じゃじゃ馬ストレート   作:碧河 蒼空

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 お久し振りです。卒業試験の勉強を始める前に一つ更新します。


4話 八月はまだまだ先だよ?

「ふ~んふふ~んふ~ん······♪」

 

 私は鼻歌を奏でながら押し入れに仕舞われた段ボール箱達の中から一つを引っ張り出す。ついこの間引っ越しの時に片付けたばかりなので、どの箱に何が入っているのか迷うことは無かった。

 

 箱を開けるとガールズ時代に使っていた練習用のユニフォームとグローブが姿を見せる。私は感極まって手に取ったユニフォームを抱き締めた。

 

 ヤバい。顔のニヤケが収まらないのが自分でも分かる。

 

 ユニフォームを見ていると当時の事を思い出す。私が投げる時、いつも向こう側で座っていた先輩。体は小さいけどとっても頼りになって、その存在は私の中で物凄く大きかった。そんなことを思い出していたら······はしゃいでいた気持ちが少し落ち着いた。

 

 私はユニフォームを適当に置くとグローブを手に取る。しばらく仕舞いっぱなしだったから型付けをしなおすのだ。左手に嵌めたグローブにグラブハンマーを叩き付ける。

 

 できた。

 

 グローブをパタパタと開閉する感覚が中学時代のものと同じになり、そんな出来栄えに私は満足した。

 近くの公園へ投げ込みに行きたい衝動に駈られるが、今日は久し振りに全力で投げたのでしっかりと身体のケアに努めたいと思い止まる。

 

 早めにお風呂に入ってからストレッチをしていると、お婆ちゃんから夜ご飯の呼び出しが掛かった。

 

 居間に行くと既に配膳は終わっていた······ってこれはっ!?

 

「今日はハルの好きな唐揚げだよ」

 

 わーい!!何を隠そう私は鳥の唐揚げが大好きなのだ。しかも筍御飯まであるではないですか!流石お婆ちゃん分かってるー。晴美ポイント差し上げます!

 

 私は早速唐揚げを口に運ぶ。唐揚げに歯を通す度に肉汁が溢れだして、味付けの薬味や塩味と共に舌の上でハーモニーが奏でられた。

 続いて筍御飯。おかずが唐揚げという事もあり、口の中がしょっぱくならないように薄めの味付けとなっている。時折、長芋の梅酢漬けで口をサッパリさせて再び唐揚げを放り込む。葱と豆腐のお味噌汁もシンプルで他の料理の邪魔をしない。全てが計算し尽くされた布陣だった。

 

 幸せすぎて心の中が南越谷阿波踊りだよ~。お婆ちゃんっ、八月はまだまだ先だよ?

 

「楽しそうだけど、学校で良いことあったっぺ?」

 

 私が晩夏の新越谷駅周辺道路にトリップしていると、お婆ちゃんからそんな事を聞かれた。

 

「私また野球部に入る事にしたんだ」

「そうかい。なら、明日から帰りが遅くなるだべ?たんとお食べ」

「うん!」

 

 私は再び唐揚げに箸を伸ばす。

 

 そういえば、さっきからお爺ちゃん一言も喋らなけどどうしたのかな?存在感が消えてるよ。漫画とかだとこの作品に男は存在しないとか言われちゃうよ、きっと。

 

 

 

 

 

 

 翌日の放課後、私は練習着(ユニフォーム)に着替えて芳乃ちゃん息吹ちゃん詠深ちゃん珠姫ちゃんと五人でグラウンドへ向かっていた。初心者の息吹ちゃんとマネージャーの芳乃ちゃんは練習着を持っていないので体育着を着ている。

 

 珠姫ちゃんからは同級生だしさん付けじゃなくて良いと言われたから、みんなと同じちゃん付けで呼ぶことにした。

 

「あっ、グラウンドに誰かいる」

 

 詠深ちゃんの声に誘導されてグラウンドの中を見ると二人の女の子がストレッチをしていた。

 詠深ちゃんが挨拶をして先輩かどうか尋ねたけど、どうやら二人とも一年生らしい。ショートカットでボーイッシュの子が川崎 稜ちゃん、ツインテールで隠れ巨乳(多分)の子が藤田 菫ちゃんと名乗った。二人は同じ中学の野球部出身でポジションは稜ちゃんがショート、菫ちゃんがセカンドらしい。

 

「選手は六人······大丈夫かな?」

 

 そう珠姫ちゃんが憂うのは試合に出るのに必要は最低人数は九人だからだ。私と詠深ちゃんが代わり番こで野手に回るとしても、まだ三人足りない。

 

「先輩も二人いるらしいし、まだ一年も来るかもだし慌てる時間じゃないよ」

 

 詠深ちゃんの言う通り、まだ入学式を合わせて二日目だ。今日みたいにまだ一年生が入部するかもしれないんだから。

 それに、入部の手続きをした時に担任の先生が言ってたんだけど、先輩も二人だけだが残っているらしい。きっと、その先輩達がずっとグラウンドを整備してくれてたんだよね。ずっと使われていなかったはずなのにグラウンドは雑草一つ生えてなくて、先走って守備に着いた稜ちゃんの足跡以外は荒れた様子が見られない。一昨日まで部活停止状態だったのが信じられないくらいだ。

 そんな先輩達がもう参加しない何てことは無いはず。

 

「もし集まらなかったら今度は助っ人してくれる子を探せば良いしね」

 

 助っ人なら一人くらいすぐに見付かるだろうと思って私は言ったんだけど、私の言葉に珠姫ちゃんはどこか不満気だった。




 球詠に男はいるのか?

・球詠の世界に男は居ない。
・描かれていないだけで存在はしている。

 本作においては後者とします。だって詠深達が雌雄同体だとは思いたくないもの。

 それに1巻の第2球「黒い霧を抜けて」の5コマ目にて『様々な想いを抱いた球女たちは』と書かれているので、球女→女という概念があるなら男が存在するはず。ガールズリーグとかもあるしね。


 ところで、球詠の原作者であるマウンテンプクイチ氏はどうやってペンネームを決めたのでしょう······。本名が山福 一(やまふく はじめ)さんとかでしょうか?
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