今回予告
ドラッケン、死す!
《ゴライアスβ》のプログラムが更新される。
戦場に降り立った《桃色の機甲兵》を精査して、正規軍の《機神》の類似品と判断。
背中を向けて向かって来る《機神》に右腕の導力砲を構えて攻撃を開始する。
《機神》は後ろに目をつけているのではないかという反応で《ゴライアスβ》の砲撃を紙一重で回避し、その流れ弾が《ドラッケン》に迫る。
だが太刀の一閃が導力の光線を薙ぎ払って掻き消した。
《ゴライアスβ》達に友軍を撃った動揺はない。
ただ《機神》に対して機械的に砲撃を続ける。
《ドラッケン》に追い回されながら《機神》は《ゴライアスβ》に向け、デタラメにアサルトライフルで反撃する。
攻撃動作に反応して《ゴライアスβ》は防御結界を展開し、《機神》からの攻撃を防ぐ。
途切れた砲撃に《機神》は《ゴライアスβ》を飛び越えるように跳躍して、背後に回り込む。
《ゴライアスβ》はその動きに即応して振り返り、着地しようとしている《機神》に――
「――邪魔――」
その一言と共に五体の《ゴライアスβ》の首が飛んだ。
「っ――」
地面を滑るように背後に飛びながら《機神》は両手のアサルトライフルを乱射する。
それに対する《ドラッケン》の行動は前進。
黒い太刀が目に留まらない速さで振られ、弾丸は《ドラッケン》から逸れて後方へとすり抜ける。
「逃げてばかりいないで斬り合おうよ」
「その申し出は丁重にお断りさせてもらうよ……
その技と太刀筋、《八葉》の者とお見受けする。《剣聖》に剣で挑むほど私は愚かではないよ」
弾丸をいなされながらも、弾幕を這って《ドラッケン》の接近を拒みつつ、《C》は馴れ馴れしい《S》の誘いを断る。
「いろいろ違う所はあるんだけど」
《C》の指摘に《S》は悩む。
名を隠した手前、流派を名乗れば本名を隠した意味がなくなる。
「とりあえず私はまだ《剣聖》じゃなくて、《中伝》だよ」
「《中伝》……」
初めて乗ったであろう《機甲兵》をまるで人間の動きのように動かし、機関銃の銃弾さえも掻い潜る少女が《剣聖》に至っていない事実に《C》は驚く。
「いや“彼”も中伝だったか」
“彼”だけが特別だと思っていた八葉一刀流の認識を《C》は改める。
――ともかく今は目の前の《S》をどうするか……
まともにやり合えば苦戦は必須。
ヘルムート・アルバレアとの戦いを控えていることを考えれば、ここで大きな消耗を受けるのは得策ではないと《C》は考える。
――だとすれば最も効率が良いのは彼女の自滅を待つことか……
《機甲兵》の最大稼働時間と彼女の動きが与える限界を計算して《C》はおよそ十分で《ドラッケン》の方に限界が訪れると判断する。
それまで徹底的に距離を取って戦えば如何に《八葉一刀流》の使い手であったとしても逃げ切ることはできるだろう。
「ふーん……良いよそっちがその気なら――」
踵のタイヤで走っていた《ドラッケン》は何を思ったのか、人間のように足を使って駆け出した。
「せーのっ!」
直後、《ドラッケン》は大地と水平に跳んだ。
「なっ!?」
砲弾と化した《ドラッケン》に《C》は絶句しながらもアサルトライフルで迎撃する。
「――九十九颯っ!」
ライフルの弾幕を全て斬り払い、《機神》と《ドラッケン》はすれ違う。
「まずは二つ……」
《機神》の背後で滑るように着地した《ドラッケン》から得意気な声が聞こえてくる。
すると、二つの導力ライフルは先端から細切れとなり取手だけを残して崩れ落ちた。
「ええいっ! 共和国の猟兵は化物か!」
《C》の目をしても見切れなかった早業に叫びながら振り返り、導力ショットガンを装備すると同時に導力魔法を駆動する。
「ファイアボルトッ!」
撃ち出された火球に合わせて散弾を撃つ。
「おお! 導力魔法まで使えるんだ!」
《ドラッケン》は横へと駆け出して火球と散弾から回避する。
とにかく近付けないように導力魔法と散弾を連射して《機神》は《ドラッケン》をその地点へと誘導する。
「そこだ! エインシェントグリフ!」
地の上位導力魔法。
大地の魔法陣を展開して巨大な石柱を落す導力魔法を《機神》の規模で発動させる。
それはもはや隕石に匹敵する巨大な石柱に《ドラッケン》は天を覆い隠した石柱を見上げる。
「わあ! 上位アーツを《機甲兵》で使うとこうなるんだ」
しかし《S》の声は何処までも無邪気に明るかった。
そして《ドラッケン》は落ちて来る巨大な石柱に逃げるのではなく、太刀を鞘に納めた。
「まさか――いや彼女が《八葉》の中伝ならば」
生身や《騎神》ならばともかく《ドラッケン》ではという思い込みを捨てて、彼女の次の行動に《機神》は身構える。
「荒れ狂え――嵐雪っ!」
氷風纏う一閃が巨大な隕石を綺麗に二つに斬り裂いた。
驚愕するべきことだが、《C》は技を放って動きを止めている《ドラッケン》に銃口を向けて――背後からチンという静かな音を聞いた。
「っ――」
そして先程のライフルと同じようにショットガンと肩の導力魔法の発振体が斬り落とされた。
「さあ、後いくつ斬り落とせば剣を抜いてくれるのかな?」
耳元で囁く声に《機神》はその場から跳び退く。
そして体の各所に装備した武装を外した。
「お、やっとその気になってくれたか」
「君を相手に逃げて時間切れを待つことは不可能だと思い知らされたよ」
散らばった武装から《機神》は剣、そして盾を拾い上げて構える。
《S》は眉を顰めつつ尋ねる。
「でも……まだ足りないなっ!」
目にも止まらない踏み込みに《機神》は勘に任せて盾を構えて太刀を弾く。
「っ――いけるか」
目に追えなくても体が反応してくれる。
その事に安堵しながらも《機神》は反撃の剣を振り下ろす。
黒い太刀が《機神》の刃を受け止めて、鍔競り合いになる。
「力比べならこちらの方が有利だ!」
尋常ではない剣の使い手だが、量産型の《ドラッケン》であることは《C》にとって唯一の勝機。
おそらく二度はこないチャンスに《機神》は力任せに剣を押し込んでいく。
「…………ねえ、その鎧は脱がないの?」
太刀を横に構え、上から押し潰されて膝を着いた《ドラッケン》から出て来たのは調子の変わらない質問だった。
「その手には乗らない。この重量と膂力で一気に――」
「そっちの鎧のことだけじゃないよ。幾重にも重ねた分厚い“城塞”じみた心の仮面」
「っ……」
まるで心の内を見透かすような物言いに《C》の背中に怖気が走る。
「仮面を被るのは傷付くのが怖いから?
それともいくつもの仮面で覆って本当の君がどこにいるのか、君自身も分からないのかな?」
「黙れ……」
どんな苦境であっても優雅に振る舞う。
そんな貴族としての在り方を忘れ、《C》――ルーファスは語気を荒くする。
「あまりにも分厚くし過ぎて、本当の自分が分からないのかな?
そんな心がバラバラで私に勝とうだなんて十年早いよ」
「黙れっ!」
力任せに《機神》は剣を振り切る。
だが、そこにいたはずの《ドラッケン》を捉えることはなく、《機神》の剣は大地に突き刺さる。
「くっ――」
危なげなく太刀で剣を逸らした《ドラッケン》は素早い身のこなしで立ち上がる。
「フフ、少しは良い顔をするようになったじゃない」
挑発じみた声にルーファスの心は乱れる。
「適当なことを機甲兵越しに何が分かると言うのだ?」
「見えなくても分かるものだよ」
「世迷言を!」
実力行使で黙らせようと《機神》は《ドラッケン》に斬りかかる。
「本当に勿体ないなぁ……それだけの才覚があったなら一角の“武人”になれただろうに」
踊るように《機神》の剣を躱して、すれ違い様にオーバルギアの腕部に《ドラッケン》は傷を刻む。
「くっ……」
本体にまで及ばない傷だが、ルーファスはその傷に心がざわつく。
「ムキになっているのは図星だからでしょ?」
《S》の指摘にルーファスは沈黙を返し、呼吸を整える。
「…………そうだな。認めよう」
心を落ち着けてルーファスは潔く認める。
「多重人格という程ではないが、私は常に複数の自分の目で己を評価して行動している」
アルバレアの貴族としてのルーファス。
“あの方”の筆頭としてのルーファス。
そして今は《C》としてのルーファス。
今の《C》の行動を充実していると感じている一方で、どこか冷め切った思考で自分やクリス達を見ている自分には気付いていた。
「だがそれが何だと言うのだね?」
ようやく目が慣れて来た斬撃を盾で弾きながらルーファスは言い返す。
「人は“役割”を演じるために仮面を被る。そんなこと誰だってやっていることだ!」
「別にそれが悪いとは言わないけど、自分の芯をそれで見失ってたら本末転倒だよ」
「分かった風な口を利くな」
幾度目かの斬撃を盾で防ぎ、次こそは反撃できるとルーファスは確信する。
「…………はぁ……もう良いや」
しかし、距離を取った《ドラッケン》は少女のため息と共に太刀を下ろした。
「…………何のつもりだ?」
「その“機体”なら見えると思ったんだけど、お兄さんは結局上で的当てしていた貴族と同じみたいだね」
「なん……だと……?」
「亀みたいに守ってばかり……私の“目”もまだまだだなぁ。君はもっと隠れ熱血系だと思ったのに」
もはや完全にルーファスから興味を喪失させた《S》は踵を返す。
「待てっ! 私が上の貴族と同じとはどういうことだ!?」
「だってお兄さんって不意打ちや漁夫の利で勝っても喜べる人でしょ? うん、とっても帝国の貴族らしいよ」
《S》の言葉にルーファスは目を見開き、言葉を失う。
ルーファスから言わせれば不意打ちも漁夫の利も勝つための立派な戦術でしかない。
目的を達成するためなら騎士道精神と貴族の矜持など捨てられる。
恥じるつもりはないその在り方のはずなのに、自分が忌み嫌う醜悪な貴族と同類だと言われて反論が出て来なかった。
「ちがう……私は……」
“目的”のために効率を考えて何が悪い。勝てない蛮勇など自己満足でしかない。
その言葉は出て来なかった。
貴族としてのルーファスが《空中要塞》の運用の仕方としてはありだと認めていたから。
――勝てば良い――
この内戦で見続けて来た貴族の姿はそう言い続けていた。
――勝てば良い――
効率を求めて勝つことしか考えていない自分は常にそう言い続けていた。
醜いと蔑んでいた貴族の姿と、そんな彼らを冷笑しながら同じことをしている自分が重なりルーファスは言葉を失う。
「私は……私は……」
変われたと思っていた。
アルバレア家から追放され、“彼”やクリス達と共に過ごす遅めの青春のような日々に新たな成長ができているのだと思っていた。
だがそれは違った。
“仮面”が増えただけでルーファスの本質は何も変わっていない。
「これが貴族……私なのか……」
己の醜い姿を自覚したルーファスは―― 無防備な《ドラッケン》の背中。
アルバレアとして何人にも負けることは許されないと、貴族のルーファスが囁く。
“目的”のためならばどんなことでもできると、筆頭のルーファスが囁く。
ここで倒さなければ内戦の脅威となると、《C》のルーファスが囁く。
その囁きに――魔が差した。
「っ……」
握り締めた剣を静かに構える。
その切先が葛藤に揺れるが、何かが背中を押すようにルーファスを前へと押し出した。
「っ――――」
雄叫びを押し殺し、無防備な《ドラッケン》に《機神》は襲い掛かり――
背中を向けたまま《ドラッケン》は黒い太刀の鯉口を静かに切る。
「――零月一閃――」
*
「所詮、私などこの程度の“器”だったのだよ」
貴族のルーファスが諦観に満ちた微笑みを浮かべる。
「この身は不義によって生まれた穢れた身……あの方を“父”を乗り越えるなど身の程知らずな望みだったのだよ」
「あの方にはレクター君もクレア君もいる。私にできることはあの方にもできるのだから潔くここで散るべきだろう」
筆頭であるルーファスは己の力不足を嘆く。
「クリス君もスウィン君もナーディア君も、私が導く必要などない。キーア君に至っては私は邪魔な存在でしかないだろう」
《C》であるルーファスは所詮は打算だけの付き合いだったのだと割り切る。
――ああ、ここで私は終わりか……
全てが遅く感じられる時間間隔の中、首を一太刀で撥ね飛ばさんとする刃にルーファスは苦笑を浮かべる。
――意外と早かったものだな……
不義の子が身の程を弁えず、あの男を“父”と仰ぎ、《金の騎神》の起動者になったこと。
全てが分相応だったのだとルーファスは自嘲する。
――私は……超帝国人になれなかったようだ……
せめて散り際は潔く、高潔でありたい。
美しいとさえ思える太刀筋をその目に焼き付けてルーファスは――
「死ぬなよ。アンタに死なれたらオレ達も困るんだ」
「そーそー、るーちゃんには全部が終わったら特別手当てをたんまり払ってもらわないといけないからねー」
「この仕事が終わったらみんなで帝都の《ノイエ・ブラン》で打ち上げしようよ」
「あの……この戦争が終わったら勉強を教えてもらえませんか? クロスベルのためにキーアに何ができるのか知りたいの」
走馬灯のように脳裏に駆け巡る仲間たちの言葉。
「誰も死なないでください。全員で生き残って完全勝利を目指しましょう」
激化した内戦の中でも理想論を掲げた次期皇帝の言葉を思い出し。
「ぐうっ!」
背中を押されて踏み出すはずだった一歩をルーファスは強引に半歩に変える。
直後、美しさを兼ね備えた美しくも力強い一閃が、装甲の隙間を寸分違わず捉えて、《金》の首まで薙ぎ払った。
「――――おや?」
必殺の一閃の不発の手応えに《S》は首を捻る。
目算よりも半歩足りなかったのは自分が読み違えたからなのか、それとも相手が踏み込まなかったからなのか。
それを判断する前に《機神》が技後硬直で固まる《ドラッケン》に激突する。
「わたしはっ! わたしはっ!」
半分切り裂かれた喉の痛みも貴族としての優雅さも忘れてルーファスは感情が赴くままに叫ぶ。
「わたしはしねないっ!」
「あはっ!」
魂が籠った叫びと不格好な悪あがきに《S》は失望の表情を一変させて無邪気な笑みを浮かべる。
「もらったっ!」
体当たりによって浮き上がった《ドラッケン》に千載一遇の好機と《機神》は半ばから斬り裂かれた剣を横薙ぎに振り抜き――
「甘いっ!」
空中で身を捩り繰り出したつま先が持ち手を砕く。
「なっ!?」
ルーファスが驚愕に目を見開く間にも、足蹴りに遅れて独楽のように回転する《ドラッケン》が横薙ぎの一閃を繰り出す。
「っ……」
咄嗟に身を引いて、左手に残った盾でその一撃を受け止める。
「ダメだよ! そこで守り入るのは!」
危なげなく着地した《ドラッケン》は前へ、前へとさらに剣戟を激しくする。
《機神》は左腕の盾に身を隠し、《S》はその姿にやはり失望を――
「プラドーッ!」
次の瞬間、《機神》から焔が溢れる。
「っ!?」
深紅の焔に異質な何かを感じ《ドラッケン》は初めて自分から距離を取る。
「へえ……」
深紅の焔は《機神》のオーバルギアと桃色の装甲を焼き溶かし、《金》の輝きを露わにする。
「やだなぁ……出し惜しみなんて……」
剥き出しの《金》のフレーム。
深紅の焔は《金》が抜いた柄に集中し深紅の刀身へと焔が固まって行く。
「さしずめ火之迦具土神の剣とでも呼ぶべきかな?」
重装甲に数えきれない武装の数々よりも魅力的な深紅の剣を前に《S》は愉しそうな笑みを浮かべる。
「うん――すごく良い感じだ」
その姿に満足そうに《S》は頷く。
「これまでの無礼は謝罪するよ。そしてそれ程の物を抜いてくれたのだから、こちらもこれ以上の出し惜しみは無作法と言うものだ」
《ドラッケン》は太刀を正眼に構える。
「こおおおおおっ……」
《S》の呼気が大気を震わせ、《ドラッケン》に黄金の闘気が溢れ出す。
「まさか――」
その覚えのある脈動にルーファスは息を呑む。
「神氣合一!」
黄金の光に包まれる《ドラッケン》。
「さあ、行こうか! 今なら――」
息巻く《S》だったが、目の前のモニターが突然切れた。
「…………え……?」
そしてそれはモニターだけではなく、各所の計器からも光は消え失せ、狭い操縦席に漆黒の闇が満ちる。
「ええ!? 何で!? 良い所だったのに!?」
ガチャガチャと足元のペダルを踏み、操縦桿を動かして、バキッと音が鳴って壊れる。
「あれ……?」
暗闇の中、外れた左右の操縦桿に《S》は冷や汗を垂らす。
「これは……」
突然動かなくなり、黄金の闘気を拡散させた《ドラッケン》を訝しむが、直後に機体の各所から上がった黒い煙に状況を察する。
「ええっと……あれ? ハッチも開かない……」
奇蹟的に通信機は無事だったのか、中の《S》の困惑ぶりがルーファスの耳に届く。
「やれやれ……何とも締まらない幕引きだ」
肩を竦め、助けるべきかと考えたところで《ドラッケン》が縦に割けた。
「っ……」
「ふう……危なかった」
中から大太刀を持って機甲兵を斬り裂いた脱出した《S》は焦ったとばかりに額を拭う。
「なっ!?」
中から《ドラッケン》を二つに斬ったことにルーファスは驚かない。
八葉一刀流の中伝ならばそれくらいできるだろう。
驚いたのは彼女の姿。
長く美しい白い髪の少女。
年の背は自分よりも低く、ユーシス達と同じくらいに見て取れる。
声から若いと思っていたが、ルーファスが驚いたのはそこではない。
白く長い髪に漆黒の大太刀。東方風の衣装であり、女性の体つきをしている点は明確に違うのだがその姿にルーファスがコーディネートした“彼”を想起させるには十分だった。
「“剣鬼”」
「やれやれ……オーブメントは脆くて敵わないな」
《S》は左右に倒れて行く《ドラッケン》から危なげなく地面に着地して嘆く。
「だけどまあ、頃合いだったかな。あれ以上やっていたら遊びじゃ済まなかったかも」
ため息を吐きながら《S》は大太刀を鞘に納めると、《金》を見上げる。
「フフ、中々楽しかったよ。機会があれば今度は生身で仕合おうよ」
先程までの戦いぶりからはとても想像できない軽い調子にルーファスは調子が崩される。
「それじゃあ私はこの辺で、弟弟子のお遣い、ワイスマンって言う人を探さないといけないからね」
「弟弟子……? それにワイスマン? 待てそれは――」
ルーファスの制止は《ドラッケン》の爆発に掻き消される。
そしてその爆炎が晴れた時にはもう《S》の姿はそこにはなかった。
「…………彼女はいったい……」
まるで嵐のような少女だったとルーファスは生き残った安堵の息を吐く。
だが、それも束の間――
「やってくれたな!」
聞こえて来た声はルーファスにとって慣れ親しんだもの。
「来たか……」
《ドラッケン》の残骸を踏み潰すように《金》の前に《金の神騎》――ルーファスにとって本命のヘルムート・アルバレアが降り立った。