異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です   作:八葉と黒神の剣聖

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悪だくみ

 日が沈み、静まりかえった夜。遺跡から出た時にはすでに外は暗く、空には星が輝いていた。せっかくなので、近くの開けた場所で野宿をすることにして、大きな火を囲って晩食を済ませた後、遺跡の場所を教えてくれたギィに連絡を取っていた。

 

 

「……という訳だ。魔導書の中身はユニが確認してる」

『外れじゃない事を祈ってる。というかてめぇ。後ろにいるガキは竜王じゃねぇか』

 

 

 光の球体から見えているのだろう。背後で焼き魚を食べているアルビオンを興味深そうに見ている。情報としてはヴェルザードから聞いているのだろう。

 

 

『それと明日の夜あけておけ。頼みがある』

「何だよ頼みって。ミリムやラミリスに頼めばいいだろ?」

『あいつ等に裏方なんて任せられるか』

 

 

 どうやら悪だくみ系統はあの2人に任せられないようだ。ラミリスは兎も角、ミリムなら問題なさそうだが、ギィにも考えがあるのだろう。彼の作りたい世界の為に。

 

 

「了解だ。こちらから向かえばいいか?」

『あぁ。お前達なら問題無いだろ。待ってるぜ』

「分かった。事前に連絡する」

 

 

 パチンと指を鳴らして球体を消す。さて、奴の頼みとは何だろうか?最近活発に活動している例のカザリームという魔人か、それとも堕天使とダグリュールか。ルミナス達の方は何も聞いていない。それとも……近頃感じるかつてのような大きな戦いの予兆か。

 

 

(だとしたら……ヴェルダナーヴァとルシア嬢が亡くなった後にルドラがギィに言ったのは……。ならば俺は……いや、余計な事を考えすぎか。俺は俺だ。自分の成すべきことと、かつて彼に言った事を最後まで貫くだけだ)

 

 

 彼から能力の代わりに託された赤い外套を纏う。そういえばヴェルダナーヴァは何時になったら復活するのだろう?そろそろ復活してもおかしくない頃なのだが。

 

 

(考えるだけ無駄か。今は魔王としての責務を果たそう。その為には……)

 

 

 背後に視線を向ける。先程まで焼き魚を食べていたアルビオンはユニと一緒に遺跡で見つけた本を読んでいる。俺も少し読んだが、専門分野では無かったのでユニに託した。あの系統の本はエリンやルミナス。ベルの方が興味を持つだろう。

 

 

(そろそろ戻るか。一年連絡していないし)

 

 

 いい加減に皆に顔を見せないといけないか。特にルミナス。放置していると何されるか分からない。機嫌を悪くする前に戻ろう。

 

 

「ユニにアルビオン。北に向かう」

「北……あぁ原初の赤の所か」

「何かありましたか?」

「頼みがあるらしい。どうせ面倒な事だが、一応聞きに行く。準備してくれ」

「はい」

「了解。直ぐに済ませる」

 

 

 火を消し大剣を背中に背負う。ここからギィの居城である北の大地までは空を飛んで数時間。転移術を使えば一瞬だが、奴の術に弾き飛ばされる。ので地道に行くしかない。

 

 

「準備済んだよホムラ」

「私も大丈夫です」

「よし。それじゃあ行くか」

 

 

 ユニを肩に乗せ、翼を顕現させたアルビオンと共に北へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

「う、うわぁ……一面氷だ……」

 

 

 一面氷の大地を見て驚きを隠せないアルビオン。その気持ちは大変よく分かる。それだけこの地は過酷で誰も近寄らない。加えてヴェルザードの妖気も漂っているから尚の事だ。

 

 

「行くぞアルビオン。あそこに見える城にギィはいる。それとも君は城の一番上にいるヴェルザードに会いたいかな?」

「は、はい!是非とも!」

「じゃあユニ。頼んだ」

「了解。私も話したいし。行くよ」

 

 

 2人はヴェルザードの元へと向かう。俺は城の入口に向かいゆっくりと着陸。それと同時に扉が開き、中からミザリーが姿を現す。

 

 

「ようこそフレア様。我らが主がお待ちです」

「そうか。失礼する」

 

 

 ミザリーの案内の元、城の中を進む。暫く進んだところで大きな扉と、その両隣に立っている門番。門番は俺とミザリーを見ると扉を開け、今までとは違う空間が視界に映り、その一番最奥にはギィが玉座に座っている。

 

 

「どうぞ」

「あぁ。案内ありがとう」

 

 

 ミザリーの横を通り過ぎ中に入り、ギィの配下達の前を通ってギィに近づく。俺の間合いに入った所で足を止めると、ギィは笑みを浮かべながら立ち上がる。

 

 

「よく来た我が友フレア。息災そうで何よりだ」

「お陰様でな。お前は変わらない……っと、土産は無いぞ」

「お前に土産を期待するか。場所を変えるぞ。お前の新たな仲間の力を見ていたい」

「了解」

 

 

 城の外にある小さな広間に移動する。そこに置かれてある椅子に座り、ギィが向かい側に座ると、レインが紅茶を俺達の前に差し出す。

 

 

「で。話しってなんだよ。面倒な事はやめてくれ」

「安心しろ。お前にしか出来ない頼み事だ。その前に……随分やるじゃないかあの竜王は」

 

 

 上空に視線を向けるギィ。俺達の頭上ではヴェルザードとアルビオンが軽い手合わせをしている。経験も力も圧倒的にヴェルザードが上だがアルビオンは喰らいついていた。その様子をギィは興味深そうに見ている。

 

 

「お前の所には色んな連中が集まるな。炎・風・水を司る魔人。そしてあの幻霧魔人。光の精霊や竜王……と、確か物好きな吸血鬼がお前に仕えたか。お前が夜薔薇宮にいない間雑事をこなす」

「あぁ。ゼノアの事か。アイツは俺が初めて夜薔薇宮にいった時に助けた吸血鬼の1人でな。俺達が移り住むと聞いて真っ先に不在の時の対処を申し出たんだ。だから安心して離れることが出来る」

 

 

 出来れば不在時の情報も定期的に欲しいのだが、連絡が無いという事は問題が無い証だろう。もしくは俺の手を煩わせたくないかのどちらか。

 

 

「さて、話を変えるが最近妙な話を聞いてな」

「妙な話?」

 

 

 ここからが本題か。妙な話という事は戦争の予兆ではない。となると……最近活発に行動している魔人達か。ギィが興味を持つのは古くからいる3人。頼み事もあると言ってたから、俺の関係者か。

 

 

「とある王国が急成長を遂げているらしい。それに反応してか周辺の諸国が侵攻を計画していると聞いた」

「へぇ……。それは大変だな。それと俺が……まて、最近急成長って……」

 

 

 思い当たるのは1つしかない。俺の耳に入っていないだけで夜薔薇宮が予想を上回る速度で成長していたら、周辺諸国が感化され手を組んで攻め入る可能性はあり得るだろう。

 

 

「新たな魔王が誕生するには丁度いい舞台だろう?俺の見込みでは4人生まれる。誰かは分かるよな?」

「ディーノにダグリュール……アイツは聖なる存在だから名乗るだけかもしれんが、残りの2人は噂のカザリームと……ルミナス。そういえば真なる魔王に覚醒することに拘っていた」

「ほぅ。なら好都合だろう。お前はどう思う?」

「どうって……アンタの見込み道理になった場合、夜薔薇宮には2人の魔王がいる事になる。問題になるだろう?」

「それなら構わねぇ。あの場所の支配者はルミナスでお前は不毛の大地。お前達は居候の身だ」

 

 

 本当にいいのだろうか怪しいが、調停者であるギィが許可したなら深く考えないようにしよう。しかし、いつの間に俺が不毛の大地の支配者になったのだろうか。これも深く考えない方いいだろう。かの地の復興は俺達の悲願なのだから。

 

 

「それでだ。お前にはあの吸血鬼の姫の覚醒を見届けて欲しい。どのみちあの王国は確実に狙われるからな」

「狙われる?誰に?」

「それは自分の目で確かめろ。あぁ、くれぐれも頭上と因果には注意だ我が友」

「……」

 

 

 何を企んでいるのか知らんが、どうやらあの時と同じかそれ以上の何かが起きるのは確定か。もう二度とあんな思いをしないためにもすぐに戻らないといけない。

 

 

「ルミナスの覚醒は兎も角、頭上と因果には気を付ける。話しはそれだけか?」

「あぁ。次は……そうだな。落ち着いたらまた会おう」

「出来れば会いたくないがな」

 

 

 紅茶を飲み干して立ち上がり、手合わせを終えたアルビオンとヴェルザードと軽く話をし、ヴェルザードに礼を言ってから夜薔薇宮へと戻った。

 

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