異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です   作:八葉と黒神の剣聖

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外套の秘密と黄金の剣

「そう。あの時の事は覚えてるよ。そんなもの渡すなってな」

 

 

 後ろに居るアレクとベルに外套を託された時の事を話す。それは俺とヴェルダナーヴァとの最後の会話。アイツが人並みの寿命になってルシア嬢と旅行に行く前の事だ。

 

 

 

この外套(コレ)を君に。私達の親友(とも)の証として託すよ。

 

 

ーなんだよいきなり。そんな大それたものは奥さんに渡しな。俺は受けとれない。

 

 

ーそう言うと思っていた。でも…君と話すのは此で最後になりそうだから今のうちに渡したい。君自身もこれからどうなるか分からないしね。

 

 

ーあー……確かに。

 

 

 

 ルミナスと出逢う2、3年ぐらい前か。ミリムが産まれてそれほど時間が経っていなかったはず。その辺は詳しく覚えていない。結構忙しい時期だったから。

 

 

「確かにあの時は忙しかったな。親父の生誕祭もあったし」

「そういえばそうでしたね」

 

 

 そんな時期にヴェルダナーヴァから呼び出しを受けたって訳だ。いろいろと立て込んでいたのもあって後回しにしようかと思ったが、他でもない親友の頼みだ。皆に無理を言って俺はすぐに東に飛んでいった。

 

 

「そんでだ」

 

 

 

ー君のこれからを支えるために外に出る時は外套を絶対に纏って欲しい。もしも……君が絶体絶命に陥ってもう駄目だってなったその時は、絶対に助けるから。竜としてではなく“君の親友”(とも)として。

 

 

ーそれは嬉しい限りだが……で?何を隠したんだこの外套に?

 

 

ーフフッ…凄いんだよ。この外套はね、僕の因子で作ったんだ。存在値は1500万。勿論それだけでは無いよ。コレは“大きなきっかけ”となって君をもう一段階上に昇華してくれる。

 

 

ー……お、おい。なんかえげつない事を聞いたような気がするが?

 

 

ー大丈夫。僕と君以外にはただの布切れとしか思えないようにするし、解析鑑定も出来ないようにするから。

 

 

ーそれは大丈夫とは言わないけど……

 

 

 とまぁこんな感じで外套を押し付けられたわけだ。以前ルミナスがちょっかいを出してふらついたのはそういう事情である。“こいつ”は知ろうとした瞬間に弾き、対象の認識を阻害する。

 

 

「そういう訳だ。絶対に言うなよ」

「……言える訳ねぇだろ」

「ヴェルダナーヴァ様との出会いを上回る驚きです」

 

 

 この外套で色んな悪戯が出来る可能性があるからな。出来る事なら話したくないけど、ここは皆を信じる事にしよう。

 

 

「ヴェルダナーヴァとの出逢いも刺激的だったけど、外套(こっち)も中々に印象的だった」

「出会いに関してはおめーが悪いだろ。無言で刀抜いて斬りかかりやがってッ」

「旅出ていきなりラスボスだぞ。どうぞ斬って下さいって言ってるようなもんだ」

「メチャクチャ困った顔をしてたじゃねぇかあの竜。『何で僕斬られてるの?ただ話に来ただけなのに』って」

 

 

 (あの時は仕方ない。まだこの世界に来てそれほど時間が経っていなくて、碌な国も無く魔物が暴れてる無法地帯だから、目に映る物は基本敵だと思わないと生きていけない。その結果ヴェルダナーヴァに挑みボコボコにされたのだが)

 

 

「思えばあの時アイツと出会わなかったら今の俺はいないだろな。最後に大層な役割も押し付けられたし」

「役割?ギィみたいにか?」

「そうそう。その事はまた今度だ。そろそろ開けた場所に出そうだぞ」

 

 

 通路を抜け終えるとずいぶんと開けた部屋に出れた。一番奥には3つの光があるのが確認でき。その下の台には窪みが1つずつ。恐らくアレが解除スイッチだな。

 

 

「では押してみましょうか」

「そうだな。敵も居ないようだ……おや?何だあの石像…いや機械って奴か?」

 

 

 アレクが指を向けた先には、巨大は石像らしきものがまるで門番のように佇んでいた。青いボディに右腕が剣で左腕がクロスボウの一つ目。そして3足歩行。見た感じボディに使われている魔鉱石は国の基準でアダマンタイトクラスの物だ。

 

 

「機械があるわけ無いだろ。ただの石像に決まって……ん?」

「ギ……ガガ」

「「「……」」」

 

 

 妙な音が聞こえてくる。とても嫌な予感を感じていると、石像の目が光りいきなり動き出した。

 

 

『シンニュウシャハッケン!!ハイジョセヨ!』

 

 

 不可思議な声が発せられる同時に部屋が紅く光り、石像と同型と思わしき物が50体程現れて俺達を囲う。俺はアレクを守るために刀を抜こうとするがその手をアレクが止めた。彼は口角を上げ、自信有りげに愛剣のディザスターに手を置く。

 

 

「ここは進化した俺に任せな」

「進化って……おいまさか」

 

 

 戸惑う俺を余所に、アレクは今までに感じた事の無い雷を全身に纏う。アイツのもう一つのユニークスキルは『雷轟者』(トドロカセルモノ)。『断罪者』はマリンさんのお腹の子に継がれたから少し力が落ちたものだとばかり思っていた。しかし今アレクから感じる力は俺と同じ究極能力(アルティメットスキル)の“ソレ”だった。

 

 

『雷神之王』(トール)の力で機能停止にしてくれるッ!。お前等のボディに使われてる鉱石は貴重だからな」

 

 

 アレクはディザスターを斧に変形させて、雷を纏ってから一回転して振り下ろす。

 

 

『究極雷槌』(アルティメットトールハンマー)!」

 

 

 振り下ろした一撃は、地面にめり込み大きなクレーターを形成。それと同時に強烈な衝撃波が発生し雷が衝撃波に乗って石像の中心を正確に貫いて機能を停止させる。それを確認したアレクはディザスターを剣へと変形させて背中に担ぐ。

 

 

「ざっとこんなものだ。停止した石像は後でユニさんに回収してもらおう。丁度いい機会だし、ホムラの愛刀の素材にして貰おうぜ。担当変わったんだろ?」

「あぁ。ソフィって言う最近来た異世界人だな。今までは打って貰ってたが、次から錬金で作って貰う予定…なんだけど……」

「まだ新米だからなかなかうまくいかないんですよね。最高峰の魔鉱石であるオリハルコンが中々錬金出来んないだとか」

「素材を組み合わせるのが難しいってよ。沢山失敗してもいいように全部回収しようぜ」

 

 

 石像を一か所に集めてベルの幻惑魔法で拘束し、それからスイッチを同時に押して解除されたのを確認してから外に出る。目的の大きな建造物の前まで戻ってくると、何故かとても疲れているランと、さっきよりも険悪な雰囲気になっているルミナスとユニが先に待っていた。

 

 

「どうしたラン?何かさっきより酷くないかあの2人?」

「…何も聞かないで師匠。色々と大変だったから…」

「そうはいかねぇ。師匠として弟子の悩みは聞かないと。怒らないから言ってみな」

「…ルミナスさんが罠踏んで大変だった。キラーマシンが100体程現れて全部ボク1人で倒したんだよ。だけどあのが2人その事で大喧嘩しちゃって。『ホムラのパートナーなら罠なんか踏まないでッ!』って」

 

 

 プクっと頬を膨らませながらランは言った。それだけでがどれだけ大変だったかよくわかった。(ちなみにキラーマシンとは彼女の好きなげーむとやらに出て来る魔物らしい。何でもげーむに出て来る魔物を倒すのが夢だったとか)

 

 

「でね。それでルミナスさんが……」

 

 

ー妾だって罠の一つくらい踏む。こういった遺跡に来るのは初めてじゃからのう。お主こそ慣れておるのだから事前に一言あっても良かろうに。

 

 

「なんて言ったもんだからそりゃもう大喧嘩で。ユニさんからしたら魔王が罠に掛かるなんてあり得ないしそもそも油断している事自体あり得ない。ルミナスさんも罠を踏んだのに謝らないんだよ!ボクが必死にキラーマシン斬ってる時もずっと喧嘩してるしっ!しかもめっちゃ硬いから黒曜石の剣が刃こぼれしたんだよ!折角作ってくれたソフィちゃんに何て言えばいいかぁ!」

「…そうだな。確かに罠踏んで謝らないルミナスも悪いし焚き付けたユニも悪いな。そして俺も悪い」

「そうだよっ!せめて一言謝ってーーえ?師匠悪くないよね?」

「部下のミスは上司の責任だ。ルミナスの事を心の底から愛しているとはいえ、きちんとユニや他の皆の相手をしていない俺も悪い。これからは気を付けるから、ランも弟子だからと言って俺に遠慮するなよ」

「う、うん……(そもそもホムラさんに遠慮してる人っていたっけ。むしろボク達こそ甘えすぎな気がするけど)」

 

 

 ランの頭を優しく撫でてから、険悪な空気が流れているルミナスとユニの間に立って、それぞれ右頬と左頬を思いっきり抓った。

 

 

「いたた!何するのさ!?」

「何故頬を抓る!?」

「ランから全部聞いたぞ。足引っ張ったらしいな?」

「「あっ……」」

 

 

 2人は揃って俺から視線を逸らす。もっと抓ってやろうとおもったが流石に可哀想なので離してあげる事に。

 

 

「まずはユニ。ルミナスが遺跡に慣れていないから君とランがフォローするのは当然の事だ。魔王だってミスはする。それを責めるのは良くない」

「だ、だけど……」

「だけどじゃない。そしてルミナスは謝ってきちんと後処理をする事。ランが俺の弟子だから大丈夫だと安易に思わない事だ。もしものことがあればどうする?」

「その時は『色欲者』で……」

「ん?何て?」

「…っ済まない」

 

 

 軽く威圧すると素直に謝るルミナス。ユニは不満ありまくりの様だがお互い様だ。2人の背中を押してランに謝って貰い、『次はないように』と釘を刺してから本命の建造物の扉を開ける。中は薄暗く何もないと思ったが、一番奥に光り輝く黄金の剣が台座に刺さっていた。

 

 

「うおぅ。凄い気配だな」

「少なくとも伝説級だね」

「んじゃ抜いてみるか」

 

 

 黄金の剣の柄を握り引き抜こうとするがビクともしない。軽く力を入れてもうんともすんとも言わず……こいつは中々の強敵だな。

 

 

「全く。アレクみたいに頑固だな」

「頑固はてめーだろ、ちょっと変われ」

 

 

 アレクと交代し同じ様に引き抜こうとするがやはり抜けない。両手で握り踏ん張っているが一ミリたりとも動く気配はない。アレクは一旦手を離してもう一度再挑戦しようとしたら、横からルミナスは笑いながら剣に手を伸ばす。

 

 

「全く。最近の小僧はーッッ!」

 

 

 彼女が剣に触れようとしたその瞬間。剣から強い電流が放たれルミナスの手を弾き飛ばす。予想外の事にルミナスは対応できず後ろに倒れそうになるが、直ぐに右腕を彼女の背中に回して抱き寄せる。

 

 

「大丈夫?」

「あぁ。ありがとう。ちょっと驚いた」

「怪我はないルミナス?」

「うむ。直ぐに再生できるから問題ない。しかしこの剣は……」

「…俺やルミナスに抜けない剣か」

「ボクがやってみるよ」

 

 

 ランが裾をまくって剣を握ると、何かに気づいた様子でどこか気まずそうな顔を浮かべながら俺とルミナスを交互に見る。苦笑いを浮かべながら……簡単に引き抜いた。

 

 

「「「「「え……?」」」」」

「ははは……」

 

 

 俺とアレクが苦戦してルミナスの手を弾いた剣をランは簡単に抜いた。何故か……と考えていると、ユニがポンと手を叩いて剣に光をかざすと、彼女もなんとも言えない顔を浮かべる。

 

 

「ユニさん?何でそんな顔をしてるんすか?」

「いや……だってね~ラン?」

「うん。ボクに抜けたのなら師匠に抜けないのはおかしいなぁって……」

「む。ランが抜けるのにホムラが抜けない…はっ!まさか」

「あ、あの!それは言わない方が良いかとっ!!流石に一日二回はフレア様の心が持ちませんからっ!」

 

 

 ランに抜けて俺に抜けない……いまいち理由は分からんがユニ達は気付き、ベルは言わせないと3人を止めている。まぁ別に俺は気にならないからいいけどね。

 

 

「あ。そう言う事か。ランは勇者の資格あるからその剣抜けて、ホムラは魔王に堕落したから勇者の資格を無くして抜けないのか。だとすると俺も勇者の資格ないから抜けないわ。ハハハ」

「「「「……」」」」

「あ、あれ?何か空気変わったような……」

「……(そーいうことね。道理で言わないわけだ)」

 

 

 理由は分かったからもういい。確かに俺に抜けてランに抜けるのならそういう事だし、ルミナスの手が弾かれるのも分かる。そしてユニとランがなんとも言えない顔を浮かべるのも分かった。そして気付いた4人が言わないようにすることも。その事を言ったアレクの身に何が起こるかも。

 

 

「皆。別に俺は何を言われても大丈夫だから気にするな。魔王になった時点で俺に勇者の資格なんてないからな。さり気無く言ってくるのは問題無いが……笑いながら言う(バカにする)奴は別だ。程々にな(・・・)

「了解師匠。急所は外すからルミナスさんは治療宜しくね」

「え?」

「安心して殺していいぞ。魂さえあれば『色欲者』で蘇生できる」

「え?え?」

「丁度いいし『聖賢之王(サフィーラ)』の力試すか」

「え?え?え?」

「私は……過去に何度もやってるので見てますね」

 

 

 ランは剣を抜きユニは本を取り出して魔素を集約。ルミナスとベルは一歩下がったと所で見物。俺は後ろを振り返り大きく体を伸ばすと同時に、アレクのとても大きくいい悲鳴(バカの悲鳴)が響き渡るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 因みにこの後は石像を回収し、黄金の剣に名前を付けてランに託して撤収。アレクは帰った後にマリンさんにこってりと絞られるのだが、それは別の話しである。

 

 

 

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