異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です   作:八葉と黒神の剣聖

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新たな家族

 ルミナスと手合わせした次の日。ミリムとの約束通りに時間を作ったのだが、肝心のミリムはまだ来ておらず、ルミナスも準備中。なので一足先に宮殿へと来ていた。

 

 

「しかしミリムの頼みってなんだろうね?加えてルミナスが居た方が良い理由も分からん」

 

 

 ミリムの事だから無茶ぶりでも言ってくるのだろうか?都で大きな問題が起きたとも聞いていないし、竜と人間の仲も良好。竜人と言う種族も生まれたって聞いた。特に気になる点は…ちょっと待てよ。そう言えば竜って縄張り意識強かったよな…。いや、アルビオンが異様に意識高いだけかもしれん。

 

 

(いや、その事と今の俺の考えが繋がるとは限らないか。考え過ぎだなきっと)

 

 

 うんうんと何度が頷いて一先ずそれは置いておこう。きっとミリムの事を称えまくる民達をどうすればいいか分からない事の相談だろう。それならルミナスが居た方が良い理由にも納得がいく

 

 

「待たせたのホムラ。ちと時間が掛かってしまった」

「別にいいさ…っと。今日もドレスじゃないのか?」

 

 

 あれこれと一人で考えを巡らせていると、ルミナスが宮殿へとやって来た。普段のドレスではなくセーターと黒いスカート姿のルミナス。彼女のあまり見なれない服装に少しドキッとしてしまう。それに気づいた様子のルミナスが、嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

 

「この手の服装も好みか。ならほど…今度は着物でも来てみるかの」

「着物か。浴衣とはまた趣が違うからちょっと気になるかも」

「ふふ……。期待しておれ」

 

 

 どんな着物を着るのか今から楽しみだ。ルミナスの色を考えると自然と黒と模様は薔薇かな?仕立て次第だけど、ルミナスの事だからかなり気合を入れそうだ。

 

 

「しかしあ奴はまだ来ておらぬのか?妾達を待たせおって」

「まぁまぁ。言っている間に…っと来たぞ」

 

 

 ルミナス不満を諌めていれば、駆け足でやってきたミリム。『遅れて済まない』と謝る彼女に俺は『別に構わない』と苦笑しながら告げる。ミリムに『ついて来て欲しい』と言われた俺達は彼女の後を追い空へ向かった。都より少し西へと向かうその道中で、なにやら妙な気配を感じ取れた。

 

 

「おや?こいつはもしや…呪詛か?加えて腐敗のような感覚もするぞ」

「うむ。まさしくそれら(呪詛)に侵された場所こそが今回の目的だ。見えて来たぞ」

 

 

 ミリムにつられて目を向けた俺は、その光景(・・・)に言葉を失った。そこには広大な平原があるだけで他には一切何も無い。加えて強烈な呪詛の類を感じるし、生えている草木も腐っている。こんなことを出来る奴は1人しか思い浮かばないが、ミリムの支配圏でこんなことをしないだろう。

 

 

「酷いの。何をすればこうなるのか」

「あぁ。余程大きな力が無ければ不可能だ。一体何があった?」

「話せば長くなるのだが、その…ある人と竜王の間に生まれた子が原因で」

「子供の仕業か。その子は?」

「……」

 

 

 俺の問いかけに口を塞ぐミリム。あまり詮索はしない方が良いようだ。ともあれこの地をこのままにするわけにはいかない。少しずつ周囲に広がっているし、とっとと浄化してしまおう。

 

 

「それじゃあ終わらせるか。浄化すればいいかミリム?」

「うん。済まないが頼む」

「了解」

 

 

 ミリムの了承を得て、俺は両手に光を集めて浄化の力を広範囲に展開する。あくまでも呪詛に侵された土地の広さに合わせたものだ。後は時間が解決してくれるだろう。問題は……これだけの事をしでかした存在の方だな。

 

 

「さて…その子はどうした?」

「その子は……。その……」

「素直に話せ。君では解決できないから俺やルミナスに頼みたいんだろ?」

「怒らぬし出来る限り力になるから言うがよい」

 

 

 言いよどむミリムに焦れたルミナスが諭すように追い打ちをかけると、彼女は漸く観念して語りだした。

 

 

「その子はまだ幼い子供で、産まれてまだ一年程しか経っていない。そしてこの地が呪詛に侵されたのも一年前だ」

「「……」」

 

 

 ミリムから告げられた内容に流石の俺達も驚きを隠せない。これを生まれたばかりの赤子がやったというのか。正直耳を疑う話だが、嘘を付けないミリムが言うのなら本当だろう。

 

 

「で…その子にはもう呪いの類の力はないのだが……」

「それでも竜王と人の子なら潜在能力がヤバいだろ。誰かがきちんと育てないと」

「ホムラの言う通りじゃの。きちんと面倒を見るべきじゃ」

「……その事なのだが」

(おい。やな予感するんだけど)

(安心しろ妾もだ)

 

 

 二人揃っての嫌な予感。こういう時の的中率ほぼ確実だ。しかも今回内容は安易に予想出来るものだ。

 

 

「その子を引き取って欲しいのだッ!ワタシが育てようと思ったが全く上手くいかない。抱っこしたら泣かれるしッッ!近づくだけでも大泣き。誰にも懐いてくれなくて大変なのだぁっ!!」

「じゃあ誰が世話を…ってあの神官か。民の皆に言えばいいだろ」

「言ったが『たとえミリム様の御頼みでも聞けません』って言われてしまった…」

「…まぁそうなるよな。どうする?」

「……」

「ルミナス?」

 

 

 ルミナスは顎に手を置いて真剣に考えているようだ。俺は引き取っても別に構わないが、ルミナスの方は難しいのかもしれない。ギュンダー達とも話しをしないといけないだろうし。

 

 

「済まないミリム。別の誰かを頼って欲しい。俺はともかくルミナスは難しい…よな?」

「ん?妾は構わぬ。家族が増えるのは嬉しいからの」

「という訳だから……え?いいのか?」

 

 

 予想外の返答に呆気に取られてしまう。確かに家族が増えるのは嬉しい事だが、ギュンダー達にどう説明するのだろう?まぁ政治事はギュンダーに任せてあるし、『ルミナスが決めた事は絶対』みたいな感じだし。

 

 

「当然じゃ。それにいい刺激が欲しいと思って居た所。加えて…子育てもしてみたい。エリンは殆どお主らで育てたじゃろ?」

「そうだけど……。まぁルミナスが言うならいいだろう」

「ありがとうホムラ。ではその子に会いに行くとしよう」

「案内頼むぞミリム」

「任せるのだ!」

 

 

 色好い返答をきけて上機嫌なミリムの後を付いて都へと戻る俺達。そのままある一室の前まで来るのだが、そこでミリムは立ち止まると部屋に指をさす。

 

 

「どうした?さっさと入れよミリム」

「い、嫌泣かれるし…」

「妾達が居るから大丈夫じゃ」

 

 

 ルミナスがミリムの背中を押して堂々と部屋に入る。俺も後に続いて暫く進むと小さな寝床が現れた。その寝床の上では、ミリムが話していた竜人と思わしき赤子がスヤスヤと寝息を立てていて、ミリムが近くにいるのに起きる気配が全くない。

 

 

「ほれ見ろ。起きぬし泣かぬじゃろ」

「何で…?」

(当然だろ。ミリムの気配を俺達の気配で上手く誤魔化してるからな)

 

 

 ここは技量と経験差だろうが、今それより寝ている赤子の方だろう。産まれて1年、セーラと同い年か。性別も女の子みたいだし、俺とアレクみたいに仲良くなってくれるといいけど。

 

 

「所で名前は付けているのかミリム?」

「まだつけてない」

「では良い名を妾達で考えるとしよう。どうするホムラ?性はお主でよいな?」

「いいぞ。折角だし素敵な名前が良いな」

 

 

 いい名前か…そう言えば名付けをするのはアルビオン以来か。竜と人の子…思い浮かぶのは某騎士王だが、女の子に付ける訳には行かないだろう。何かこの言葉だけは入れるとか決めれば考えやすいと思っていた時だった。

 

 

「アイカ…とういうのはどうじゃ?確かお主の故郷にいい文字があったの」

「それなら(あい)(はな)と書いて『愛華(アイカ)』でどうだ?」

「うむ。よい文字じゃ!。お主達の文化を学んでおいて正解じゃったの。では…頼んでも良いか?」

「了解。それじゃ…」

 

 

 赤子の前に立ち、『君の名前はアイカ』と呼ぶと、ごそっと魔素が抜けて赤子に吸収される。全身が一瞬淡く光るが、その際にこの子の凄まじい潜在能力を感じ取る。色んな意味で楽しみな子だな。

 

 

「良い名を貰ったの。今日から妾やホムラ、素敵な兄達が傍に居るからの」

 

 

 アイカを優しく抱っこするルミナス。その姿は母そのもので、思わず見惚れてしまった。しかし…辺り一面を呪う程の力か。どっちの親から譲り受けたか分からないが気になるな。今はもうその力はないようだが。

 

 

「ねぇホムラ。君の魔素が一気に減ったけど…ってぇ!?どうしたのその子!?」

「竜人の赤子ですか?」

「おぅ。ユニにアルビオンか」

 

 

 俺の身を案じたのか急いでやって来た様子二人は、ルミナスが抱っこしている子を見るやいなや直ぐに側に駆け寄る。興味深そうにアイカの顔を覗き込み、起こさないように頭や頬に触れている。

 

 

「で?どういう状況?」

「まぁ気になるよな。実はな」

 

 

 一通りの事情を説明し終えると、二人はは少し困惑した顔を浮かべるものの、ユニがすぐに何時も通りの表情に戻り『これから楽がしみだね』と微笑えんでいた

 

 

「折角だしホムラの跡継ぎとしてビシバシ皆で鍛えよう。良いよねルミナス?」

「その時が来たら構わぬが、程々にの」

「分かってる。それじゃあ皆に伝える」

 

 

 ユニが思念伝達で皆に伝えると、都に居たホノカとランは直ぐに来て、アイカの寝顔を見ると『めっちゃ可愛い!』と口をそろえて言う。どうやらあの子は既に彼女達のアイドルのポジションになったようだ。

 

 

「やれやれ…起こさないようにな。それとミリム。たまには顔を見せてやれ」

「うむ。時間があれば必ず遊びに行くのだ」

「ん。じゃあランとホノカ。俺は一旦戻って改めて皆に説明するから精々励め。覚醒まで行かなくてもいいから一皮むけろ」

「了解師匠」

「うん。戻った時を楽しみにしてて」

 

 

 元気よく返事を返すホノカとランだが、直ぐにアイカに視線を戻す。やや心配だがいいだろう。改めてミリムに二人を任せ、ルベリオスへと戻った。

 




次話から新章です。
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