異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です   作:八葉と黒神の剣聖

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慌ただしい朝

 夜薔薇宮に帰って来てから数日。俺は溜まった仕事を片付けつつ周辺調査を行って貰っていたエンブとウインディからの情報を整理していた……のだが。思ったよりも忙しくほぼ完徹状態。鍛錬もあまり出来ていない状態だった。 

 そんな中で俺の部屋にはアレクとベルが訪ねてきたので、少し小休止を取りお茶を飲んでいた。

 

 

「はぁ。何でこんなに書類が多いんだよ」

「なんか悪いな。俺の方で片付けたかったけど、ルミナスの奴が『自分の仕事は自分でやらせろって』」

「あのババ……ルミナスめ……」

(うわぁ……珍しくホムラ様がイライラしてる……)

 

 

 まぁ少し機嫌が悪いのだが落ち着こう。ルミナスは間違った事は言っていない。言っていないが……定期的に戻るべきだと少し後悔してしまった。

 

 

「そう言えばアルビオンさんはどちらに?」

「あぁ。ルミナスに捕まってる。色々と話したいんだろ」

「今頃お前の黒歴史暴露されてるぞ。良いのか?」

「別に。お前こそいいのか?マリンさんと仲良くしてることでルミナスにいじられてるだろ」

「うぐっ。何の事だ?」

 

 

 冷や汗を流しながら目を逸らすアレク。どうやら相当遊ばれているようだった。ルミナスからしたら格好の得物だろう。どんな風に弄られているかは想像できるが。

 

 

「で。2人はどうだ?」

「ふふ。良い感じです。ゴールインも近いですよ」

「そうか……よし、今から空いてるかベル?」

「今から……はい。私でよければ」

「ありがとう。んじゃ少し出て来るよアレク」

「おぅ。俺は部屋に戻ってるからな」

 

 

 アレクと別れ、ベルと一緒に向かうのは工房区。途中でユニとも合流し、パールさんと遭遇したので情報交換。その後に工房区へと到着。一年前より何か所か増築しており、巨大窯も平常運転だ。

 

 

「しっかし賑わってるな。所々吸血鬼達も居るし……っとあれはゼノアか」

「隣に居らっしゃるのはロイさんですね。ルイさんはいないようですが」

「色々あるんだ。行くぞ」

 

 

 2人は声を変えずに装飾品が売られている工房に。中にいるおばちゃんに声を掛けると、大きな声と笑顔で出迎えてくれる。その姿を見ると祖母を思い浮かべてしまうがそれも遠い過去の事。あの世界でどれだけの時間が過ぎたか分からないが、家族が元気である事を祈ろう。

 

 

「おば様。こちらの魔鉱石でペアの腕輪をお願いします」

「任せときな。皇子とマリンさんの分だろ?」

「うん。頼んだよおばちゃん」

 

 

 純度の高い魔鉱石を渡して工房を出る。そのまま夜薔薇宮を見て周ろうとした時だった。西から強烈な魔素を感じ取る。無論隣にいたベルも直ぐに気付き、魔人達とゼノア。ユニやハクエンも瞬時に集まって来た。

 

 

「ホムラ様!この気配は」

「あぁ。幸いにも気付いているのは俺達だけ……狙いは俺だろう。魔人たちは夜薔薇宮に被害が出ないように気付かれぬよう結界。ゼノアとハクエンはルミナスに報告。ベルは幻惑で気配を遮断。ユニは付き合ってくれ。頼んだぞ」

 

 

 瞬時に指示を出してユニを頭に乗せる。ユニがしっかり掴んだのを確認してから空高く飛び上がり、夜薔薇宮より東にある少し開けた場所に向かう。その途中に後ろを振り返ると、桃色の髪が見え、あぁやっぱりかと納得しスピードを上げると、桃色の髪……ミリムが何を思ったのか複数の光弾を解き放って来る。

 

 

「いきなりかよ!アイツに何かしたか!?」

「文句言っている暇あったら避ける!」

 

 

 光弾の間を掻い潜るように避けるが、避けた先に光弾が飛んでくるに加えて、俺の体から僅かに放出している魔素に反応して磁石のように吸い寄せられてくる。

 

 

「やば。ホムラに吸い寄せられてるッ!!」

「魔素に反応してるのか。面倒だが撃ち落とすぞ」

 

 

 後ろ腰に携えている銃を抜き、光弾の弾速と弾道の予測と処理を瞬時に行い、銃に魔素を注ぎ込む。そして光弾全てを視界に入れて解き放つ。

 

 

「行け!」

 

 

 一発の炎弾が放たれたのと同時に光弾の数だけ分散。全ての光弾に直撃し爆風と衝撃が周囲に伝わる。ゆっくりと地上に降りると、目の前にご機嫌な様子でミリムがやってくる

 

 

「久しぶりなのだ!腕は鈍っていないようだな!」

「鈍ってるわけ無いだろ。何しに来た?」

「ふっふっふ……よくぞ聞いてくれた」

 

 

 何だろう。とてもどうでもいい事のような気がするのは気のせいだろうか。俺の中ではお茶会に参加しないから強引に連れて行こうと思っての行動だと思ったけど、ミリムから殺気を感じない所見ると絶対に違う。絶対に碌でも無い事だろうなぁ……。

 

 

「遊びに来たぞ!」

「帰れ!」

「何!?」

「何じゃない。俺だって忙しいんだ。君と遊んでいる暇はない」

「なら何で私から逃げた?鬼ごっこをするのだろう?」

「しねぇよ!」

 

 

 つい大きな声で突っ込んでしまった。というか遊びに来るなら事前に連絡しておけよ。事前連絡あったならあそこまでの厳重警戒する必要なかったのに。

 

 

「生憎と今日は遊べない。また日を改めて……いや、そう言えば俺の相棒が暇してたな」

「相棒……あの皇子か?」

「あぁ。アイツとなら目いっぱい遊んでいいぞ。ただし組手等は禁止だ。ちょっとした遊戯があるから」

「遊戯?それは面白いのか!?」

「あぁ。面白いとも。興味あるならついてこい」

 

 

 ゆっくりと浮上し夜薔薇宮へと戻る。ミリムが興味津々に後を付いてきたのを確認してからユニ経由でアレク以外に連絡。怖い吸血鬼の姫は大層怒っていたがどうにかなる……だろう。

 という訳で民達に気付かれないように俺達の屋敷へ帰宅。そしてアレクの部屋にノックしてから入ると、アレクは『何だもう帰って来たのか?』とこちらに振り向きながら言ったが、俺の背後にいたミリムを見た瞬間、顔が一気に青ざめていく。

 

 

「は……?ミリム?何で?」

「お前と遊びたいって」

「え?俺と!?お前ではなく?」

「あぁ。頼んだぞ親友!」

 

 

 微笑みながらアレクにミリムを押し付ける。どういう状況なのか理解していない内に部屋を出て自室に逃走。何やら怒鳴り声が聞こえてきたが俺は知らない……というかこれから他の魔王との交流はあるわけだから慣れて貰わないと。

 

 

「ふぅ。何とかなったか」

「若様はそうではないけど。正直少し見損なった」

 

 

 フードの中に隠れていたユニが顔を出し冷たい視線を向けながら言った。アレクならきっと大丈夫だろう。問題は後でルミナスにどう言い訳するかだが。

 

 

「ルミナスにどう言い訳するよ」

「自業自得。というか今すぐ言い訳したら?後ろ」

「後ろって……うわぁ」

 

 

 振り返った先には俺の大きな椅子に座って青筋を立てているルミナスの姿が。取り合えずそろそろ朝ご飯んだし釣るか。

 

 

「ルミナス。そろそろ朝食だし良かったら一緒にどうだ?」

「は?」

「だから朝食でも……」

「その前に話すことがあるじゃろう?」

「話す事?一体何のこと「ふッ!」ーーッ!?」

 

 

 気合いの入った掛け声と共に、見覚えのある小太刀の剣先が俺の眼前に突きつけられた。そう言えばもう一本の愛刀の小太刀はルミナスに渡していたか。(というか今殺す気だったよなこの吸血鬼!?ちょっとヤバい女の子が来たぐらいで大げさな!)

 

 

「何故あの小娘が来た?軽く蹴散らさんか、同じ魔王じゃろうて」

「夜薔薇宮が吹き飛んでも良いのか?」

三重精霊結界(トライエレメントフィールド)とベルの『幻影乃王』があれば問題ない。あ奴は他の竜種と同じ天災じゃぞ」

「君の目の前にも天災がいるが?」

「貴様は別じゃ」

「そ、そうか」

 

 

 いまいちルミナスの基準が分からない。最近は既存する魔人や魔物でクラス分けがされている。俺とミリムは中でも一番危険な天災級らしい。怒らせたら世界が滅ぶとか。そんなことは絶対にしないと思うが、ある意味、人や魔人に畏れられているのは良い事だ。上手く利用できるし。

 

 

「今はアレクに任せてる。君は今すぐ……」

「ホムラよ!」

「「!?」」

 

 

 ミリムの大きな声と同時に扉がこちらに向かって飛んでくる。俺はすぐにルミナスを抱き寄せて扉を粉砕。部屋の中にとても悔しそうな表情を浮かべたミリムが姿を現す。

 

 

「どうしたミリム。アレクと遊んでいただろ」

「確かにそうだがつまらん!それに全く勝てないぞ!」

「何して遊んでた?」

「えっと……囲碁だ!」

「何選択してんだあの馬鹿」

 

 

 そんな難しい事ミリムに出来る訳がないだろう。後で一言言っておこう。ともあれ、ミリムが俺の方に逃げてきたなら何とかしないとな。腕の中にいるルミナスも怒りで震えてるし。

 

 

「という訳だからさっきの続きをやるぞホムラ!」

「悪いがこれから仕事」

「そんなもの配下の者に任せておけばいい。魔王なのだからもっと気楽にした方が良いぞ」

「そうはいかない。魔王としてやるべきことがある。守る物もな。遊びたいなら事前に連絡してくれ」

 

 

 ミリムの頭を右手で何度か軽くたたく。何とか分かって欲しいのだが相手はミリム。そう簡単にはいかないだろうと思っていると、ルミナスが俺の腕を払ってミリムと俺の間に立つ。

 

 

「む。何だお前は」

「妾の事はバレンタインとでも呼ぶがいい。そんな事より貴様。ホムラはこの後砂漠化についての話が配下の者どもとある。邪魔をするな」

「お、おい……」

 

 

 そんな事でミリムが折れるはず無いだろう。確かに会議はあるが昼からだ。それも簡易的な計画を組むだけだから俺が絶対に居ないといけないわけではない。事後報告でも言い訳だし。

 

 

「む……砂漠化の件か。それなら仕方ない。また後日遊びに来ても良いかホムラ?」

「え?あぁ構わないよ。事前に連絡してくれたら」

「うむ。ではまた来るのだ!」

 

 

 手を振って去っていくミリム。もしかして強気に出たルミナスに気圧された……いや、そんなことは無いか。いつものミリムなら売られた喧嘩を買うだろうし……。

 

 

「ふん。あ奴もあの事は責任を感じているようじゃの」

「砂漠化の事か。アイツの事だから気にしていないと思ってたが……もしかして」

「そういう事じゃ。で?妾と朝食を食べたいのか?」

「それは……いいよ。腕によりをかけて。折角だし皆呼ぼう。手伝ってくれるかユニ?」

「了解。んじゃ皆呼んでくる」

 

 

 皆を呼びに行くユニ。さて……完徹明けにキッツい事があったが、今日も一日頑張って行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 




天魔戦争まで後僅か。
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