「何で……何で貴女がここに……?」
二人掛かりの聖痕砲を弾き返されて光の奔流に呑み込まれるはずだったセドリックは目の前の背中に言葉を失っていた。
「…………」
それは《緋》と《灰》に背中を向けたまま無言で佇んでいる。
「答えろ! 貴女がどうしてここにいる《鋼の聖女》!」
自分達を守る様に、実際跳ね返された砲撃を両断して守った《銀》は――アリアンロードは振り返らずに口を開いた。
「さ……」
「さ……?」
「散歩を少々……」
躊躇いがちに出て来た言葉をセドリックは一瞬、理解できなかった。
「えっと……あまりに天気が良かったので《アルグレオン》に乗って空を散歩、いえ散翔していたら偶然この場に出くわしたのです」
聞いてもいないのに早口でまくし立てるアリアンロードの声にセドリックの眼差しはどんどん冷めていく。
「散歩……? ヴァリマールも散歩した方が良いの?」
「キーア、我にそれは必要ない」
真に受けたキーアは思わず尋ね、《灰》はすぐに否定する。
「いきなり何をふざけたことを言っているんですか貴女は!?」
「…………デュバリィのようにするのは難しいですね」
セドリックの叫びに《銀》は肩を竦める。
「そんなことを聞いているんじゃない! どうしてここに――何のつもりでそこに立っているんだ!?」
まるでこれから《獣》に挑もうとしている《銀》を問い詰める。
「あれは元が《蒼》ではありますが、《エンド・オブ・ヴァーミリオン》と同じ存在……
ならばこそ私の250年の研鑽を試す相手に相応しいと言えるでしょう」
かつての屈辱を思い出しながらアリアンロードは《獣》を見据える。
「貴方達は良く戦いました……
《黒》の介入がなければ先程の一撃で貴方達は勝利していたでしょう」
「あ……」
「ここから先はもはや“内戦”ではありません。あれは私が倒します」
「何を勝手な――っ!?」
言い返そうとした瞬間、セドリックは自分から漏れ出した光を見下ろす。
「何だ……《ARCUS》が光っている?」
《ARCUS》に灯った光は《緋》の端末に移って一つのメッセージを画面に映す。
「戦術リンクが繋がった……? 《零の騎神》ゾア・ギルスティン……まさかリィンさん!?」
思わず叫んだ“名”にノイズが重ならなかったことにセドリックは目を見開く。
「キーアッ!」
「あああああっ!」
思わず《灰》に振り返るが、帰って来たのはキーアの泣き声だった。
「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!」
「キーア!? いきなり何で!?」
泣き叫んで謝罪を繰り返すキーアにセドリックは狼狽える。
「キーア! リィンさんは君を怒ってない! だから――」
「キーアがちゃんとできなかったから! またリィンに――」
キーアの叫びからセドリックは何故彼女がこれほどの取り乱して泣き叫んでいるのか考えて――
「まさか……」
その可能性に思い至りセドリックは蒼褪める。
リィンは閉じ込められた《零の世界》から脱出して来た訳ではないのだとしたら、彼はいったいどうやってここに来ているのか。
どれだけのリスクを背負って自分達を助けに来てくれたのか。
「馬鹿か僕はっ!」
これまで散々危ないところを助けてもらって、今も戦術リンクから送られてくる“力”が戦いで消耗した《緋》を癒してくれている。
今まで何度も感じていたわずかな手助けではない。
より明確に感じる彼の気配や、このタイミングで因果改変によって隠されていた彼の“名”を認識できることの意味。
「僕は何をしている!?」
『クリス?』
「ちょっといきなりどうしたのよ!?」
「僕は……僕はっ!」
この期に及んでリィンやアリアンロードの救援に安堵している自分にセドリックは苛立つ。
「ガアアアアアアアアアアア!」
そして《獣》にも何かが起きたのか、突然苦しみ始めた。
「あれは……纏っていた“想念”が剥がれていく?」
セリーヌはその様子から何が起きているのかを察する。
帝都市民80万人の想念で強化された《蒼》は彼らが《魔煌兵》から解き放たれたことで、纏っていた想念の鎧が失っていく。
「…………どうやら私が手を下す必要もなかったようですね」
意気込んで介入しに来た《銀》は決まりが悪そうに天を仰ぐ。
その言葉にセドリックの全身から力が抜ける。
「これで……終わり?」
あまりにも少子抜けるする幕切れにセドリックは呆然と苦しむ《獣》を見守る。
外で何が起きているのか分からない。
だが、帝都市民の想念が解放されたという事は《蒼》と《帝都》の間に繋げられた戦術リンクが解けたということ。
ミスティとダーナ、二人の眷属が無理だと言っていたことを登場と同時にやってのけることは流石の一言に尽きる。
「僕は……まだクロウを殴れていないのに……」
拳を握り締めて悔しさに歯を食いしばる。
セドリックも、《緋》の中の想念達も不完全燃焼の苛立ちを呑み込もうとして――
「まだだっ!」
その声が上がった。
「何をしているクロウ・アームブラストッ! 戦えっ! 敵軍にはオズボーンがいるのだぞっ!」
黒い瘴気をその身に纏ったクロワールは苦しむ《獣》を罵り囃し立てる。
「グルアアアアアアアアアアッ!」
しかしクロワールの声は届いていないのか、《獣》は変わらず想念の流出が止まることはない。
「ええいっ! 祖父と同じで肝心な時に使えない! ならば――」
そう叫んでクロワールが取り出したのは先端に宝石があしらわれた杖だった。
「出でよっ!」
その号令によって《獣》の背後に二つの巨大な魔法陣が浮かび上がり、転移して現れたのは《黒》と《紅》の《神機》だった。
しかしその姿は半壊しており、動く気配はない。
「カイエン公、一体何を?」
誰かによって倒された《神機》を呼び出して何をしようというのかセドリックが首を傾げているとクロワールは続けて叫ぶ。
「合体せよ、オルディーネッ!」
「だから、合体なんて――え……?」
半壊してパーツが足りていないと思っていた《神機》がまるで泥のように溶け出して、その姿を粘土のように蠢き変化させていく。
『うそ……あれって……』
ミリアムが目を丸くして驚く。
粘土の塊が形作るのは巨大な《戦術殻》。
二つの《戦術殻》は光となって《獣》に融合して、その姿を変える。
《獣》から《騎士》へ。
元の《騎神》の姿を取り戻すような変化に伴い、想念の流出が止まる。
「はははっ! 《零の騎神》などこの《蒼の帝王》が粉砕してくれる! そしてもう一度――へ……?」
そしていつからそこにいたのか、クロワールの背後にいた《蒼い竜機》が泥となってクロワールを呑み込んだ。
その泥もまた《戦術殻》にその姿を変えて、《蒼》の武器となる。
「ウ――――オオオオオオオオオオッ!」
幾分か理性的になったように聞こえる咆哮を《蒼》が上げる。
手には黒い焔が揺らめくダブルランサー。
体は元の《蒼の騎神》のものだが、その胸には《緋》や《灰》に増設された“フェンリル”の増幅器を始め、身体の各所に増設された鎧の装甲。
そして十字の盾の二つの浮遊ユニット。
あえて名付けるのなら、《オルディーネ・アルカディス》。
その霊圧は先程の無秩序に垂れ流していた《獣》には劣るものの、研ぎ澄まされた“力”の凄みは増していた。
もっとも――
「…………つくづく度し難い」
荒れ狂う霊力の風をその身に受けながらも《銀》は動じることはなかった。
「リィンの手を煩わせるわけにはいきません。ここは私に任せてください」
《銀》は改めて《緋》と《灰》を庇う様に《蒼》の前に進み出る。
「っ――」
聖女の申し出にセドリックは萎えかけていた意気を燃え上がらせる。
「――ゃまだ……」
「クリス……?」
体を震わせるセドリックをセリーヌが振り返る。
《銀》は無手で《蒼》の前に立ち、両手を身体の前で祈る様に手を合わせて――
「邪魔をするなぁっ!」
その《銀》の肩を背後から《緋》は掴んで押し払う。
「っ――アルノールの子?」
「下がれ! こいつは僕の獲物だっ!」
《銀》を押し退けて《緋》は《蒼》に突撃する。
自分の意志と《緋》に宿った“想念”に背中を押されながらも叫ぶ。
「リィンさんの手を煩わせるわけにはいかない、それは僕の台詞だっ!」
リィンからの戦術リンクを拒絶して、《緋》は疾走する。
正面からの突撃に《蒼》の周囲に浮かぶユニットが動く。
盾に見えた板状のユニットは回転して底を見せると、そこには銃口の穴があった。
盾と銃を兼用した二つの浮遊ユニットは突撃して来る《緋》に弾幕を浴びせる。
「っ――」
小さな弾丸は《緋》に命中すると炸裂してその装甲を削る。
「くっ……ああああああああっ!」
一撃でも怯ませる威力がある弾幕の乱れ撃ちに《緋》は咆哮を上げながら前進を選ぶ。
「ちょ!? 何考えてるのよ!?」
無謀な突撃にセリーヌが悲鳴を上げ、一際大きな衝撃に必死に操縦席にしがみつく。
「クロウ・アームブラストッ!」
炸裂する弾丸が巻き起こする爆炎を掻き分けて《緋》は跳び拳を振り被る。
対する《蒼》は無言でダブルセイバーを振り十字の剣閃を放つ。
「そんなもの――っ!」
迫る剣閃を《銀の拳》で打ち払い、急降下の飛翔の勢いを乗せて《緋》は一直線に《蒼》へと迫る。
突き出された《銀の拳》に対して《蒼》はダブルセイバーを盾に受け止め、両者の激突が激しい雷光を生み出し床に亀裂が走る。
外からの干渉によって揺らぎ始めていた《煌魔城》はその衝撃によって崩壊が加速する。
「《テスタ=ロッサ》! お前の力はその程度かっ!」
叱咤激励して《緋》は拮抗からさらに拳を押し込む。
機体の各所が開き、《緋》は全身から霊力を焔の様に揺らめかせてダブルセイバーを更なる力で押し込み――殴り飛ばした。
ダブルセイバー越しに殴り飛ばされた《蒼》は壁を貫通しながら吹き飛ぶ。
「そうだ……もっとだ……もっとよこせ《テスタ=ロッサ》」
もはや終わった後の事など知らない。
《獣》に堕ちたようにセドリックは激情を解放して、この戦いに全てを出し尽くす勢いで殴り飛ばした《蒼》を追い駆けた。
*
《煌魔城》がバルフレイム宮に戻る寸前、その壁をぶち抜き《蒼》が雨が降る帝都の空に現れる。
それを追い、焔を身に纏った《緋》が一直線に《蒼》に追い縋る。
「クリス!」
弾幕を張る《蒼》に対して《緋》は愚直な突進を再び行う。
迸る程の霊力が漲っているせいか、先程はその身を削られた弾丸にも耐えていることにセリーヌはホッと胸を撫で下ろすが、すぐに我に返って文句を叫ぶ。
「ちょっと止まりなさいクリスッ!」
セリーヌの制止など意に介さず、弾幕を突き破って肉薄した《緋》は爪を開いた右腕を一閃――空を斬る。
「何――っ!?」
目の前から消えた《蒼》を探して《緋》は周囲を見回す。
『――上だよっ!』
その頭上から急降下してきた《蒼》のダブルセイバーの一撃を《緋》は右腕で防ぐ。
そのまま斬り抜けて行った《蒼》は空こそが自分の領域だと言わんばかりに加速する。
「どうするのよ? あの速度は追い付けないわよ」
「どうするも何も――」
セリーヌの叫びにセドリックは行動で応える。
《緋》は黒い光に包み込まれると、飛翔する《蒼》の前に転移する。
「逃げるなっ!」
驚く《蒼》の顔を鷲掴みにして《緋》は大地に叩きつけると言わんばかりに急降下する。
「っ――おおおおおおおおおおおおっ!」
《緋》に負けず劣らずの力で《蒼》は《緋》の手を外そうともがき。ダブルセイバーを胴体に当てて力任せに振り抜く。
「ちっ……」
腕を外された《緋》は《蒼》が放つ四つの翼の法剣に対して、瞬時の己の翼を同様の法剣の翼に作り替えて迎撃する。
四対四の法剣は《緋》と《蒼》の間で火花を散らしてぶつかり合い、その勢いが失われてそれぞれが巻き戻って行く。
それで仕切り直しの間を稼げたと言わんばかりに《蒼》はダブルセイバーを構えて突撃する。
それを迎え討たんと《緋》は迫る刃を拳で迎撃する。
「このクソ皇子がっ!」
ようやく出て来たクロウの声にセドリックは眦を上げて言い返す。
「僕がクソならお前は何様のつもりだっ!?」
ダブルセイバーが薙ぎ払われて《緋》の装甲に傷を刻む。
「俺は選ばれたんだっ!」
《緋》に殴り返されながらも《蒼》は怯まずダブルセイバーを突き出す。
「選ばれただと!?」
「そうだっ! カイエン公に拾われて! ヴィータに選ばれて! 俺はこの《オルディーネ》を手に入れた!
《女神》が俺にオズボーンに復讐しろと、俺に帝国を救う英雄になれって言っているんだっ!」
「世迷言をっ!」
クロウの言い分にセドリックは子供じみた言い訳だと一笑する。
確かに《起動者》は今後の帝国の未来に大きく関わる選ばれた存在と言っても過言ではない。
だが、それがテロリストをやる免罪符になって良いはずがない。
「オズボーンのやばさを理解できない無能の皇族がっ!」
「ゲーム感覚で人殺しをしているお前達よりオズボーン宰相の方がずっと真っ当だっ!」
「何だと!?」
「この内戦でどれだけの人が死んだと思っている!?
《煌魔城》なんか出現させてどれだけの人を《魔煌兵》にしたと思っている!?」
「そんなもんっ! オズボーンさえ殺すための必要な犠牲だっ!」
「それをお前達が言うのかっ!?」
ダブルセイバーと拳。
手数も間合いも関係なく、両者は互いに一歩も引かずに空中で何度もぶつかり合い――
「もらったっ!」
「甘えっ!」
一瞬の隙を突いたと思った《緋》は《蒼》の間合いの中に飛び込む。
だが、《蒼》はダブルセイバーから手を放して左手で《緋》の顔を掴み――
「メギデルスッ!」
左手に金色の光を宿して、《緋》を呑み込む程の砲撃を零距離から放つ。
「がっ!」
空から砲撃に押される形で大地に――ドライケルス広場に《緋》は叩きつけられ、撥ね飛ばされて半壊した民家の中に突っ込み瓦礫に呑み込まれる。
「もらったっ!」
瓦礫に体を半分埋めた《緋》に《蒼》は勝機と見てダブルセイバーを前に突き出すようにして急降下する。
「う…………ああああああああっ!」
仰向けに倒れていた《緋》は手に触れた“それ”を掴むと乱暴に振り抜き――ドライケルスが《蒼》を横撃して吹き飛ばす。
「はぁ……はあ……はあ……」
瓦礫を押し退けて立ち上がった《緋》はドライケルスの銅像の足を握り締めて跳躍、民家だったものに背中を預けて項垂れる《蒼》に叩きつけた。
「ちょっ! ちょっ! あんたはっ! 自分が何をしているか分かっているのっ!」
セリーヌがあまりのことに絶句している間にもドライケルスは二度、三度《蒼》に叩きつけられる。
「アハハハッ! 流石獅子心皇帝っ! 良い手応えじゃないかっ!」
ドライケルスは《騎神》の装甲に罅を入れるどころか、《蒼》の角を砕き、滅多打ちにする。
その《ドライケルスの銅像》の攻撃力にセドリックは気を良くして高笑いを上げる。
「そうじゃなくて! それはアンタの御先祖様の銅像なんでしょ!?」
「これが“猟兵流”って奴だよセリーヌッ!」
「あんたは帝国の皇子でしょうが! だいたいそれは魔女の里でも語り継がれている偉大な――」
「――――調子に乗ってんじゃねえっ!」
しかし、無防備に殴られ続けていた《蒼》は振り下ろされたドライケルスの頭を掴み、力任せに振り抜いた。
「っ!」
油断した《緋》はドライケルス越しにその膂力に振り回され、握っていた足から手が抜けて水面を水切りのようにバウンドし――
「打ち砕け――」
態勢を立て直そうと空中で止まった《緋》に《蒼》はドライケルスを回転させて投げつける。
「がはっ!」
回転して飛来するドライケルスの直撃を受けた《緋》はそのままバルフレイム宮の城壁に叩きつけられ――
《蒼》は《緋》を打撃したドライケルスを空中で掴むとそこに闘気を漲らせて――
「ヴォーパル・D・スレイヤーッ!!」
ドライケルスを槍に見立てて投擲する。
「クリスッ! 避けなさいっ!」
頭から突っ込んで来るドライケルスにセリーヌが悲鳴を上げ、《緋》は咄嗟に身を捩り――ドライケルスが《緋》の左肩を貫通して城壁に突き刺さった。
「あああああああああああっ!」
「来るわよっ!」
フィードバックした痛みがセドリックを襲うが、セリーヌが《蒼》の追撃を叫ぶ。
「取ったっ!」
左肩をドライケルスで縫い留められた《緋》に《蒼》はダブルセイバーを突き出して最大加速で突撃する。
「あああああああアアアアアアアアアアアアッ!!」
対するセドリックは悲鳴を上げ続け――
「――やられる」
セリーヌが目を瞑った瞬間、《緋》は縫い留められた左肩を自ら引きちぎって《蒼》の刃を躱し、カウンターの拳をその顔面に叩き込む。
《蒼》は弾き返されたように水面をバウンドしてドライケルス広場まで吹き飛ばされる。
「ふぅ……ふぅ……ふぅ……」
《緋》は残った右腕で壁に垂直に突き立ったドライケルスの足を掴んで引き抜く。
「ちょ!? それまだ使うつもり!?」
《緋》の霊力は全身の強化に回して武器を錬成している余裕がないとはいえ、ドライケルスを使い続けることにセリーヌは難色を示す。
セドリックはその言葉に応えず、《緋》は足を脇に挟み込むように馬上槍を構えるようにドライケルスを抱え持つ。
「だから――にゃあああああああっ!」
セリーヌの悲鳴を置き去りにして《緋》は突き殺すどころか轢き殺す勢いで飛翔する。
「一つ覚えの突撃が効くかよっ!」
空中で態勢を戻した《蒼》は《緋》の突撃を回避して振り返り反撃を――
「うおっ!?」
背後からの衝撃に《蒼》は前のめりに倒れる。
突撃した《緋》に遅れて尾の剣が《蒼》の背中を強打して撥ね飛ばされる。
「終わりだ! クロウ・アームブラストッ!!」
「ちいっ!」
態勢を崩した《蒼》に《緋》が旋回して迫る。
浮遊ユニットが《蒼》を守る様に光弾を連射して、翼の四つの法剣が伸びて《緋》に襲い掛かる。
光弾が《緋》の罅割れた体を、武器にしたドライケルスを容赦なく撃ち砕いて行く。
だが《緋》の勢いは止まらない。
「うああああああああああああああああっ!」
四つの法剣に顔を削られ、右足が引きちぎられ、ドライケルスの頭が割れた。
それでも《緋》はひたすらに前へ飛翔する。
「この野郎っ!」
《蒼》はダブルセイバーを振り被る。
「喧嘩は――」
とある少女から教わった言葉を思い出しながら《緋》は砕けたドライケルスの像の中から現れた“総ゼムリアストーンの剣”を身体ごと突き出す。
《蒼》の刃と《緋》の刃が激突し――
「喧嘩は気合いだぁああああああああああっ!」
ゼムリアストーンの剣はダブルセイバーを打ち砕き、《蒼》の胸を貫いた。
オズボーン
「獅子戦役の時に造った剣………………隠す場所を間違えたか……?」