異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です   作:八葉と黒神の剣聖

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これからも一緒に

 遺跡攻略と試練を突破した次の日。朝早くから都の近くの平原に足を運んでいた。ルミナスとの大事な話はこの場所とのことで、ルミナスが何処にいるのか探していた。

 

 

「いないな……気配探知に引っかからない。全く……」

 

 

 いつもの悪戯かと思っていると、目の前が真っ暗になり誰かが密着してくる。かすかに感じる薔薇の香りで、誰か直ぐに分かるわけだが、ここは何も言わずにじっとしておこう。

 

 

「だーれじゃ?」

「高貴で素敵な吸血鬼のお姫様?」

「そこは『心の底から愛している自慢の彼女』じゃろうて」

「すみません」

 

 回答が違うかったか。次からは気を付けるとしよう。ともあれルミナスと合流出来たわけだし視界を覆っていた手も離れた。周囲に誰かいる気配はない。ここなら話しても大丈夫だ。

 

 

「さて……どっちから話す?」

「無論お主から。妾の話はそれからでも構わぬ」

「了解した。それじゃあ何処から話すか……」

 

 

 いっその事外套の事とアイツから任された役割も話すか。後者の方は誰にも話していないからこれを機に話すのもいいだろう。

 

 

「じゃあ外套から。この外套の秘密はアレクとベルしか知らない。口が堅い奴以外には話せなくてな」

「む…そんなに大層な物なのか。確かに大きな力は感じたが……まぁよい。妾は口が堅いから案ずるがいい」

「助かる。この外套はーーー」

 

 

 アレクとベルに話した内容と同じ話をする。ルミナスは顔色変えず、何も言わないで最後まで聞いてくれた。そして外套の秘密を話し終えると、ルミナスは小さく息を吐いてから外套の袖を掴む。

 

 

「成程……の。ヴェルダナーヴァの因子のみで編みこまれた外套。存在値は1500万か。こんなものがあると知ればよからぬ事を企む連中が出て来るのは当然か。だが同時に疑問が浮かび上がってくる。ギィやミリム。ルドラなら分かるがどうしてお主なのじゃ?」

「アイツとの約束がある。この外套を受け取る代わりに役目を託された。俺はそれをアイツとの最後の約束と思っている」

「役目?」

「そうだ。異世界から来て、この世界の知ろうとして色んな人と縁を紡いだ俺にしか出来ない役目らしい」

 

 

 ここから先は以前遺跡群でアレク達に話した続き。あの話には続きがあるんだ。

 

 

 

ーで?ただで渡す訳ないよな?

 

ーふふっ。分かってるじゃない。君にしか出来ない頼みがあってね。ギィには≪調停者≫の役割を頼んだ。君には≪導き手≫を頼みたいんだ。これから君のようにいろんな異世界人が来るだろう。君の様に面倒な人間…癖のある人がたくさん来ると思うんだ。

 

ーちょっと待て。誰が面倒な人間だお節介。

 

ーおや?そんな事親友の僕が言う訳ないじゃないか。アレク君が君のせいで何回も胃に穴を空けた事なんて知らないなぁ。

 

ー……ちぃっ。事実だから言い返せない。それで何でラミリスみたいに≪導き手≫しないといけないんだ?

 

ー色々と苦労している君だからだ。召喚されても君のように自由に動けるか分からない。ましてやいきなりこの世界に飛ばされる可能性もあるだろう。それが子供だった場合。見ず知らずの土地で命を落とすことになる。君の手の届く範囲で構わない。出来る範囲で構わないから手を差し伸べて欲しい。君の得意分野だよね、物好きな勇者君。

 

ー俺一人じゃきついぞ。限界がある。

 

ー大丈夫。君は一人じゃない。これから先どうなろうとも、どんな形であれ君の力になってくれる人は現れる。僕だってそうだ。命は後わずかだけど、死後必ず君の力になる。言っておくけど星王竜としてではなく君の親友の1人としてね。

 

ーんな事分かってる。もし『星王竜として』と言ったら絶交だ。ともあれ承知した。お前の分まで出来る限りはやってみる。俺が大好きなこの世界の素晴らしさとお節介な親友についても自慢しておくよ。

 

 

 この世界での最初の親友との最初で最後の約束。ギィが律義に≪調停者≫としての役目を果たしているのと同様に、俺もこの世界に召喚されて理不尽な拘束を強要されている異世界人や、迷い込んでどうすればいいか分からない異世界人を見つけては俺達の国…≪ルベリオス≫に招待してこの世界の素晴らしさを伝えて、その上でどうするかは個人に任せる。やりたい事があるなら全力で支援し、必要な物は出来る限り用意する。色んなものを見たいのなら最低限強くなってもらい旅立ちを見送る。俺が先王やヴェルダナーヴァ。ラミリスにして貰った様に。

 

 

「これが俺の役目。外套を託された代わりに与えられた役目だ」

「そうか…だからミナトやラン達に好きにさせているのか。多少の無茶ぶりを聞くのも。そしてその事をミナト達は知っている」

「……そうなるな。知らない奴も結構いるが」

 

 

 そのうちの1人にルミナスも入る。外套は兎も角、役目に関しては皆に周知済みだ。だから皆俺に力を貸してくれる。出来る限りでいいと言っているのに、真面目に役割分担して、それぞれの得意不得意分野を穴埋めして支え合って。一体誰に影響されたのか。

 

 

「だから済まなかった黙っていて」

「全く持ってその通りじゃ。だが話してくれてありがとう。お陰で妾も決心がついた」

「その決心って何?」

「む。それはーーー何故妾が言わなければならぬ。そう言うのは男から言う物じゃろうて」

 

 

 少し膨れながらルミナスは言った。確かに女性から言わせるのは男して問題があるだろう。しかし……どう切り出せばいいのだろうか。考えても出てこない。いや……ありのままルミナスとこれからどうしたいか伝えよう。指輪を手に入れた時点で覚悟は決めていた。

 

 

「一回しか言わないし一言だけ。長ったらしく言うのは性に合わないから」

「知ってる。何年傍に居ると思っておるのじゃ?お主は言葉より行動じゃろう」

「その通り。左手を出して」

「ん」

 

 

 左手を出すルミナス。彼女の手を取り懐から指輪の入った箱を出して蓋を開ける。中身を見せ、高鳴る心臓を抑えながら言った。

 

 

「俺と夫婦になってくれるか?君の人生が欲しい」

「……うん」

 

 

 微笑みながら頷くルミナス。それを確認してから箱から指輪を取り出し彼女の左薬指に嵌める。怖い程ぴったり嵌まり、結局は奴の手の平の上かと思っていると、ルミナスは俺の左手を取る。

 

 

「では、お主の人生も貰うとしよう」

「随分昔にあげてるけど」

「証が無いじゃろうて」

「そうだったな」

 

 

 ルミナスの言う通りだ。だけど今からはお互いに証がある。元居た世界では絶対に得る事が出来ないであろう証が。あの頃の俺が知ったらどうなるだろうか。多分何も無いだろうね。氷に閉ざされた心では何も感じない。

 

 

「む。お主もぴったりか。悪意を感じるの」

「逆を言えば二人で頑張れって祝言って奴だろ」

「トカゲの祝いの言葉なぞ要らぬ」

「厳しいな……」

 

 

 キッツい一言だな。俺なら結構な精神的ダメージを受けるぞ。恨みでもあるのだろうか?俺の記憶が正しければアイツとルミナスの面識はないはずなんだが。

 

 

「さて…妾とお主はこれで夫婦な訳だが……ごく一部の者を除いてこの関係は黙っておいた方がよいじゃろう」

「その前にそもそも俺達が恋人同士だったって事を知っている奴は身内以外にいないだろ」

「……そうじゃったの。忘れておったわ」

「だから大丈夫。今まで通りでね」

 

 

 余程のポカをしなければバレることは無いだろう。心を読まれたりしないかぎりは。指輪を嵌めている手も手袋で隠せばいい事だし。

 

 

「で?そろそろ君の大事な話を聞かせてよ」

「それならもう終わっておる。改めてよろしくの。沢山愛してあげる」

「…!あぁ。よろしくなルミナス」

 

 

 彼女の腰に手を置き、唇を重ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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