異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です   作:八葉と黒神の剣聖

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宴会とデート

「だから何でフレアちゃんはそんなに強い訳?」

「日々の努力の賜物」

「絶対嘘だわ!」

 

 

 大きな声で否定するシルビア。何の話をしているかは今のやり取りで分かるだろう。何故に俺が強いかだ。この手のくだらない話は直ぐに終わるはずなのだが、完全に出来上がったシルビアが終わらせようとしないのだ。

 

 

「普通の刀でランクが上の得物と互角に戦えるなんておかしいわ。魔法だって何で斬れるのよ」

「いや、それぐらい出来ないと剣士の名折れだ」

「究極能力だって3つもあるし権能もとんでもないわ」

「言っておくが、天使系や大罪系には及ばねぇからな」

 

 

 ギィやルドラなどが持つ天使・大罪系の究極能力(アルティメットスキル)には俺の『武神之王』以外の二つは届かない。純粋な能力では劣らないと自負しているが、如何せん燃費が悪い。それ故、総合的にみると及ばないのだ。俺はそれを補うために剣と武術、魔法等を磨いて色んな技を編み出している。

 

 

「俺に特筆した能力(大した力)は無いからな。強いって言われてもギィやミリム程ではないし」

「覚醒魔王の時点で十分強いわよ。ルミナスちゃんもそう思うでしょう?」

「んー……」

 

 

 抱き着いているルミナスに問うシルビア。ルミナスはゆっくりと顔を上げ、焦点の合わない瞳を俺に合わせると、両腕を首に回して唇を重ねてくる。

 

 

「んぅ……ちゅう。もう少し静かに話さんか。頭が痛いし血が飲めぬ。まだ飲んでおらぬが」

「……悪かった。それと人前でキスは控えるように」

「私は気にしないから」

「俺の精神(メンタル)が持たない」

 

 

 基本的に周りの目を気にしないルミナス。特に酔っている時はかなりヤバい。そう……今のように。どうにかして止めなければ。

 

 

「それとルミナス。酒飲むか血を飲むか首を甘噛みするか、どれか一つ選べ」

「全部」

「…よし酒を今すぐ止めよう」

「あっ!妾のお酒ッッ!!」

 

 

 おもちゃを取り上げられた子供の様な仕草を取るルミナス。必死に俺が持っているボトルに手を伸ばすが、身長差で届かない。よし、周りに空いていないボトルも無いしこれ以上飲むことは無いだろう。

 

 

「シルビアよ。こやつは酷い男じゃ。妾から酒を奪いおったぞ」

「飲み過ぎだし仕方ないと思うけど?」

「それでいいのじゃ。酔い潰れでもしないと傍に居てくれぬ。こんなにも愛しておるのに。ん……」

 

 

 再び唇を重ねてくるルミナス。これは大変よろしくないぞ。幸いにも今は周りにシルビアしかいないからいいが、この状況を他の連中に見られてみろ。ホノカなんて無言で弓を向けてくるぞ。何でかブラコンって奴になってるし。重度ではないみたいだけど。

 

 

「そろそろやめておけルミナス。じゃないと部屋に飛ばすぞ?」

「むぅ……ふん」

(扱いに慣れてるわね……)  

 

 

 拗ねて俺の胸に顔を埋めるルミナス。それとほぼ同時に『ヒュウ』と怪しい風が通り抜け邪気をわずかに感じとる。これは余りよろしくない奴だ。

 

 

「今日はここまでだシルヴィ。エル公連れて帰れ」

「え?どうしたのよいきなり」

「妙な気配がする。2人に何かあればあの馬鹿に顔向け出来ん」

「……分かったわ。殿下と話をしてから帰るわね」

「悪いな。俺達も撤退するぞルミナス。皆に伝達しないと」

 

 

 この場にいる配下とアレクに伝達し、ルミナスの頬を突くが反応が無い。どうやら不貞腐れて寝てしまったようだ。しかも離れないようにがっちりと抱きついている。仕方ねぇ。一晩ぐらい抱き枕になってやるとしよう。

 

 

「全く。普通にしていたら絶世の美女なんだけどな。…隙だらけだし気を抜きすぎじゃないか?」

 

 

 軽く頬を抓るが起きる気配はない。ここまで無防備な彼女は珍しい……っと。やり過ぎると起きてしまいそうだ。妙な気配も感じるし早く連れて帰ろう。

 

 

(しかし……異質な気配だったな。周囲を警戒しているランに明日聞いてみるか)

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

ー次の日の朝ー

 

 

「……むむ。重い……」

 

 

 体に圧し掛かる重みで目を覚ます。すると視界に映ったのはとても不機嫌そうなルミナスの顔だった。

 

 

「……お、おはよう」

「おはよう。所で今妾の耳に重いという言葉が聞こえたのじゃが?」

「な、何の事でしょう姫?か弱い少女に重いなんて言う訳がないかと」

「ほぅ……。白を切るか」

 

 

 ニヤリと悪魔のような笑みを浮かべ両手で俺の両頬に触れながら顔を近づけてくるルミナス。さて……この状況を乗り越える手段はあるのだろうか。誰か良い意見を言ってくれると大変助かるのだが、生憎誰も居ないので1人で何とかするしかない。

 

 

「選ぶがよい。一日妾に尽くすか、一日妾とデートするか」

「じゃあデート。都の神殿以外行った事ないだろう?」

「……デ、デートか。そうか……うん……」

 

 

 此方の返答に頬を赤らめるルミナス。この反応はあれか。予想外の答えが返って来て困ったパターンか。案外可愛い所がある姫様だな。

 

 

「……では一時間後に宮殿で落ち合おう」

「了解。それじゃあ失礼して」

「んっ!?」

 

 

 昨日の仕返しとしてルミナスの唇を奪う。いつもはやられる側だからたまには良いだろうという悪戯心だったのだが、今のルミナスには効果覿面だったようで、彼女の心拍数が一気に上がったのを感じる。

 

 

「昨日の仕返し。次からは酒に酔った勢いでキスしない事」

「……むぅ。油断した。デートの際は覚えておけ。やり返すからの」

 

 

 小悪魔のような笑みを浮かべて離れるルミナス。部屋を出る際に俺にニコッと微笑んでから退室。彼女の気配が遠くなったのを確認してから出かける準備を始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

「うえぇ……死ぬぅ……」

「……何してんだこの馬鹿」

 

 

 神殿にあるアレクの部屋。待ち合わせの場所をここにしたのには理由(ワケ)がある。先日の妙な気配について報告が上がっていると踏んでだ。しかし、いざ来てみると俺達の王は顔を真っ青にしてくたばっているではないか。隣でニコニコとどす黒い笑みを浮かべているマリンさんを見るに、相当絞られたようだ。

 

 

「調子乗って飲み過ぎた。おのれシルビアめぇ……」

「自業自得よアレク。シルビア様は悪くないわ」

「その通り。それよりアレク。いくつか聞きたいことがあるのだがその前に、何で身重のマリンさんがここに居るんだ?」

「ぎくぅ!?」

 

 

 ビクッとアレクの体が跳ねる。この野郎。いくら安定期に入っているとはいえ身重のマリンさんに働かせるとはいい度胸だ。あとでルミナスに報告だな。

 

 

「はぁ。マリンさんも自分の体をもっと労ってくれ。仕事はこっちに回してもらって構わないから。ゼノアにも伝えて置く」

「ありがとうフレア様。その優しさをもう少しルミナス様に向けて貰えると嬉しいのだけど。みんな期待してるから」

「何の期待だよ……っと。そうだアレク。ランから報告上がってねぇか?」

「あの戦乙女からか?特に無いな。或いは報告するか悩んでいるか。シンの元に行って見ろよ」

「了解。デートついでに寄ってみる」

「「……デート?」」

 

 

 少し面を喰らった表情を浮かべる2人。何だよ、俺がデートとか言ったらダメなのかよ。まぁ……それだけ最近は彼女と一緒にいない証拠になるんだけど。

 

 

「待ち合わせここか?」

「あぁ。そろそろ来るはずだけど……っと。来たな」

 

 

 ガチャンと扉が開き、何時もと少しだけ服装が違うルミナスが入ってくる。顔を隠すためか頭巾を被っており、僅かに覗く赤と青の瞳が神秘的に見える。

 

 

「待たせたの……っと。どうしてマリンが居るのじゃ。もしや小僧……」

「大丈夫よルミナス様。それより……」

「む。何じゃその笑みは?」

 

 

 ニヤニヤしながらルミナスの顔を覗き見るマリン。ジーと見続けているとルミナスの方から視線を逸らして俺の左腕に抱きついてくる。

 

 

「行くぞホムラよ。妾は歓楽街に行って見たい。ベルやウインディ達が趣味で開いているカフェが有ると聞いてな」

「お、おぅ(な、なんだ?ルミナスの顔がめっちゃ赤いんだけど。というかいつもと違う香水の匂いがくすぐったい)」

「ほれ行くぞ」

「ちょ、ちょっと」

 

 

 ルミナスに引っ張られて部屋を退出。そのまま神殿を出て歓楽街の入口に向かう。そこでルミナスは足を止めると、指を絡ませて繋いでくる。うーん……やっぱりさっきのマリンさんとのやり取りと言い昨日からなんか違和感を感じるぞ。

 

 

「最初はカフェか?」

「それは最後にしよう。どれだけ賑わっているか見て見たい。あまり見る機会は無いからの。聞く機会は多いが」

「了解。んじゃ……屋台でも行くか」

 

 

 歓楽街に入り多くの人とすれ違いながら賑わっているのを確認する。因みにだが4つの区画の中で歓楽街が一番犯罪率が高い。なのでシンの自警団の拠点がここにある。妙な連中が暴れないようにと、裏で馬鹿な事をしている連中を摘発するために。

 

 

「うん。今日も平和だな。きちんと見回りもしているし」

「治安がいいのはいい国である証。後でとシン達には褒美を与えておけ」

「大丈夫だ。休みの日は絶対に挑んでくるから」

「いつの間にか≪戦神≫と呼ばれておったか。ランは≪戦乙女≫だったな。あ奴らが覚醒した時の最初の相手は間違いなく……」

 

 

 間違いなく俺だあろうな。最初に覚醒するのはミナトかホノカだろうし。何か切っ掛けがあればいいのだが。それこそ生死を懸けた戦い、俺がミリムと戦った時みたいなね。

 

 

「どんとこいだ。まだまだ後輩には負けねぇよ」

「そのいきじゃ。おや……?あれは掲示板か?」

 

 

 歓楽街の中心。自警団の本拠地の前に掲示板があり、複数の人が見ている。あの掲示板には都周辺の状況や、仕事の依頼等が張り出されている。ふむ、もしかすると昨日の気配の正体についての情報があるかもしれない

 

 

「えっと……魔獣の討伐依頼と……」

「おい聞いたかあの話」

(……ん?)

 

 

 隣から話し声が聞こえてくる。耳を傾けると、隣にいた2人は近頃現れるある魔獣について話ているようだ。

 

 

「あぁ。黒い狐だろ。都周辺に現れて冒険者や行商人を襲ってるって話だ。丁度昨日の夜、ランさんが遭遇したらしいぜ」

「マジか。あの人大丈夫だったか?」

「大丈夫に決まってるだろ。偉大なる≪太陽の騎士≫の一番弟子で、剣星(ソードスター)の3剣星だぜ」

「そう簡単にはやられねぇよな。あの人強いもん」

(黒狐か……)

 

 

 ランで問題無いなら大した強さでは無いのだろう。だけど口振りからして倒した訳ではないようだ。恐らくは追い返すので手一杯だったか、もしくは……詳しい話をもう少し聞きたい所だが、まずは対策を考えないと。

 

 

(どうする。ランが率いる遊撃隊の巡回頻度を増やすか?いや、人数がギリギリの状態では厳しいか)

「ホムラ?」

(となると、自警団から何人か移動させるのが良いが、あちらもギリギリだし)

「おいホムラ」

 

 

 どうしたらいいのか。考えられる手はいくつかあるが、黒狐の脅威度が分からない以上は安易な手は打てないし、かといって都に来る人達を危険な目にも合わせられない。

 

 

(ホノカとミナトも忙しいからダメだな。俺が動くとユニに怒鳴られるし。どうすれば……)

「ホムラッッーー!!」

「っ!?どうしたルミナス……あ」

 

 

 彼女の大きな声に驚き其方に顔を向けてみると、ルミナスはプクっと頬を膨らませてとても怒っていた。これは……うん俺が悪い。素直に謝らないと。

 

 

「その……ルミナス。ごめっんん!?」

 

 

 謝るよりも早く唇を塞いでくるルミナス。10秒程経ってから両手で両頬に触れながら離れる。

 

 

「ラン達なら大丈夫。お主や小僧の耳に入っていないという事は自分たちで何となるという事だから」

「……そうだな。もう少しアイツらを信じてやらないと」

「うむ。ではデートを続けよう。さっき聞いたのじゃがベルの喫茶店は閉まっているらしくての。続きは妾の部屋でお茶会と行こう」

「ん。行こうか」

 

 

 そして途中でお菓子を買ってルミナスの部屋へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

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