「そちらはどうですか?」

 

 シャーリィとリーシャから離れてクリスはレーヴェ――ロランスに声を掛ける。

 

「見ての通りだ」

 

 素気ない言葉を返すロランスは顎でその光景を指す。

 そこにはヴィータ――ミスティと対峙するスウィンとナーディアがいた。

 

「ああっ! くそっ! 重力場なんてどうやったら斬れるんだよ!?」

 

「すーちゃん、そのまま抑えてっ! ああ、もう! この導力魔法、制御難し過ぎっ!」

 

 魔術で重力場を再現したミスティを仮想敵にしてスウィンとナーディアが四苦八苦している。

 

「とりあえず、スウィンに上げた“魔剣”の調子は悪くなさそうかな?」

 

 重力場の中でも普段通り動けているスウィンを見てクリスは己が作った“レガリアの魔剣”が砕けていないことに安堵する。

 

「騎神に由来する異能だったか?」

 

「ええ、《テスタ=ロッサ》の“千の武具”で“照臨のレガリア”の特性を含ませて造り出した“魔剣”です……

 僕の霊力ではなく、セピスを錬成して造っているから消えたりはしないんですが……

 スウィンッ! アーティファクトを使うコツはできると信じることだよ!」

 

「そんなこと言われても――っ!」

 

 右手に“レガリアの剣”と左手に“風剣リヴァルト”を持ち、懸命に振っているが二つの魔剣はクリスが扱うような剣魔法には至っていない。

 重力場への干渉もそうだが、風はそよ風程度。

 これならば導力魔法を使った方が良いくらいだろう。

 

「アーティファクトの力を引き出すのはまだ時間が掛かりそうですね」

 

「だがないよりはマシだろう」

 

「そうですよね……」

 

 “照臨のレガリア”の力をその身で受けてみて感じたのは、何の準備もなしに挑めば例え《達人級》の猛者だったとしても対抗できないだろう。

 

「貴方が“エンペラー”の相手を引き受けてくれるなら、こんなことしなくても良いと思うんですけど」

 

「これは奴等の因縁だ。援護はしても良いが、俺の出る幕ではない」

 

 クリスの指摘にロランスは拒絶を返す。

 ミスティ達と共にこちらの陣営に来てくれたロランスだが、彼自身は積極的に介入しようという意志はないように見えた。

 

「何か言いたそうだな?」

 

「……いえ……」

 

 ロランスの指摘にクリスは首を横に振る。

 正直に言えば、もっと早く。それこそユミルの時に彼らがいてくれたらと思わずにはいられない。

 

「いや……貴方達はこれまで何をしていたんですか?」

 

 胸の内の疑問を誤魔化すようにクリスは尋ねる。

 

「ミスティとは別行動をしていたが、俺はラマ―ル州の暴動を鎮圧していた」

 

「ラマール州の暴動?」

 

 ロランスから出て来た言葉にクリスは首を傾げる。

 

「貴族連合に雇われていた猟兵が戦火を意図的に広げて辺境のアルスターで略奪を働こうとしていたの潰したり、ラクウェルで不良グループが機甲兵を盗み出した騒動を鎮圧していた」

 

「それは……」

 

 その説明だけでも、帝国の西側でもかなりの事件が起きていたのだとクリスは察する。

 本来なら自分達が目端を利かせて対処していなければいけない事件だと考えれば、このタイミングで彼らが自分達と合流してくれたのも責める資格はないだろう。

 

「どれだけの犠牲者が出たんですか?」

 

「それを知ってどうする?」

 

 何かを試すような眼差しを向けて来るロランスにクリスは思わず息を呑む。

 ロランスはクリスの正体を知っている。

 ここで何を言っても白々しい言い訳になってしまうのではないかと考えてしまう。

 

「僕は……」

 

「あまり坊やをいじめちゃダメよ、ロランス」

 

 クリスが言葉を絞り出そうとしたところでミスティが二人の会話に割って入った。

 ロランスはミスティとクリスを交互に一瞥すると、肩を竦めてへたり込むスウィン達に向かって歩き出す。

 

「さあ、立て」

 

「ちょ、ちょっと待って……」

 

「あーもーなーちゃんは限界……」

 

 息も絶え絶えなスウィンとナーディアの抗議は無視されて、《剣帝》による稽古が始まった。

 

「………………はぁ……」

 

 ロランスから向けられていた威圧感がなくなりクリスはいつの間にか溜めていた息を大きく吐き出した。

 

「ごめんなさいね。彼、帝国人だけど皇族とかにはあまり良い感情を持っていないから」

 

「……何となくそう感じていました……」

 

 以前は“彼”を挟んで少しだけ会話したくらいだったから分からなかったが、ロランスが自分に良くない感情を向けていることはクリスも理解できた。

 流石に詳しい事まで察することなどできないが、それでも今協力してくれることに感謝する。

 

「ところでヴィ――いや、ミスティさん。貴方達は“あの人”のことを覚えているんですよね?」

 

 クリスは周りに人がいないことを確認して、改めてミスティに尋ねる。

 

「ええ、私とロランス。それから《銀》は“超帝国人”の事を覚えているわよ」

 

「それは一体どうして? エマやセリーヌだって覚えていなかったのに?」

 

「私もそれについては調べるために一度国外に出ていたんだけど」

 

 そう前置きをしてミスティは続ける。

 

「一番強く忘却の因果が働いていたのは帝国人……

 カルバードやリベールでも一部の例外を除いて“彼”のことは覚えていなかったわ」

 

「一部の例外……」

 

 それが《銀》なのかと考えつつ、クリスは首を傾げる。

 

「それならどうして貴方達はあの人のことを覚えているんですか?」

 

「ふふ、“ティルフィング”に彼の《力》を分割した時があったでしょ?

 あの時にちょっとだけ“雲”の力をこっちのペンダントに入れさせてもらっていたのよ」

 

 そう言ってミスティが首から下げた古びたペンダントをクリスに見せる。

 “ティルフィング”の中にある“核”と比べれば遥かに小さいクォーツの結晶。

 “力”そのものに影響があるとは思えないが、掠め取ったのかとクリスはミスティを睨む。

 

「ミスティさん」

 

「ふふ……大丈夫よ。ルフィナも“彼”も気付いていて見逃してくれていたし、そもそもこのペンダントは私にとっても意外な副産物なのだから」

 

「良く分かりませんが、“あの人”が納得しているなら僕が言う事はありません」

 

 懐かしむようにペンダントを眺めるミスティにクリスはそれ以上の追求をやめておく。

 

「貴女が覚えている理由は分かりました……それで国外まで出て、何が分かったんですか?」

 

 クリスの問いにミスティは顔をしかめて明後日の方を向いた。

 その様子にクリスはいろいろ察してう。

 

「何も分かっていないんですね」

 

「そんなことないわよ……

 改変規模がゼムリア大陸全土。それから《銀》が何故因果に囚われていなかったのか解明できれば、“彼”を呼び戻す糸口になるはずよ」

 

「ふむ、やはり因果の忘却はゼムリア大陸全土に広がっていたようだね」

 

 ミスティの言葉に答えたのはクリスではなかった。

 

「ワイスマン……」

 

 いつものように何処からともなく現れたワイスマンにクリスは振り返り、ミスティは嫌そうに顔をしかめる。

 

「そうなると私の推論が正しいと考えてよさそうだね」

 

 顎に手を当てて考え込むワイスマンにクリスは聞き返す。

 

「推論?」

 

「あら? いきなり湧いて来て何を言い出すのかしら《教授》?」

 

「ふふ、そう邪険にしないでくれたまえ。同じ使徒であった誼、何より共に《黄昏》に挑む同士ではないか」

 

「誰がっ!」

 

 馴れ馴れしいワイスマンを拒絶するようにミスティはワイスマンを睨む。

 

「えっと……それで一体何が分かったんですか?」

 

 一方的とは言え、険悪になりそうな空気にクリスは口を挟む。

 

「忘却の因果がゼムリア大陸全土に広がっていると言うことは、《黒》の影響力、支配下がそこまで広がっていると言っても過言ではないだろう」

 

「まさか教授、貴方は《黄昏》が帝国だけでは治まらないと言うの?」

 

 何を想像したのか、嫌悪を忘れてミスティはワイスマンに聞き返す。

 

「帝国側だけを“呪い”で駆り立てるより、全ての人類を巻き込んだ“闘争”を引き起こす……

 《零》の力を取り込んだ存在であることを考えれば決して不可能ではないだろう」

 

「それは……二年後の《黄昏》では世界で今の内戦のような事が起きると言うんですか?」

 

 《黄昏》については“彼”から触り程度には聞いていた。

 これまでは目先の内戦ばかりに気を取られて考えている余裕がなかったが、クリスはそれを思い出して顔をしかめる。

 

「ふ……とは言え、これはあくまでも《黄昏》に向けての話。君は目先の内戦について集中すると良い」

 

「…………ええ、そうさせてもらいます」

 

 考えなければいけないことは多いが、それもまずはこの内戦を乗り越えてからだとクリスは割り切る。

 

「はあ……気は進まないけど、《黄昏》について話を聞かせてもらえるかしら教授?」

 

 ため息を吐いてミスティもまたワイスマンへの拒絶感を呑み込んで提案する。

 

「ああ、もちろん構わないよ。《焔》の眷属の意見と考察は私も大変興味深い」

 

 ミスティの提案をワイスマンは笑顔で受け入れる。

 目先の内戦に集中するべきだと割り切ったばかりだが、二人の意見交換にクリスは興味を覚える。

 

「セドリック殿下……あ……」

 

 しかしその誘惑を断ち切るようにギデオンがその場に現れる。

 

「何ですか?」

 

 ミスティを見て固まるギデオンに向き直り、クリスは要件を尋ねる。

 

「あ……いえ……その……《C》が殿下を呼んで来てほしいと……」

 

「分かりました」

 

 ギデオンの伝言に頷きながら、彼の顔を見てクリスはミスティに振り返る。

 

「ミスティさん。貴方はこちら側についてクロウやイソラさんをどうするつもりなんですか?」

 

 クリスの問いに、ワイスマンと意見交換を始めようとしていたミスティは口を噤み、ギデオンも突然出て来たクロウの名前に息を呑む。

 

「貴女が二人をどうしたいのか、そこだけははっきりと教えてくれませんか?」

 

 ミスティやロランスが頼もしい戦力であることは疑わない。

 しかし、ミスティ――ヴィータは《蒼の導き手》であったことも変えようのない事実。

 ギデオンもそうだが、彼女たちが土壇場で裏切られることは避けたい。

 

「そうね……

 クロウに関してはもう成り行きに任せるしかないと思うけど、もしもクリス君がまだクロウを助けたいと思うならこれを使うと良いわ」

 

 そう言ってミスティは先程見せた物とは違う真新しい蒼のペンダントをクリスに差し出した。

 

「これは?」

 

「今のクロウが“呪い”に背中を押されて暴走しているなら可能性はあるわ……

 もっとも正気に戻ったとしても、クロウにとっては良い事なのかは分からないけど」

 

「こんなもので“呪い”の衝動が本当に抑えられるんですか?」

 

 見た目はただのペンダント。

 いくらミスティが“魔女”だからと言って、クロウ達に切り捨てられた者の魔道具にどれ程の効果があるのかクリスは疑う。

 

「それは私が昔、《超帝国人》の“鬼の力”を封じるために造ったペンダントと同じものよ」

 

「…………“鬼の力”を……」

 

 ミスティの言葉にクリスは目を伏せて考え込んで、愛読書の内容を思い出す。

 

「ボースの時の! 姉弟子に救ってもらった時に出て来たペンダントのことですか!?」

 

 思わぬ食いつきにミスティは首を傾げて、一度ワイスマンを振り返る。

 

「ええ、そうよ……《福音計画》の影で人知れず“超帝国人”を守り何度も窮地を救って来たのは私よ……

 そしてそれが意味することは、彼が《超帝国人》になれたのは私のおかげと言っても過言ではないでしょうね」

 

「待ちたまえ、魔女殿」

 

「あら、何かしら教授?」

 

「《超帝国人》を育てたのは私なのだがね」

 

「貴方がしていたのは“彼”をいじめていただけでしょ? それを育てたなんて言うのはちょっと図々しいんじゃないかしら?」

 

「ふ……私が与えたのは試練であり、決して彼に強制などしたことはないのだが?」

 

 ふふふとミスティが笑い、はははとワイスマンが笑い、二人は視線で火花を散らせる。

 

「えっと……」

 

 突然始まった“使徒”の対立にクリスは戸惑う。

 

「あの……殿下、先程の……」

 

「ああ、そうだね。《C》の所に行かないと」

 

 ギデオンの言葉にクリスはこれ幸いとその場を後にするのだった。

 

 

 

 

 カレイジャスの甲板に出たクリスは目当ての人物を見つけ、その向こうに膝を着いている《騎神》に目を向けた。

 

「エル=プラドー……本当だったんだ」

 

 ヘクトルの装甲を剥かれ、内部のフレームまで桃色に塗装されていた《騎神》は度重なる戦闘によって所々剥げて下地の金色が見え隠れしている。

 別に疑っていたわけではないのだが、改めて《金の騎神》だったことを実感する。

 

「じゃあ、そういう感じにして良いのね?」

 

「ええ、よろしくお願いします。エリカ博士」

 

 エリカ・ラッセルと話をしていた《C》はクリスに気付いて振り返る。

 

「それでは後はよろしくお願いします」

 

「ええ、任せておきなさい」

 

 意気揚々と去って行くエリカの背中を見送り、クリスは《C》に尋ねる。

 

「エリカ先生に何を頼んでいたんですか?」

 

「エル=プラドーに着せる装甲の件でね」

 

「着せる装甲って……」

 

 微妙な言い回しにクリスは苦笑いを浮かべるが理解はできる。

 “テスタ=ロッサ”と“ヴァリマール”と違い、これまでの“エル=プラドー”はヘクトルの装甲を改修して纏っていた。

 霊力を供給すれば修復できる《騎神》の装甲とは違い、同じ事をしても“エル=プラドー”にはヘクトルの装甲を直すことはできず、かと言って一から自分の装甲を錬成するのは修復するよりも霊力と時間が掛かるようだった。

 

「どうするつもりなんですか?」

 

「五体目の“ティルフィング”の装甲を借り受けることになった」

 

「…………色はどうするつもりですか?」

 

「ん? それはエリカ博士に任せていますが?」

 

「そうですか……それより何か用ですか?」

 

 深く追求することはせず、クリスは本題に入る。

 

「ええ、こちらの帝国各地に配置していた密偵から集めた情報をまとめたので、出発前に目を通していただきたい」

 

 そう言って《C》がクリスに渡したのは辞書のような厚さの報告書の束だった。

 

「これを……明日までに?」

 

 後は戦うだけのだと思っていた所に差し出された報告書の束にクリスは慄く。

 

「それでも厳選したものです。取り分け把握しておいてもらいたいことは昨日にあったノルティア州領邦軍と第三機甲師団との抗争の結末です」

 

「それは確かに重要ですね」

 

 言われるがままクリスは報告書を捲り、顔をしかめた。

 

「アイゼンガルド連峰の一角が両陣営の部隊ごと消滅? これってまさか!?」

 

「ええ、現場から唯一生き延びたアリサ君の証言を照らし合わせれば、ガレリア要塞を消滅させた力場と同じものによるものでしょう……

 これについてキーア君が先程カシウス准将に呼び出されてエリゼ君とアルティナ君の両名に付き添われて出頭しています」

 

「キーアが……」

 

 見掛けないと思っていたキーアがそんなことになっていたとは思わなかった。

 

「でもどうしてキーアが呼び出されたんですか?」

 

「それは特務支援課が公開した《零の至宝》が操る《神機》についてのレポートが原因になります」

 

 曰く、ガレリア要塞を消滅させ、帝国軍と共和国軍を撃退したクロスベルの《神機》は《零の至宝》の力がなければただの木偶の坊だと特務支援課は公表してキーアの安全を確保した。

 しかしアイゼンガルド連峰の消滅による《神機》の影が各国に緊張を走らせた。

 《神機》はキーアがいなければ動かない。

 貴族連合には二機の《神機》が運用されているが、それを例外としても新たな《神機》の影にキーアが真っ先に疑われるのは当然の帰結だった。

 

「幸いなことに、キーア君のアリバイは私たちが証明できる。カシウス准将もそれが分かっているが、クロスベルに各国の追求が予測されるのでカシウス准将ひいてはリベールの女王陛下にそのフォローを頼んでおきました」

 

「仕事が早いですね」

 

 報告書を捲れば既に他国への釈明まで含めた展望がまとめられている。

 それを読み込み、クリスはふと思ったことを口にする。

 

「キーアは本当にクロスベルに帰ることはできるんですか?」

 

「それは難しい問題ですね」

 

 クリスの疑問に《C》は偽ることなく答える。

 

「今回のように《神機》の影がちらつけば真っ先に疑われるのはキーア君でしょう……

 そして今のキーア君には《零の至宝》としての“力”が残っていませんが、果たしてそれを信じてくれる者はどれだけいるでしょうか?」

 

「クロスベルの人は信じないと?」

 

「人は自分にとって都合の良い事しか見ようとしないものです……

 独立と、二大国を退けた勝利の美酒をもう一度と願う人は必ず出て来るでしょう」

 

「でもキーア自身、もう《神機》を動かすことはできないって」

 

「確かに特務支援課の報告にはそうありました。しかしそれを誰が証明できるでしょう?

 それにクロスベルには《零の至宝》を錬成した施設が全て残っています……

 それを使ってキーア君の意志や安全を度外視して彼女をもう一度《零の至宝》にしようとする者も出てこないとどうして言い切れるでしょうか?」

 

「そうですね……キーアにその意思はなくてもロイドさん達を人質にされればキーアは自分の身を捧げることは躊躇わないと思います……

 そうなるとやっぱりキーアがクロスベルに帰るのは難しいんでしょうか?」

 

「私なら《零の至宝》が生まれた玉座があるミシュラム……

 用途不明な魔導区画があるオルキスタワー……

 《至宝》を錬成するための巨大な陣であるジオフロント……

 最低でもこの三つを解体しない限り、キーア君にクロスベルに地を踏ませたくはないですね」

 

「ミシュラムとオルキスタワー。それにジオフロントを解体って……そんなのクロスベル市そのものを根本から作り直すようなものじゃないですか」

 

「その通りです。それらをやるにはクロスベル市民の強い反発が容易に想像でき、経済に与える影響も考えればあまり現実的ではない……

 ゆえに《零の至宝》の再錬成を封じることを考えるなら、クロスベルを解体するよりもキーア君をクロスベルから遠ざけた方が遥かに容易だろう」

 

「理屈は分かりますけど……それは……」

 

「私たちが許したところで、《零の至宝》の力を背景に資産凍結で独立を脅迫された各国が果たして彼女を許すか……

 特務支援課の者たちはキーア君をただの女の子と扱おうとしているが、世界がそれを許しはしないだろう……

 キーア君も今回の事で、自分が如何に世界から畏れられているのか理解したでしょう」

 

 帝国軍と共和国軍の両方を同時に撃退し、山脈さえも消滅させる力を持ち、それを振るった責任。

 理屈はクリスも分かるがここまで共に戦って来た彼女の望みを叶えて上げたいと考えてしまう。

 

「僕にできることはないのかな?」

 

「殿下の、エレボニア帝国の監視下にある。それだけでも他国にキーア君の扱いについて口を挟みづらくなっています……

 それにリベール女王の信認を得られるかはキーア君次第でしょう」

 

「アリシア女王の信認って……」

 

「今のキーア君に必要なのはクロスベルの味方ではなく、外の味方ですよ」

 

 特務支援課と言う保護者に守られてるだけでは得られない外の地位ある者の擁護。

 それは彼女の今後において大きな助けになるだろう。

 リベールに補給に来たついでにキーアの事へのフォローをしている《C》にクリスは脱帽する。

 

「結局、僕達がキーアにできることは後ろ盾になる事くらいなんですね」

 

「そのためにはこの内戦を勝って、貴方の発言力を高めなければいけないですよ」

 

「勝たないといけない理由が増えたな」

 

 《C》の指摘にクリスは身を引き締めて、彼の報告書に目を通して行く。

 

「トリスタでオーレリア将軍とⅦ組が交戦……ラウラとユーシスが正規軍に合流した?」

 

「ラウラ君はともかく、ユーシスはいったいどのような心変わりがあったのでしょうね」

 

 Ⅶ組が集合したことに安堵しながら困惑するクリスに《C》は仮面の下で笑う。

 

「それから……帝国西部から帝都に《トゥアハ=デ=ダナーン》が移動中?」

 

「どうやらカイエン公が制御に成功したようですね。貴族連合の戦力に《魔煌兵》が導入されたと考えて良いでしょう」

 

「《機甲兵》だけでも厄介だって言うのに、兄上は大丈夫かな?」

 

「それを私たちが考えても仕方がないでしょう」

 

 クリスの心配を《C》は一言で済ませ、黙り込む。

 

「どうかしましたか?」

 

「セドリック殿下」

 

 《C》は佇まいを直してクリスに提案する。

 

「戦場にヘルムート・アルバレアが出て来た場合、その相手は私に務めさせていただきたい」

 

「それは……」

 

 《C》の正体はルーファス・アルバレア。

 つまりは父親と戦うと言い出した《C》にクリスは認めて良いのか迷う。

 今の自分と“テスタ=ロッサ”なら《蒼》と《メッキ》の両方と戦える自信はある。

 だが、自信はあってもやはり一番の脅威になるだろう《蒼》との戦いに集中したいという気持ちもある。

 

「ヘルムート卿は貴方の父上ではないんですか? そんな人と貴方が無理に戦う必要はないんじゃないですか?」

 

「セドリック殿下……私はずっと逃げていたんですよ」

 

 《C》は徐に仮面を脱ぎ――ルーファスは素顔を晒す。

 

「父上の心内が理解できず、問い質す勇気を持てずただ腐って……そして私は“あの方”に縋った」

 

「あの方?」

 

 聞き返された言葉をあえて無視してルーファスは続ける。

 

「答えはそこにしかないと分かっていた。なのに私は父上に真実を確かめることを畏れ、都合の良い逃げ道に目を眩ませて目を背け続けていた」

 

 これではユーシスを笑えないとルーファスは自嘲する。

 ヘルムートの顔色ばかりを窺って、本音を口にできなかった姿はまさに同じではないかとルーファスは思う。

 そのユーシスが貴族連合を離反して正規軍に組した。ならば自分も“父”と向き合う時が来たのだと覚悟を決める。

 

「偽物とは言え《金》を駆り戦場に自ら赴いた今の父は私の知らないヘルムート・アルバレア……

 貴方にとってオリヴァルト殿下が超えなければならない《壁》であるように、ヘルムート・アルバレアは私の超えなければならない《壁》なのです」

 

「ルーファス教官……」

 

 アルバレア家の事情を知らないクリスだが、自分を引き合いにされた言葉は頷かざる得ない。

 

「でも、貴方には帝国の防空網を破る先駆けをしてもらうことになっていたはずですが、キーアに代わってもらうという事ですか?」

 

 クリスは視線を“エル=プラドー”へ、その背後に組み立てられている《オーバルギア》に向ける。

 《騎神》を覆い被せる鋼のフレームに後ろに増設された飛翔機関が接続され、長距離航行が可能となるように改造されている。

 それだけではなく、フレームには長距離用狙撃用のバスターキャノンを肩に、両手には盾と一体化したダブルインパルスカノン。

 足や二の腕にはミサイルラックを増設されている。

 それとは別に飛翔機関のコンテナには多弾装ミサイルを始めとした様々な兵器が詰め込まれたオーバルギアはちょっとした武器庫となる予定だった。

 あまりに自重しなかったことから格納庫では組み立てられず、甲板で組み立てられている程なのだ。

 

「帝都の防空戦力を突破するための強襲型オーバルギア……

 カレイジャスが突入するための先陣を切る役目はどうするつもりなんですか?」

 

 帝国はリベールとの《百日戦役》によって飛行艇による手痛い反撃を受けたことがある。

 その時の反省をから対空戦力には力が入っているとクリスは聞いている。

 《騎神》の力を使えば、その防衛線を突破することはできるかもしれないが、それには相応の霊力を失う事になるだろう。

 その消耗を抑えるために用意されたのがこのオーバルギアになる。

 

「もちろんその役目も果たした上で、父上との対決をさせていただきます」

 

「……それは背負いすぎでしょう。いくらオーバルギアでの戦闘には霊力は使わないからって言っても疲労はするでしょ? 先陣は今からでも僕が代わって――」

 

「いえいえ、皇子にそのようなことをさせるわけにはいきません」

 

 二人は隙あらば自分がと互いを牽制する。

 “機神用オーバルギア”はラッセル一家がリベールに帰国してから開発した拡張ユニット。

 四機の特化した性能を他の機体にも扱わせることを目的としたものであり、《機神》だけではなく《騎神》にも互換性はある。

 なので今からでも《緋》に役割を交代することは出来る。

 

「いやいや、ルーファス卿は父上との決闘が望みなら、帝国皇子として憂いなく果たさせてあげるべきでしょう」

 

「お気遣いはありがたく。ですが《エル=プラドー》とこのオーバルギアの力ならば、帝都の防衛線の突破など準備運動にしかならないでしょう……

 それにクロウ・アームブラストとの決闘を望んでいるという点では私も、殿下も同じはずです」

 

「…………まあ、そうですよね」

 

 クリスはため息を吐いて引き下がる。

 シャーリィが羨んだように、クリスもこの過剰火力を思う存分撃ちまくってみたい誘惑に駆られるが改めて自重し、話を戻す。

 

「でも、貴方は《空の匣》に対抗する手段を持っているんですか?」

 

 ヘルムートの《金》には奥の手とも言える《空》属性の術がある。

 それに対抗できる力は《緋》の“鋼の爪”。

 ルーファスの《金》にはそれに準じる力は今のところない。

 

「具体的な手段はまだありません」

 

「なら――」

 

「ですが、それでも“彼”ならば、戦えば勝つでしょう」

 

「むっ……」

 

「“彼”にできるのならば、私もしてみせましょう」

 

 ルーファスらしからぬ根拠の薄い言葉だが、その言葉にはクリスは弱かった。

 

「そうですね……あの人は圧倒的な不利な逆境も乗り越えて見せてくれた……

 ユミルを救えなかった僕達だけど、それくらい跳ね除けられるようにならなければ、戻って来てくれた時に合わせる顔がありませんよね」

 

 《壁》に挑むのはルーファスだけではない。

 まだ全容を掴めていない“騎神”と“神機”が合体した《オルカイザー》なるものがクリスの相手になる。

 未知の敵に挑むという点ではクリスもルーファスも変わらない。

 

「分かりました。ヘルムート卿はルーファス教官にお任せします。ただし」

 

「ん?」

 

「言ったからにはちゃんと勝ってくださいよ」

 

「ええ、もちろんです」

 

 ルーファスは苦笑を浮かべてクリスと約束を交わすのだった。

 

 

 

 

 

「セドリック……」

 

 その呼び声にクリスは顔を上げて振り返る。

 

「アルフィン。まだ寝ていなかったのかい?」

 

 既に夜も深い。

 明日始まる帝国の決戦を考えれば、既に仲間たちは英気を養うために眠りについている時間だった。

 

「それは貴方もでしょう」

 

 アルフィンはクリスの隣に座り尋ねる。

 

「何をしていたの?」

 

「別に大したことはしてないよ」

 

 右腕をじっと見つめていたクリスはアルフィンの問いに笑みを返す。

 すっかり大人びた顔をするようになった弟にアルフィンは感慨深くなる。

 

「本当に逞しくなったのね」

 

「アルフィン?」

 

 首を傾げる仕草にアルフィンは苦笑する。

 こういう小さなところは変わっておらず、クリスが弟のセドリックなのだとアルフィンは安心する。

 

「皮肉よね……弟よりも聡明な姉……

 そんな風に言われていたのに、この内戦で私ができたことなんて何もなかった」

 

 自嘲して落ち込むアルフィンにクリスは提案する。

 

「ねえアルフィン。今からでも遅くないから君はここに残った方が良いよ」

 

「いいえ、私もエレボニアの皇女なのです」

 

 逞しくなった弟の背中に縋りたいという誘惑を振り払い、アルフィンは毅然と言い切る。

 正規軍に残れば兄であるオリヴァルトが理由を付けて後方にアルフィン達を避難させようとしていた。

 軍事教育も受けておらず、護身もできないのだから当然なのだが、兄妹の中で一人だけ蚊帳の外に置かれていることに我慢ができずにアルフィンはエリゼとアルティナを巻き込んでクリスと合流した。

 

「何もできないならせめて見届ける。それくらいはさせて」

 

「アルフィン……」

 

 今にも泣き出しそうな姉にクリスは肩を竦める。

 

「それにお父様とお母様を救うのでしょう? お父様達の世話くらいは任せて」

 

 アルフィンの言葉にクリスはため息を吐く。

 現在のカレイジャスはミスティ達を含めても人員はギリギリで運用している。

 作戦では最初に皇帝陛下を救い、その後にクリスは《蒼》やカイエン公達との戦いに臨む段取りになっている。

 カレイジャスの指揮は消去法でシャーリィに一任することになるが、旗頭としての艦長という意味ではアルフィンを据え置く意味はある。

 

「それでも危険だよ」

 

「それはみんな同じよ。私には何もできないかもしれないけど、帝都がユミルのようになるかもしれないと思うとジッとしていられないわ」

 

 決意が固いアルフィンにクリスは目を伏せる。

 双子故に彼女の気持ちはクリスにはよく分かる。

 ユミルで感じた無力感。内戦で傷付いて行く民。激しさを増して行く貴族連合と正規軍の戦い。

 皇族として何かをしなければいけないと急き立てられる焦燥はクリスも感じていた。

 それに加えて今のアルフィンはかつて自分が感じていた家族に対しての劣等感を抱いているのだろう。

 

「分かった……じゃあ貴族連合に対しての呼び掛けはアルフィンに任せるよ」

 

 貴族連合も決して一枚岩ではない。

 皇帝陛下を取り戻し、四大名門が掲げる大義名分を否定すれば皇族の言葉に耳を傾けてくれる貴族がいることをクリスは信じている。

 そこに自分やアルフィンの声が届けば、無益な犠牲は一つでも少なくすることができるかもしれない。

 

「一緒にこの内戦を終わらせよう」

 

「セドリック……ええっ!」

 

 アルフィンは弟の言葉に強く頷いて、最後に付け加える。

 

「ねえセドリック……貴方はいなくならないわよね?」

 

「大丈夫。僕はクロウなんかには負けないよ」

 

「…………そうじゃなくて……」

 

「アルフィン?」

 

 何かを言いかける姉にクリスは首を傾げる。

 

 ――やっぱり不安なのかな……?

 

 この内戦でアルフィンが言った通り、自分達が護れたものは少ない。

 だからこそ、帝都での決戦にも良くないイメージを考えてしまうのは無理もないだろう。

 

「それでも僕は負けないよ。僕は帝国の未来を背負うアルノールなんだから」

 

 かつてのか弱い弟からは想像もできなかった強い言葉にアルフィンは目を伏せる。

 

「セドリック……貴方に空の女神と獅子心皇帝……そして“あの人”……超帝国人のご加護を」

 

「アルフィン!?」

 

 姉の口から出て来た言葉にクリスは驚く。

 まるで“彼”を覚えているような口振り、正面から見据えた姉の顔にあるのは今までいろいろな人で見て来た虚ろな困惑はない。

 

「アルフィン……君はもしかして……いや、この話は内戦が終わった後にしよう」

 

 今問い質してしまえば、“彼”に頼らないと決めた決意が揺らいでしまうかもしれないと考えてクリスはその疑問を先送りにする。

 

「ええ、ですからセドリック……無事に帰って来てくださいね」

 

「もちろんだよアルフィン」

 

 アルフィンの祈りにクリスは力強く頷いた。

 

 

 

 

 

 








 オーレリアの参戦とⅦ組集結とトリスタ奪還は諸事情により省略しました。




機神用オーバルギア
それぞれの機能に特化した四機のティルフィングの機能の内、《青》を除いた性能を補助するために拡張ユニット。
飛翔能力、火力、導力魔法の兵装を外付けにするのが本来の仕様であるが、強襲用として過剰装備となっています。
機神用ではありますが、霊力消費を抑えることを目的として騎神にも互換性があります。


シャーリィ
「いいなぁっ! いいなぁっ! いいなぁっ!」

ミリアム
「アハハ! すごいね! ボクもいろんな兵器は見て来たけど、ここまで凄いのは初めてかも!」

クリス
「えっと、本体にはフェンリル増幅器に直結した高出力ビームソードにシールドダブルインパルスカノンが二つ。それと使い捨てのミサイルラックが両手両足……
 オーバルギアには連射性と射程距離を重視したロングレンジバスターキャノンと導力魔法の発生装置……
 飛翔ユニットコンテナの中には導力ライフルに導力バズーカ。大剣に十字槍、スタンハルバート。多弾頭ミサイルに空中散布型の導力機雷などなど……」

スウィン
「ちょっとやり過ぎじゃないか? Ⅶ組全員の役割を《C》一人にやらせるのかよ?」

アルバート・ラッセル
「“ティルフィング”用に開発しておった試作の武装を詰め込んでみたのじゃ……
 半分とは言え帝国そのものを相手取るのなら武器はいくらあっても足りんじゃろ」

ナーディア
「それはそうかもしれないけど……これはかわいくない」

キーア
「うん……エル=プラドーはティルフィングの装甲でカッコよくなったけど、オーバルギアのせいでヘクトルより重そう」

クリス
「いやいや、二人ともこの場合はむしろそれが良いんだよ! ね、スウィン!」

スウィン
「俺に振るな……まあ、悪いとは言わないが」

エリカ
「まあ機神用のオーバルギアもまだ試作段階だからどうしても大きくなっちゃうのよね。小型化と武装の選別は今後の課題ね」

シャーリィ
「いいなぁっ! いいなぁっ! いいなぁっ! ティルフィングSが使えたらシャーリィが使いたかったのに!」

《C》
「さて、調子はどうかなプラドー?」

エル=プラドー
「……………悪くはない……悪くはないが、これが騎士の姿か?」




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