カプセルズ!   作:サボルアンデッド

2 / 2
第二話です。



第二話 カプセルズ出動せよ

キーンコーンカーンコーン…

「…くぁぁ、やーっと終わったぁ!」

 自分の机に突っ伏して寝ていたミサキが、終業のチャイムが鳴ると同時に飛び起きた。

「全く、あんたにはもうちょっと真面目さってのがつかないもんかしらね?」

「まあまあ、そう言わなくても」

 呆れ顔のウヅキと、それをいさめるアスミがミサキの机に近づいた。

「おお二人とも、おっはよー」

「おっはよーじゃないわよ。あんたいっつもヤメ先生の授業寝てるわよね?」

「えぇ~、だってしょうがないじゃん、ヤメッちゃん見てるとすごい眠くなってくるんだもーん」

 現国担当のランコ・ヤメは、見ているだけで眠気を誘われると生徒に言われている。

「…はぁ~、何で私の授業って、ほぼ半数が寝てるんだろ。向いてないのかな、私…」

 当の本人であるヤメは教卓の上に突っ伏していた。

「ま、いっか、二人とも早く帰ろー」

「そーだねー」

「あ、待ってよ!」

 三人は、教室を後にした。

 

~~~~~~~~~~

 

「クソッ!何だよ皆して、何で俺のことを地味地味言うんだよ!」

 繁華街の裏路地に、一人の男子高校生がいた。相当気が立っているようで、ゴミ箱や段ボールを片っ端から蹴散らして回っている。

「ああ、もうイライラする!いっそ、俺を無視する奴らなんて…」

「消えてしまえばいい、そう思うか?」

 その時、目の前に突然黒服の男が現れた。

「うわっ!だ、誰だあんた!」

 男子高校生の質問を無視して、男が歩み寄る。

「では、君が憎いと思っている奴らを全員消せる力があるとしたら、どうする?」

「そ、そんなもんがあったら、そりゃあほしいけど…」

「では…」

 そう言うと男は、懐から何かの機械を取り出した。全面が黒くゴツゴツした短剣とも言えなく無い奇妙な物だった。

「これを使いなさい」

「これは…?うわっ!?」

 その機械にふれた瞬間、大量の闇がふきだし、その男子高校生の体に流れ込んだ。

「フフフ、さあ、その力を使い…」

 

「ヒカリを、ヤミへ」

 

~~~~~~~~~~

 

「あー、たいくつだーうづちゃん一発芸かなんかやってよー」

「やるわけ無いでしょ」

「ふっ、これだから素人は」

「あんた一体何者よ」

「よーしアーちゃん!このトーシロちゃんにお手本を見せてやれ!」

「え?え~っと…。か、髪を垂らして、貞子!」

「10点!」

「そんなぁ」

 三人は、帰りの道を何ともない話をしながら歩いていた。

「いやー、それにしても最近暇だねぇ。なんか刺激が欲しいって言うか…」

ピリリリ!ピリリリ!

 その時、三人のケータイから同時に着信音が鳴った。

「!」

 三人はケータイを取り出し、通話ボタンを押す。

『C002地点に怪獣が出現。カカントウ地区第4班、ただちに出動せよ』

 スピーカーから、無感情な女性の女性の声が響く。

そして、三人はその声を聞き終わる前に、わき目もふらずにかけだしていった。

 

~~~~~~~~~~

 

「ギギギ」

 それは、ロボットと呼ぶには人間らしく、人間と呼ぶにはロボットらしい姿をしていた。両腕には巨大なドリルが装着され、機械仕掛けの装甲をしていたが、その隙間から見えるのは明らかに人間の肌だった。

チュイイイン

 手当たり次第に周りにある物を壊してまわる。その手にかかれば、鋼鉄で出来た物も粉々に砕けてしまっている。

キキィーッ!

 そこへ、何台ものパトカーがやってきた。先頭にいた車両から一人のモジャモジャ頭の男が現れ、それに続いて何人もの警官が車から降り、横一列に隊列を作った。

 先頭の男が、胸ポケットから通信機を取り出した。

「特攻A班、現場に到着しました」

『近隣住民の避難は完了している。特攻A班、発砲を許可する。』

 通信を終えたモジャモジャ頭の男は、通信機をしまい、腰のホルスターから拳銃を取り出した。

「総員、構え!」

 一糸乱れぬ動きで、警官全員が拳銃を構えた。

「発砲!」

 銃声が響きわたり、弾は半分ロボットたちの大群に向かっていった。

しかし…

カカカァン!

 弾はすべて、弾かれてしまった。

「怯むな!撃てっ!」

 銃撃は続けられたが、その弾はどれも半分ロボットたちの体に弾かれてしまった。

「ギギッ!」

 お返しと言わんばかりに、半分ロボットたちの顔上半分を隠していた仮面からレーザービームが発射され、警官たちのすぐ目の前の道路を焼け焦げさせた。そして、それを皮切りに半分ロボットたちの猛連撃が始まった。

 レーザーの雨が警官隊を襲い、彼らは完全に戦意を失ってしまった。

「ひ、ひぎぇぁぁぁ!」

「おっかさぁぁぁん!」

 一目散に警官たちは逃げていき、あっという間に最初に出てきたモジャモジャの男だけになった。

「あいつら…!くそ、腑抜けが!」

しかし、その男の目の前に、レーザーが降り注いだ!

「!」

 男はとっさに腕で顔を隠した。

(終わりだ…!)

 そう思った瞬間。

「スパークレーザー!」

ズドォン!

 自分の背後から放たれた攻撃によって、すべてが打ち落とされた。

「な、なぁ!?」

とっさに後ろを確認しようとしたが、その瞬間、通信機から声が響いた。

『本部より入電、これ以上の攻撃は危険と判断し、特攻A班に撤退を命ずる。』

「な!でもまだ奴らは!」

『繰り返す。これ以上の攻撃は…』

思わず抗議をしたが、通信機からは事務的な返事しか帰ってこなかった。

「…特攻A班、撤退!」

 モジャモジャ頭の男は、その場から去っていった。

「…行った?」

「…行ったみたい」

「いよっし…突撃ぃ!」

 三つの人影が、半分ロボットたちに襲いかかった。

「ギギ!?」

 右腕につけた機械から伸びる剣で、半分ロボットたちに攻撃を加えていく。突然の攻撃で、半分ロボットたちは反応が出来ていなかった。

「ギギィ!」

 しかし、やられてばかりで済むわけはなく、半分ロボットたちは腕のドリルで三人を追い払った。

 後ろに飛び、地面に着地したその人影は、

「いゃあー、なかなかやりますなぁ」

「ま、それなりね」

「燃えてくるねぇ!」

 ミサキ、ウヅキ、アスミの三人だった。

「それじゃ、行きますか!」

 ミサキのその声を合図に、三人は右腕を水平に構え、装着していた機械を操作した。すると、その機械から乾電池の取り付け穴のようなものが飛び出した。

[セットアップ、オーケー]

 機械から女性の声が聞こえるとともに、三人は懐から緑色の半透明カプセルを取り出した。その中には、電、炎、風を模した物が封じ込められていた。

「「「マケットチェンジ!」」」

そう叫び、三人はカプセルを機械にセットし、差し込んだ。

[チェンジマケット!タイプ:エレキ!]

[チェンジマケット!タイプ:フレイム!]

[チェンジマケット!タイプ:ウィンド!]

 三人の体が粒子状の緑の光に包まれる。

「ギギィ!」

 しびれを切らした半分ロボットたちが、三人にレーザーを打ち込んだ。

キキィン!

 しかし、全て光に振れた途端に弾かれていった。

 そして、光は三人の体に集まり、だんだんと形作られていった。光が収まる頃には、三人の体には鎧のような物が装着されていた。

ミサキには、腕の部分を大きく包むようなアーマー。そして、ヒレに見えなくもない、上半身を覆う茶色にクリアパーツの混じった鎧。

 ウヅキは、背中や足の部分につけられたブースターに、腰の部分にはタンクが取り付けられた銀色の鎧。

 アスミは、脚部を大きく強化するようなアーマーに、動きやすさを重視した流線型の鎧。

「エレキバトラー・1!」

「フレイムバトラー・2!」

「ウィンドバトラー・3!」

「「「カプセルズ、ミッションスタート!」」」

 三人が、半分ロボットの大群に向かっていった。

「エレキエッジ!」

 ミサキは電気を帯びた二本の曲剣を出現させ、半分ロボットたちを切りつける。

「ヤアッ!」

「ギギーッ!」

 目にもとまらぬ連撃で、半分ロボットたちはどんどん消滅していった。

「いよっし!」

 

「フレイムマグナム、スタンバイ!」

 ウヅキは銀色に輝く銃ーフレイムマグナムーを構え、半分ロボットたちに向かって光弾を発射した。

「ギギィ!」

 ほとんどの個体が消滅していく。しかし、その中で光弾の雨をくぐり抜けた何体かがウヅキに飛びかかった。

 ウヅキは、フレイムマグナムの側面に取り付けられたスイッチを操作した。すると、足や背中に装着されていたブースターの噴射口が半分ロボットたちに向けられ、無数の火炎弾が浴びせられた。

半分ロボットたちは、ほとんどが消滅された。

 

「行きます!ウィンドハンマー!」

 アスミは巨大な緑色の鎚ーウィンドハンマーーを取り出し、それを地面に叩きつけた。すると、周囲に突風が巻き起こり、ロボットたちは相当数が吹き飛ばされていった。

「やったぁ!」

 どんどんロボット達を蹴散らしていく三人。しかし、突然そこへ黒のオーラを纏った光弾が襲いかかった。

「うわっと!」

 三人は後ろに跳躍して攻撃を回避した。

『…ダレダ、オマエラハ?』

 そこから現れたのは、黒の短剣を持った高校生ぐらいの男であった。しかし、その体からはどす黒いオーラが溢れ出ていて、眼光は赤く光っていた。

「…あいつ、まさか!」

 ウヅキが驚愕の声を出す。

『オレノジャマヲスルナ…キエロ!』

 男が叫ぶと、周りに飛んでたオーラが男の左手に集まり、明らかな形を作っていく。そして、オーラが収まると、男の手には15センチほどの怪獣の人形が握られていた。

「やめて!その人形から手を離して!」

 ミサキが叫ぶ。しかし、その制止を聞かず、男は人形の足に短剣の先を突きつけた。

[ダークライブ!ベムラー!]

 その瞬間、男の体を黒い魔法陣のような物が包み込み、体を変化させていく。そして、魔法陣が消えたときそこにいたのは…

「ギャァァァァ!」

 刺々しい体を持った、2メートルを超える怪人の姿に変貌していた…。




いかがだったでしょうか?
それでは、次回、『強者』。ご期待下さい。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。