異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です   作:八葉と黒神の剣聖

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別れと旅立ち

ーそうか。皆は元気にしているか……。

 

 

 国王が安堵の息を漏らしながら言った。今日はユニを連れて王国へと戻って来ていた。理由は移民した民達の事を伝える為。吸血鬼達と上手くやっていると伝えに来ていた。

 

 

「因みにだが馬鹿息子はどうだ?上手くやっているか」

「あぁ。マリンさんと一緒に。ここに来る前も仲良く話をしていた」

「うん。そこは安心して良いと思うよ陛下。何かあってもあの2人は私達で守る」

「ありがとうユニ殿。しかし……考えたなフレアよ。そのような方法で妖精を受肉させるとは」

 

 

 それに関しては先生達にも言われたぞオッサン。しかもルミナスにも原理等を根掘り葉掘り聞かれた。加えて3日ほどユニを離さなかったし。

 

 

「リンに微調整を頼んでからいい感じ。私の『領域展開』と『共有』でホムラと魂が繋がってる者の力を使役しても問題ないし」

「当然だろ……って普通に考えたら他人の力を借りるとか出来ない筈なんだけど?」

「それを可能にしたいって名前を貰った時に願ったから。それより今は私より外だよ」

「……そうだな」

 

 

 国王と共に外の回廊に向かい砂に埋もれた王都を見る。既に王都は完全に砂に埋もれて邪悪な砂嵐は吹き荒れている。生きている民は城にいる数百人だが、環境の激変により生命力が減少。命の灯が残り僅かだった。

 

 

「向こうの皆は慣れてきたから寿命に変化はないけど、ここに居る皆は結界内とはいえ影響が強い。本当にいいの陛下?」

「皆が決めた事だ」

「そう……ホムラは最後見届ける?」

「……見ない。見たら自分を責める。だから今日が最後だ国王」

 

 

 焔を纏い姿を魔王へと戻す。力を抑える為と鍛錬の為に姿を変えているが、やっぱり本当の姿の方が体が楽だ。ま、あっちの姿も慣れたから問題は無いけど。

 

 

「巨大な砂嵐が迫って来ている。後は俺達に任せて欲しい」

「頼んだぞ。いつか必ず、この地に再びサンフレア王国を再建してくれ」

「分かっている。国の名を背負う魔王として必ず。だから『さよなら』とは言わない。またな」

「元気でな。さぁ行くといい。君でもあの砂嵐は堪えるだろう。後ろを振り返らず前だけ見てるんだ」

「あぁ。元気でなオッサン」

 

 

 軽く拳をぶつけ合い、夜薔薇宮の自室へゲートを開く。通る際、国王が『ルミナス殿と仲良くな』とお節介な一言を言われてしまい、苦笑いを浮かべながらゲートを通って自室に戻る。

 

 

「戻ったかホムラ」

「いたのかよアレク。姿を変えるから少し待て」

 

 

 光を纏って姿を変える。この姿に慣れつつある自分が怖いが、鍛錬を積むには丁度いい。特に練習中の新技の精度を上げるには。

 

 

「ここに居て良いのかよ」

「別れの挨拶は済ませている。それに、お前も今日からだろ?準備は良いのか?」

「終わっている。後はルミナスに挨拶をしてベルに頼んでいる物を取りに行くだけだ」

「そっか。暫く会えねぇのか」

 

 

 寂しそうな表情を浮かべるアレク。俺が今日から旅を始めるからだろう。気持ちは有難いが抑えて欲しいし、アレクにはやるべきことが多いだろう。

 

 

「精々マリンさんと仲良くな。良い報告楽しみにしておくよ」

「何を期待している?俺と彼女はそんな関係ではないぞ」

「とか言いながら頬をお互いに紅く染めている事を知ってるんだから」

「な、何の事だよ……」

 

 

 俺達から視線を逸らす相棒。別に隠す必要はないだろう。堂々といちゃいちゃしてたって茶化すのはルミナスぐらいだろうから。俺は何も言わないぞ、何だったら仕事を代わってやる。

 

 

「さて、俺はベルの所に行く。そのままここを出るから何かあれば連絡してくれ」

「……了解。あまり無茶するなよ。何かあれば帰ってこい。余計な心配かもしれんが」

「その通り。自分の心配だけをしてろ。そんじゃあな」

「あぁ。行ってこい」

 

 

 アレクに見送られ向かうのはベルの部屋。ノックをしてから中に入ると、部屋の中では真紅の細長い銃を整備しているベルの姿があった。

 

 

「それの調子はどうだ?」

「完璧です。細かい調整はマリンさんが。流石としか言えませんね。試作機とは思えません」

 

 

 この世界に銃は殆ど無い。少なくとも俺は見たことが無い。そこで俺の中にある知識を元にこの世界の技術を当て嵌めて作成してみた。サンフレア王国の魔素を吸収し解き放つ技術と、吸血鬼の技術の1つである魔素をイメージした物質に構成する術。そこに鍛冶師が魔鉱石で外側を作り俺の焔で錬成したものに組み込んだのだ。

 

 

「出来れば元居た世界の知識なんて流したくないけど、世界のバランスがどうこうって言われそうだし」

「影響がない程度や、皆の為になる物なら構わないかと。美味しい菓子や食事とか」

「ベルの言う通り。程々なら大丈夫だよホムラ」

 

 そうは言うがあまり宜しいくないと思っていたり、近い将来はあり得そうだが、実際に悪用する連中だって現れる訳だ。時折異世界人や新たな勇者の話は耳に入る。俺も魔王である以上は、ルドラのような勇者と戦う日も来るのだろう。

 

 

「これで大丈夫。どうぞホムラ様」

「ん。ありがとう。済まないが俺の不在の間は頼む」

「何かあったらすぐに呼んで。今のホムラならヴェルドラクラスが来ても何とかなる」

「流石にヴェルザードクラスは無理だけど」

 

 

 ヴェルドラがどれだけの強さなのかはヴェルザードから聞いている。因みにヴェルザードには先日対竜種の対策を考えるために挑んだのだが5分程で叩きのめされた。流石はヴェルダナーヴァの妹。彼から少し話しを聞いていたがヴェルグリンド同様に化け物だ。

 

 

「竜種とは戦いたくないな。稽古なら構わないけど。ヴェルダナーヴァとも軽く手合わせはしたけどボコボコにされたし」

「え?彼に挑んだの?馬鹿じゃない?」

「仕方無いだろう?俺がこっちに来てアレクと旅を始めた頃に、向こうから来たんだから。竜なんて初めて見たから怖くて放心したわ。異世界に来ていきなり創造主と遭遇なんてふざけてる、敵意無かったけど生き残るためには挑む他なかったし!結果的に惨敗で手も足も出なかったけど!マジてアレに認められたギィはどんだけ化け物なんだよ!しかもその後にヴェルザードと三日三晩戦ったんだろ。アイツもヤバくね?」

 

 

 実はヴェルダナーヴァと面識があったりする。何でもあの時代は異世界人なんて殆どおらず、勇者を名乗っているのも俺だけだったらしく、それで興味をもたれて会いに来たらしい…どうも話がしたかっただけのようだ

 

 

「その辺りは何時か話すよ。彼が言った事は未だに考えさせられるし」

「ちょっと気になるんだけど?教えてよ」

「嫌だ。答えが出てから」

 

 

 彼に曖昧な返答をしたわけではないが、あの時は勇者として答えを出した。故に今度は魔王として考える必要がある。

 

 

「そういう訳だからまた今度だ。行ってくる」

「お気を付けて我らが主とユニさん」

「うん。こまめに連絡入れるから」

 

 

 優しくベルの頬を撫でてから部屋を出る。あと挨拶をしないといけないのは先生達だが城にはいないみたいだ。今日から旅を始める事は伝えてあるしいいか。なら向かうのは夜薔薇宮の出口だ。

 

 

「行こうかユニ。準備も済ませたことだし」

「うん。まずは何処に行く?」

「風の赴くままに……かな」

 

 

 やる事は決まっているが向かう場所は決まっていない。ので、勇者時代と同じ様に風の赴くままに行こうと思っている。その変わりに過度に干渉しないようにするが。何でもかんでも首を突っ込める立場ではないし。

 

 

「もう行くのか?」

「……ルミナス」

 

 

 夜薔薇宮の出口でやっぱりというべきかルミナスが待っていた。というか出口は一つしかないけど。城に居ない時点でここに居る事を考えて置くべきだったな。

 

 

「もう少しここにおらぬか?そんなに急がなくてもよいじゃろう?」

「まぁね。でもアレクが居るし俺の友達も残ってくれる。何かあれば君と一緒にここを守ってくれるって信じてるから」

「その信頼が重いと気付かんか。馬鹿者」

「俺が好きになった女は強い。だから信頼してる」

「……はぁ」

 

 

 思いっきり溜息を付くルミナス。自分で言っておきながら少し恥ずかしいが、多少は強気で行かないと。どちらかと言えばルミナスが押してくるタイプなので、たまには俺から押すのもいいだろう。

 

 

「全く、妾の何処に惚れたのか……その想いを嬉しく感じている妾も妾だが、まぁいい。渡すものがある」

 

 

 ルミナスは自身が身に付けているものと同じ首飾りを取り出して俺の首に付ける。そう言えば欧米の教会だったか。そこで似たような物を見たことがある。十字架だっけ?ルミナスが小さい十字架の首飾りを身につけている時点で気になってはいたのだが。

 

 

「ちょっとしたお守りじゃ。以前身に着けていた魔鉱石のお守りは壊れたと言っていたからの」

「ありがとう……って近い」

「ん?照れておるのか?確かにその姿だと妾と身長は変わらんからの」

「じゃあ戻す」

 

 

 焔を纏って姿を戻すと同時にルミナスが力強く抱きしめてくる。また嵌められたか、昔からずっと手の平の上だ。一生頭は上がらないだろう。

 

 

「これでよし。無茶はするな。あの時のように辛いことがあれば帰ってこい」

「うん。辛かったら頼る。それは君も」

「分かっておる。じゃがお主の友は皆頼りになるから余程の事がない限り大丈夫じゃろう。いつかは魔王を名乗る身としては出来る限り妾自身で何とかする」

 

 

 ゆっくりと離れて自信に溢れた表情を浮かべる。これなら大丈夫か。俺が居なくてもきっと大丈夫と信じよう。

 

 

「それじゃあ皆を頼む。こまめに連絡は入れるよ」

「当然じゃ。それと旅話も楽しみにしている。こやつを頼むぞユニ」

「任せて。ルミナスも無理しないように」

 

 

 両手でルミナスの頬を触るユニ。少し微笑ましい光景だ。暫く見れないので目に焼き付けておこう。

 

 

「行くぞユニ。元気でなルミナス」

「……行ってらっしゃいホムラ」

 

 

 ユニを右肩に乗せルミナスの横を通り夜薔薇宮を出る。ひとまずは風の赴くままに向かおう。力と知識を付けるために。

 

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