異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です   作:八葉と黒神の剣聖

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避けられぬ滅び
楽しい時間


 あの戦いから半年が経った。国の復興は少しずつ進んでいる。ギィやラミリス、ミリムとは会っていない。あの後ミリムが真なる魔王に進化して一騒ぎあったらしいが、詳しい事は知らない。魔導大国は完全に過去の存在となったが。

 巨人族の住まうダマルガニアも被害が出て砂漠化が進み始める。これからどうするかは聞いていないが、こちらにも影響があるのは確定だ。幸いにも少し猶予はある。原因を調べたがかなり厄介で、生命力の弱い物が生きる事を許される場所は一部となり、少しずつサンフレア王国にも迫ってきている。俺の焔天之王でも浄化出来ない程に酷かったが、これに関してはダグリュールと天使達に任せ、俺達はこれからの事を考えないといけない。

 その為に俺はサンフレア王家の側近となり毎日復興作業等をしている。そして今もアレクと一緒に瓦礫を撤去し整地した場所に家を建てていた。

 

 

「そこの床板取ってくれ相棒」

「了解」

 

 

 近くに積まれている床板を一枚取り二階にいるアレクへ投げる。受け取ったアレクは慣れた手付きで釘を打ち込んでいく。打ち終えたをの確認してから一枚ずつ投げてはアレクは受け取り釘を打ち込んで床板を敷いていく。

 

 

「相変らず手慣れてるなアレク」

「ガキの頃からやってたからな。しかし慣れねぇなお前の姿。知ってるのは俺達と先生の姉妹だけだろ」

「まぁな」

 

 

 今は魔王としての姿ではない。基本的に街や王国の外を出る時は姿を変えている。国王やベル達は慣れたようだが、アレクとはこの姿であまり行動しないので慣れていない。いい加減慣れて欲しいが。

 

 

「あれから半年か。少しずつ復旧作業は進んでるが……」

「王都完全復興までは約5年。ミリムが吹き飛ばした山を整地して新たな都市を作るのに10年。しかも東と西で役割が違う」

「そう言った意味では先生が姉妹たちを連れて来てくれて良かったな。手は足りないし、お前の下についてくれるし」

「確かに……」

 

 

 外に出て周囲を見渡す。俺達がいるのは王都の民が住まう場所で、建造途中の家や修復中の家が沢山並んでいる。幸いにも作業に必要な道具等は無傷で、この国で野菜等を栽培している農園も無事だった。不幸中の幸いだろう。

 

 

『ホムラ様。お弁当をお持ちしました』

「ハク。ありがとう」

 

 

 ハクエンが大きな包みを咥えてそばに来る。お弁当と言ってたか。そろそろ休憩したいしちょうど良い。

 作業をしているアレクに声を掛けると、アレクは『もう少しやってから行く』と言ったので先に広場へと向かう。

 

 

「そう言えばラミリスは元気にしてるかな」

『きっと元気ですよ。時間があればお会いに行かれたら宜しいかと』

「あぁー……精霊の棲家に行くのはきついなぁ……あの子に怒られそう」

『もしかしてずっと呼ばれるのを待っていたのに呼ばなかった光の精霊様ですか?』

 

 

 おっと、その話誰から聞いたのだろうか。ルミナス辺りに愛でられた時にでも聞いたかな。ベルは詳しいこと知らないしアレクには懐いていないし。

 

 

「そうだよ。棲家の最奥に行って祈れば精霊が来るんだけど、祈るより早く待っている子がいてね。俺は霊感強いから気配で感じ取ってしまって。ラミリスも気付いてたし」

『なのに断ったのはこれから訪ねてくる勇者になる可能性を秘めた子の為。ホムラ様らしいですが……』

「『ずっと待ってたのに呼ばないなんて最低』と思われても仕方ない。だから用があれば別の場所で会うんだよ」

 

 

 行けば絶対に待っているのが分かる。他の誰かに付いて行ったなら問題無いが、ラミリスが律義に待っていると言っていたので、行かないわけにはいかない。

 

 

「きっと怒ってるだろうな。俺に宿っている勇者の卵もどうなったか分からないし。孵ってたらまた運命も変わったのかもしれない」

『運命は誰にも分からない。だから今を必死に生きるとルミナス様が仰っていました』

「彼女らしい。あぁいった所に惹かれるよ」

『……え?』

 

 

 ハクエンが足を止め、何か不味い事を聞いてしまったような表情を浮かべる。何か不味い事でも言っただろうか。覚えが無いのだが……。

 

 

「どうしたハク?」

『な、何もありませんよ。それよりウインディ様が待ってます』

「お?1人だけか」

 

 

 広場で1人寂しそうに座っている緑髪の少女。彼女は先生の妹で風を司る魔人。姉であるパールヴァティと一緒に先生が連れて来て、それぞれ名乗っていた名前を付けた。最初は渋ったのだが、戦いの跡と砂漠化を見て協力したいの申し出てくれたので、断る理由も無く、名前を付けるのと一緒にこちらからお願いした。

 

 

「ウインディ。お待たせ」

「あ、ホムラにハクエン。遅いよ!」

 

 

 おっと、かなりお怒りの様だ。先生は何も言わないけど、パールさんはこの辺り厳しいからなぁ。仕事さぼって散歩してるのを見つかると、にっこり笑いながら詰め寄ってくるし。

 

 

「真面目に仕事し過ぎ。少しはサボらないと」

「成程。だから来るのが早いのか」

『パール様に報告します』

「ふぇ!嘘!頑張ってるから言わないで!」

 

 

 泣きついてくるウインディ。どの世界でも弟や妹は兄と姉に敵わないのか。まぁあの人は本気で怖いから納得するが。

 

 

「言わないよ。そもそも言う必要が無い」

「え?それって……」

 

 

 ウインディは恐る恐る振り返る。その先にはどす黒いオーラを纏った青髪の女性が腕を組んで立っていた。彼女が先生とウインディの姉であるパールヴァティさんだ。

 

 

「あ、姉様……」

「ふふ……お弁当を食べる前にお説教ですね」

 

 

 微笑みながら水で斧を作り出す。それを見たウインディは体を震わせながら俺の背後に逃げ、背中を押してくる。ちょっと待て。能力を抑えているこの状態では太刀打ち出来ないんだけど!?

 

 

「ホムラ様。そこの愚妹をこちらに」

「了解パールさん」

「ちょっと!?」

 

 

 首根っこを掴み、ウインディをパールさんに献上する。受け取ったパールさんは姿を消し、その数秒後にウインディの悲鳴が聞こえてきた。

 

 

「怖いはあの人……」

「ふっ。俺の姉だからな」

「うぉっ!」

 

 

 いきなり現れる先生。しかも隣だから尚の事だ。現れるならせめて声をかけて欲しい。

 

 

「調査報告だ。国王にも伝えるが、後100年程でこの国は死の大地と化す」

「っ……そうか。国王に伝えてくれ」

「……おぅ。まぁ彼がどうするかは分かるが、これからについては早急に考えておけ。特にお前は魔王だ。死なせるわけには行かん。そしてお前が守りたい物も」

「分かってる。その件は近い内に俺から進言する」

「了解」

 

 

 炎の転移術で城へと向かう先生。さてと……これからの事を話さないといけない。砂漠化を止める手段がない以上は移民する事を視野に入れ、命の選択を選択することを考えないといけない。流石に俺一人で判断が出来ないから、アレクや国王と考えないと。

 

 

「お弁当食べようハク。折角ベルが作ってくれたから」

『……はい』

 

 

 適当な所で腰を降ろしハクエンを膝に乗せる。包みを解いて中に入っていた箱を開ける。中に入っていたのはサンドイッチ。しかも丁寧にハクエンが食べれる物と俺達の分ときちんと分けてあった。

 

 

「頂きます。ほらハク」

 

 

 ハクエンの分を1つ取り口元に持っていくと、ガブっと大きな一口で食べる。そういえば狐って主に何を食べるんだっけ?俺の住んでいた地域はいなかったし。そもそも戦時中だったし。

 

 

(まぁいいか。気にしても仕方ない。あむ)

 

 

 俺も1つ手に取り食べる。うん、野菜の味だ。流石にお肉は無いからね。そもそも食べる習慣が無いって言ってたし。勿体ない。

 

 

「うぅ……あんなに怒らなくてもいいじゃない姉様……」

「自分から手伝うと言ったのはウインディでしょう。小休止ならともかくサボるのは許しません」

「戻って来たか」

 

 

 怖い姉にみっちり絞られたウインディ。目に涙を浮かばせている所を見ると、何時もの3倍程絞られたようだ。

 

 

「大丈夫ウインディ?」

「大丈夫じゃないよホムラぁ!」

 

 

 

 背中に抱きついてくるウインディ。彼女の気持ちは痛いほど分かるが、今回ばかりはウインディが悪いので、何も言えない。

 

 

「こらウインディ。ホムラ様を困らせてはいけません」

「いいよパールさん。俺の妹も事ある度に甘えてきてたし」

 

 

 ウインディの頭を優しく撫でる。こうして甘えてくる分には何も言わない。この国の子供も、えげつない体当たりしてくるし。寧ろこれぐらい距離が近い方が俺も遠慮しなくて済む。

 

 

「所でホムラに聞きたいことがあって」

「どうした?珍しいな。あむ」

 

 

 基本的に俺が聞くことの方が多い。知識も力も俺より上だ。鍛錬をする時も、彼等の技術を教わっている。俺が編み出そうとしている最終奥義に取り入れたいから。

 

 

「ホムラはルミナスの事好きなの?」

「ぶっ!?」

『!?』

「え!?」

 

 

 いきなり何を言うこの魔人。食べていたサンドイッチを吹いてしまったではないか勿体ない。しかも何でルミナスの話が出て来る。別に関係ないだろうに。

 

 

「別に、俺と彼女は友達だけど?」

「その割には結構な頻度でこっそり会ってるけど?しかも君と話をしている時のルミナスは何か変だし」

「どう変なんだよ。俺には分からん」

「鈍い。君と話してるときは声が少し高くて頬が赤い。何より!」

 

 

 顔を近づけてくるウインディ。思わず少しだけ後ろに下がってしまう。距離感が殆ど無いのは別に構わないが、不慣れなせいか落ち着かない。

 

 

「あんなにグイグイ行くなんておかしいよ!ベルやハクエンならまだしも君にだよ!」

「そうかな……。彼女と会って2年半程経つけど、特に変わらないし、抱きついて来て血を吸うなんていつも通り。魔王に進化してからは無いけど」

「え?血を吸って抱いてた?」

「ちょっと待て!言い方おかしいぞ!?」

 

 

 誤解を招くような言い方は辞めてくれ。パールさんが頬を赤めている。決して俺とルミナスは皆が期待しているような関係ではない。

 

 

「でもおかしいよね姉様。ルミナスを含めた上位の吸血鬼は血を必要としないのに」

「ウィンディ。人の恋事情に関わってはいけません」

「待って。誰と誰の恋事情?」

「ルミナス様とホムラ様ですが?」

 

 

 うん。これ以上は止めておこう。色々と心に大きな傷が入りそうな気がする。でも何だろう。とても今が楽しい。この楽しい時間を守り続けるためにも決断しないといけない。

 

 

(ルミナスに相談するか……あ……そういう事か)

 

 

 少しだけウィンディが聞いて来た理由に気付いてしまった。

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