異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です 作:八葉と黒神の剣聖
俺達の周囲の気温が上がっていく。『焔天之王』の権能の一つである『焔天の加護』を発動させる。この権能を簡単に説明すると、太陽がある時は力が急激に上昇し、全ての属性攻撃と状態異常に対する耐性を得ることが出来る。その代わり10時から15時の間しか発動出来ないけどね。
「おいおい……『日輪の加護』以上か。コイツは気を抜くと一瞬でやられる」
「その通り。こうなったら手を抜けんからな」
刀を両手で持ち肩と同じ高さまで上げて地面と平行にし引く。エンブも大剣を両手で持ち構えたのと同時に、彼との間合いを瞬時に詰める。
「っ!?」
「喰らえ!」
刀を振り下ろす。エンブは何とか反応して大剣で防御するが、防ぎきれず上空へと打ち上げられ、俺はその先に転移して光粒子を纏った一撃を喰らわせる。エンブは録に受け身もとれず、地面に強く打ち付けられ大きな煙が上がる。
「くぅ。良い攻撃だな。なら!」
小さな火炎を放って来るエンブ。避けきれないものだけを斬り伏せると、残りの火炎が軌道を変えて俺に吸い寄せられる。それらも斬り伏せるか、あえて身で受け止めて無効化すると、エンブは更に巨大な火炎玉を投げつけてくる。
「こいつはどうする!?」
「…!!」
刀に光を纏って斬撃を放ち火炎玉を一刀両する、斬擊は
「なっーーー!」
「ぬぅん!」
そのまま全力で右拳を奴の鳩尾に叩きこむ。痛々しい音と衝撃が響き渡り、エンブの手から大剣がこぼれ落ちる。ゆっくりと拳を引くと、エンブは鳩尾を抑えながら両膝を着いた。
「がぁ…ぐぅ…ゴホッ!」
大量の血を吐きだすエンブ。これは勝負ありだな。久々に熱くなれるいい勝負だった。さて……先生の傷と魔素を戻すか。
「……もう、終わりか?」
「どういう意味だ?」
「まだ……やれるぞ。お前が本気を出すまで立ち上がる」
ゆっくりと立ち上がるエンブ。その姿は以前俺が彼に挑んだ時と重なった。そうだ、今は彼が挑戦者だ。なら俺は全力で答えないといけない。
「かぁぁっ!」
「ッッ!?(こいつは!)」
エンブの魔素が膨れ上がり、ビリビリと大気が痺れる。そしてーーー
「…ホムラ。要注意だよ」
「分かってるさユニ。ただでさええげつないユニークスキルだ。究極能力に進化したらどうなるか」
村正を鞘に納めて正宗を顕現させる。それと同時にエンブの体から今までとは違う焔が溢れ出てくる。この感覚は間違いねぇな。
「
「えげつねぇ神の名前だな。先生らしいが」
正宗を抜刀し構える。ユニにはフードの中へと入って貰い、ホノカ達にはもう少し距離を取って貰う。さっきよりもド派手に暴れるからな。
「こいつは…力が漲ってくる。これならば!」
「来い!」
俺が正宗を構えると同時にエンブは急接近しながら連打を繰り出してくる。さっきより重く鋭い連打を正確に防ぎながら反撃の一撃を繰り出すが軽く流されてしまう。スルトか、確か北欧神話に出て来る巨人族の王。凄まじい炎を持っていたという話だったか。先生にぴったりじゃねぇか。
「フレイムフィスト!」
「ふっ!」
巨大な炎の拳を斬撃を放ちながら消し飛ばす。エンブは斬撃を最低限の回避で避けながら接近し強烈な蹴りを放ってくる。その蹴りを避け、ガラ空きのエンブの脇腹に柄を打ち込み体勢を崩した所を空中に蹴り上げる。
「がはっ!?」
「いい物くれてやる」
正宗を地面に突き刺して胸の中央に光を集約させて
「ソルス・ノヴァ!!」」
強烈な光破熱線が急加速し威力が更に上昇。エンブに直撃して全身を焼く。エンブは黒焦げになって地面に墜落し、背後に控えていたパールさんとウインディが慌てて駆け寄った。
「大丈夫エンブ!?」
「兄様生きてる!?」
声をかけるとエンブはゆっくりと右手を上げた。それを見て2人は一安心し、俺も近づこうとするとエンブは手を広げて静止。どうやら今は近づいて欲しくないようだ。
「パールさん。先生の事任せました」
「はい。彼の事はお任せを。あと…私達も近い内に一戦をお願いしますね」
「兄様とは違う戦い方を見せてあげる」
「ん。楽しみにしてる。行くぞユニとホノカ」
2人に声をかけて国へと戻った。
ーーーーーーーーー
「うぅ……強すぎでしょホムラ……」
「2人同時でも敵わないなんて……」
目の前で倒れているのはウインディとパールさん。エンブとの再戦から数日後に約束通りに一戦交えた。結果はご覧の通りなのだが、二人ともエンブ同様に限界突破して究極能力を獲得した。詳細は後でユニに聞いておくとして。しかし……。
(マジで強すぎんだろこの3人。シルビアみたいに覚醒せずに究極能力会得するかぁ?普通)
その辺りの原理を是非とも解明したいのだが、突き詰めると底なし沼のようにハマりそうなので止めておこう。個人的にもエンブ達が強くなってくれるとありがたい。そろそろ俺抜きでこの国を守り通して欲しいからな。
(妹達を除いて究極能力を会得していないのはアルビオンとハクか。アルビオンは直に会得するし問題はハクか……いかんな、どうにも
「ぬぐぐぐぐぐぅ……」
「どーしたウインディ?」
顔を俯かせてとても悔しそうに呻き声上げるウインディ。心配して声をかけると、彼女は勢いよく起き上がって俺に指を指しながら言った。
「絶対リベンジする!ぜっっったいに!!」
「……」
そう言ってウインディは走り去って行く。少し困惑しているとパールさんもゆっくりと起き上がって苦笑いを浮かべて一礼してからウインディを追いかけて行った。
「……ヴェルダナーヴァ。俺の仲間…家族は色んな意味で頼もしいよ」
亡き親友に対し思わず本音が溢れた。勿論返事は無いし、例え生きていても『それもまた王の特権』とでも言うだろう。それに配下が強くなれば自と主の評価も上がり名も広まる。俺個人としてはあまり望ましくない事だが。
「ふぅ。北の大地に引きこもっている
そう言えばヴェルザードは何時かギィを『私の魅力で振りむかせる』とか言ってたか。妹と張り合ってるのか知らんが、つくづく竜は変な奴を好きになる。ギィといいルドラと言い。一癖も二癖もあるだろうに。
「……そう思えば皆から見た俺ってどういう印象何だろうか?」
ふとそんなことを思ってしまった。皆に本音で話す事ってあまり無いんだよな。というか…皆優秀すぎて怖いんだよね。特にベルとユニ。ベルは気が利くし、ユニは背中押してくれるし。
「一先ずこの辺は気にしないでおこう。うん、取り合えず休むか」
考え事は後回しにした俺は、村正を鞘に納めて自室へと戻った。