異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です   作:八葉と黒神の剣聖

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自分を知る事は大切だ

「うーぬ……眠い」

 

 

 両腕を伸ばして外を見る。既に太陽は沈んでおり真っ暗な夜だ。時間は8時頃か。今日の仕事はここまでにしよう。あまり詰め過ぎるとみんなに怒られる。

 

 

「んじゃ適当に作るとするか」

 

 

 最近羽織代わりに使っている外套を肩に乗せて部屋を退出。近頃は和装をしている時の方が多い気がする。というか洋服より和装の方が動きやすいんだよね。

 

 

「ん-。今日は何にするかな……」

 

 

 何を作るか考えつつ食堂に向かうと、そこには珍しい人物が居た。エプロンを身に着けて上機嫌で料理を作っているルミナスだ。何を作っているのかとても気になるが、邪魔をしたら不味いので一旦撤退しようとすると、ルミナスと目が合った。

 

 

「あ……。邪魔したな」

「ん?邪魔でないぞ。それより今から晩食か?」

「まぁな。仕事ひと段落着いたから」

「そうか。なら座って待っておれ。たまには妾の手料理を食べると良い」

「お、おぅ……」

 

 

 むぅ。疲れているせいかルミナスの圧に気圧されてしまった。ここは大人しく座って待つ事にしよう。しかしルミナスが料理か……。ちょっと嬉しいかも知れん。

 

 

(ベルやユニ以外に手料理を食べれる日が来るなんてな……)

「待たせたの……うん?どうかしたか?」

「ん……何でもない。ちょっと嬉しいだけだから」

「手料理ぐらいで喜ぶな」

 

 

 そう言って。ルミナスは料理を持ってくる。ただ、呆れたような彼女の頬は少し紅潮していた。照れ隠しだ。(あまり言わないでおこう。言った所で『気のせいじゃ』と誤魔化されるに決まっている。)

 

 

「少し前にホノカから天麩羅(てんぷら)の作り方を聞いての。少し興味があったのとおぬしらの故郷を知るために作ってみた」

天麩羅(てんぷら)かぁ……昔の時代は高級品って言われてたっけ。我が家の祖先は京都でよく食べてたって話だけど」

「"京都"?」

「俺のいた国の地名。昔は京都に本家があって裏に住まう悪しき存在を滅していたって話だけど、時代が変わったの機に東京に家を移して神の加護の元数多の人の生活を守り祈る一家になったんだって。最近ホノカに聞いた」

「聞いたって……お主跡継ぎじゃろ。何で知らぬ?」

 

 

 ジト目を向けながら隣に座るルミナス。そんなこと聞かれても知らない事は知りません。俺達の祖先が陰陽師だったとか、妖の類と交わっていた何て俺は知らん。教えられていないという事は俺には不要……あれ?なら……。

 

 

(どうしてホノカは知ってるんだ?跡継ぎに教えずに妹に教えるって……そういや昔から親父とお袋にいわれたか『お前は特別。あの方の血を色濃く引いてる』と『先祖帰り』って。だからガキの頃から色々やらされたのか?)

「どうかしたか?妹が知っていて自分が知らぬ事を気にしているのか?」

「そんな訳ないが、自分に対する疑問が増えた。3つ目を上手く使えない事と俺の体に流れる血についてな…けど今は目の前のこの美味しそうな天麩羅かな?食べて良い?」

「もちろんじゃ」

「ではいただきます」

 

 

 両手を合わせてから一番近くにあった薩摩芋の天麩羅を1つ取り食べる。サクッと衣がいい音が鳴ってとても美味しい。何も付けてないのに野菜のおいしさが死んでなくて絶品だった。

 

 

「……どう?」

「100点」

「そうか。当然の結果じゃの」

 

 

 特に喜ぶ素振りを見せないルミナスだったが、机の下でガッツポーズをしているのをが見えた。俺か素知らぬ顔をしながら食べ続けていると、ルミナスがジーと見つめてくる

 

 

「どうかしたか?」

「いや……さっき血がどうこう言っていたじゃろ。気になるなら後で確認してやろう。妾もそろそろ欲してるからの」

「了解。そのまま襲ってくるなよ」

「お主こそ獣になるなよ」

 

 

 お互い釘を刺し、談笑しながら晩食を済ませて自室に戻る。血を彼女に飲まれる前に、机の上の軽く整理してからベットに座ると、ルミナスは何も言わずに抱きついて来てそのまま押し倒してくる。

 

 

「こらルミナス」

「美味しい血を飲むには必須事項だ。お主の場合ドキドキして貰わぬと」

「既にドキドキしているけど?」

 

 

 今の俺の鼓動は普段より断然早い。それをルミナスも分かっているはずなのに遠慮が無い。俺としても拒みはしないし、寧ろどんと来いなのだが、本人にその気がないのなら程々に(勘弁)して欲しい。

 

 

「ふふ……そろそろ頃合いかの。お主の血は絶品な上混じった味がするからの」

「……混じった?」

  

 

 一体何と何が混じった味なのだろうか?今更だが俺は自分の事を知らないのでは?家の事すらほとんど知らず親の傀儡だった。なら自分の事を知らないのも当然かもしれない。

 

 

(俺は一体何者なんだろうな。この世界では元勇者の魔王。元居た世界では両親の傀儡で神社の跡継ぎ。俺の目指す先は……)

「ホムラ?大丈夫か?」

「大丈夫。今になって自分が何者か分からなくなっただけさ。中途半端な所も多いからな。もう少し自分と向き合ってみる」

「……そうじゃの。ただでさえこの世界に来た時から厄介な体質。知らない事を知るのは大切な事じゃ」

「だな……」

 

 

 彼女の頭を撫でると、ルミナスは両腕を首に回して首筋にキスをしてくる。それから軽く甘噛みをしたり強めに噛んだり。時折舌で愛でたりと俺を誘惑してくる。

 

 

「よし。もういいかの。頂くぞホムラ」

「どうぞ」

 

 

 ポンポンと頭を叩くとルミナスはドレスを脱いで首に噛みつく。今では見慣れた光景だし、血を吸われるのは慣れてるから痛みとかも感じないけど、1つだけ出来る限り控えて欲しいことがあったりする。

 

 

(頼むから脱がないでくれルミナス!)

 

 

 恋人になってから血を飲むときは必ず脱ぐ。その理由も知っているさ。好きな物は全身で愛でる。それがルミナスだ。それが男でも変わらない。彼女らしいけど心臓に物凄くいい意味で悪いから控えて欲しい。

 

 

「ん…ちゅ。ふぅ……ご馳走様。やはりお主の血を飲むときは大胆に行かないとの」

「だからと言って脱ぐ必要あるのか?」

「ある。こうでもしないとお主を愛でられぬ。お主を感じる事が出来ぬ」

 

 

 ルミナスはそう言って腕の力を強めて唇を重ねてくる。今日は珍しく一杯甘えたい日か。血を飲みたいって言った時点で分かっていた事だ。こっちに拒む理由もないし、それでルミナスが幸せなら俺も嬉しい。

 

 

「昔も聞いたけど俺の血ってどんな味なんだ?俺は吸血鬼では無いから分からん」

「そんなに知りたいか?」

「君しか知らないし、自分と向き合うために」

「……そうか」

 

 

 瞼を閉じ左肩に頭を乗せるルミナス。彼女の口が開くのを待っていると、ルミナスは微笑みながら言った。

 

 

「最初に飲んだ時は人なのに妙な"何か"が混じっているように感じた。それは日に日に増えていき、今では半分人間で半分は異質な物」

「異質…"何か"…先祖が陰陽師とは関係ないか。なら……」

 

 

 半分は人間で半分は異質な物。先祖が陰陽師で時代が変わると東京に家を移した。何だろう、何か引っかかる。ガキの頃に両親に言われた事も気になるし、そもそもどうして東京に家を移したんだろうか。今では知ることは出来ないが、もしかしたらホノカは知っているのかもしれない。

 

 

 

「お主が何者であろうと構わんだろう。妾はお主の味方でずっと隣にいる。何かあればすぐに言え」

「……分かってるよルミナス。何かあったら相談する」

「それでよい。ん……」

 

 

 もう一度唇を重ねてルミナスは俺の隣で横になる。俺は彼女を抱き寄せて右頬にキスをしてから『お休み』と言って瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

―次の日ー

 

 

 

「えっと……アイツが居るのはここか?」

 

 

 朝早くから俺はホノカを探していた。辿り着いたのは少し特殊な修練場。何処が特殊なのかはまたこんど話すとして、ルミナスの話によると時間がある時はここで修業しているらしい。何でも一年前の俺と先生の戦いを見て考えを改めたんだとか。まぁそれは良いとしてとりあえず中に入ろう。

 

 

「入るぞホノカ。たまには兄妹で水入らずっ……うおぅ!?」

 

 

 扉を開けた瞬間、目の前に超高速の光の矢が飛んで来たので右に回避。そのまま矢は壁に突き刺さって粒子となり消えていった。……というか今のよく避けれたな俺。

 

 

「あれ兄さん?」

「ホムラさん?珍しいですね」

「あぁ。アルも居たのか」

 

 

 間の抜けた声を上げる人物が二人。どうやらホノカと一緒にアルビオンも居たようだ。修業の相手ならアルビオンが適任だろう。実際彼女もヴェルザードにかなり鍛えられてるからな。教え方も上手いだろう。

 

 

「少しいいかホノカ。たまには兄妹水入らずで話しをしよう」

「え?それは別に構わないけど。どうかした?」

「改めて家の事でな。あまりにも知らない事が多いから」

「成程。ではアルビオンさんも一緒に」

「ふぇ?私は関係ないけど……まぁいいか。お二方が言うのなら」

 

 

 二人には鍛練を一時中断して貰い、アルビオンも交えて、腰落ち着けて話し始める。ホノカに聞きたい事は纏めてあるので順番に聞いていこう。

 

 

「ホノカ。俺って何者なんだろうな?ガキの頃から両親の傀儡になってまともに外に出してもらえなかった。あの二人は相当俺に執着していただろ?」

「あぁ…それは簡単ですよ。私達には代々妖の血が流れています。何でも先祖の1人が妖に惚れたとかで」

「でもそれは昔の話しだろ。俺達の時代だと殆ど薄れてるはず……」

「えぇ。だけど兄さんの(妖の血)はとても濃い。生まれつき凄まじい妖気と畏を纏っていたらしいですから。だけどそれらの出番も無いはずですけど。今の時代に妖はいませんから」

 

 

 確かにホノカの言う通りだ。俺達の時代に妖なんて存在しないはすで、そもそも本当に居たのかも分からないが、実際に京には妖怪関連の書物がある。…大半は物語として語り継がれているだけだが。

 

 

「でも妖の血が濃いって言っても実感が……待て。そう言えばヴェルダナーヴァの話しや勇者時代に心当たりがあるぞ」

「もしかして魔物や魔人の魂を自然に喰らってしまう件ですか?ヴェルザード様から伺いましたよ」

「そうそれ。この世界に来た時からおかしいと思ってたんだよ。俺が相反する属性の究極能力を持ってる事も」

「相反する……兄さんの属性は聖と魔。私達の世界で言い換えると陽と陰。兄さんの体質が私達に流れている妖の血の影響なら……」

「喰らう“魂”は“畏”。俺達の世界で言い換えると“畏”を喰らって成長するってことか」

 

 

 んな妖怪聞いた事無いが、まぁお陰で3つ目の究極能力の使い方が分かった。俺の血が関係しているのならあの能力は魔王向きだ。ポツポツと若い芽が出てきてるみたいだし、舐められねぇようにしないとな。

 

 

「なぁホノカ。最近色んな魔人が血気盛んだろ?魔王種も出て来てるし俺達も今のままじゃあダメだ。もう少し魔王らしくしてみようと思う」

「何当たり前の事を言ってるの兄さん?それは私達にも言える事。『剣星』の皆は勇者の素質を持っている人が多いけど魔王の配下。兄さんの顔に泥を塗るわけにはいかない」

「ホノカさんの言う通りです。ホムラさんはもう少し皆に任せて後ろに控えてください。大将が先陣切っていては私達のメンツが立ちませんから」

「2人共……そうだな。なら思い切って暫く皆に任せるか」

 

 

 2人が言う事にも一理あるかもしれない。ミナトやラン達のこれからの事を踏まえれば、ルミナスの様に堂々としているのもまた一興か。

 

 

「んじゃその辺りの話をするか。行くぞ2人共」

「はい。皆を呼んできますね」

「私はエンブさん達を呼んできます」

 

 

 駆け足で修練場を出ていくホノカとアルビオン。そんな二人を見て、“知らない間に頼もしくなったぁ”と感慨に更けながら修練場を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そろそろ3つ目の究極能力を出したいところです。ヴェルドラ来襲までには出す予定です。
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