異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です 作:八葉と黒神の剣聖
「では…ゆくぞ!」
強烈な霊子と焔を刀に纏って距離を詰めてくる。正宗を構えて出方を伺うと、ルミナスは縦に刀を振り下ろし、俺は正面から受け止めるが、凄まじい一撃で少し後ろに下がってしまう。
(予想より重い。ならーーー)
受け止め方を変え二撃目を再び正面から受け止めると、周囲に強烈な衝撃波が飛び、足元が多きく凹む。安易に受け止めると腕ごと持って行かれそうだな。
(なら、受け流しながら反撃するのみ!)
「っと。お主ならそう考えるがその隙は与えん!」
「!?」
間合いを一気に詰めて怒涛の連撃を繰り出すルミナス。反撃する間も与えられず、一歩一歩後ろに下がりながら防ぐが、防ぐ度に腕が弾かれてしまう。
(っちい!メルトスラッシュ並の重さだな!加えてスポットで受け止められないから弾かれる!)
それでも直撃は避けながら防ぎ、反撃のタイミングをうかがう。このハイペースがいつまでも続くとは限らないからだ。
「どうしたホムラ!?妾ごときに押されてるのか!?」
「戦略的防御と言って欲しいね!!」
やや強がるがこのままだと不味い。ここは無理にでも距離を取ろう。上手く誘えば体勢を立て直せそうだ。
「っ!」
「はっ!?」
軽く覇気を出すと、ルミナスが警戒する。そこで彼女の剣を防ぎながら弾き飛ばされる様に後退。すかさずルミナスは間合いを詰めてくるが、コンマ数秒あれば立て直せる。
瞬時に切り替えてから息を整え、刃に魔神覇気を纏わせながら間合いを詰める。
「むっ!?嵌められたか!」
「遅い!!」
刀を斜めに振り上げ、ルミナスは防御するが受けきれず後ろに弾かれる。ここから更に体勢を崩すべく追い討ちを放ち、ルミナスは片膝を付きかける。そこを逃さず袈裟斬りを放つが、ギリギリで空高く回避されてしまう。
「逃がすかっ!」
ルミナスの後を追って同じ高さまで飛び、何度か剣を交えた後に地面に向けて叩き落とす。ルミナスは一回転しながら体勢を立て直し、左手に赤いエネルギーを纏う。
「喰らうがよいっ」
そこから赤い光弾を無数に放ち俺の周囲に展開。見覚えのある技だと思っていると、ルミナスは手を握り、それを合図に展開された光弾が襲ってくる。
「そうなるわな!」
迫りくる光弾を斬り伏せるが、対処しきれない部分は直撃。大したダメージではないので気にせず間合いを詰めようとした時、直撃し爆発した光弾が焔となって覆いこむ。
(ダメージは無いがっ!)
「止めじゃ!」
再び左手を広げると、背後から強烈な光に襲われる。その正体を確認するべく振り返り、視界に映ったのは巨大な魔法陣。その魔法陣を見て固唾を飲んでしまう。あの魔法陣は、ユニが生み出した究極魔法の中でも飛び切りヤバい奴だから。
「ちぃっ!」
覆っていた焔を斬り飛ばし、刀身に光粒子を込め覇気を纏う。そして魔法陣から放たれた光の矢を真っ二つに切り裂き直撃を避け、魔法陣を粉砕するが、妙に威力が低いことに気付く。
(威力が低い?)
この事に思考が一瞬囚われ、その間にルミナスの気配が感じ取れなくなっている事に気付く。
「しまっーーー」
しまったと思ったが時既に遅し。『捕まえた』と耳元で囁かれると同時に頭にルミナスが抱き付いてくる。ぎゅーと思いっきり強く。
「ふふ……流石のお主も気付くのが遅かったの」
「くそぅ……」
よもや大技を囮に使うとは思っても居なかった。超悔しいが、普通に考えるとおかしい所はあった。間合いは超詰めてくるし、制御が難しそうな事してるし。
「最初からコレが狙いかぁ…」
「いい顔じゃの。眼福眼福……」
そしてとても嬉しそうな表情になるルミナス。そのまま頬にキスをしてきてゆっくりと地上に降りる。ルミナスは抱きついたまま離れようとしない。
「ラブラブだねパパ」
「いつもの事だなー」
「右に同じです」
「感想言う前に助けて」
アレクに手を伸ばそうとするが、その手をルミナスに捕まれてしまい伸ばすことが出来ない。誰か助けてくれる人いなかなぁ?
「さて…我が家のルールその一。敗者は勝者に従わないといけない」
「……何をお望みで?」
大変嫌な予感がする。その前に我が家のルールにそんなのあったっけ?記憶にないんだが。
「建国記念祭と夏祭り。家族でデートしよう」
「いいぞ。あまり一緒に過ごせてないし、たまには羽目を外そうか。アイカはどうする?」
「勿論行くに決まっている。でも時間取れるの?」
心配そうに聞いてくるアイカ。普段の忙しさなら当然だろう。しかし、建国記念祭も夏祭りも数日行われるので休みは必ず取れるが、その心配はアイカにも値する。
「建国記念祭は学院も関係してくるからアイカも忙しいぞ」
「え?」
顔が面白い程真顔になる。あの顔だと知らない…いやこれから知らされるのだろう。なら詳しい詳細は言わない方が良いかも知れない。
「まぁ教官殿が話してくれるから精々頑張れ。ある程度は助けてやる。これもクラス代表の務めだな」
「平穏な学生生活が……」
大きく溜息を吐いて項垂れるアイカ。そんな彼女を見たルミナスか俺から離れて思いっきり抱きしめて頭を撫で、俺も同じ様にアイカの頭を優しく撫でるのであった。
ーーーーーーーー
―アイカsideー
「いい満月だね……」
我が家の屋上から夜空を見上げ、銀色に輝く満月を見ながら今日あったことを振り替える。パパとママの手合わせは、学べることがとても多かった。
「パパの動きは無駄がないし、ママのあの技は強烈。何処かで教えてもらえないかなぁ……」
教えてくれるか怪しいけど、頼んでみれば案外いけそうな気もする。その代わり超スパルタだけど。
「ここに居たのかアイカ」
「ママ…?」
いつものゴスロリドレスで声をかけてくるママ。心配そうに隣に来て、私の頭を優しく撫でてくる。
「何かあったか?」
「何も。パパとママはラブラブだと思って」
「当然じゃ。付き合い長いからの」
どれだけ長いかは知らないけど、今で言う太古の時代からの付き合いらしい。結婚したのは18年前って話だけど。
そう考えると『パパとママは何歳?』と疑問に感じるが、剣星の皆もあぁ見えてかなり歳いってるらしいし気にするだけ無駄かもしれない。
「パパは…どうしてあんなに強いのかな?」
「長生きしてるから…では答えにならぬか。聞きたければ本人に聞くといい。たまには一緒に寝るのも良かろう」
この年でパパと一緒に寝るのかぁ……。でもこの時間に話を聞くならそうなるよね…。お姉ちゃん居るし絶対何か言われそうだけど…。
「ふふ……別に親子だから遠慮しなくてよいぞ。折角だから妾も混ざるかの」
「えぇ……」
絶対に一晩愛でられるに決まっている。断りたいけど、パパの強さの秘密は気になるし…よし。腹を括ろう。
「じゃあそうしようかな。たまにはいいかも」
「ふむ。では行こうか」
私の手を掴んでパパとママの部屋に向かう。部屋の中ではパパが聖剣の手入れをしていて、入ってきた私達を見て少し驚きつつも声をかけてくる。
「どうした?ルミナスは兎も角アイカは珍しいな」
「色々と話聞きたくて。そのまま一緒に寝ようかと」
「そうか。たまにはいいかもな。エリンも呼ぶか?」
「そうじゃの。少し待っておれ」
お姉ちゃんを呼びに行くママ。それからパパは聖剣をしまうベットに座る。隣を叩いたので私はパパの隣に座ってもたれかかる。
「で?話って?」
「ん。パパの強さの秘密聞きたくて」
「俺の?うーん困ったな」
顎に右手を置いて困った顔をするパパ。そんなに困った質問だろうか?私はパパの答えを待っていると、パパは後ろに倒れて仰向けになり話し始める。
「簡単に言えばハートの問題だ。精神論になるが必要なのは最後まで諦めない事。折れない心。そして…誇りか」
「誇り?」
「あぁ。内容は人それぞれだ。進む道によって変わる」
「進む道か…」
その道を考えながら私もゆっくりベットに倒れると、パパが優しく抱き寄せて来たので私はそのままギュッと抱きしめると、少しだけパパの体がポカポカしている事に気づく。
「夜なのにポカポカする」
「風呂入ったばっかりだからな」
「そっか。確かに薔薇の匂いする…」
僅かに香る薔薇の匂い。ママが使う石鹸とは違って少し甘い香り…じゃなくて!今はそんな事どうでもいい!今はパパの強さの秘密を知りたいから。
「進む道によって変わるって言ったけど、最終的に辿り着く場所は一緒だよね?」
「それは剣や武術などの事。この場合の進む道は人生だな」
成程。それなら分かる。人によって人生は変わる。その道によってそれぞれ抱くものも変わるという事かな。
(私の進む道はーーー)
「……深く考えない事だ。折角一番過酷な道を選んだんだから好きな事をやればいい」
「好きな事?」
「そう。俺は出来なかったからな。出来れば可愛い娘達には好きな事をさせたい」
私の頭を優しく撫でるパパ。その時にチラッと見えた顔は何処か辛そうだった。パパの過去は知らない。私が知っているのは血の繋がりが無くて、元勇者の魔王って事しか知らない。ママに関してもそう。吸血鬼の神祖で姫。トワイライトって人の血から作られたって頃ぐらいしか。そう考えれば私って両親の事をあまり知らないような。
「そういう訳だから、アイカは好きな事を沢山やればいいさ。必要最低限の支援位はしてやる」
「大丈夫。パパの力は借りない。勿論ママの力も」
「そうかい。それが一番良いさ」
パパの言う通り、余程の事態が起きない限り両親の手は借りない。どんな逆境でも乗り越えて見せないと。
「士官学院頑張るよ。パパの背中越えて見せる」
「いいね。頑張りな」
「ん。お休み」
パパの頬にキスをして瞼を閉じた。
ーーーーーーーー
「うぅ…何か背中に張り付いてる…?」
背中から感じる何かに目が覚める。カーテンの隙間から朝日が差しているのを見ると、夜が明けたのが分かる。しかし何故か見動きは取れない。誰かが背中から張り付くように抱きしめているからだ。
「お?起きたかアイカ」
「おはようパパ。動けない」
そうパパに言うと、私の後ろに視線を向けて苦笑いを浮かべ、私もなんとか首を回して誰がいるのか確認。視界に映ったのは気持ちよさそうに寝ているママだった。
「マ…ママ…何で?」
「お前が寝た後エリンを捕まえられなかったママが来てな。エリンを抱き枕に出来ない代わりにアイカで我慢するって」
「何で…?」
『そこはパパだろう』と突っ込みたいけど、私が独占してたから抱きしめられなかったのかな。だとしてもこの状態はマズイ。学院の休みは一日しかないから今日は授業がある。時間は…まだ5時ぐらいかな。お風呂も入りたいし何とか抜け出さないと。
「助けてパパ」
「…だな。ちょっと待ってろ」
パパはママの頬を掴みゆっくりと引っ張る。ママが面白い顔をしながらゆっくりと瞼が開いて腕の拘束が弱まり、その隙に抜けだす。
「妾の睡眠を邪魔するのは誰じゃ?」
(や、やば。無理矢理起こされて不機嫌!?)
大変嫌な予感がしていると、パパがママを思いっきり抱きしめてママの顔を自身の胸に埋める。するとママは嬉しそうに微笑みながら両腕を首に回してキスをした。
『この隙に行きな。気を付けて』
『ん。行ってきますパパ。あと…頑張って』
パパの武運を祈って、学院に向かう準備を始めるのであった。