新越谷高校VS総武高校   作:ブルーガソウ

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当方は俺ガイルの原作を読んだことがありません。アニメしか知りません。


1【総武高校】

 総武高校特別棟には無表示のプレートに可愛らしいシールが貼られた空き教室がある。この空き教室で活動しているのが雪ノ下雪乃、由比ヶ浜 結衣、比企谷 八幡の三人が所属する奉仕部である。

 

 結衣は雪乃のすぐ横に座って楽しそうに話し掛け、雪乃も澄まし顔でしばしば結衣に相槌を打っていた。八幡はというと、二人とは離れたお誕生日席で本を開いている。三人が囲む長テーブルには雪乃が淹れた紅茶が各々の前に置かれていた。

 

 特に相談にやってくる生徒が表れなければ下校時刻までこのまま時間が過ぎるのだが、今日はそんな訳にはいかないようだ。

 

 扉を叩く音につられて三人の視線は教室の入口に集められる。

 

 三人を代表して雪乃が扉の向こうに居るであろう者に入室を促すと、一人の女子生徒が引き戸を開けて姿を表した。

 

「失礼します。平塚先生の紹介で来ました2Cの館山 真弥(たてやま まや)です」

 

 切れ長の目とショートヘアーにすらっとした鼻がクールな印象を与える館山と名乗った女子生徒は、背筋を伸ばしたまま教室に入る。言葉一つ一つハキハキと話す彼女は某歌劇団の舞台に立っても、その存在は栄えること間違いない。

 

「2Jの雪ノ下よ。相談がある、という事で良いかしら?」

「ええ。貴方達が奉仕部で間違いなさそうね」

「いま椅子を用意するわね」

「あ、私が用意するよ!」

 

 立ち上がろうとする雪乃を制した結衣は教室の後ろに置いてある椅子を取りに行った。

 

 後ろには椅子の他に使われていない机が積み上がっていたり、備品の入っているであろう段ボール箱が置かれていたりと、奉仕部の活動場所とはなっているものの、ここが本当に普段は使われていない教室が空き教室なんだという事が伺える。

 

 館山は結衣に礼を言うと、彼女の持ってきた椅子に座った。

 

「相談と言うのは野球部の事なんだ」

 

 結論から言ってしまうと、館山の相談事は練習試合の助っ人である。

 

 曰く、野球部の打ち上げで食中毒が出てしまい、一年生と監督が野球を出来る状態でなくなってしまったのだ。その日、二年生は用事があり後から合流したのだが、合流した頃には食中毒を起こした料理は既に一年と監督の腹の中。二年生は難を逃れたのだ。

 

 野球部に二年生は五人しか居ないので、最低でも四人助っ人が必要なのだ。

 

 しかし、誰でも良い訳ではない。硬式ボールを使うので、怪我のリスクを減らす為にも、最低限の球技のセンスはなければならない。だが、他の運動部の子達は自分の部活が忙しくて助っ人に参加する余裕がなく、未だ十分な助っ人が見付かっていない。

 

 助っ人集めに悩んでいた館山が奉仕部顧問の平塚教諭の目に留まり、相談にのってもらった所、ここ奉仕部に白羽の矢が立ったのだ。

 

「話は分かったわ。今どのくらい助っ人が集まっているのかしら?」

「恥ずかしながら、まだ一人しか見付かってないんだ」

「という事は野球部の二年生と合わせて六人。あと三人必要ね」

 

 雪乃は顎に母子示指を当てて思慮を巡らせる。

 

「どうだろう、何とかなりそうかな?」

「ええ。あなたの依頼承るわ」

 

 雪乃が依頼を受ける旨を伝えると、館山は胸を撫で下ろした。

 

「ありがとう。早速だが雪ノ下さんは助っ人が出来そうんな人に心当たりはあるかい?」

「一人は私が入るから、あと二人ね」

 

 雪乃はまず自身が助っ人に名乗りを上げる。

 

「それじゃあ私は優美子に声掛けてみるよ」

 

 結衣はスマートホンを取り出し、メッセージアプリを起動した。

 

 結衣の言う優美子とは、結衣が休み時間などに話をしているクラスの友人グループの中心人物である。中学時代にテニスで県選抜に選ばれていることもあり、運動神経が良いのは勿論、同じ球技なので野球の飲み込みも早いだろう。

 

「俺も一人当たってみるわ。公式戦じゃないし、別にうちの生徒じゃなくても良いだろ?」

「そうだな······今の状況を考えればやむを得ないか」

 

 館山は少し悩んだ後、八幡の案を受け入れた。

 

「優美子手伝ってくれるって!」

 

 早速返事が届いたようで、結衣は優美子の参加を知らせる。

 

「それじゃあ助っ人のみんなにはできれば今日にでも練習に参加して欲しいのだが、良いだろうか?」

「承知したわ。由比ヶ浜さんも一応準備しておいて。九人揃ったとしても控えがいるに越したことはないから」

「うん、分かった!」

 

 話がトントン拍子に片付いた所で八幡は立ち上がった。

 

「それじゃあお前ら頑張ってくれ」

「ヒッキーは?」

 

 他人事のように話す八幡に結衣は疑問符を浮かべる。

 

「女子野球部の助っ人なんだから俺の出る幕は無いだろ」

 

 八幡は今回の依頼中は部活をサボるつもりでいた。結衣は釈然としながらも返す言葉が見付からない様だったが、八幡の幻想を打ち砕く言葉は意外にも立山から発せられる。

 

「そうそう。平塚先生が“男子が一人いるが、そいつには雑用でもなんでもさせてくれ。あと、サボったらどうなるか分かってるな?と伝えてくれ”と言っていたよ」

「えぇ······」

 

 肉体労働と休日出勤が決まった八幡は肩を落とすのだった。




時期的におかしな点がありますが気にしない気にしない。

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