異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です 作:八葉と黒神の剣聖
「あれ……今日ってもしかして休日じゃん……」
いつも通り仕事部屋へと来たのだが、机の上に置かれているはずの書類が無い。どうやら久しぶりの休日のようだ。ルミナス達と遺跡に言ったのが半年程前……ちょっと待て。そう考えるとルミナスと最後に会ったのも半年前か。
「ヤバい。非常にヤバいが休日なら行かないといけない所がある」
行かないといけないのはソフィの所。そろそろ俺の刀が完成する頃だろう。あの石造に使われていた魔鉱石は廃城の地下から採れるものと同じだったらしく、ソフィが何回も錬金して最高ランクの魔鉱石を錬金したと聞いた。
「そうと決まればすぐに行こう。ルミナスに休日と知られる前に」
直ぐに仕事部屋から退散して鍛冶区画にあるソフィの錬金工房に向かう。工房の中では赤紫の女の子が脚立に立って高さ10メートル程の窯をグルグルと棒のようなもので混ぜている。
サンフレア王国の錬金は2種類あり、1つは魔術で二つの素材を融合させて生み出すタイプと、大きな窯に入っている特殊な液体(七色の不思議な気配を放っている気体に近い液体)で複数の素材を合わせるタイプ。
ソフィは後者を専門としており、新米だが優れた才能を持っていると引退した刀匠さんから聞いた。
「おはようソフィ。調子はどうだ?」
「あ。おはようホムラさん。そろそろアダマンタイトがーーうわぁぁ!?」
「あーー……(またか……)」
脚立に足を引っかけて顔面から落ちる。以前も言ったがソフィはとても優秀で真面目。しかし一つ気になる点がある。それは…うん、今目の前で起きた起きた事。それは、結構ドジな所だ。今みたいに。
「いたたたた……またやっちゃった」
「大丈夫?気を付けなよ」
「うん。ホムラさんが来てくれて嬉しくて…って!後もう少しなんだから頑張らないとっ!」
ソフィは直ぐに立ち上がら脚立を上り大きな棒を持って再び窯を回し始める。魔術の錬金はそれなりに詳しいし即興でやることも多いが、窯の方は全然分からない。回し方にもコツがあるらしいが見てても全然分からない。
「そうだホムラさん。この前区画長に言われたんだけど、あの大窯の管理をやって欲しいって頼まれたんだ。加えて次の区画長も任せたいって。私より優秀な人が多いのにどうしてかな?」
「鍛冶・錬金区画にいる人は王国の民に末裔が多くて君のように異世界人はいない。これからの事を考えてだと思う」
「そっか……後進の育成も大変って言ってたし、刀匠さんも私が来て泣いてたなぁ…っと!来た来た!」
「お?」
『ボン』と音と同時に窯から煙が出て、煙が光り輝く魔鉱石に変わる。これが窯を用いた錬金術。ルミナスや興味がある吸血鬼達も興味津々だった技術だ。
「ふぅ。後はアダマンタイトと光砂。ユニさんから貰った光の結晶体を混ぜたら完成。その前に……あのホムラさん。正宗見せて貰ってもいいかな?参考にしたいから」
「いいぜ。何だったらルミナスに上げた小太刀…陽炎でも……いや、正宗だけにしとく」
「???(もしかしてホムラさん。またルミナスさん放置してるのかな……)」
焔と共に正宗を顕現させ、ソフィに渡す。受け取ったソフィはゆっくりと刀を抜き、鞘を壁に立てかけて刀身を見ると、桜の紋様や色を見て固まっていた。まぁ存在値不明の刀だし、あんなに妖気ダダ洩れだから仕方ないよね。
「お、おいホムラ。懐かしい妖気を感じて来たのだが…っと取り込み中か」
「やぁ先生。ちょっと色々とね」
妖気を感じて来たエンブ。何か問題でもあったのだろうと思ったらしいが、ソフィのあの様子を見てすぐに納得。見回りしているパールさん達にも伝えて貰った。
「相変らずヤバい刀だな。鞘に入ってないとビビるわ」
「それはごめん。そうだ先生。正宗に変わる刀出来たら久々にやる?」
「…む。良いぞ。そろそろ頃合いだしな。まさか野郎が生きているとは思わなかったし、そろそろ俺達の事を知って貰う」
「了解。それじゃ…そろそろソフィに声を掛けよう。おーいソフィ。大丈夫か?」
「………はっ!大丈夫だよホムラさん!えっと刀身は160センチぐらいで柄は40センチぐらいでいいかな?」
「おぅ。頼んだぞ」
「了解。まっかせて!」
ニコッと微笑んでから正宗を鞘に戻して俺に返してくる。それから再び脚立に上り窯に素材を入れてグルグル回し始める。さて…あちらは任せてもいいだろう、俺は気になったことをエンブに聞こう。
「野郎って幻獣を作ってるあの魔術師か?」
「あぁ。俺達を強制的に進化させたクズだ。ギィに殺されたばかりだと思ってたが…奴が生きているのならあの男もどこかで生きているのかもしれん。トワイライトに作られた第一高弟の……名前忘れたが」
「絶対に名前出すなよ。ルミナスの機嫌が悪くなるから。(しかし……聞いている話でははシルビアと似たようなものらしいが)」
もともと人間の3人。聞けばそれぞれ、炎・水・風の力を込められた宝珠を埋め込まれて人為的に進化させられたらしい。
「やれやれ。面倒事は勘弁して欲しいのだが」
「魔王になった以上は避けられん。それより…煙の量が凄いな」
窯から溢れ出る煙。その量はいつもの数倍以上はある。それだけ凄い得物が出来上がる証拠だ。
「後少しで…!?来た来たぁっ!!」
再び『ボン!』と大きな音と共に煙が集約されて一本の刀を形成する。ソフィはガッツポーズをしながら刀を取り、満足そうな笑みを浮かべながら渡してくる。
「お待たせホムラさん。どうぞ」
「ありがとう。うん……いい感じだ。名前は……」
「『村正』とかどう?有名な刀匠さんの名前」
「いいね。それ貰い」
刀…村正を受け取り柄を握る。鞘の中から感じる強い力。俺の力と上手く同調してくれそうだ。後は試し切りをするだけ。
「んじゃ行くか先生」
「あぁ。ここから北に無人島がある。そこでやるぞ」
「了解。ありがとうソフィ。後俺がここに来た事はルミナスに言わないように」
「…分かりました(魔王間の都合もあるのかなぁ?)」
ソフィと別れて向かうは北。暫く空を飛び続けていると目的地の無人島に到着。無人島はそれなりの広さで、多少大暴れしても問題ない広さだ。島の中心に降り、準備運動していると、背後から強烈な熱気に襲われる。後ろを振り返ると、エンブはかつて遺跡で手に入れた大剣に炎を纏い、白炎を纏っていた。
「おいおい…いきなり全開か?」
「魔王に挑むからな。それに…お前が相手なら限界を超えれる。いつまでもお前に頼るわけにはいかない」
「…成程。だったら殺す気で相手をしてやる」
村正を抜き淡い光を纏う。エンブには焔が効かないから光……光粒子で相手をする。『加速』と『浄化』をの力を持つ光。それでも足りなかったら3つ目でブーストする。
「んじゃやるか」
「あぁ。胸を借りるぞ」
数百年ぶりに熱くなれそうだ。
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ーホノカside-
「おや?これは……」
北から強い二つの気配を感じ取る。誰かが戦っているのだろうか?場合によっては様子を見に行かないといけないかも知れない。そう思っていると、私の前で本を読んでいたミナト君が本を閉じる。
「この気配は先生とエンブさんだね」
「そうなの?私は大きな気配としか分からないけど」
そう言えばランも気配だけで誰か分かるみたい。ただの魔力感知とは違ったスキルを会得しているみたいだ。
「エンブさんは結構本気みたいだけど先生は5割ぐらいかな。これぐらいの戦闘なら民の皆に言わなくてもいい」
「そうかな?結構大きいけど」
「そこを判断するのも僕達の役目…というかそれぐらい判断しないと降格するよ?」
「うぅ…ランやシンも腕をあげてるしね」
私の数字は二でミナト君は一。即ち剣星の中で2番目に強い扱いだ。なのに2人の戦闘の状況からどう行動すればいいのか分からない始末。これは色々と不味いかも知れない、うかうかしているとあの2人に追い抜かれる。
「見に行く?先生の光粒子はあまり見れないから。もしかすると3つ目も見れるかもね」
「確かに。ちょっと行って見るよ」
部屋を退出して準備を済ませてから北へ向かう。暫く進み続けると大きな音と衝撃波が飛んでくる。飛んできた地点に向かうとそこは無人島。この無人島で白炎を纏ったエンブさんと淡い光を纏った兄さんが熾烈な戦いを繰り広げていた。
「『爆炎斬っ!!』」
「ふっ!」
エンブさんの強烈な一撃を軽く受け止めて弾き返す兄さん。そして始まる光速の打ち合い。目で捕らえるのが精一杯の攻防。という事は私はこの攻防に付いて行くことが出来ないという事になる。
「次元が違う…。ミリムさんもふざけていたけど兄さんは……」
私と手合わせしている時は手を抜いている所か私に合わせているんだ。だから兄さんは星王竜との約束よりも国の守護と私達の育成に力を注いでいるんだ。本当は…もっと自由にやりたい事をやりたいはずなのに。
「私は…このままでいいのかな?もっと強く…強くならないと」
「それは何の為に?」
「あ…ユニさん」
いつの間にか隣に居たユニさん。ユニさんは私の右肩に座ると頬に手を置き、自身と私を淡い光で包む。すると兄さんとエンブさんの攻防がしっかりと視認出来るようになった。
「見え…る?どうして?」
「私の『絆之王』でホムラやラン達が持つ『心天眼』を共有した。このスキルは相手を目で見るのではなく心で本質を見抜く。良くホムラが言ってるでしょ?『目に映る
「聞いた事あるような……」
もしかすると旅をしていた時によく言っているのかもしれない。理由は恐らく外にいる時の兄さんは子供の姿。その姿を見て舐めて挑む馬鹿も多いらしい。特に強い力を持つ存在はその傾向が多い。
「そう言う事。だから…っと下がって!」
「え!きゃあっ!!」
強い炎に襲われる。瞬時に下がると私達の前にエンブさんが飛ばされてくる。彼の視界の先には光の焔を刀に纏った兄さんの姿があった。
「そう来なくては面白くない。行くぞ」
全身に力を入れるエンブさん。本能的に何かを感じ取った瞬間、彼から凄まじい炎が放出され近くにいた私達にも襲ってくる。避けようにも体が反応しない。
(焼かれるっっ!)
「レディアントフィールド!」
光の球体が私達を覆い炎を防ぐ。これはユニさんの究極魔法の一つかな?この人が戦っている所を見たことが無いから分からないけどこれだけは分かる。この魔法は普通じゃない。
「ちょっと二人とも。暴れるのはいいけど私達もいるからね」
「む…ユニか。それにホノカまで。済まない気付かなかった」
「悪い俺も。済まないが妹は頼んだぞ。来いエンブ」
「あぁ。第二ラウンドだ!」
再び兄さんに向かうエンブさん。あの人の気配が少し変わった。魔素も膨れ上がっている。体にも不思議な紋様が出ているし何と言うかとても怖い。
「うわぁ……兄様本気だ」
「あれだけ熱くなっている弟を見るのは久しぶりですね」
「パールさんにウインディさん?」
「あ、やっぱり来たんだ。入りなよ」
私と同じく観戦に来た2人も球体の中に入って貰う。2人も兄さんとエンブさんの戦いに興味があるようで真剣に見ている。
「兄様の『狂戦士化』は凄まじいね。あの状態を軽くいなすフレアも凄いけど」
「初めて戦った時とは逆ですね。最終的にはフレア様が逆転した様ですが今は…」
「今のエンブが付いてこれる所までしか力を出していない。それをエンブは気付いている」
「……(そこまで分かるんだ)」
力の差を痛感させられる。私はあの2人の戦闘をただ凄いとしか思っていないのにユニさん達は冷静に分析している。来た時代が違うだけでここまで私と周囲と差が開くのか。
「にしても…熱いね皆」
「確かにあの2人の戦闘は熱いですが…」
「違うよホノカ。気温の事。そろそろかな」
「え……?」
疑問に思っているとエンブさんが大きな炎玉を兄さんに放つ。兄さんは避けようとせず防御すら行わずに直撃を受け巨大な火柱か上がる。普通に考えたら致命傷だけど火柱の中から兄さんは何事も無く歩いて出てくる。兄さんは無傷だし、なんなら襟をパタパタさせて冷たい空気を服の中にいれている。
「ふぅ……熱いなエンブ。少し涼もう」
「……っ。お前……」
何かに気付くエンブさん。彼に額に汗が流れ始める。今日はそんなに暑い日だったかな?熱でやられた……という訳でもなさそうだ。
「もっと熱くなろうぜ。魂燃やして限界超えて」
「…くっ。これが…『焔天之王』の力か」
「…?」
状況がいまいち掴めない。エンブさんは息を荒くして全身から汗を噴き出している。そう言えばあの2人の周囲に陽炎が現れている。
「さぁ行くぜ。太陽の力をその身で味わうがいい」
「あ……」
兄さんは今までに感じたことの無い密度の焔を全身に纏い、刀には淡い光を纏わせた。