(完結)二人の緋皇 ―閃の軌跡Ⅱ―   作:アルカンシェル

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49話 開戦

 

 

 

「はあああああああっ!」

 

 気合いが籠った雄叫びを上げて《青のティルフィング》はガランシャールを模した大剣を振り下ろす。

 

「ふっ…………」

 

 対する《黄金のシュピーゲル》は鈍重な動きで、それでも流れる様に大剣の一撃を軽々といなす。

 

「はあああああああっ!」

 

 戦場にラウラの声が響き、機械の巨人とは思えない程の機敏な動きで《黄金》を責め立てる。

 

「ほう、オルディスからまた腕を上げたようだなラウラ」

 

 対する《黄金》は嬉しそうな声を返しながら、無手で《青》の攻めを捌いて行く。

 

「――っ! 何のつもりだルグィン卿っ!」

 

 ラウラは堪え切れずに叫ぶ。

 

「何故そのアーケディアを使わない! 私など素手で十分だと言うのか!」

 

 ルグィン家に伝わる宝剣を模した機甲兵の大剣を背負い、さらには腰に別の剣を携えておきながら無手で戦う《黄金》にラウラは激昂する。

 

「ふむ……別に其方を侮っているわけではないのだがな」

 

 余裕の言葉が返って来ることにラウラはさらに苛立つ。

 不本意な形でセリーヌからユーシスを経由して渡された父の形見である《ガランシャール》を受け取っていながら、相手に剣を抜かせることもできていない自分に怒りが込み上げて来る。

 

「時にラウラ、其方は何かを忘れていないか?」

 

「何……?」

 

 オーレリアの問い掛けにラウラは首を傾げる。

 

「この内戦の中で、何かが足りないと胸の中に空白があるのではないかと聞いているのだ?」

 

「それは……」

 

 オーレリアの指摘にラウラは思い当たるものがありそうな気がして考え込む。

 振り返ってみても何かが欠けているとは思えない。

 確かにⅦ組はクリスとミリアム、それにシャーリィもいないが、彼らは別の場所で戦っている。

 唯一、貴族連合側にいたユーシスは貴族連合に掴まったラウラを解放すると共に正規軍に合流してくれた。

 

「それは……」

 

 又聞きでしかラウラはクリスがⅦ組から抜けたことを知らない。

 だが、見ている方向、目指しているものは同じだと分かっている。

 だからⅦ組はまだ誰も欠けていないはずなのに、ラウラはオーレリアに指摘された空虚がざわめくのを感じた。

 

「ルグィン卿……貴女は何を――」

 

「さて、何を忘れているのかは私も分からないのだがな……」

 

 胸の内の空虚にオーレリアは焦がれる。

 この内戦で考えていたヴィクターやマテウス達との果し合いが霞むほどの空虚。

 自分が求め、焦がれていた思い出すことのできない《宿敵》は何処にいるのだろうかとため息を漏らす。

 

「なるほど……これが“恋”と言うものか」

 

「は……?」

 

 通信機から聞こえて来る姉弟子らしからぬ呟きにラウラは耳を疑う。

 

「さて、妹弟子よ。語らいはここまでだ」

 

 空気が変わり、機甲兵越しに感じる威圧感にラウラは身を固くする。

 

「ガランシャールを持って戦場に来たのだ。相応の覚悟はしているのだろう?」

 

 《黄金》の機甲兵の中でオーレリアは獰猛な笑みを浮かべる。

 

「っ……」

 

「ヴィクター師やこの期に及んで動こうとしないマテウス師に代わって、せめて剣を抜かせてくれよ、妹弟子」

 

 

 

 

 

「ダブル・バスターキャノンッ!」

 

 遠くの丘に向かって《琥珀のティルフィング》が砲撃を行う。

 それに合わせて周囲の戦車も空に向かって砲撃を始める。

 遠過ぎる的に当たることはないが、牽制の砲撃は相手側の砲撃の手を止める。

 戦争の始まりはまず長距離の砲撃戦。

 エリオットは逸る気持ちを抑えながら己の役割に徹する。

 

『エリオット君、大丈夫かい?』

 

「はい、問題ありません」

 

 通信から聞こえて来るジョルジュの声にエリオットは深呼吸をしながら応える。

 当てることを目的としてない牽制。

 エリオット達の前には《紅》が率いる機甲兵部隊が砲弾の雨が降る最前線を駆けている。

 彼らへの砲撃を減らすことがエリオットの役割の一つ。

 

「ジョルジュ先輩、みんなの状況は?」

 

『うん、オーレリア将軍と会敵した《青》の霊力消費が少し激しいね……

 それから《紅》もそろそろ目標地点に到着するから準備を始めた方が良いかな?』

 

「分かりました」

 

 ジョルジュの言葉に頷いてエリオットはバスターキャノンのシステムから別のシステムを切り替える。

 砲撃の構えを崩した《琥珀》は各部の増幅器の装甲を開いて、全身を駆動する。

 そして疑似的な《機神》の視覚の中にエリオットが慣れ親しんだ鍵盤が浮かび上がる。

 

「リバイバルシステム起動」

 

 そう呟き、エリオットは鍵盤の一音を叩く。

 装備された外部スピーカーから音楽が流れ始め、それは術となって光の波紋となって広がる。

 かつてリベールで導力を停止させた光と同じ光。

 しかし、周囲の砲撃を続ける導力戦車は止まる気配はない。むしろ砲撃の間隔が短くなっている。

 《輝く環》の力が導力停止現象に対して、《琥珀》のそれは逆に音楽を触媒にいて導力を与える力。

 戦術リンクを利用して距離を無視して他の機体への導力を供給し、更にはその余剰で周辺のオーブメントを活性化させる。

 ヨルグ・ローゼンベルクが《パテル=マテル》のシステムに《輝く環》の特性を組み込んだシステム。

 

「っ……」

 

 エリオットは鍵盤に指を走らせて術の展開の維持に集中する。

 《リバイバルシステム》は導力の供給だけに留まらず、そのオーブメントの性能を一時的に強化する。

 導力戦車による砲撃の弾幕は《琥珀》が抜けた以上に密度を増し、届かなかった相手陣地へと射程を伸ばす。

 その砲撃密度に貴族連合側の牽制砲撃が止まる。

 

「今だっ! 総員全力で前進せよな!」

 

 その隙を突くように最前線を駆けていた《紅のティルフィング》が追従する機甲兵に檄を飛ばす。

 散発になった砲弾の雨を躱しながら前へ、前へと進み《紅》は予定していた地点で急停止する。

 

「――来るぞっ! 機甲兵は前に出て楯を構えろ!」

 

 ウォレスの号令によって追従して来た機甲兵が楯を構えて《紅》の壁になる。

 

「ユーシス卿を守れっ!」

 

 次の瞬間、まだ遠い離れた敵陣から足を止めたその部隊へ砲撃が集中する。

 機甲兵は戦車と比べて火力と射程に劣っていると一部では思われているがそれは正しくない。

 確かに汎用として規格化した機甲兵は戦車に劣る部分はあるかもしれない。

 だが、その程度の問題は武器を持ち替えれば済む話なのだ。

 

「っ……来るぞっ!」

 

 ウォレスの声に合わせ、遠くに光が瞬き無数の光の砲撃の雨が降り注ぐ。

 人が“剣”や“銃”を状況に合わせて持ち替えることができるように、人を模した《機甲兵》も戦車に負けない兵器を持たせれば、それだけで指摘された欠点を補うことが出来る。

 

「踏ん張れっ! 決して陣形を崩すなっ!」

 

『応っ!』

 

 次の瞬間、光の雨が降り注ぐ。

 撒き散らされる衝撃と鳴り響き地響き。

 《機甲兵》の壁越しにそれらを感じながらユーシスは《ARCUS》を駆動する。

 

「ARCUS駆動――」

 

 剣をその場に突き立て、拡大した導力魔法を――戦術リンクから供給される《琥珀》からの導力も使って――駆動する。

 

「アースシールドッ!」

 

 大地が輝き、光の壁が戦場に線を引くように部隊の前面に広く展開される。

 

「戦車部隊、前進! 配置に着き次第、曲射砲撃を実行せよ!」

 

 矢継ぎ早に指示が飛び、《紅》が展開した壁まで前進した戦車部隊が空に向けて砲撃を始める。

 敵側からの砲撃を受け止め、術の維持に集中する。

 《紅》を護った機甲兵は前進して来る戦車の守りを彼に任せて結界を飛び越えてさらに前進する。

 

「ユーシス・アルバレア。まだいけるな?」

 

「当然だ」

 

 ウォレスの呼び掛けにユーシスは強く頷く。

 

「オリヴァルト殿下に無理を言って参戦させてもらっているのだ。これくらいして当然だ」

 

 いくら《ティルフィング》を使えるからと言っても、本来貴族連合勢力としてクロイツェン州で活動していたユーシスが正規軍に合流しても信頼を得て、前線を任されるのは周りが許さない。。

 オリヴァルトとラウラの口利きがなければ、ケルディックの惨劇を忘れていない者達の袋叩きにされてもおかしくはなかっただろう。

 

「これくらいか……十分な働きだと思うがな」

 

 ユーシスの謙遜にウォレスは苦笑する。

 機甲兵とは違い、導力魔法を扱える《紅の機神》は未だに対機甲兵戦闘を確立し切れていない正規軍にとって不可欠な支えになっている。

 今行った結界陣の構築によって、戦車部隊は安全に射程距離を確保でき、当初想定していた被害はかなり抑えられている。

 それに彼が連れて来た《青の機神》が戦場を一人で覆す可能性がある《黄金の羅刹》を抑えてくれている。

 それだけでも十分な貢献をユーシスは正規軍にもたらしていた。

 

「あまり気負い過ぎるな。貴族連合側だったのは俺も同じだ」

 

「ウォレス准将……」

 

「それよりもここから戦闘は本格的になるが、本当に良いのだな?」

 

「ええ……これ以上、クロイツェン州の貴族たちを増長させるわけにはいきませんから」

 

「…………そうか」

 

 ウォレスはユーシスがクロイツェン州で何を見て、何を理由に立ち上がったのか追及はしなかった。

 貴族連合の在り方に矛盾を感じても口を噤み、軍人としての責務を全うし続けたウォレスにはユーシスの気持ちは良く分かる。

 軍人であることもそうだが、立場の低い男爵家を始めとした下級貴族は上級貴族に逆らう事は難しい。

 誰も彼も己の中の正義を貫けるわけではない。

 多くの者は正しい方に着くのではなく、勝つ方にいることを望む。

 そもそもオリヴァルト皇子が立つまで、この内戦の結末の後の未来図を示せていたのは貴族連合だけだったというのも離反者がいなかった理由でもある。

 

「さて、このまま押し切れれば良いのだが――むっ?」

 

 ウォレスは敵陣地から空に飛ぶ影を見た。

 

「何だ?」

 

 機甲兵の目を操作して視野を拡大すれば見えたのは《機甲兵》だった。

 

「機甲兵が空を飛ぶだと?」

 

 ウォレスは自分の目を疑った。

 《機甲兵》の元となった《騎神》は当たり前のように空を飛ぶが、《機甲兵》はまだその域に達していない。

 その例外が正規軍側に一体だけ存在しているが、貴族連合側から飛び立った《機甲兵》は十を超えていた。

 

「まさかこんな短期間で飛翔ユニットを完成させたのか?」

 

「いや、良く見ろ」

 

 驚くウォレスに同じものを見たユーシスはそれを指摘する。

 

「奴等の足下……あれは従来の飛行艇だ。どうやら甲板の部分に無理矢理機甲兵を固定して飛ばしているようだ」

 

「そんな方法で……」

 

 恐ろしく単純な方法だが、果たして何処まで効果があるのかウォレスは悩む。

 

「貴族連合もまだ《機甲兵》の運用に関しては模索している段階なのだろう」

 

「冷静だな。君は制空権を取られることの意味を知らないのか?」

 

 動じないユーシスにウォレスは訝しむ。

 それにユーシスは苦笑をして自信に満ちた言葉を返した。

 

「問題ない。こちらの空には俺達の友がいる」

 

 

 

 

 《紅》が構築した結界の上空を《翠のティルフィング》が飛び超える。

 追従するはずだった飛行艇部隊を置き去りにして単身で敵陣の深くまで飛翔する。

 

「この戦いにどんな意味があるのだろうな」

 

 近付いて来る敵の機甲兵を眺めながらガイウスは複雑な呟きを漏らす。

 帝国の士官学院に留学を決めた時には、自分が戦争に参加するなどとは夢にも思わなかった。

 今のガイウスは帝国正規軍に雇われる形で戦闘に参加している。

 もちろんⅦ組としての友情や、学院で過ごしたことで帝国に対して愛着が湧いたという理由もある。

 だが、それ以上に貴族連合が勝てばノルドに開発の手が入ると聞けばガイウスにとって戦うには十分な理由だった。

 

「何故、お前達は戦う!?」

 

 相手に届いていないと分かっていてもガイウスは叫ばずにはいられなかった。

 ノルドの、自分の家族に降り掛かった悲劇。

 ユミルの悲劇。

 Ⅶ組の絆や、育んだ友情を思えば余計に貴族連合の人間が仲間達と同じ帝国人なのにこうも違うのかと悩む。

 

「っ――」

 

 相手の機甲兵が飛行艇の上で《翠》に向かって銃口を向ける。

 対する《翠》も銃と槍を合わせた銃槍を両手に構えて更に加速する。

 

「くっ――」

 

 体感で飛翔を操作する感覚は訓練したとは言え、未だに慣れない。

 

「――そこ!」

 

 アリサならばとっくに命中させていただろうと考えながら、ガイウスは十分に《機甲兵》との距離を詰め、銃槍の引き金を引く。

 放たれた弾丸は機甲兵に命中する。

 だが威力は低く設定していたため、一発で破壊には至らない。

 もっとも初めからガイウスは銃撃で戦うつもりはなかった。

 

「もらった!」

 

 両手の銃槍を固く握り締め、機甲兵とすれ違い様に振るう。

 高速で飛ぶ《翠》から繰り出された一撃は無造作に繰り出しただけでも術式保護されている《機甲兵》の装甲を砕くには十分だった。

 そのまま空を翔け抜けて、次の敵には飛行艇の飛翔ユニットを小突くように破壊して一つ、また一つと《機甲兵》を乗せた飛行艇を落して行く。

 

「っ……大丈夫だ」

 

 煙を上げて落ちていく飛行艇を見下ろしながらガイウスは自分に言い聞かせる。

 《翠》が破壊して回った飛行艇の飛翔ユニットには主翼の他に副翼が存在している。

 主翼が航行中に破損しても、副翼があれば不時着は可能だと教わっているが、彼らが墜落するのではないかと気が気ではなかった。

 

「……どうやら問題はないか……」

 

 降下していく飛行艇たちを見下ろしてガイウスは一先ずの安堵の息を吐く。

 

「ここからが本番だ」

 

 《機甲兵》の飛行部隊は正規軍にとっては想定外の戦力だった。

 振り返り、相手をすると想定していた飛行空母《パンタグリュエル》を中心にした空挺部隊をガイウスは睨む。

 

「さあ、いくぞ」

 

 パンタグリュエルを始めとした貴族連合の航空部隊の牽制がガイウスの本来の役割。

 意気込みを改めて突撃しようとした《翠》は――その横を黒い閃光が掠めた。

 

「何だ!?」

 

 黒い光の砲撃は背後から、《翠》はその場を大きく旋回して振り返ると遥か空の遠くに空を飛ぶ鉄の塊を見つけた。

 

「何だあれは!?」

 

 正規軍側から現れた、ガイウスが知らされていない兵器に警戒を強める。

 そこに正規軍、貴族連合、全ての人間に伝えるように通信回線が開いた。

 

「こちらはセドリック皇子が率いる真・帝国解放戦線。これより戦闘に参加する」

 

 次の瞬間、黒い光が再び放たれパンタグリュエルに命中した。

 

 

 

 

 

「レールハイロゥを起動します。甲板にいる作業員は速やかに艦内へ撤収してください」

 

 ミスティのアナウンスに伴い、カレイジャスの甲板の柵が格納される代わりに二つの透明な光のレールが艦首を超えて伸びる。

 本来ならここで格納庫からリフトで甲板に移送するプロセスが入るのだが、既にレールハイロゥの発射台には一体の《機神》が待ち構えていた。

 その風貌は異様の一言に尽きる。

 身体の隙間に設置できるだけの銃火器を背負い、その背後には小型の飛行艇を背負っている。

 貴族連合の機甲兵のフライトシステムが足に空飛ぶ下駄を履かせたものならば、この《機神》のそれは飛行艇の操縦席に機体を乱暴に突き刺した風貌とも言える。

 

「火器管制システムとのリンクは問題なし……《貝殻》を用いた各騎神との戦術リンクも良好」

 

 その《機神》の皮を被った《騎神》に乗り込んだ《C》はヘルメットの内側に表示された火器管制を始めとした増設ユニットの状態を確認する。

 

「システムはオールグリーン。では艦長代理、号令をどうぞ」

 

 《C》と同じものをカレイジャスの艦橋で確認していたミスティは艦長席に座るアルフィンに振り返る。

 アルフィンは緊張した面持ちで小さく頷き、マイクに向かってカレイジャスにいる者達に話しかける。

 

「これより《紅い翼》は帝国の内戦に参戦します」

 

 流石皇族と言うべきか、本業のミスティに劣らない滑舌でアルフィンは宣言を言葉にする。

 しかし、残念なことにこの《カレイジャス》には彼女が皇族だから従ってくれる行儀の良い帝国人は一人しか乗っていない。

 もっともそれは分かり切っていることであり、この号令もただの合図でしかない。

 幾分かの責任感を忘れアルフィンは肩の力を抜いて頭を下げる。

 

「何の力もない皇女でありますが、どうか皆さんのお力を貸してください」

 

 通信機越しに聞こえて来るアルフィンのお願いに《C》は仮面の下で笑みを浮かべる。

 

「不思議なものだと思わないかプラドー」

 

「何のことだ?」

 

 出撃を目前に話しかけて来た起動者に《エル・プラドー》は言葉を返す。

 

「本来、私は貴族連合の参謀として内戦に参加するはずだった……

 それが皇帝家の忠臣のような立場で先陣を切る羽目になるとは、人生と言うものは分からないものだ」

 

 《C》はこの内戦の結末は想像できている。

 以前の《C》ならば無駄なことはしないと、ここで傍観者に徹していただろう。

 

「“彼”と出会ってから、私は知らない自分を教えられるばかりだ」

 

 “彼”だけではない。

 皇族としての責務を全うしようと足掻くクリス。

 クロスベルの罪を背負ったキーア。

 人としてさえ扱われてこなかったスウィンとナーディア。

 彼らの足掻きや葛藤、生き様を見ていると年長者である自分が不甲斐ないことはできない気持ちにさせられる。

 

「さて、プラドー。私たちの作戦目標を改めて確認しよう」

 

『うむ』

 

「私たちの最終目標は貴族連合側にいる父上、ヘルムート・アルバレアが乗る《メッキ・プラドー》の撃破……

 そこに至るまでにはセドリック皇子がヘイムダルに辿り着くための露払いをする。それが本来の作戦行動だったわけだが」

 

 そこで一度言葉を切って《C》は画面に帝都の西の空に浮遊している巨大な球体の映像を呼び出す。

 

「機動要塞《トゥアハ=デ=ダナーン》……どうやらオルディスでの雪辱を晴らす機会が巡ってきたようだ」

 

 カイエン公の勢力が解析し魔煌兵の製造プラントを活用できるようになったと聞く空中要塞。

 

「帝都に在住している貴族連合の本隊合流される前に西側で私たちが落とす。できるな?」

 

『誰に言っている、当然だ』

 

 以前、《金》は初期起動だったことを差し引いたとしても、無数の魔煌兵の物量に押し切られる形で敗北した。

 その後に準起動者によって挽回したものの、あれを自分の力だと《金》は開き直るつもりはない。

 何より格下だと思っていた《灰》が自分を打ち負かした物量をものともせず蹂躙した事実に《金》は敗北感を覚えずにはいられなかった。

 それを晴らす機会が訪れたのなら、装甲を着替えさせられ桃色に塗装され、更には銃火器まみれとなって騎士の面影がなくなったことなど屈辱など些細なことでしかない。

 《金の騎神》エル・プラドーはそう思い込むことにする。

 

「ふ……頼もしい限りだ」

 

 やる気に満ちている《エル・プラドー》に《C》は笑みを浮かべる。

 

『間もなくサザーランド州からヘイムダルへの州境になります。発進タイミングを《C》に譲渡します』

 

「了解した」

 

 艦橋からのミスティの報告にカタパルトのロックが外れる。

 《C》はヘルメットの下で深呼吸を一つ。

 

「《ティルフィングP》――《C》出撃する」

 

 その号令を持って五体目の《ティルフィング》の装甲を纏った《騎神》が帝国の空へと飛翔した。

 

 

 

 







 カレイジャス
 原作とは違い先に《騎神》の存在を知ることとなったため、専用の発進システムを増設しています。
 技術はとある存在が提供してくれた《リベル=アーク》のレールハイロゥを甲板に展開させた射出機。
 “彼”は転移があるので必要ないと主張していたが皇子や博士や博士や博士や孫娘の熱望により搭載された。



 クロウ・アームブラスト
 演説中のオズボーン宰相を遠方から狙撃、暗殺した犯人。
 彼はジュライ併合の切っ掛けとなった鉄道の爆破事件がオズボーン宰相によるものだと主張し、強い恨みを持っていた。
 しかし、オズボーン宰相がその爆破事件に関わっていた物的証拠も証人も存在しない。

 また彼が通う士官学院の同級生及び後輩たちは、彼にも事情があったのだと同情的に擁護している。



 現実で嫌な事件が起きてしまいましたが、クロウがした事に近いと考えるといろいろ考えさせられます。






NG 赤い彗星?

《C》
「《ティルフィングP》――《C》出撃する」

ティルフィングP
「…………………ルーファス、いや《C》よ」

《C》
「ん? どうかしたかね?」

ティルフィングP
「ティルフィングPの“P”は《プラドー》の“P”で良いのだな? ピンクの“P”ではないのだな?」

《C》
「…………」

ティルフィングP
「…………」

《C》
「第一次加速開始――くっ……何と言う殺人的な加速かっ! だが“箱庭”で経験した《空の翼》の負荷と比べれば、耐えられる!」

ティルフィングP
「《C》!?」




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