異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です   作:八葉と黒神の剣聖

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今回から新章です。アイカを中心に主にフレアの仲間が主体となります。某ドラゴンも出てきます。


魔王の娘と仲間達
次を担う2人


ー起きて。朝だよアイカ。

 

 

 

 ゆさゆさと体を揺すられながら頭に声が響く。それと同時に強烈な朝日が襲ってきて、私を起こそうとしてくる。なので布団の中に隠れようとすると、ふさふさした何かが布団を剥がして鼻をくすぐってくる。

 

 

『起きてアイカ。今日から学校でしょ?入学式に遅れたらホムラ様に怒られる』

「…それはやだ」

 

 

 パパに怒られるのは勘弁だ。ママも怖いけどパパはもっと怖い。だけど一番怖いのはユニ姉だ。あの人はちょっとでも手を抜いたら雷を落としてくる。

 

 

「起きるよハク…ちょっと待って」

 

 

 ゆっくりと体を起こして目を擦る。大きく体を伸ばして、ベットから降りカーテンを開ける。いそいそと寝巻から制服に着替えて鏡の前に立つ。服は乱れていないか、髪は寝癖が無いか。身だしなみを確認する。

 

 

「ん…大丈夫。起こしてくれてありがとうハク」

『いつもの事だから。それとこれも』

 

 

 尻尾を器用に扱って全身を覆えるほどのマントを肩に乗せてくれる。これで準備完了だ。部屋を出て一階のリビングに向かう、扉を開けると同時にパパが声をかけてくる。

 

 

「おはようアイカ。起きれたようで何より…と言いたいが、出来る限り自分の力で起きるように」

「分かってるよパパ」

 

 

 早速小言を言われるが、事実なので軽く流してパパの向かいに座って朝食を食べ始める。一緒に来ていたハクはパパの肩に座って尻尾で頬を撫でていた。食べながらその様を眺めていると、視線に気づいたのかパパが聞いてくる。

 

 

「そう言えば今年の首席はセーラだって?」

「ん。実技と学科の合計1000点満点中、セーラが学科の方で満点取ってね。私は実技で満点だけど学科が少し低かった。というかユニ姉も言ってたよ、今年の試験は難しかったって」

「ユニが言うなら事実だろうな。しかし…よもや士官学院を選ぶとは」

「悪かったね。でも魔法や農業。経済より軍事の方が向いてるし」

 

 

 私が入学したのは士官学院。他にも農業等いろんな分野に特化した学校があるのだが、私は一番過酷な学院を選んだ。その理由は勿論父の背中を追いこすためだ。

 

 

「ふぅ…ご馳走様でした。メイドさんにありがとうって伝えて置いて」

「了解だ」

 

 

 父は立ち上がってお皿を持って台所に。水に付けてから戻ってくると、小さな箱を渡してくる。

 

 

「入学祝。俺とママから」

「…!ありがとう」

 

 

 箱を受け取って空ける。中に入っていたのは薔薇のピアス。穴を空けるタイプではなく耳朶に挟むタイプだ。これなら穴を空けた後に間違って治癒魔法をかけて穴を塞いで、もう一度穴を空ける凡ミスをしなくてすむ。

 

 

「付けてくれるパパ?」

「いいよ。おいで」

 

 

 パパの前に立ち箱を渡す。受け取ったパパはピアスを取り出して私の両耳に付け、外れないのを確認してから私の頭を撫でてくれる。

 

 

「いい感じ。ママにもお礼を言う事」

「うん。それとパパ。少ししゃがんで」

「…?いいけど…」

 

 

 首を傾げ乍らパパはしゃがみ、私と目線が合う。そして隙だらけのパパの右頬に軽くキスをした。ママが良くする不意打ちだ。

 

 

「こら。そういうのはボーイフレンドにするんだ」

「うーん…ママがいるから一生無理そうだけど」

「それはないだろ……」

 

 

 苦笑いを浮かべるパパだが、ママは厳しい反面過保護な部分がある。もしボーイフレンドが出来たなんて知ったら、色んな意味でいい笑顔を浮かべてその子の所に行きそうだ。

 

 

「っと。そろそろ時間だから行っておいで。初日は入学式と軽いオリエンテーリングだから昼には終わる。遅くならないように」

「分かってる。セーラに捕まらないように気を付けるよ」

「そうだな。行ってらっしゃい」

「ん。行ってきます」

 

 

 もう一度パパの頬にキスをしてから荷物を持って玄関に向かい、壁に立てかけてあった特殊な黒い焔が灯ったランタンをベルトに引っ掛ける。このランタンは私のユニークスキルに関係しているので外出する時は身に着けている。

 

 

「よし行こう」

 

 

 玄関を開けて屋敷を出て、庭を暫く直進すると大きな門が現れる。扉を開けてそのまま学院がある方向へと歩いていくと、同じ制服を着た生徒が沢山見えてくる。視界に映っただけで150人ぐらいかな?

 

 

「今年は多いみたいだね。友達出来るといいけど…と。見えてきた」

 

 

 大きな建物…私が通う学院が見えてくる。幾人かの教官と思わしき人が生徒達の道案内をしていた。私は事前に情報として知っていたので迷うことなく門を潜ろうとした時。背後から透き通った声に呼ばれた。

 

 

「おはようアイカ」

「…セーラ?」

 

 

 声の正体はアレクおじ様とマリンおば様の可愛い娘であるセーラ。子供の頃からずっと一緒にいる幼馴染だ。

 

 

「おはよう姫。1人?」

「えぇ。護衛は必要ないと言いました。もしもの事があってもアイカがいるから大丈夫と」

「そうだね。パパがおじ様を守っているみたいに、私が近くにいる時は守るよ」

「ありがとう。行こうアイカ」

 

 

 私の手を引っ張り学院内へと入るセーラ。こけないように付いて行きながら周囲を警戒。いつもの護衛が居ない以上私が軽く目を光らせる必要がある。ただ、セーラが軽く変装しているお陰か周囲の生徒に気付かれた様子はない。教官には気付かれているみたいだけど。

 ともあれ目立たないのはいい事だろう。私も目立つわけにはいかないし、出来る事なら平穏に学院生活を送りたい所だ。

 

 

「あ。掲示板があったわ。私は…Ⅵ組ね」

「私は…あ。姫と同じクラスだ」

「あら嬉しい」

 

 

 嬉しそうに笑うセーラ。彼女の笑みは宝石のように輝いており、見た物全てを虜にする。加えて彼女のこの笑顔を見たいが為だけに、色んな小国の皇子と縁談が尽きないらしい。幼馴染としては色々と複雑だけど。

 

 

「さぁホールに行くわよ」

「分かったから引っ張らないで」

 

 

 再び手を引っ張られながら入学式が行われるホールに入り適当な椅子に座る。やっと落ち着ける…と思っていると、セーラが私のピアスに気付き興味深そうに聞いてくる。

 

 

「誰から貰ったの?」

「パパとママから入学祝」

「素敵ね。お礼はした?」

「うん。ママが良くやる不意打ち」

「相変らずファザコンね……」

 

 

 私の答えにやや引くセーラ。ファザコンとか言うなんて失礼な姫。わたしはただパパの事が大好きなだけだ!ホノカおば様に比べたら全ッ然マシだと思う。あの人は本当におかしい。隙あらばパパの書斎に居るし!『魔王フレアは皆の物』とは言っても限度があるでしょ!限度が!

 

 

「別にファザコンじゃない。セーラだっておじ様好きでしょ?」

「お父様は大っ嫌いかしら?仕事ばっかりして娘の相手を全くしないから。最後に会ったのも2か月程前よ」

「多忙だから仕方ないでしょ。私だって下手したら半年は会えないし。朝起きて家にいる方がレア」

 

 

 なので今日の朝会えたのはとても珍しい事。次はいつ会えるのだろうか。たまには休みを取って欲しい所。仕事ばかりしてたらママに絞られるから。

 

 

「そうだ。得物はどうする?決めた?」

「えぇ。入学式が終わり次第ソフィ様の所に取りに行きますわ。その後に動作確認よ」

「…そっか。なら修練場で待ってるよ。暇だしね」

「助かるわ。空いてるかの確認は任せる」

 

 

 『了解』と返事すると、舞台に学院長が上がり挨拶が始まる、私は軽く聞き流す。あまり重要な話は無く、ただの歓迎だったから。

 学院長の挨拶が終わると、私達は教室へと向かってオリエンテーリングを開始する。一体何をするかと思いきやただの自己紹介。最初は担当教官が自己紹介して、それから出席番号順に自己紹介をしていき、セーラの番で大きな騒ぎとなるが、『あくまでも一生徒なので対等にお願いしますね』と笑顔で言い、クラス全員を虜にした。

 

 

(ファンクラブとか出来そうだね)

「では次の人」

(っと。私の番か)

 

 

 順番が来たので名前を言う。目立ちたくないのでただ『よろしく』と言って席に座ると、セーラが不満そうな視線を向けてくる。

 

 

『もっと愛想よくしたらどう?』

『余計なお世話』

 

 

 思念伝達で言ってきたので言い返す。生憎と私は君のようにカリスマ性は全くと言ってないんだ。大人の女としての魅力も無いし、宝石のような笑顔も無いし。

 

 

「これで全員ね。では学級の代表を2人決めましょう。政や行事などの進行や細かい決めごとをしてもらいます。誰かやりたい人」

 

 

 教官が私達に聞いてくるが誰も手を上げない。妥当な所だろうね。いきなり言われてもどんな行事などがあるから分からないから上手くいかない可能性もある。しかも皆の事も分からないし。

 

 

「はい!私とアイカがやりますっ!」

「なッッ!?」

 

 

 何て決意を密かに固めていた私の側で、とんでもない事を言い出すセーラ。周りの状況を見てあの子が立候補するとは思っていたが、私を巻き沿いにするとは予想外だ。というか私は絶対にやらないからな!

 

 

「えっとアイカさん?」

「やりません。1人でやらせてください」

「なんでよ。どのみち誰も手を上げないわ」

「……」

 

 

 この吸血鬼分かってて指名したな!こういう所はどっちに似たんだろうね!?マリンおば様はとても良い人で優しい人。少なくとも巻き込んだりはしない。という事は…父親の方か。

 

 

「……分かった。やればいいんでしょ(どのみちあの暴走列車を止めれるのは私しかいないし)」

「ありがとうアイカ。では教官さん。私とアイカでお願いします。精一杯頑張るので」

「分かりました姫。ではⅥ組の代表はアイカさんとセーラ姫に。詳しい業務については負って通達します」

「分かりましたわ」

「……(はぁ…平穏な学生生活が……)」

 

 

 決まった以上は仕方ないし、セーラの傍に居れるのは好都合だろう。一応帰ったらパパに相談しておこう。その前に考えも纏めておかないと。

 

 

「では今日はここまで。来週から楽しい学生生活を送りましょう」

 

 

 教官が手を叩いてからの号令を合図に解散となる。クラスメイトは一斉に教室を出ていき、セーラもソフィ姉の元に向かうのを見届けてから私は一番最後に出て宮殿に向かう。宮殿内にある修練場の前まで来たのだが、扉の向こうから2つの気配を感じる。

 

 

「これは…シン兄とラン姉?何してるんだろう?」

 

 

 気付かれないように扉を開けると、修練場の中心で殺気立った大好きな姉と兄が向かい合っていた。互いの米神に青筋を立てている所を見ると何かあったね。

 

 

「今日という今日は許さねぇぞ石頭」

「それはこっちのセリフだから脳筋」

(あー……これはダメだ)

 

 

 暫く放置が安全だ。なので私は近くのベンチに座って紅茶を飲みながら2人の戦いを観戦するのだった。

 

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