「はあああああっ!」
シャーリィの咆哮が響き渡り、炎を纏ったチェーンソーの刃が伸びる。
刃の蛇は向かって来る自走地雷の少年たちを薙ぎ払い爆散させていく。
「ふっ――」
足に装着した具足のオーブメントの効果により、大気を蹴ってフィーは空中で跳躍し、爆発の中を突っ込んで来た自走地雷を上空から強襲してその首を落す。
抱き着き自爆しようと腕を広げる別の自走地雷からフィーは後ろに跳んで場所を開ける。
「ひゃっはぁああああっ!」
すかさずシャーリィがそこに飛び込み、チェーンソーの刃を持って自走地雷を両断する。
「シャーリィ!」
「良いよ!」
夥しい数の自走地雷に囲まれているにも関わらず、二人は余裕の表情で頷き合い背中を合わせる。
「シルフィードダンスッ!」
「デスパレードッ!」
背中を合わせた二人はその場で回転して双銃と機関銃を乱射する。
《人喰い虎》の銃弾が自走地雷の少年たちを穿ち、《妖精》の弾丸が弧を描いてその弾丸の上に着弾――人形達は内側から爆破されていく。
「ふう……だいぶ離宮から離されちゃったみたいだね」
もはや動く自走地雷がなくなった所でシャーリィは“テスタ=ロッサ”を下ろして息を吐く。
「だから言ったのに、誘い込まれてるって」
シャーリィの言葉にフィーはため息を吐く。
離宮から外へと《西風》の二人を追い出したが、レオニダスとゼノは離宮を守ろうとせず、むしろ逃げるように後退して潜めていた自走地雷を嗾けて来た。
大量の自走地雷に追い立てられながら、移動させられたのはカレル離宮から少し離れた列車の車庫広場。
「シャーリィ……」
「分かってる。いるね……」
フィーの呼び掛けにシャーリィは頷く。
肝心のゼノとレオニダスの気配だけはない。
車庫広場の周囲の至る所にある遮蔽物から無数の敵意と懐かしい気配達にフィーは複雑な気持ちになる。
「腕を上げたようだなフィー。それにしても《人喰い虎》とあれ程の連携を……むぅ……」
「フィー。いくら何でも付き合う友達は選んだ方が良いで、もう猟兵じゃないんやから」
周囲への警戒心を強める二人に、戦場とは場違いな気安い雰囲気で散々逃げていたレオニダスとゼノの二人は何事もなかったように現れる。
「レオ、ゼノ……それに……いるんでしょ、みんな?」
フィーは正面の二人、そして自分達を取り囲んでいる気配に呼び掛ける。
その声に反応して姿を見せたのは黒いジャケットに“蒼鷲”の紋章を着けた猟兵達。
「《西風の旅団》……あれ? でも《火喰い鳥》のお姉さんはいない?」
取り囲んだ《西風の旅団》を見回してシャーリィは彼女を始めとした何人かがいないことに気付く。
「久しぶりだね……みんな」
「ああ、ゼノ達から聞いていたが元気そうで何よりだ」
「できればこんな戦場でアンタと出会いたくはなかったんだけどね」
フィーの言葉にライフルを構えた男と剣を持った女が答える。
《西風の旅団》にとってフィーは完全に袂を別ったと思っていただけに、彼女が帝国の内戦にここまで深く関わって来るとは予想外だった。
「ま、みんなにも積もる話はあるだろうけど、これで詰みや」
「武器を捨て、この内戦が終わるまでお前達には大人しくしてもらう」
ゼノとレオニダスがその場を仕切り、彼らの言葉に従ってフィーとシャーリィを取り囲んでいた《西風の旅団》は一斉に武器を構えて戦闘態勢となる。
「…………もしかして……」
そんな彼らを見回してシャーリィは一言呟く。
「フィーをこの内戦から遠ざけるために、シャーリィ達をここまで誘導した……何て言わないよね?」
「はは、そんなんちゃうでー」
シャーリィの指摘をゼノは笑って否定する。
それでも疑いの眼差しをやめないシャーリィにゼノは咳払いをして誤魔化して続ける。
「ともかくお前さん達にはここで退場してもらう」
「抵抗すると言うのなら……相手になろう」
闘気を漲らせるゼノとレオニダスにシャーリィは白い目を向けてから黙り込んでいるフィーを横目に見る。
「大丈夫……もう揺るがないから」
シャーリィの視線にフィーは答えてゼノ達に向き直る。
「どうして団長が死んだ後、みんないなくなったのか……
今まで何をしていたのか……もう聞かない……」
「ふむ……」
意外なフィーの言葉にレオニダスは訝しむ。
「団にいた時のわたしは猟兵にしかなれないと思っていた……
でもわたしは何にだってなれるんだって士官学院の先輩がリンが……《Ⅶ組》のみんなが教えてくれた……
団長は表の世界でわたしに生きて欲しかったんだって、今なら分かる」
「フィー……」
「わたしは今まで守ってもらってばかりだった……
守ってもらって……足を止めて待ってるばかりで……
士官学院にいてもいつかみんなが迎えに来てくれるんじゃないか……そう思ってた……
だから団のみんなに……クリスに置いて行かれた……」
フィーは真っ直ぐにゼノとレオニダス、そしてその場にいる《西風の旅団》に宣言する。
「わたしはもうみんなに守ってもらわないといけない弱い“妖精”でなんていられない……
《Ⅶ組》の仲間だって胸を張って言えるように頼ってくれるように、わたしはもう大丈夫だって団長に分かってもらうためにも……」
フィーは一度目を伏せて心に決めた言葉を口にする。
「……わたし自身の復讐と恩返しとして、団長はわたしが――殺す」
その瞬間、《西風の旅団》に漂っていた空気が変化する。
「…………本気か……フィー?」
サングラスの下で目を細めゼノは聞き返し、レオニダスもフィーの暴言を窘める。
「考え直せフィー。確かに団長はお前の故郷を奪ったかもしれない。だがそれはそもそも……」
「みんなこそ、考え直した方が良いんじゃない?」
二人の言葉をフィーは真っ向から受け止めて否定する。
「団長が良く分からない方法で生き返ったみたいだけど、それでどうするつもり?
一度解散した団を作り直して、また団長と一緒に猟兵を続けるの? 何もかも元通りかもしれないけど、そこにわたしの居場所はないんだよ」
「それは……」
「むぅ……」
フィーの指摘に二人は口ごもる。
「わたしには“団離れ”しろって言っておいて、みんなはいつまで“団長”に甘えているつもり?
そんなことのために今みんなが動いているって言うなら、団長がいなくちゃ前に進めないなんて言うのなら……」
フィーは双銃剣を構えて宣言する。
「そんな情けない《西風の旅団》はわたしが知っている《猟兵団》なんかじゃない! 団長を倒す前にわたしがみんなをここで倒すっ!」
「っ――」
「フィー……」
「ぶっはっ! あははははははっ!」
フィーの宣戦布告に怯む《西風の旅団》に対してシャーリィは声を上げて笑う。
「良く言ったねフィー!」
「シャーリィ……叩かないで」
背中をバンバンと叩いてくる《人喰い虎》にフィーはジト目を返す。
その目を無視してシャーリィはフィーに続いて溜め込んで来た不満をぶちまける。
「シャーリィもさ、アンタらに言いたかったことがあるんだよね」
「何やと?」
「《赤い星座》のお前が我らに何の用があると言うのだ?」
「あん?」
心当たりがないと言わんばかりのゼノとレオニダスの態度にシャーリィは眦を上げる。
「シャーリィ、どうどう」
フィーに宥められながらシャーリィは何とか心を落ち着かせてその不満を言葉にする。
「こんなこと言うまでもないはずなんだけどさ、シャーリィ達は“猟兵”だよ……
どんな酷い戦場で死にそうになっても、生きてれば“負け”じゃない。それが“猟兵”の中の常識みたいなものだったのにさ……
アンタ達が“猟兵王”を生き返させるなんてことするから、うちが《西風》に負けたことになってるんだよ。どうしてくれるつもり?」
「そ、それは……」
考えてもみなかった《赤い星座》への風評被害にゼノはばつが悪そうに顔を背ける。
しかし、シャーリィはすぐにその怒りを治めた。
「まあ別にうちの評判なんてどうでも良いんだけどさ……」
「む? だったら何をそんなに怒っている?」
聞き返したレオニダスの問いにシャーリィは“テスタ=ロッサ”を地面に叩きつけて宣戦布告をする。
「わっかんないかなー? アンタ達は“闘神”と“猟兵王”の勝負を穢したんだよ!」
今でも瞼の裏に思い出せる、見ているだけでも熱くなれる二人の殺し合いを思い出しながらシャーリィは続ける。
羨ましいとさえ思った死闘。
だからこそ、その戦いに終わってからケチをつけた《西風の旅団》にシャーリィは怒りを覚え、Ⅶ組としてではなく、《赤い星座》の一人として目の前の何も分かってない猟兵団に告げる。
「うちの団長をコケにしてくれた落とし前……どうしてくれるつもり?」
「それは……」
自分達の事、自分達の団長の事にしか頭になかったレオニダスはシャーリィの詰問に閉口することしかできなかった。
「本当はパパ達も呼んで全面戦争でもしようかと思ったんだけどさぁ……」
思っただけでしなかったのは、それをすればシグムントは恐らくその依頼料をクリスに吹っ掛けていたから。
もっとも今はそんな必要はなかったとシャーリィは感じていた。
「フィーが言っていたけど、“猟兵王”がいないアンタ達程度ならシャーリィだけで十分だよね」
「シャーリィ、勝手にわたしの獲物取らないでよ?」
意気込むシャーリィにフィーが釘を刺す。
「このガキどもが……」
「どうやらお仕置きが必要みたいだな」
大勢に囲まれながらも、すっかり勝った気になっているフィーとシャーリィに、そして何より団長を殺すと宣言されたことで、《西風の旅団》はその身に黒い瘴気を漂わせる。
「フィー……団長を殺すなんて本気か?」
殺気立つ周囲と同調するように闘気を溢れさせながらゼノは最後の確認をする。
「団長にはお前も生きて欲しいはずだ。それにお前程度の腕で団長を殺すなど不可能だ」
レオニダスもフィーの言葉を撤回を求める。
そんな二人の姿にフィーはため息を吐いた。
「今のわたしじゃ届かないことは分かってる……その時になったらたぶん迷ってためらって泣いちゃうかもしれない……
それでも……やるって決めたから……
それにこれはたぶんきっと……団長自身が望んでいることだとわたしは思う」
そうでなければ今になってフィーの故郷を焼いた仇などと明かす理由がない。
今の状況に一番の違和感を持っているのがルトガーなら、その介錯と復讐を望んでもおかしくない。
「それに団長は今のわたしの家族を傷付けた……だからわたしは《Ⅶ組》のために《西風》と戦うことを躊躇わない」
「フィー……」
「そしてきっとその先にクリスが――■■■がいるなら……ゼノ、レオ、みんな……邪魔をする奴はみんな倒す!」
無意識に誰かの名前を呟き、フィーは纏わりつく瘴気を払う風の闘気を纏う。
「っ……」
「いい加減、いつまでも保護者面はやめなよ」
シャーリィもまた赤黒い闘気を溢れさせて“テスタ=ロッサ”を構える。
「猟兵の粋も分かってない寄せ集めはここで死ね! いやシャーリィが殺す! 今日を《西風の旅団》の命日にしてあげるよっ!」
「あっ! こらっ!」
誰よりも早く駆け出して“破壊獣”へと斬りかかって行くシャーリィをフィーは咎めながら、わずかに遅れて駆け出し――シャーリィを追い抜いて“破壊獣”に双銃剣を振るう。
小さな刃と鉄塊のマシンガントレットが激突の快音を合図に“妖精”と“人喰い虎”のコンビと《西風の旅団》の戦いが始まるのだった。
*
「どうやら手助けの必要はなさそうですね」
遠く離れた狙撃ポイントで、集音マイクを構えたついでに覗いていたライフルのスコープからガレスは顔を上げた。
「ああ、そのようだな」
シグムントはガレスの呟きに頷き、ザックスは周囲に展開させていた《赤い星座》のメンバーたちに撤収の合図を送る。
「どうやらお嬢は《Ⅶ組》で良き成長をなされたようですね」
「ふ……俺達に気付いていないのならまだまだだな」
娘を褒められながらもシグムントはまだ甘いと評価する。
とは言え、《西風の旅団》の残党に感じていた憤りを代弁して啖呵を切った娘にシグムントは誇らしげだった。
「それで貴様らはどうする?」
シグムントが振り返り、頭を抱えている二人に尋ねる。
一人は黒いスーツにサングラスの大男。
一人は赤いプロテクターを纏った緑髪の女。
その傍らにはもう一人、小さな女の子が控えているが、そちらの少女は一連の盗聴に無関心を貫いていた。
「はあ……どうしてこうなったんだか」
ため息を吐き、双眼鏡で始まった戦闘を覗き込んで大男――ゼファー・イーグレットはもう一度ため息を吐く。
「《西風の旅団》が俺の――いや兄貴のワンマンチームだってことは薄々気付いちゃいたんだがな」
不本意でも生き返ってしまったことを割り切り、ゼノ達の我儘に付き合ってやるかと延長戦を投げ槍に受け入れた。
そうやって咎めることなく現状に流されるままにいたせいで《西風の旅団》は二度目のルトガーの喪失によって完全に暴走していた。
別に猟兵崩れのように略奪を好んで行う三流に落ちたわけではない。
だが、今の《西風の旅団》は報酬に踊らされて、良いように使われているだけの便利屋にしか見えなかった。
「《赤い星座》の方が問題なく立て直しているだけに、へこむなぁ」
「うちは兄貴と俺、二つの重心を持っていたからだろう。《西風の旅団》はルトガーが中心に成り立っていた団だ。残された副長に“猟兵王”の代わりが務めるわけはない」
「うぐっ」
シグムントの言葉に緑髪の女は胸を抑えて蹲る。
「それにしたって……フィーの成長と比べるとな……」
ちゃんと決別を決め、果てには“猟兵王”を殺し直すと宣言したフィーにゼファーは思わず顔を綻ばせる。
出来る事ならフィーには銃を捨てて表の世界で生きて欲しいと願っていたのだが、自分を超えると言う宣言に嬉しさを感じずにはいられない。
「ふ……あんたには人をスカウトをする才能はあっても、育てる才能はなかったということだ」
「いや、全くもってその通りだ」
肩を竦めるゼファーのへこんだ様子にシグムントは《西風の旅団》に向けていた溜飲を下げる。
「それであんたはどうするつもりだ? 《西風》を助けるつもりならば俺が相手になるぞ」
ガレスとザックスを下がらせてシグムントは己に背を向けたまま戦場の観戦を続けるゼファーに尋ねる。
「まさか……これはあいつらにとっても試練って奴だ。ここでフィーとそっちの嬢ちゃんに負けて折れるようなら、遅かれ早かれ“猟兵”としてやっていけねえよ」
それに元々、《西風の旅団》に引導を渡すつもりだったことをゼファーは言葉にせず飲み込む。
完全にタイミングを逃してしまったこともあるが、“猟兵王”に挑むなら多勢に無勢であっても《西風の旅団》を見事乗り越えてみせろとさえ思う。
「しかしつくづく度し難いな」
ゼファーは改めて自分の業を感じ取ってため息を吐く。
フィーに足を洗って表の世界で生きて欲しいと遺言を残したくせに、今は自分を殺すと宣言したフィーに期待を感じずにはいられない。
「来いよフィー。ここまで……そうすれば……いや、それはないか」
“闘神”とは違う期待を胸にゼファー・イーグレットは彼女たちの戦いを見守り――
「それでお前はどうするんだ、アイーダ?」
ゼファーは未だに頭を抱えている女、元《西風の旅団》の副長である《火喰い鳥》アイーダに話しかける。
アイーダはため息を吐いて顔を上げて答える。
「どうも何も、フィーがあの様子なら私の出る幕ではないでしょう団――ゼファー殿」
「そうなのか?」
「そもそもあんな怪しげな男の言葉を信じて団長を生き返られるなんてことは反対だったんです……
そのせいで団は割れて、なし崩しに解散する羽目になったというのに今更助けて欲しいなどと馬鹿げた手紙を送りつけて来るから……」
当時の事を思い出したのか、アイーダは顔をしかめる。
「あー」
元副長の苛立ちにゼファーはばつが悪そうに戦場へ視線を戻す。
「お、あいつら《機甲兵》を持ち出して来たか」
「はあっ! 生身の人間に機械人形を使うなんて何を考えているのよ!」
ゼファーの呟きにアイーダは眦を上げる。
「いや、あの二人なら大丈夫――」
「ゼファー」
「ん? どうしたシオン?」
言葉を遮ったシオンにゼファーは振り駆る。
「ん……」
そう言ってシオンはあらぬ方向を指差すと地響きが起きる。
「そっちは帝都の方だが……」
促されるままにゼファーは双眼鏡を覗き込んで見たのは、帝都ヘイムダルの象徴とも言えるバルフレイム宮が変貌していく様だった。
「あれが《獅子戦役》の時に現れた《煌魔城》って奴か……ん?」
ゼファーは双眼鏡の中で見覚えのあるものを見つける。
それは《煌魔城》の尖塔の部分に下半身と同化した《蒼の騎神》。
緋の城は蒼へと染まり、空を蒼のオーロラが覆い隠す。
そして城は《蒼》から伸びた樹木のような根に浸食されて更なる変貌を遂げる。
城を半身として巨大になった《蒼の騎神》が翼を広げる。
その姿は教典にある“悪魔”を想像させる程に禍々しく、瘴気を帯びたその姿は“暗黒竜”の再来を感じさせる。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
巨神となった《蒼》は羽を広げて咆哮を上げ、蒼い風を巻き起こす。
風は帝都の中を駆け巡り、カレル離宮にまで届く。
「ガアアアアアアアアッ!」
「シャアアアアアアアッ!」
「何!?」
「どうなってるの!?」
至る所で上がり始めた獣のような咆哮にフィーとシャーリィは思わず攻撃の手を止める。
カレル離宮で戦う者達が、帝都に取り残された者達が、各地で戦う貴族連合と正規軍がその蒼い風に触れて――変貌する。
蒼の光を宿し、その姿は巨大化する。その姿はどことなく《蒼の騎神》に似た魔煌兵。
蒼の瘴気に触れた、帝都の人々は一人、また一人と“蒼の眷族”となって魔煌兵へとその姿を変えて行く。
*
「そうだ……それでいい」
煌魔城の中、少女の唄声が響く中、玉座のような祭壇の前でクロワール・ド・カイエンは一人悦に浸る。
玉座に座るのは《蒼の騎士》クロウ・アームブラスト。
その背後には尖塔に生えていたはずのオルディーネが控えている。
「“愚帝”によって打ち砕かれた祖先の大望の“暗黒竜の儀式”!」
《蒼》を触媒にして、手心のない《魔王の凱歌》は城を顕現するだけでは留まらず、どこまでも響き渡り《呪い》を撒き散らす。
「ついに――ついにこの時が来たのだ!」
クロワールは身を翻し、外を一望する。
蒼い風で染め上げられた帝都ヘイムダル。
その呪いを受けて眼下の民は力の無いものから忠実なる《魔煌兵》へと変貌していく。
「これがオルトロス帝が望んだ世界か……」
帝都ヘイムダルの人口はおよそ80万人。
その全てが《魔煌兵》となり、己の思うがままの人形となることにクロワールは興奮を隠せない。
否、それはもう80万人では済まない。
このまま《蒼》の力が増せば、近隣のトリスタもリーヴスも飲み込み、エレボニア帝国の全てが自分のものとなる。
「そう……私はオルトロス帝が成し得なかった《魔界皇帝》となるのだ!」
「団のみんなはオレらとは別に動いとる。“団長を取り戻す”ためにな!」
みんなと言いつつ、閃ⅢとⅣで誰も増えなかった西風の旅団……
そして取り戻すと言いながら、当たり前のように団長と一緒に登場して満足そうだった二人……
果たしてこの二人は閃Ⅲ以降に本当に必要だったのだろうか?
煌魔城と魔王の凱歌の効果について
例に及ばず、この二つもエマが悲壮し、禁忌とされていたけど帝都は割と無事だったのでどんな効果があったのか水増ししてみました。
この二つの効果は暗黒竜が現れた時の帝都に満ちた瘴気の再現になります。
暗黒竜が出現した時はヘイムダルは死都となり、当時の皇帝はセントアークへと逃れています。
当時のものは《魔煌兵》による眷族化ではなく、人や動物を魔獣へと変貌させたものになります。
それを再現しようとしたのが獅子戦役の頃のオルトロス帝であり、そうして生み出されたのが《煌魔城》と《魔王の凱歌》になります。
彼はこれを使って帝都市民を魔煌兵という眷族にしてドライケルスを迎え討とうとしました。
そういう背景があって《煌魔城》の破壊ができなかった魔女はこれを封印して禁忌としたのではないかと考えました。
原作ではヴィータが手加減をしてコントロールしていたので被害は《魔王》が出てくるまでほぼなかったのですが、ここではイソラがアルベリヒの傀儡なのでブレーキ役としては全く機能していません。