異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です   作:八葉と黒神の剣聖

19 / 61
調査と勇者

 周辺諸国に漂う不穏な気配が日に日に大きくなっている。そろそろ何かが起きる前触れだろう。その何かについて俺達も調査を開始しており、その一環として、俺はアレクとベルと一緒に一番近い小さな国に足を運んでいた。当然俺は姿と性格を切り替え、アレクとベルは幻影乃王で姿と気配を変えている。

 

「んー。今の所は何もなさそうだな」

「ですが同盟に加盟している事には変わりません。小さな国だからこそきちんと調べないと!」

 

 

 とても気合が入っているベル。その理由は数百年振りにこの3人で行動しているから。そう思うとあれから時がたった。俺とベルはまだまだ生きるからいいが、アレクはあと500年程。どうにかしてアレクを上位魔人と同じ位長寿にするために手を打たないと。

 

 

「気合が入っているのは良いが空回りしないように」

「大丈夫です。絶好調ですから。若様はどうです?」

「俺か……うん、ホムラに比べたらマシな方だろ」

(ん……?気になる言い方だが……おや?)

 

 

 一瞬アレクの首に見覚えのある後を見つける。そう言えば昔ルミナスから聞いたことがあるな。吸血鬼が人に噛みついた時、低確率で噛みつかれた人も吸血鬼になるって。もしくは吸血鬼の血を飲むか。それでも余程相性が良くないとならないって聞いたけど。

 

 

「んな事より情報収集。まずはこの国の戦力調査だ」

「了解。まずは中央にある大きな屋敷だ。頼むぞベル」

「承知しました。不可視の幻霧」

 

 

 俺達を不可視の幻霧が覆う。これにより周囲からはいたって普通の人間と認識され、正体が気付かれない。妖気を制御するのも大分様になって来たし。だからといって気は抜けない。何故なら街に出た途端に空気が変わったから。かなりピリピリとしている。

 

 

「おいおい……嫌な空気だな」

「えぇ。それに武装している方も居ますね」

「……それだけでは無いな。見覚えのある顔の奴がいる」

 

 

 指を指した方には、西洋人が3人いる。恐らく俺と同じ異世界人だろう。近頃は召喚された異世界人が猛威を奮っているらしい。だがその力は強大故、召喚者に逆らえぬよう術で縛られている。俺はそうでもなかったし、そもそもあの時代がまともに召喚成功した人間は殆どいなかった。

 

 

「術式が安定したのでしょうか?」

「どうだろうな。だがホムラと同じって事はユニーク持ちは確定。厄介だぞコイツは」

「ルミナスやルイ兄弟。超克者なら問題無いだろ。下位の吸血鬼や王国の民はきつそうだが。人数をもう少し調べよう。西と東には先生達が調査している。数次第では俺達も加わる必要があるだろう」

「そうですね。では上空で待機しているアルビオンさんに」

 

 

 アルビオンに連絡をしてから情報収集再開。細かく兵の数と異世界人の数を数えつつ装備も確認し、ユニ経由で別調査しているエンブ達の情報を受け取り照らし合わせると、装備が恐ろしいほど一致してしまった。

 

 

「これで完全に結託しているのは確定ですね。残りは四か国。このまま向かいますか?」

「そうだな……このまま転移しよう。もう少し裏が欲しい」

「裏?確かに誰が焚き付けたか知りたい所だな」

「ん。行くぞ」

 

 

 指を鳴らして次に転移し再び調査。その度に情報を照らし合わせて確実な物にして行く。それを4回繰り返したところで、俺は誰かに付けらていることに気付く。

 

 

「誰か付けてきてる」

「え!?」

「マジか!」

 

 

 2人が気付いていないという事は気配遮断系統のスキルを持ち、纏っている幻霧が効かない相手という事だ。なら早めに捕まえておこう。

 

 

「さて……」

「っ!?」

 

 

 振り返って瞬間に黒い影が動き出す。体を光に変換させて影の前に瞬間転移し大剣を抜くと、黒い影……黒髪の少年は慌てて立ち止まる。

 

 

「はや!?」

「当たり前だ小僧。所でどうして後を付けた?」

「えっと黙秘権を……」

「使わせるか」

「ひぃ!分かりました話します!というか聞いてくれるんですか!?」

「あぁ。その変わり俺達のボスと一緒にな。異世界人」

 

 

 少年の襟元を掴み持ち上げベル達と合流。事情を話してから城へと転移し、玉座で付けている吸血鬼達と話をしているルミナスの前に突き出す。

 

 

「土産だルミナス」

「青臭い小僧など要らぬ……ん?貴様と同じ異世界人か?」

「うん。俺達を付けていてね。話しを聞いてやろうと思うんだ。色々と知っているみたいだしね?」

 

 

 少年の顔を覗き込みながら言うと、少年は『え?何の事?』と言わんばかりの表情を浮かべる。妙だな、てっきり俺達のことに気付いて後を付けていたと思ったが。」

 

 

「小僧な名前は?」

「はい。雨宮湊(ミナト・アメミヤ)です。一月ほど前にこの世界に呼ばれて」

「一月……思ったより近いの。で?我が親友達の後を付けていた理由は?」

「それは……その……」

 

 

 俺達から視線を外すミナト。よし軽く脅すか。俺の魔王覇気が魔神覇気に進化したし。威力を調整すれば吐かせることも出来るだろ。

 

 

「素直に言わねぇと脅すぞ。さっき聞いてくれるんですか?って言ってたよな?」

「うっ。確かに……でも下らない理由で……」

「それでも話すのじゃ。妾達は今忙しい。いつ争いが始まるか分からぬからの」

「争い……そう言えば噂で8つの国が天使達の恩寵を受けて吸血鬼の国に攻め入るって。本名の巨人の国は天使たちが責めるそうですけど」

「「……」」

 

 

 思わぬ所から凄い情報もたらされたんですけど。というかこの子、どうも親近感を感じるんだよな……。

 

 

「貴様……ミナトだったか。それは真か?」

「はい。確かに聞きましたよ。日時は一月後です。詳しい戦力分配も知ってますが」

「……おいホムラ。もしかしてこの子」

「あぁ。俺達の早とちりか。すまねぇミナト。疑ってしまった」

「疑った?何をですか?」

「それは……」

 

 

 俺達が何をしていたか説明する。話を聞いたミナトは少し申し訳なさそうな表情を浮かべてしまった。まぁタイミングが悪かったから仕方ないだろう。彼も俺達に頭を下げたからこの事は追及しないでおこう。

 

 

「ただいまホムラ。情報収集終わった……あれ?」

「ん。おかえりユニ。どうした?」

 

 

 帰って来たユニだが、ミナトを見て何かに気付く。暫く彼を見てから俺の肩の上に乗ると、真剣な表情で言った。

 

 

「ホムラを殺しに来たの?誰の差し金?」

「え……?」

「ユニ……さん?」

「それって……まさか!」

 

 

 そこで感じた親近感に確信する。それと同時にミナトは謝りながら騎士剣を抜き一瞬で間合いを詰めてくる。

 

 

「ごめんなさいフレアさん。これも僕の役目です!」

「っ!(速い。しかも不意を突かれた!)」

 

 

 完全に気を抜いていたから反応が遅れた。しかもかなりの速度、これはやられる!

 

 

「貫け!」

 

 

 剣先から放たれる光。光は腹部を貫通し実体化。光は壁に突き刺さり俺は貼り付けにされる。光を実体化する能力の持ち主か。さらに剣技の方も中々だ。

 

 

「ホムラ様!」

「待たんかベル!」

 

 

 助けに入ろうとしたベルを制止するルミナス。ベルだけではなく、この場にいるルミナスの配下達も彼女の指示で動こうとしない。アレクに関しては剣を持つだけで抜こうとしていない。

 

 

「くそ……上手く俺達を暴きやがったな後輩」

「そうでもしないと魔王の首は取れませんから。どうかご容赦を」

 

 

 剣先に光を集め近づいてくるミナト。次の一撃で確実に仕留めるのだろう。さて……このままやられるわけにもいかないし、まだ未熟な彼を斬るのもあれだろう。どうしたものか。

 

 

「なぁ。俺が魔王って誰から聞いた?しかも夜薔薇宮にいる事を知ってる奴なんて殆どいないはずだけど」

「……ラミリス様からです。勇者として認められ、挑むなら貴方に挑めと」

「成程……ルミナス。どうしようか」

「好きにせよ。お主の決めた事に文句は言わぬ」

「だな。よっと!」

 

 

 腹部を貫いてる光を粉砕。傷を焔で癒してから右手に太陽を作り出す。折角俺に挑んできたんだ。勇者として認められたのなら、俺がたどり着けなかった所に到達してもらおう。

 

 

「小僧。俺の事はラミリスから聞いてるな?俺を仕留めたいのなら真なる勇者に覚醒してみろ」

「……!それは……」

「なぁに。不意とはいえ俺に一撃入れたんだ。10年位修業すればいけるだろ。それまで付き合ってやる。その代わり」

「なんですか?」

 

 

 俺は少しニヤケながらルミナスに視線を送り、考えている事を伝えると、彼女は呆れた表情を浮かべつつ『好きにせよ』と返事が来る。

 

 

「俺には成すべきことが多くてな。定期的に夜薔薇宮を開ける事も多い。その間に魔人たちと共に守ってくれないか?」

「な、何で僕がそんな事……。勇者が魔王の住む国を守ったらおかしい……いや、でも貴方は確か……ぐぬぬ……」

 

 

 俺の事を知っているのなら簡単には断れないだろう。ラミリスがどういった意図で俺に送り込んだか知らないが、俺としては強い奴が味方になってくれると心強い。それに異世界人を放って置けないしね。

 

 

「どうする?俺としては心強い友を得る。君は覚醒することが出来る。悪い話ではないが?」

「……成程。ラミリス様が仰った通りですか」

 

 

 ミナトは剣を納めて殺気を消す。俺への敵意も消えたので太陽を消し力を抜く。しっかしラミリスの差し金か。ひと段落着いたら〆るか。

 

 

「さて、取り合えずミナト。詳しい話を聞かせて貰おうか?」

「え?」

「そうじゃの。色々と知っているようじゃ。素直に話せば拷問の類はせぬ」

「え?え?」

 

 

 頬をニコニコとさせながら近づく俺とルミナス。ミナトの顔がどんどん青ざめていき、周囲を見渡して助けを求めようとするが、ひと段落着いたので皆と話し合いを再開している。

 

 

「あ、あの……程々にお願いします」

「大丈夫。話しを聞くだけだから」

「ホムラの言う通り話を聞くだけじゃ。まぁ騒ぎを起こしたバツは受けて貰うが。きちんと面倒を見るのじゃぞホムラ」

「分かってる。んじゃ……お茶を飲みながら話をしようミナト」

「……はい」

 

 

 という訳で、ラミリスの差し金だがまだまだ未熟勇者のミナトを一人前に鍛え上げる事になったのであった。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。