異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です 作:八葉と黒神の剣聖
竜の都から少し西に向かい周囲を索敵。例の湖は何処かと探していると視界に小さな湖と洞窟が見える。ミリムが言っていた場所と一致しすぐに向かって洞窟の前に降りる。
「さて…後はルミナスを待つだけだが……」
こちらに来ている気配ない。あぁ…とても心配だがあの状態のルミナスは触れない方が良い。ホノカから連絡無いから大丈夫と信じたい。アルビオンやランからも無いし。
「しかし洞窟に入るのに月の指輪か。対の指輪があると考えるべきか」
そうなると色々と覚悟を決めないといけないかぁ……。いや、指輪を手に入れたからってそうなるとは限らないし気にしないでおきたいのだが…。
「……結婚か」
正直な所俺には全く縁の無い物だろう。元居た世界では両親が相手を決めると言ってたし、この世界でも無理してしようなんて思っていない。妹やミナトには人としての幸せを得て欲しいが、その事を俺がとやかく言う気はない。決めるのはアイツらだ。
「だけど…今の俺には選ぶ権利があるのか」
ふと昔を思い出す。ヴェルダナーヴァに色々と煩く言われた事だ。思い出すだけで腹が立って来るが、いない奴に腹を立てても仕方ない。
「本当に余計な奴なんだよ。結婚したら人生変わるとか、男前なんだから女の1人ぐらい捕まえられるとか。はぁ……今も楽しいがあの時は異常だったな」
悪い意味ではなくいい意味で。アイツ程その場にいたら楽しいと思える人物は存在しない。アレが世界最強の竜なんて信じられるか。
(まぁ…最強の因子を持っている俺が言えたことではないが)
この事を知れば狙ってくる連中が出て来るだろう。だから話せる連中は限られてくる。ルミナスやユニにもまだ話していない。万が一の事を考えないといけないからだ。
「待たせたのホムラ」
「ん…大丈夫。怪我してないか?」
「妾が怪我をするわけ無かろう。ゆくぞ」
ルミナスは俺の左腕に抱き着いて手を繋ぐ。そのまま洞窟へと入ると直ぐに大きな扉が現れる。扉には小さな紋様が描かれており、ルミナスは右手で触れ調べた後、月の指輪を取り出して掲げると、紋様が光って扉が開く。
「開いたな。行くぞルミナス。離れるなよ」
「分かっておる。お主こそ離すな」
握っている手の力を強め上目遣いで微笑むルミナス。ドクっと心臓が高鳴るのを抑えつつ扉の先に進むと、地下に繋がる大きな穴が現れる。その穴を見て、かつてユニと一緒に見つけた月の指輪があった洞窟を思い出す。
「月の指輪があった洞窟と同じだ」
「成程。そうなれば対の指輪は確定かの。地下とその先の構造も似ているかもしれぬ」
「……」
「ん?どうかしたか?」
心配そうに見てくるルミナス。特に何かあった訳ではないが気になる事はある。月の指輪があった洞窟と同じならいいが、あの時は最奥に指輪を守る魔物が居た。恐らくここにもいるだろうと推測すると、かなり厄介な奴がいる可能性がある。
「あの時は……吸血鬼のような魔物が守っていた。一瞬ルミナスと重なってな」
「…!となると、ここにもいる可能性があるという事か。しかし吸血鬼のような魔物……。そのような魔物は妾達だけだが……」
「月は夜。太陽は昼。まさか……な」
「……?何か気付いたか?」
「それは行って見てからだよ」
ルミナスをお姫様抱っこして穴に飛び込む。もし俺の予想が正しければ仕組んだ奴と作った奴の正体が割れる。だって…月の指輪の在処を教えたのはヴェルダナーヴァだから。
なので絶対に裏があると思っていると穴の終着点に到着しゆっくり着陸したのだが……。
「これは……」
「また扉か。全く……」
少し膨れながら降りるルミナス。それから扉を開けると、真紅に染まった壁が視界に映り、至る所に道を遮る仕掛けがあった。しかしそれよりも大きな問題が1つ。
「熱すぎるじゃろう!」
「俺は大丈夫だけど……」
そう、ものすごく暑かった。熱気が兎に角強烈だ。あまりの暑さにルミナスは扇子で扇いでる。これは急いで最奥に行かないとな。
「行くぞルミナス。まずはあの大きな扉を目指す」
「ん。エスコートは任せる」
再び手を握って扉に向かう。周囲を見ながら罠に警戒するが目立って危険そうなものはない。月の指輪のあった遺跡は罠は多いわ小さな血を吸う蝶もいるわで大変だった。あんな蝶に吸われるならルミナスに吸われた方がマシだ。
そう思いながら仕掛けを解除して進むこと数分。大きな扉の前に到着したのだが……。
「これは……」
「ふむ……」
扉には太陽のような紋様が刻まれている。普通に考えてスイッチを押して解除だが、周囲には扉しかないし、左右もただの壁。何もなさそうだし強引にぶっ飛ばすか。
「よし。ぶっとばーーー」
「さんでよい。どうやら魔素が枯渇しているようじゃ。焔を灯してみるがよい」
「了解」
紋様に触れて焔を灯すと、紋様が紅く光って扉がゆっくりと開く。思わず『おぉ……』と言ってしまい、ルミナスが扇子で側頭部をペチっと叩いてくる。
「感動するな。全く……(まぁ…無邪気なホムラも良いが)」
呆れながら腕を引っ張るルミナス。扉を通り抜けると、今度は大きな広間に出て4体の石像。その先に4つの窪みがある扉があった。
「窪みには何かを嵌める。その何かの場所は……」
「一つしかないのぅ。来るぞ」
石像の目が光り動き始める。たいした強さでは無さそうだし一撃で消し飛ばそうとしたが、ルミナスが手を離し両手で無数の小さな赤い球体放ち石像を覆う。
『
球体が雨のように石像に襲いかかる。直撃を受けた石像は小さなオーブを残して消し飛ぶ。消し飛んだのをルミナスは確認してからオーブを拾って扉の窪みに嵌めて解錠し開ける。
「ざっとこんなものじゃ。ゆくぞ」
「了解」
再び扉を通ると、視界に映ったのはとても大きな部屋。その中心には真紅の強烈な圧を放つ剣。その奥には祭壇とその上に小さな箱。どうやら遺跡の最奥の様だ。
「目当ての物はアレじゃの。月の指輪も反応しておる。しかしあの剣は…あの時手に入れた聖剣と同類か」
「……なんか妙だな。俺の『焔天之王』に反応している」
「何……?」
あの剣を見ていると体が熱くなる。俺の究極能力が惹かれているのか
「ふむ……お主のスキルと相性が良いと考えたいが妙じゃの」
「あぁ…本当に妙だな…」
そう思いながら真紅の聖剣に触れようとした時だった。
ーさぁ。最初の試練だよ親友。乗り越えられたらご褒美だ。
「!?」
外套が一瞬光って聞き覚えのある声が聞こえてくる。自然と村正に手多くと、真紅の聖剣から凄まじい炎が放たれ、炎が巨人を形成し、俺達の前に立ち塞がる。大きさは7メートルぐらいだが巨人が放つ圧の影響でもっと大きく感じる。
「この圧力は……」
「中々苦労しそうじゃの…(加えてこの焔は……)」
ルミナスの言う通り苦労しそうだ。さっきの声の正体を考えるとただの炎の巨人なわけがない。よし……ここは短期決戦だ。
「ルミナスは下がっていろ。速攻で決める」
「待てホムラ。ここはーーー」
全身に焔を纏い巨人の顔の前に接近。巨体故に動きが鈍いと読み、そのまま焔の右拳を顔面に放つ。
「喰らえ!」
「……!」
拳を放つと同時に巨人の目が光り、目の前に焔の渦が現れて俺の拳を完璧に止める。この止め方に覚えがあった。この止め方は俺が魔法攻撃を止める時に使う防御技だ。
(何でーーー)
「下がれホムラ!」
「はっ!」
ルミナスの声で瞬時に下がるが、焔の渦が槍のように迫ってくる。右腕に光を集めて剣を形成して切り払う。
「ふぅ…危ない危ない。しっかし今のは…」
(やはり…か。あの巨人は勇者時代のホムラの力と似た物を持っておる。能力の複写及び転写。そのようなふざけた芸当が出来るのは……)
「まぁいい。大して脅威ではない以上考えても無駄だ。次は油断しない」
再び巨人との距離を詰める。今度は右拳に光を集約するが、巨人はその光に反応し、自身の右腕に焔を纏って突き出してくる。その一撃を俺は回避し、巨人の顎にアッパーを喰らわせるが、大したダメージを与えることは出来ず、反撃の一撃が飛んでくる。俺は反撃を受け流しながら光を集約して解き放つ。
『太陽の一撃』
光破熱線が焔の体を削る。巨人が少し怯んでいる所を見ると多少は効いているようだ。このまま引き続き攻撃を続けると、巨人は右腕で熱線を弾き火球を放つ。
「俺に焔は効かねぇぞ」
右手に光を集めて光輪を形成して放ち火球を両断。次撃が無いのを確認してから全身に焔を纏い、巨人の胸の中心めがけて突進。
「その巨体で俺のスピードに付いてこれないだろう!」
巨人の防御よりも先に胸を貫き、空いた穴に追撃のソルスノヴァを叩きこむ。この一撃が致命傷になったのか巨人は雄たけびを上げ、焔の体が崩れていく。
「うっし。どんなものだ!」
崩れている体を見て勝利を確信。少し経つと焔の体は四散し真紅の聖剣が姿を現す。まだ何かあるかと警戒するが特に何も感じず、警戒を解いて聖剣に触れた瞬間だった。
ー最初の試練突破おめでとう。流石に簡単だったかな?だけど約束どおりご褒美を上げよう。
再び覚えのある声と同時に外套が光る。ご褒美とはこの聖剣だろうか?違うとしても折角の戦利品として頂くが。
「よし。聖剣を抜く前にあの箱だな。どうするルミナス?」
「………」
「ん?ルミナス?」
彼女に声をかけると、ルミナスは俺の顔をジーと見てくる。何かあったかと尋ねると、ルミナスは俺の両頬に手を置き、真剣な顔で言った。
「お主。急に気配が変わった。何があった?」
「そうか?何も感じないが……」
「嘘を言うな。今のお主は勇者だった頃に限りなく近い。まるで……あの頃抱えていた大きな黒い物が無くなった感じじゃ。気付いていないのか?」
「あぁ。全然分からんな」
「む…妾も半信半疑だからきちんと確認しよう。はむ」
ルミナスは左首に噛みつき少しだけ血を口に含み離れる。それからワインを飲むように味を確認してから飲むルミナス。飲み終えると彼女は少し驚きながら行った。
「混ざった味がしない…。どういうことじゃ。獣じみた味が消えている……。だからと言って人の血の味でもない。一体何が起きた?」
(……まさか)
正直信じられないが、ルミナスが間違える筈がない。獣じみた味がしない……か。即ち俺の体から妖の血が消えた…いや、人の血と融合したのか。そんな事が出来るのは奴しかいない。
そう思って外套に触れると、ルミナスもまた外套に視線を向け、少し考えた後、彼女も外套に触れる。
「そういえば…あの時に興味本位に調べようとして強い思念で弾き飛ばされたか。まるで秘密を知られたくないように」
「強い思念……そうか……」
「……ホムラ」
ルミナスは両手で両頬に触れてくる。そうだな、そろそろ隠すのも限界だろう。ルミナスなら…俺の大切な人ならアイツも怒らない筈。素直に話そう。
「ルミナス。大事な話がある。聞いてくれるか?」
「奇遇じゃの。妾も大事な話がある。だかここで話すのは無粋じゃから明日でも構わぬか?」
「うん。構わない」
「ありがとう。ではこの指輪はお主に渡しておく。あの指輪は妾が回収する。聖剣の回収は頼むぞ」
「分かった」
聖剣の元に行き柄を掴む。ランが持っている聖剣を抜くときはとても重く感じたが、この剣は重さを感じない。力を入れてゆっくり抜くと深紅の刀身が姿を表し、光りに照らされると焔が刀身に纏って鞘となった。
「回収完了。そっちはどうだルミナス?」
指輪の回収に向かったルミナスに声をかける。彼女は既に指輪が入った箱を手に取り空けていた。中身を待て少し頬を赤く染めながら嬉しそうに中身を見ている。
「嬉しそうだなルミナス」
「目当の物が手に入ったからの。明日が楽しみじゃ」
「……そうか。なら戻るか」
「ん。場所はまた伝えるから連絡が来るまでゆっくりしていると良い」
「了解。じゃあ帰ろうか姫」
「うん。帰りもエスコート頼んだぞ」
行きと同じように腕を組んで手を繋いでから、遺跡の出口に向かった。