異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です 作:八葉と黒神の剣聖
勇者ミナトに襲われてからはや2週間、その間俺達は彼の情報を元に備えていた。結託した周辺諸国が攻めて来るまでは残りあと3週間だ。どれだけの数が攻めて来るかはおおよそで、異世界人が30人だという事は分かっている。しかも夜薔薇宮に直接攻めて来るらしい。恐らくは転移術だろう。侵入を防ぐ結界はマリンさんが開発しているが使わないらしい。理由をルミナスに聞いたら『来るなら丁重に出迎えよ』とのことなので、その通りにすることに。
また、夜薔薇宮周辺に展開する兵士たちはルイ兄弟やマリンさんが担当。一番数が多い所はルミナスが出向き、自身の覚醒の贄にする予定だ。俺達は城の警護で、3魔人は各地に展開するルイ兄弟達の援護。ミナトはアレクの護衛と、担当が決まっていった。俺とベル、ユニを除いて。
「……で。俺達は何をするんだろうね」
「当日は民と非戦闘員を地下に避難させるから、その誘導?」
「もしくは攻め入る異世界人の相手……それはないと思いたいですが」
正直今のルミナスが何を考えているか分からない。詳しい詳細等を一緒に決めたりはしたが、基本は『妾達で引き受ける』と言っていたのであまり言えない。だけど心配なので3魔人をルイ達に付けたのだが。願うならルミナスの背中を守りたい……でも余計な事って言われるのも嫌だし。
「入るよーホムラ」
「失礼しますホムラ様」
「お。パールさんとウインディ。時間通りだね」
これからちょっとした話し合いをする。エンブはミナトと鍛錬中なので後で伝えに行く予定だ。しかもその後にはルイ達にも相談事があるので今日は大変だったりする。
「わるいな2人供、少し聞きたいことがあってな。今回の戦いで恐らくルミナスは覚醒するだろう…どう思う?」
「ん?別にいいんじゃない。ルミナスも覚醒したがってたし」
「えぇ。文句を言う方はいらっしゃらないかと。どうかしましたか?」
「……いや。それならいいんだ。俺も何も言わないし」
「「「「???」」」」
ベル達は首を傾げる。ギィとの事はまだ誰にも話していない。話すのが怖いのもあるが、俺があの男の指示で監視を命じられている事を知られたくないのもあるが。
「そう言えばどうしてルミナスは覚醒したがってたんだろ?別にあのままでも十分強いのに」
「ふふ……。それは簡単ですよウインディ」
「どういうことパールさん?」
「ホムラ様には話しません」
おっと、どうやら男には関係ないようだ、どのような理由かは知らないが、正直気になっているのは事実。時間があれば聞いてみよう。
「さてと、俺達が何をするかは考えて置く。各自準備を怠らないように」
「了解しました」
「ラジャ」
「んじゃミナトの様子を見てくる」
部屋を出て向かうのは訓練場。中ではエンブがミナトの相手をしている最中で、状況は辛うじてミナトがエンブに食らいつけているといった所だ。邪魔をするのもよろしくないので、近くの椅子に座って観戦するとしよう。
「どうしたミナト?昔のフレアはもっと強かったぞ」
「昔のあの人と一緒にしないでください!」
エンブの挑発に乗りつつも冷静に対処するミナト。こうして見ていると昔の自分を思い出す。あの頃の俺はまだまだ未熟だった。ヴェルダナーヴァに期待はされてたが、正直荷が重かった。
(あれから結構経ったか。俺も魔王らしく欲しい物は全力で取りに行くか)
外套の内ポケットに入っている小さな箱に触れる。この箱はある遺跡で偶然見つけた物で、俺には似合わないもの。それこそルミナスのような高貴な姫に似合うものだ。
(無事に覚醒したら渡すか。きっと似合うはず)
「む……フレアか」
「え?いつからいたんですか先生?」
俺に気付き鍛錬を一旦中止する2人。丁度良かったのかそのまま小休止を取る事になり、ミナトは隣に座ってお茶を飲みながら体を伸ばす。
「ふぅ……流石は炎の魔人。屈強な肉体から放たれる格闘術は凄まじいです。掠るだけで裂傷になりますし」
「その魔人と俺は数百年以上前に死闘を繰り広げたんだぞ」
「えと、何年この世界で生きてるんですか?」
「さて……何年かな?」
正直な所覚えていない。あの戦いも結構前になるし、アレクの寿命を考えると500年は軽く超えている。その証拠として小さな国が数多く生まれ、ルドラが治める帝国も繫栄している。そして小さな争いも。
「もう忘れた。昔の事は重要な事と3人で馬鹿したことぐらいしか。まぁ後悔もあるけど。あの時……ユニを受け入れていたら魔王ではなく真なる勇者に覚醒していたかもとか、ミリムの件に関しては完全にエリンの故郷の王が悪いし、アイツも反省しているから必要以上に責めない。今は……目の前の事に集中だ。頼りにしてるぞ」
「はい。期待に応えて心身共に強くなります。所で、フレアさんは僕と同じ日本出身ですよね?どの時代から来たんですか?」
「ん?丁度アメリカに喧嘩売った時な」
「真珠湾の……もしかして東京大空襲の時ですか?」
「東京……何?」
「東京大空襲です。後の歴史で習いました。僕は西暦2012年から来たので」
おぅ。俺が飛ばされた時よりかなり未来じゃねぇか。しかし、あの時は空襲はなかったから、飛ばされた後に東京は焼かれたのか。あんな大国に喧嘩を売るから悪い。どのみち勝てる戦では無かったのだから。
「そうなると妹は無事だろうか。願うならもう一度会いたいが……」
「妹ですか……って。フレアという名はこの世界の名前でしたね。本名は何て名前ですか?」
「
「……え?ホノガミ?あの有名は神職の?」
おや?家は確かに神を崇める一家だが神職では無かったはず。どうやら俺がこの世界に来た後に有名になったようだ。
「確かあの一家の優秀な跡取りの青年がいきなり消えたと本に書いてましたね。その妹さんも戦後に行方不明になったと」
「……行方不明。見つかったのか?」
「見つかっていません。ですが、妙な渦に飲み込まれて消えたそうですよ。僕みたいに」
それって……俺やミナトのようにこの世界に来ている可能性があるという事だよな。もし来ているなら会いたいものだ。あれからどれだけの時間が過ぎたかは分からないが、話したい事は沢山ある。
(そうなるとこの世界に呼ばれる異世界人はどの時代からなのか分からないのか……)
あくまでも歴史上での話で、実際にこの世界に来るのがすっと先の可能性もある。この状況が落ち着いたら探しに行って見よう。
「そろそろ再開するぞミナト」
「はい。ではフレアさんまた」
「おぅ」
さて何処に行こうか。ルミナスは忙しいし、アレクも朝から雑事に捕まっている。他に手の空いていそうな奴は……ユニとハクエンか。確か書庫にいるはずだし顔を出すか。
階段を上り一つ上の階へ。書庫の扉をノックしてから入ると、中ではユニが大きな本を空中に浮かせて読んでいて、ハクエンは机の上で丸くなっていた。
「ハク?寝てるのか」
「ん。さっきまで私と遊んでたから。どうかした?」
ユニは本を読みながら肩に座る。今読んでいるのは先日の遺跡で手に入れた魔導書。ユニは主に魔法と俺達のスキルを使って戦う。彼女の究極能力『
「しかし、君やベルと言い究極能力って覚醒勇者か覚醒魔王しか会得出来ないと思ってたけどそうではないのか」
「そうだね。その二つに近いか同等の力を持つ者でも天使系・悪魔系以外の究極能力を会得出来るよ、条件を満たせればだけど。私は光の精霊でユニーク持ちだったし、ヤバい魔王さんに大量の魔素で名付けされて魂が繋がれれば進化するさ。正直予想外だけど魔人達も覚醒は兎も角進化はするんじゃない?ギフトを贈られてるはずだし」
「成程……そうなると次はアルビオンか……」
潜在能力を含めるとアルビオン辺りが会得しそうだ。最近は剣技を教えて欲しいって言ってくる位だし。俺としても対竜の対抗策を組めるし。
「なんか俺の周りには一癖も二癖もある連中ばかりだな。俺の立場ってどうなんだろ」
「まぁボスって言うより悪友?エンブとかベル達はそうでしょ。私は相棒でアルビオンはマスコット?あぁそれだとハクと重なるか。崇拝してるのはゼノアぐらいかな?」
「そう考えると俺らのボスはアレクか」
(君はルミナスだけど。最近は隠す気配ないし……)
先々を考えると俺達だけの部隊を編成する必要が出て来るだろう。リーダはアレクとしてどう編成するかだが、皆で考えよう。
「さてと、今日はここでグダグダするか」
「戦争も近いし休める時に休んで。私と君は一緒に戦うんだから。というか私単体では弱いし、君の魔素だよりな所もあるから」
「分かってる。んじゃ何冊か本を……」
本棚から何冊か本を出し、近くのソファーで横になってから読み始めた。