異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です   作:八葉と黒神の剣聖

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農作業と面白い物

 朝早く。朝食を済ませた私は庭にあるビニールハウスの前に来ていた。ママとの約束通り野菜などを収穫するために。

 

 

「えと…まずはコンテナからかな。確か倉庫にあるから取りに行こう」

 

 

 ビニールハウスの隣に建っている倉庫に向かい、中にある大量のコンテナを運ぶ。運び終えて次どうしようかと思っていたら、背後からミナト兄に声を掛けられた。

 

 

「おはようアイカ」

「おはよう。どうかした?」

「あぁ。先生がきちんと休んでいるか見に来てね」

 

 

 成程。その確認が重要だ。休みなのに仕事しているとか日常茶飯事だからね。けど今回は大丈夫なのでその理由を伝える。

 

 

「朝までママとお楽しみだったから大丈夫」

「うん。それなら大丈夫だね」

 

 

 そして納得するミナト兄。納得されても困るのだが、この事に関しては皆の周知済みなので寧ろ安心するらしい。どんだけあの人仕事熱心なんだろ……。

 

 

「そうだミナト兄。ザイファ姉見た?」

「え?見てないけど?今日は普通に仕事だったはず…でも朝から見てにいないような。朝会にもいなかったし」

 

 

 まさか無断欠勤?そんなことをしたらパパに雷落とされるはず。体調が悪いのかな?でも剣星の皆が体調崩すなんて聞いた事無い。怪我は日常茶飯事だけど。

 

 

「……まさかとは思わないけど、中にいる?」

「あり得るかも…取り合えず頑張って。僕は行くところあるから」

 

 

 駆け足ぎみに去っていくミナト兄。珍しく私にあの人を押し付けたね。まぁいいや、中入って確かめよう。

 

 

「どうかいませんように」

 

 

 念のために祈ってからビニールハウスに入って捜索。周囲を見渡して気配を探るが見つからない。『よかった……』と安堵の息を漏らしたのもの束の間。足に何かが当たり視線を下ろす。その何かを見て言葉を失った。その何かとは、うつ伏せに倒れている泥だらけの誰かで、私は少し間を置いてから叫んでしまった。

 

 

「いやぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 大きな叫び声が響き渡り、勢いよくビニールハウスの扉が開いてエリンお姉ちゃんが入ってくる。『な、何事?』と尋ねてきたので、足元に指を指して見せると、お姉ちゃんは顔を青ざめながらも、生存確認を始める。

 

 

「もしもーし。生きてるー……ってあれ?」

「お姉ちゃん?」

 

 

 お姉ちゃんは倒れてる人の顔を見て、なんとも言えない顔になる。もしかして知り合いかな?と思いながら、私は恐る恐る倒れてる人を仰向けにし、顔を見た瞬間その理由が分かった。

 倒れていたのはザイファ姉で、しかも爆睡している。とても気持ち良さそうな顔を見て、お姉ちゃんが何とも言えない顔になるのも頷けた。

 

 

「お姉ちゃん」

「いいよ。耳塞いどく」

 

 

 お姉ちゃんが耳を塞いだのを見てから大きく息を吸い込み、強烈なモーニングコールを放つ。

 

 

「おはようザイファ姉っっっっ!!!」

「ひぃっっっ!?」

 

 

 そして飛び起きるザイファ姉。キョロキョロと回りを見渡して周囲を警戒した後に私たちの方を見る。

 

 

「な、何かあったっすか!?」

「それはこっちの台詞。何してたの?」

「それは簡単ですよ。今日収穫って聞いたので昨日から準備してたっす」

「なら一言頂戴よ……」

 

 

 多分そうだろうと思ってたけど、やっぱり一言欲しい。我が家で殺人事件とか洒落にならないから。

 

 

「はぁぁ……朝から疲れた。始めよお姉ちゃん」

「そうだね。ザイファはいつも通りよろしく」

「了解っす」

 

 

 ザイファ姉と分かれてお姉ちゃんと共に大根が植えてある列に。長さは30メートル程あって本数は何本あるか分からない。加えて5列もあるから大変だ。

 

 

「よし頑張りますか。所でお父さんは?」

「パパは朝までこってり絞られて楽しんでた」

「またか……」

 

 

 苦笑いを浮かべながら大根を抜き始める。さっきも言ったけど日常茶飯事だから、私も含めて特に気にしてないしむしろ『もっとやってママ』って思ってる。

 

 

「お姉ちゃんは妹か弟欲しい?」

「アイカがいるから要らない」

「だよね。只でさえ忙しいのにもう一人増えたら取られる」

 

 

 それは言えてるかも。特に年が近いと上の子が下の子にヤキモチ焼くってよく聞くし。

 

 

「もう少しパパの手が空けば旅行とか行けるのに」

「そうだね。新婚旅行も行ってないって話だし、たまには2人で思いっきり羽を伸ばして欲しい」

「ならお姉ちゃん……」

「うん……」

 

 

 ここは娘である私達の出番だろう。ほかの皆に根回しして協力して仕事を回せればパパの手が空く。私もある程度の仕事は手伝ったことがあるからこの際、学院に通いながら回してもらおう。

 

 

「こらこら。口ばっか動かさず手を動かせ娘共」

「あ。パパ」

「おはよう」

 

 

 麦わら帽子に作業服姿のパパが入ってくる。そっちの状況を尋ねると『もう終わったから選別中』と言ってくる。流石パパだ。

 

 

「昨日はお疲れだったねお父さん?」

「いつもの事だろ。俺としても昼間軽く暴れたから助かった」

「じゃいつもよりこってり?暴れたあとのお父さんの魔素量ってとんでもないし」

「そんなことねぇよ。むしろルミナスの欲求の方がえぐいわ」

 

 

 パパの言う通り、確かにママの愛情は凄い。素の分鞭もきついけど。

 

 

「そうだアイカ。収穫が終わったら修練場に来るといい。面白いものを見せてやろう」

 

 

 パパはそう言って指を鳴らすと、全身が赤い焔に包まれていつもの赤い外套と漆黒の服装に変わる。

 

 

「んじゃ待ってるからな」

「うん」

 

 

 再び焔に纏われ姿が消える。面白い物とは何だろう?物凄く気になるのでせっせと収穫を済ませて表に出し、ザイファ姉の確認を終えてから市場に運ぶ。

 

 

「ありがとうっすアイカさん」

「ザイファ姉もね。あと次から気を付けて」

「気を付けるっす……」

「ん。それじゃまたね」

 

 

 ザイファ姉に手を振って、私は宮殿へと向かった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

「えっとパパが指定した修練場はここだね」

 

 

 指定された修練場の前に来る。因みに修練場は全部で5つあり、その内の一つはパパの遊び場になっている。その修練場の入口が目の前にあり、私は深呼吸してから扉をあける。

 

 

「入るよパパ……って、うわ……」

 

 

 中に入り最初に視界に映ったのは綺麗な夕焼けと見たことの無い建物。見たことのないその光景に目を奪われてしまい、呆気に取られてしまう。

 

 

「……凄い。これって……」

「えぇ。私の『幻影空間』です」

 

 

 背後からベル姉に声を掛けられ振り返る。その先は巨大な砲台が500メートル程あり、その下は海だった。一体ここは何をイメージして作った光景なのだろう?絶対にこの世界では無いのが明らかだ。

 

 

「いい景色だなアレク」

「あぁ。ランの好きなゲームの世界だったか?」

(あ……)

 

 

 近くからパパとおじ様の声。そちらを見ると正宗を持ったパパがおじ様に背を向け乍ら夕焼けを見て、おじ様は塀に座って見ている。その近くにはママも壁にもたれていた。

 

 

「確か…ランの好きな銀髪の英雄と、誇りを大切にする親友。加えて英雄になりたい親友が決闘した場所だ」

「へぇ…なら持ってこいの場所か」

 

 

 おじ様は塀から降り愛剣であるディザスターを取り出し、ママも愛刀の夜薔薇の刀を抜刀し目を合わせる。

 

 

「足を引っ張るなよ小僧」

「アンタもなルミナス」

 

 

 そして同時にパパに向かう2人。上手く連携しながら攻めるが、パパは涼しい顔で2人の剣を捌く。剣がぶつかり心地よい金属音が響く中、ベル姉が懐かしそうに話し始める。

 

 

「建国当初…私達3人でよくサボってて。この修練場も遊び場として作ったんです」

「そうなんだ。でもサボってたら怒られない?」

「ふふ……うまい事騙していたから余程暴れないと気付かれない物です。でもユニさんには結構バレて」

「あの人勘いいからなぁ…」

 

 

 宮殿内で起きていること全て把握しているんじゃないかと時折思うぐらいピンポイントで姿を現すユニ姉。その前に建国当初って恐ろしい程忙しいって聞いたような。そんな時にサボるなんて命を無駄にするような物だろう。

 

 

「そしてバレる度に雷落とされて。特に陛下はこっぴどく」

 

 

 

ーねぇ…忙しい時にサボるってどういう事?いろんな国との対談がいっぱい詰まってるんだけど?政治事だって沢山溜まってる。サボる余裕ないよね?

 

ーうぅ…はい。でも今回はホムラがーーー。

 

ーん?ホムラが何て?

 

ー何でもありません。

 

 

 

「こわぁ……」

「怖いですよね……」

「そしてパパに甘い」

 

 

 なんだかんだ言ってパパには甘いんだよねあの人。でもパパの事だから仕事片付けて時間が空いた時に上手くサボっていると思う。だからユニ姉も強く言えない。

 

 

「加えてルミナスちゃんも混ざるようになって。でもあの人はきちんと目的があった」

「目的?」

「うん。ここだとホムラ様は正宗を遠慮することなく振るえるから」

 

 

 そっか…ここならあの化け物刀を抜けるんだ。外だと妖気が恐ろしいから安易に抜けなくて、聖剣をしようする方が多い。そう言った意味ではいい息抜きになるし、ママとしてもいい鍛錬相手になるんだ。

 

 

「流石親友。簡単にはいかないか」

 

 

 おじ様の声が聞こえてくる。気付けばパパとママ達との打ち合いが一旦止まっている。おじ様は満足そうにパパを見る反面、ママは目を閉じて考え事をしているようだ。

 

 

「さて、そろそろ…」

「待て小僧。妾はホムラと勝負がしたい」

(え?)

 

 予想外の事を言うママ。パパは笑みを浮かべながら『いいだろう』と答え、ママは嬉しそうな笑みを浮かべながら愛刀に凄まじい霊子を込め、刀身を焔で保護する。

 

 

「では…ゆくぞ!」

 

 

 パパに向かうママ。目の前で最強魔王夫婦の勝負が始まるのであった。

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