異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です   作:八葉と黒神の剣聖

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鉄と炎の国

 唐突だが、俺達は窮地に陥っていた。俺は今仲間と一緒にある魔獣を討伐しに来ていたのだが、聞いた話と実際に見た魔獣が天と地ほどの差があり言葉が出なかった(主に仲間達)。

どれ程の差があるか、簡単に説明すると猫とライオン……ではあまり分からないか。大きさで言うと小さな小屋と大きな屋敷と言えば大体分かるだろうか。ともかく、一筋縄ではいかない相手なのは確実だ。

 

 

「おいおい。どうすんだよフレア。こんなの俺達では無理だって!」

「い、一時撤退して……」

「言っておくが逃げるという選択肢はないぞ。と言うか避けろ」

「「え??」」

 

 

 魔獣が雄たけびを上げ乍ら大きな右腕を振り下ろしてくる。俺は瞬時に回避するが、仲間の2人……ベルとアレクは直撃を受けてはるか後方へと飛ばされていく。

 

 

「うわぁ……すげー破壊力……」

 

 

 直前に結界を貼っていたのを見ていたが、それを見事に粉砕。っと、そんなことを言っている暇はないか。あの2人とは付き合い長いし、血反吐を吐くまで鍛えているから問題ない。後で回収に行こう。

 

 

「グルルルルル……」

「ふっ……。俺を殺そうとしても無駄だぞ?お前は日輪の如き炎に焼かれて死ぬ」

 

 

 2つのスキルの複合。刀身に炎を纏い、温度を太陽に匹敵するまで上昇。かつ範囲を刀身のみに調整し、周囲への被害を極限まで抑える。

 

 

「許せよ。お前が暴れると近くの街に被害が出るんだ」

 

 

 魔獣に謝ってから刀を振り下ろし塵1つ残さず消滅させる。断末魔をあげる暇すら与えずに。さてと、これで依頼完了だしアイツらの元に行くか。

 

 

(しかし……あの手の魔獣は温厚なはずだが。様子を見る限り何かに怯えているみたいだし、何か起きる前触れか?もしくは既に起きていて……まさかね)

 

 

 ふと、以前ラミリスと話した事を思い出すが、流石にあり得ないだろうと思いつつ吹き飛ばされた仲間たちの元に向かうと、2人は壁に埋もれており、呆れつつも引き抜いてから傷の治療をする。

 

 

「すまねぇフレア」

「ごめんなさいフレア様」

「気にすんなベル。だがアレク…お前は許さん」

「何でだよ!」

 

 

 反論してくるアレク。そんなの決まってるだろ。男性には厳しく女性には優しく。特にベルは後方支援だからね。中近距離のアレクにはもっと身を粉にしてもらわないと。

 

 

「それよりフレア様。最近魔獣が騒がしいですね。今月に入って40体目ですよ」

「あの噂は本当なんじゃね。ミリムと幼竜に手を出す話」

「……」

 

 

 出来れば嘘であって欲しい。仮に幼竜が殺されミリムが暴れたとなれば誰も止められない。無論俺は立ち向かうぞ。数多の人間の想いを背負って戦ってる。勝負に負けても戦いには勝たないといけない。

 

 

「取り合えず国に戻るぞ。周辺で暴れている魔獣は倒したって」

「そうだな。そろそろこの長期勤務の文句を言ってやる」

「随分機嫌悪いですねアレクは……」

 

 

 ま、気持ちは痛いほどわかるがね。流石の俺も疲れたし少し休暇をもらうか。そうと決まればすぐに向かおう。

 

 

「行くぞ二人とも」

「あ。ちょっと待てよフレア」

「ま、待ってください!」

 

 

 2人と共に我らが国へ。俺達が拠点としてる国……正確には俺を呼んだ国は鉱山都市・サンフレアと呼ばれている。他にも炎の国などと呼ばれとても大きな国で、その名の通り鉱石で有名だ。この土地限定の鉱石もあって、他の国との交易もある。

 因みに俺の名前はこの世界に来てから召喚者に付けられた名前で本名は別にある。本名で呼ぶ奴は一人しかいないけど。

 

 

「そういえばフレア様。最近あの人から連絡ありませんね」

「あぁ。あの吸血鬼か」

「……出来れば連絡はない方が嬉しい」

 

 

 脳裏に浮かぶ吸血鬼の姫。ある出来事で知り合ったのだがそれ以来お気に入り認定されてしまい、事ある度に呼び出されている。しかも国と同盟まで結んで外堀を埋められてしまい逃げる事が出来ない状態だ。

 

 

「しかしあの時は大変だったよな。吸血鬼の王国に狼型の幻獣が出て。昼間だったから何とかなったけど夜だったら……」

「全員あの世行きでしたね。フレア様の加護のお陰です」

「あぁ。思い出すだけで憂鬱だ……っと、到着だ」

 

 

 国への大きな入口が見えてくる。入口に常駐している衛士に挨拶をしてから中に入り、歓楽街を通り過ぎ、国の中心に建っている城へと向かう。門番をしている兵士に開けて貰い中に入って、大きな広間へと進んで行く。

 

 

「んじゃ行ってくる。ゆっくりな」

「はい。ゆっくり休んでください」

「親父に宜しくな」

 

 

 2人と別れて広間の中心にある円盤の上に立つ。円盤の中央にある宝珠に魔力を流し、円盤を炎で浮かせて最上階に。円盤が停まったのを確認してから目と鼻の先にある大きな扉を開ける。 

 開けた先は一階の広間よりはるかに広い部屋。真紅の宝石で覆われ、豪華なシャンデリアもある。この部屋は国王との謁見場。いわゆる玉座であり、政治や国の各区を束ねる七賢者が集まる場所である。

 

 

「戻ったぞ国王……」

「フレアァァァァ!」

「ぐはっ!」

 

 

 高貴な服装を纏った中年親父……国王がいきなり抱き付いてくる。またか、これだから国に帰りたくない。国王なのだからもう少し頑張ってくれ。何より俺を呼んだ張本人だろう。

 

 

「フレアよ。私の国はどうなる?魔獣の被害が増えておらぬか?」

「そ、そうだな。だから俺やベル、アンタの息子が頑張っているのだろう?大分疲れているし、周辺の魔獣は蹴散らしたから休暇を与えてやってくれ」

「おぉ。流石は我が国の名を背負った勇者。そなたとベルには休暇を与えよう。1週間ほど休むといい」

「了解……ってアレクは?」

「ふっ。あんな親不孝者は知らぬ。それと先ほどルミナス殿が……」

「おっと俺は用事があるんだった。ルミナスにはいないと伝えてくれるか?」

「居留守をすれば死ぬ一歩手前まで血を貰うと言っておったぞ」

「……」

 

 

 おのれあの吸血鬼。俺を逃さないつもりか。はぁ……俺の何処が気に入ったが知らないが、後で連絡するか。場合によっては王国に行く必要も出て来るだろうし。いくら彼女から教わった術で王国に一瞬で飛べるとはいえ、魔力消費が激しいからな。出来れば控えたい所。

 

 

「やれやれ。暫く自室にこもるぞ」

「心得た。しばし休むとよい」

 

 

 玉座から退室し自室に向かう。すぐにベットにダイブしたい所だが、吸血鬼の姫様に連絡を取らなければ。どうせ大したことの無い話だろうけど。

 

 

「よし。連絡するか」

 

 

 ルミナスから預かった宝玉に魔力を流す。淡く光り、彼女の声が聞こえてくるのを待っていると、光が強くなり体を覆う。

 

 

「んん?ちょっと待て。何かとても嫌な予感がーーー」

 

 

 --と不安を抱くも時既に遅し。周囲の景色が一瞬で見慣れた物に変わる。黒を基調とした薄暗い部屋。俺の部屋は玉座同様に真紅に染まっているから、見分けは付く。ここは……吸血鬼の王国にある城の部屋だ。

 

 

「転移術……しかも俺が魔力を込めた瞬間に発動したという事は」

 

 

 後ろを振り向くと見慣れた宝珠がある。その宝珠を調べると、俺の部屋に置いてある宝珠との繋がりを感じ、仕組みを瞬時に理解する。

 

 

「宝珠間のパス……道を介して飛ばされたか。新しい術式だな。いつの間に仕組んだ?」

 

 

 思い出したり調べても無駄だから諦めよう。この手の仕込みはルミナスの得意分野だ。普段は高圧的でマイペースなのに、お気に入りに対しては積極的だ。

 

 

「後で文句の1つでも言うか」

 

 

 心に決めた時だった。部屋の扉が開き、銀髪で赤と青のオッドアイを持つ、白と黒を基調としたゴスロリの服を着た女性が入ってくる。彼女がルミナス・バレスタイン。吸血鬼の姫であり神祖。王国を束ねる王だ。

 

 

「ふふ……。大分驚いたようじゃのぅ?」

「心臓に悪い。死ぬかと思った」

「ほぅ。昼間なのに死ぬのか?確かお主の弱点は夜だったはず。昼間は無敵じゃろうて」

「太陽を克服してるアンタが羨ましいよ」

 

 

 ルミナスは吸血鬼でありながら太陽を克服し、弱点の無い超克者である。本当に羨ましい。俺は夜が弱点だからなぁ……。全体的に能力下がるし、耐性も落ちるし。

 

 

「で?何の用だ?俺忙しいんだけど?」

「お主が喜びそうな話があっての」

「嫌な予感しかしないのだが?」

「まぁ座れ。お茶を出す」

 

 

 近くのソファに座り、ルミナスがお茶を淹れている所を見ながら、彼女の話しに身構えるのであった。

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