宇宙の、遠いどこか。そこにその存在はあった。
消えかかりそうに小さい存在だが、どす黒く、大きさに比例した存在感を放つ。
「マダダ…マダオワッテイナイ!」
とそのとき、その黒い存在が突然謎の空間に引きずり込まれた。そこは、上も下も分からなくなるような色が渦巻いていて、不気味さしか見えてこないところだった。
「ココハ?」
「やっと見つけました」
「ダレダ!」
黒い存在に、細長く、人間と見えなくもない影が近づいた。
「なあに、しがない宇宙人ですよ。それより、私と組みませんか?」
「ナニ?」
二つの存在の頭上に、一つの緑豊かな星が現れる。
「この星には、地球と同じような生命が多く存在します。それらを利用すれば、あなたの悲願はすぐに達成されるでしょう」
「…オモシロイ。ソノハナシ、ノロウデハナイカ」
「交渉、成立ですね」
二つの存在は、その美しい星ーパーソ・モ・スターーに向かっていった。
『…先ほど、…町付近に、隕石が落下しました』
『衛星も直前までその存在を察知できず、周辺地域には混乱が…』
グァァァァァァ!
『え、後ろ?は、え、ば、化け物!?ちょ、逃げ』
ガリッ!
ズザァァァァ…
遠く広がる、宇宙。
この広い無限の空間には、様々な星に、様々な文明や生物が存在していると言われている。
そして、その中の一つ。我々人類が住む地球から、光の巨人たちの住むM78星雲、そしてそのもっと先にある、緑と青の豊かな、地球によく似た星。パーソ・モ・スター。この星では、地球では怪獣と呼ばれる生物が、人間に似た姿をとって生活している。
これから、あなたの目はあなたの体を離れ、この不思議な星の時間の中に入っていくのです。
~~~
パーソ・モ・スター、オトモニー国、カカントウ地区。
ある一軒家のベッドの中に、その少女はいた。
「くう…むにゃ…」
優しい寝息をたてながら眠る彼女の名は、『ミサキ・ミクラス』16歳、高校二年生。
薄茶色の髪と、紅白の縞模様の角を揺らしながら寝息をたてていたが、そんな彼女の安眠を突然遮るように、ケータイの着信音が鳴った。
テーン、テーン、テテーンテンテンテッテテー♪
「うひゃあ!?」
かなり大きめに設定してあったのか、その音は部屋中に響きわたり、彼女はあわててケータイをとり、通話を始めた。
「はい、もひもひぃ…」
「…ミサキ、もしかしてまだ寝てた?」
電話口の向こうから、透き通った呆れ声が聞こえてきた。
「や、やだなぁー、そんな訳ないじゃーん」
「ふーん、なら良いけど、そろそろ家出ないとやばいんじゃない?」
「え?」
そういわれて部屋の時計をみると、短針は8、長針は30を指していた。
「…あ、やばい」
その時間を見て、ようやく急ぐべきだと考えた。
「ヤ、ヤバイヨヤバイヨー!ドウシヨドウシヨー!?」
「落ち着きなさいって、今から支度すれば間に合うから。じゃあね」
そういって、電話が切れた。
「と、とりあえず着替えないと」
そういうと、彼女は今まで着ていた服を脱ぎ捨て、床にほっぽり出していた制服を拾い、それを着始めた。
「…よしっ!」
青い制服に身を包んだ彼女は、階下に降りていこうとする。
「っと、忘れ物忘れ物!」
しかし、何かを思い出したように、机の上にあった機械を取り上げ、左腕に取り付けた。それは、銀色を基本とした、真ん中に何かが入りそうな構造をしていた。
ダダダダダッ!
ものすごい勢いで階段を下り、リビングに突撃した彼女は、朝食のトーストにかぶりついた。
「ガブッ!」
「…あんたは、もう少し落ち着いて食べられないの?」
隣に座っていた、金髪に黒い三日月の角が生えた女性が言った。彼女はエリス・ミクラス。ミサキの姉である。
「ひょーふぁふぁいふぁん、ふぃふぁんふぁいんふぁひ」
「…ああ、もう良いから好きにしなさい」
そういうと、鞄を持って玄関へ向かっていった。
「行ってきまーす」
「いっふえはっはーい」
そういいながら時計をちらりとみると、時間はもう8時40分を指していた。
「おっとっと、そろそろ行かないと」
そういうと、残っていたサラダや目玉焼きを一気に口につっこみ、鞄を持って玄関に走った。
「行ってきまーす!」
そういって、彼女はドアを思いっきり開いた。
海岸沿いの道路で、二人の少女が立っていた。
「…遅いなぁ、あいつ」
銀色の髪に、額のランプが目立つ彼女はウヅキ・ウィンダム。どうやら彼女は目当ての人が来なくて少々苛ついてるようだった。
「まあまあ、ちょっとぐらい待とうよ、いつものことなんだし」
苛つく彼女をいさめる、黒髪に短い角の落ち着いた感じの彼女はアスミ・アギラ。
「…おーい!ウヅちゃーん、アーちゃーん!」
そこへ、駆け足でミサキが現れた。
「あ、ほら来たみたいだよ」
息を切らせながら、やっとの思いで二人の所にミサキが到達した。
「遅い!全く、いつまで寝てたのよ!?」
「ご、ごめんうづちゃん!昨日遅くまでトレーニングしてて…」
「ハァ…あんたってやつは」
「まぁまぁ、うづもそんなに怒らないであげて?ミサも、体調管理はしっかりしないとね?」
ミサキに対し詰め寄るウヅキを、アスミがやんわりといさめた。
「…まぁ、アスミが言うんなら」
渋々ながらもウヅキは納得し、ミサキから離れた。
「いやぁ~、さすがのうづちゃんもアーちゃんにはかないませんなぁ?」
「それはあんたもでしょ?」
「まぁまぁ、そんなことより早く学校行こうよー。時間やばいよ?」
そう言われてウヅキが時計を見ると、時刻は8時55分を指していた。
「や、やばっ!ミサキ、アスミ、走るよ!」
ウヅキが先導し、三人は坂を駆け上がり始めた。
「いやぁ、風が気持ちいいですなぁ」
「そうですなぁ」
「んなこと言ってる場合じゃないでしょ!?」
春の追い風を感じながら、学校への道を駆けていった。
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キーンコーンカーンコーン…
市立光星高校。その中の教室の一つ。
「はーい、じゃあ授業始めるぞー」
白と黒の混じった髪の毛に赤縁のメガネをかけた女性の教師が、始業の合図をしていた。
その時、教室の扉が勢いよく開いた。
「おはよぉーございます!」
「…ミサキ、またお前か。一体いつになったらお前の遅刻癖は直るんだ?」
「や、やだなぁーキリちゃん先生、ギリギリセーフですよ、ギリギリセーフ」
ガツン!
女教師、キリエ・フドウの鉄拳がミサキの脳天を襲う。
「ちゃんとフドウ先生と呼べ。はぁ、まったく、早く席着け」
「うう…はーい」
その後、おそるおそるといった感じでアスミとウヅキが教室に入ってきた。
「す、すいません!」
「お、遅れましたぁ!」
キリエは声がした方を振り向き、興味の無いような感じで言った。
「ん?ウインダムとアギラか。次からは気を付けろよー早く席着けー」
突然、先に一人で座っていたミサキが立ち上がった。
「ちょっとキリちゃん先生!何でその二人にはそんなに優しいんですか!?」
「こいつらは別に遅刻常習犯じゃないしな。それと…」
そう言うとキリエはミサキの席の所に近づいていき、彼女の頭を拳で挟み、おもいっきりねじ押し始めた。
「ちゃんはいらないって何度言えばわかるんだ?」
「痛い痛い!ごめんなさい!」
しばらくしてから、キリエはミサキの頭から手を離し、何食わぬ顔で授業を始めた。
「早くお前も座れ、始めるぞ」
「うぅ、横暴だぁ…」
そんなやりとりを見ながら、担任、キリエ・フドウの受け持つ光星高校1年陸組の面々は、こう思うのだった。
(ああ、いつも通りだなぁ…)
このやりとりでいつも通りの日常を実感するのであった。
いかがだったでしょうか?
それでは次回「カプセルズ出動せよ」にご期待ください。