異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です   作:八葉と黒神の剣聖

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物語開始はラミリスが魔王になる前。ミリムが暴れる前です。


勇者から魔王へ
プロローグ


 これは、俺が1人のスライムと出会う遥か昔。異世界からこの世界に来て最古の魔王になるほんの少し前、勇者として旅をしていた頃の話しである。

 

 

「えっと……この辺にいるはずなんだが……」

 

 

 周囲を見渡し目的の人物を探す。今いるのは森でここには妖精ラミリスがいる。彼女に会いに来たのだが、中々見つからずにいた。

 

 

「ったく。探すのも一苦労……ん?」

 

 

 何かの気配を感じ取り腰に携えている刀に手を置き警戒するが、近づている気配の正体に気付き警戒を解く。それとほぼ同時に、茂みから金髪の羽根が生えた女性が姿を現す。

 

 

「やっと姿を見せたかラミリス」

「君が来るのが遅いだけ。どれだけ待たせるつもりよ?」

「それは悪かった。俺だって暇ではない、たまたま近くに来たついでに寄っただけだ。…妙な噂も聞いたしな」

「噂~?取り合えずついておいで」

 

 

 ラミリスの後を付いて行くと、小さな小屋が見えてくる。その近くには湖があり、ゆっくり過ごすにはとても良さそうな所だった。

 

 

「いい場所だな。『勇者』になっていなければ、ここで隠居するのも悪くなかったな」

「…残念ながらそれはこの世界に呼ばれた時点で無理な話だったわね。ある程度自由に動けているだけマシだと思わないと。さぁ入って」

 

 

 小屋の中に入り椅子に座る。少し待っていると、ラミリスがお茶を淹れてくれたので一口飲み心休める。ここまで休み無しで歩いたから体に染み渡る。

 

 

「それで噂って何?まさかよからぬ話じゃないでしょうね?」

「そうならないことを祈りたい。聞いた話ではヴェルダナーヴァと人の間に子供が産まれたらいしいぞ。確か女性だったか。その後はどうなったか知らないが、今はヴェルダナーヴァが与えた小竜と暮らしているらしい」

「え?マジで?嘘でしょ?」

「残念だが事実だ。それも数年前の話だ。知らなかったのか?」

 

 

 少し意外だと思いつつお茶を飲む。あの話は結構有名だったんだけど。それ以外にも面倒そうな話が上がっていたが、あの魔王が動かないなら問題ないだろう。

 

 

「どんな子なの?そのヴェルダナーヴァと人の子って」

「名前はミリム。会ったことはないが、聞いた限りだと素質はとんでもないそうだ。ヴェルダナーヴァから力の大半を引き継いでいるらしいからな。……何も起きないといいけど」

「起きたらアンタの出番。勇者だから格好よく止めないと」

「……(簡単に言うけどなぁ……)」

 

 

 (実際に戦えば俺が負ける……と思う。やってみないと分からないけど。でも無理だろうなぁ。魔王にでも進化しない限り。あるいは覚醒するか。だから面倒事にならないことを祈りたい)。

 

 

「という訳で何かあれば助けて欲しい。ただの杞憂に終わればいいけど……念のため準備はしておかないと」

「まるで何か起きるみたいに聞こえるけど?」

「どの世界の人間も本質は変わらないさ。理解の及ばない力を持つ存在を人は恐れるし、中には良からぬ事を考える奴もいる」

 

 

 出過ぎた力は争いを呼ぶ。それはこの世界に来て初めに知った事。幸いにも俺を呼んだ人には『世界を巡って数多の人を救って欲しい』と頼まれたげで、力を悪用されることは無かった。

 

 

「もし俺がミリムと一戦交える事になれば骨だけは拾ってくれよ」

「最初から負ける前提ッッ!?」

「最後までは諦めないけど多分無理。俺の炎では太刀打ち出来ん。剣技なら何とかなりそうだが、力で押されたらきつい」

「……なら精霊の力を借りる?フレアのスキルも強化されると思うし」

 

 

 その手があったか。確か召喚で呼び出した人間に精霊の加護を与えて安定させるという話を聞いたことがある。俺は当初から安定していたけど。それも偏にスキルのお陰だ。我ながら俺のスキルはどれも汎用性が高い。(凄まじい高火力の炎なのに傷まで癒せるなんてな。その上さらにもう一段階能力を引上げれるし。本当これから先どうなるんだろう……)。

 

 

「精霊の力は借りない。エクストラスキルが1つ、ユニークスキルが2つあるし。上手く立ち回ればなんとかなるだろ」

「確か『炎の加護』に『日輪の加護』。あと『修復の炎』だっけ?」

「全部炎系統だね。理由は大体分かるけど」

「?」

 

 

 恐らくはここに来る前の俺の一家が関係しているのだろう。この世界の仕組みはまだ分かっていないが、元居た世界に関係するスキルを得る事は少なくないらしい。そのスキルにも色々あってエクストラスキルや特定の条件を満たすことで固有能力(ユニークスキル)に進化したり究極能力(アルティメットスキル)なども存在する。それと各属性などの耐性も。最もこれは種族によって変わるが。

 

 

「まだまだ知らないことが多いな。俺のユニークスキル……『炎の加護』と『日輪の加護』はもう一段階上……究極能力(アルティメットスキル)に進化する可能性がある」

「何でそんな事分かんのよ?」

「時々世界の声?って奴が聞こえるんだよ。《今のままでは召喚者の願いはかなえられない。勇者のまま進化をしないといけない》って」

 

 

 この世界に来てからずっと頭に響ている。最近は特に酷い。『今のままでは……』その言葉の意味するところは分からないが、近い内に何かが起こるのは確実だろう。勇者のまま進化っていう意味をずっと探しているが分からない。例の魔王さんに聞ければいいんだけど。

 

 

「取り合えずもう少し色んな所を回ってみるよ。助けを求めている人間や魔人はいるし、未開拓の土地にも行ってみたいから」

「折角なら仲間と一緒に国でも作ってみたら?」

「それもいいかもな。数多の国との国交を結んで。一度真剣に考えてみるよ」

「アタシは応援するわよ。何かあったら言いなさいっ!いい土地も紹介してあげるわさ!」

「期待半分にしとく。んじゃ伝えたいことは言えたし。俺は行くからな」

 

 

 飲みかけのお茶を一気に飲み干し、側に立て掛けてあった刀を手元に手繰り寄せて席を立つ。そろそろ次の土地に向かわないといけない。先に仲間も待たせている事だし。

 

 

「次は半年後ぐらいに来る。元気でな」

「アンタも無茶しないように。たまにはアタシや仲間を頼る事」

「分かってる。んじゃな」

 

 

 軽く手を振ってから小屋を出る。とりあえずは仲間と合流か。何処に行くかはそれから考えよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公のスキル詳細は少しずつ明かしたいと思います。
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