じゃじゃ馬ストレート   作:碧河 蒼空

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10話 みんなが大好き!

 練習中に芳乃ちゃんから自主トレに誘われていた私は、息吹ちゃん、希ちゃんと一緒にレイクタウンの池畔を走っていた。芳乃ちゃんはというと自転車に乗って私達に伴走している。

 

 私と希ちゃんは息を切らす事無くまだまだ余裕だけど、運動競技自体が初心者の息吹ちゃんは既に辛そうな顔をしていた。

 

「あれ、詠深と珠姫じゃない?」

 

 大芝生広場の所で息吹ちゃんが水上ステージでキャッチボールをしている詠深ちゃんと珠姫ちゃんの存在に気付いた。

 

 なんだ、表情の割には回りを気にしたり喋る余裕があるみたい。まだまだ大丈夫だね。

 

 ところが、芳乃ちゃんは自転車を止めると、物陰から詠深ちゃんと珠姫ちゃんの様子を覗きはじめた。息吹ちゃんと希ちゃんも同じように身を潜めた為、私も三人に付き従う。

 

 耳を澄ませると、珠姫ちゃんが詠深ちゃんと話をしている。

 

 珠姫ちゃんは始めの内は勝ち負け関係なく楽しくやれれば、何なら人数が揃わなければキャッチボールだけでも良いと思ってたんだって。でも、試合に向けて練習が出来るようになって、更に全国という言葉が、珠姫ちゃんを本気にさせた。

 

「勝ってみたい、このチームで。私も好きだから」

 

 珠姫ちゃんははっきりとそう言った。

 

 ••••••私はどうなんだろう?

 私もガールズの時は全国を目指していた。大好きな先輩と全国へ行きたい、また先輩と野球がしたいって。

 

 なら、今の私は••••••?

 

 詠深ちゃんと一緒に大泣きしたあの日。また野球が出来る、それだけで私は凄く幸せだった。幸せすぎて罰が当たるんじゃないかって思ったくらいだ。

 それから菫ちゃんと稜ちゃんがやってきて、同じ日に怜先輩との真剣勝負の末、怜先輩と理沙先輩の復帰が決まった。希ちゃんと白菊ちゃんが入部した日には、希ちゃんの言葉から全国大会が目標になった。

 

 これまでの短くも濃い日々を振り返る。

 

 明るくて元気な詠深ちゃん。

 私を野球に引き戻してくれた珠姫ちゃん。

 いつも私達を見てて引っ張ってくれる芳乃ちゃん。

 慣れないキツイ練習にもちゃんと付いてくる頑張りやな息吹ちゃん。

 お調子者の稜ちゃん。

 しっかり者で面倒見の良い菫ちゃん。

 実は凄く私達に気を遣ってくれる怜先輩。

 いつも優しい理沙先輩。

 上品だけどパワフルな白菊ちゃん。

 負けず嫌いで不器用な希ちゃん。

 

 うん、やっぱり私は••••••。

 

「呼んだ!?」

 

 わたしが考え込んでいる内に話に進展があったみたい。

芳乃ちゃんが芝生の斜面を滑り降りて二人の元へ向かっていた。

 私達三人も水上ステージへ降りていく。

 

「どこからか聞いてた!?

 

 詠深ちゃんは顔を赤くして叫んだ。珠姫ちゃんも顔を赤くしてそっぽを向いている。

 

「さあ。今来たばかりよ」

 

 息吹ちゃんがシラを切ったが••••••。ごめん、息吹ちゃんの気遣い無駄になると思う。

 

「珠姫ちゃん、私もこのチームが好きだよ」

「ちょっ、陽美!?」

「••••••やっぱり聞いてたんじゃない」

 

 そこは私もこれから恥ずかしいことを言うから許して欲しい。

 

「私ね、あの時珠姫ちゃんが野球をやろうって言ってくれてすごく嬉しかった••••••本当にありがとう」

「ど、どうしたの?急に」

 

 私が珠姫ちゃんの目を見詰めてお礼を言うと、珠姫ちゃんは更に顔を赤らめてたじろいだ。

 

 振り返ったのはまだ一週間にも満たない日々だけど、やっぱり私はみんなのことが大好きだ。

 

「私、みんなが大好き!だから、みんなが全国を目指すって言うなら私も全国を目指す。珠姫ちゃんがこのチームで勝ちたいって言うなら私が勝たせてみせるよ」

 

 私はここで誓う。このチームで全国へ行く事を。

 

 

 

 

 

 

 翌日の部活で新しい練習メニューが配られた。

 昨日までとは段違いにハードな練習が組まれている。それでも、みんなで全国へ行くためと思えば、むしろ気合いが溢れてくる。

 

 顧問の藤井先生との顔合わせも行われ、先生の計らいで一週間後に練習試合が行われる事となった。

 

 新越野球部が本格的に始動する。燃えるな~!

 

 詠深ちゃんと交代でブルペン投球に入った。正面には昨日、全国を誓った珠姫ちゃんが座る。

 

 私は力が(みなぎ)る感覚に身を任せ、投球と同時に後ろで束ねた髪を跳ねさせた。

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