異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です   作:八葉と黒神の剣聖

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いざサリオンへ

「よし…身だしなみはこんな所かな?」

 

 

 校外学習前日の朝早く。鏡の前に立ち身だしなみを整えていた。制服ではなく、黒と紫を基調とした私服に着替え、焔と光が込められた小さな宝珠付きのネックレスを身に着ける。フード付きのマントを羽織ったら準備完了だ。

 

 

「さて…サリオンにはパパとママも一緒に行くから早く行かないと」

 

 

 遠出用の鞄を背負ってから愛刀を腰に携えて玄関に向かう。そこでは小さなパパが先に来ていてハクエンと戯れている。因みにサリオンへはパパ達だけではなく、おじ様達も向かうらしく、そちらはミナト兄が付いているらしい。私達は他にパール姉とハクエン。後レンも一緒だ。

 

 

「パール姉は?」

「一足先にある場所に向かっている。悪いがサリオンに向かう前に寄る場所があってな」

「そうなんだ。だから朝早くから出るんだ」

「そうだ…っと。ママも来たぞ」

 

 

 頭巾を被ったママが姿を現す。そういえばお姉ちゃんが居ないような。ちょっと気になったのでパパに聞くと『一足先に向かった』と返事が来る。大変だなぁ…と思い乍らブーツを履いてきちんと紐を締めてから屋敷を出ると、綺麗な青い空が視界に映る。

 

 

「いい天気…」

「そうじゃの。絶好の遠出日和だ」

『はい。こんな日は草原を思いっきり走りたいですね』

「私は飛んでみようかな」

 

 

 こういう時は竜の姿になれたらいいのに。って思うけど私は竜化出来ない。その代わり体の中身は竜王と変わらないけど。でもそのお陰で人間と全く変わらない外見だから竜魔人と気付かれない。

 

 

「あ。おはようアイカちゃん。ルミナス様」

「おはようレン。今日はよろしくね」

「よろしく頼むぞレン」

 

 

 レンも合流し、パパが玄関のカギを締めたので出発の準備完了だ。エルメシアへの誕生日プレゼントも持ったし、後は五体満足でサリオンに到着するのみ。

 

 

「よっし行くぞ。ある程度の魔獣はラン達が倒しているが、油断しないように」

「分かってるよパパ。後ろは任せたからねレン」

「ふふ……任せて」

 

 

 軽く拳をぶつけ合う。その様子を見ていたママが懐かしそうな顔を浮かべていた。もしかして昔のパパ達と重ねたのだろうか。あの頃のパパ達の事を一番知っているのはママだしね。

 

 

「さて。前衛は若い娘たちに任せるかの」

「そうだな。おいでルミナス。ハクもいいぞ」

 

 

 自然とママを抱き寄せて手を繋ぎ、ハクエンを右肩に乗せて歩き始めるパパ。どことなく嬉しそうな雰囲気が出ているのが分かった。私とレンはそんな3人の後を歩いてルベリオス西側の門へ向かい、衛兵さんと手続きをしてから門を開けて貰う。

 門が完全に開いてから通り抜けルベリオスの外へと出る。外は一面緑の平原で魔獣の姿はない…と思っていたのだが、そうは問屋が卸さないようだ。

 

 

「キシャァァァァ!」

 

 

 3体の天空竜が私達の前に現れる。恐らくルベリオス内に侵入しようとしたけど結界があって入れなかったのだろうか。そんな時に門が開いたので出て来た私達を倒して入ろうとした。って所かな?確かにいい手だけど正直相手が悪いと私は思う。

 

 

「さて…たまにはパパに格好いい所見せないとね」

 

 

 灰塵を抜刀して天空竜に向かう。3体の天空竜は雄たけびを上げながら高速で迫ってくるが、そのうち2体はレンが光の鎖で拘束して身動きを取れなくする。それに残りの一体が動揺して動きが鈍り、そこを見逃さず首を斬り跳ねる。

 

 

「ギャッ!?」

「止め。怨炎!」

 

 

 黒紫色の炎の球で天空竜を覆い滅却。天空竜は跡形も無く焼失し、淡い光だけが残ってそれも腰に携えているランタンの中に入る。残りの2体はレンの魔法で跡形も無く消し飛んでいた。

 

 

「流石レンだね。今のは光魔法?」

「そう。ホムラ先生のソルス・レイを万人に使えるように改良した魔法だね」

「成程…」

 

 

 ではさっきの魔法は光破熱線って事かな。アレってめっちゃ痛いんだよね。皮膚は焼けただれるし、魂も焼かれるし、威力エグイし。というかあんな頭おかしい技を簡易魔法にしないでよね。

 

 

「無事に倒せたな。このまま気を抜かずに行くぞ」

「うん。で、何処に行くの?」

 

 

 パパに行き先を聞くと、パパはある方向を指さす。その方向に何があるか考えていると、ママがムッとした顔を浮かべる。

 

 

「廃城の地下か。確か魔鉱石採集場にして整備したと聞いていたが」

「あぁ。その更に地下階層が4つ見つかってな。その一番地下に湖があるんだ」

「いわゆる地底湖って物ですね。それがどうかしましたか?」

 

 

 レンがパパに尋ねるが、パパは答える事無く歩き始める。あぁ…これはかなり面倒な事で、しかも昔似たような事があったパターンかだね。

 

 

「えっと…何で先生は何も言わないんだろう…?」

「多分面倒事。行こう」

 

 

 パパ達の後ろを歩きながら襲ってくる魔物を討伐。面倒な魔物は排除済みと聞いていたけど小型の魔物が多い。明日来る皆は大丈夫かな。

 

 

「結構多いね。皆心配」

「大丈夫。大型やネームドは討伐済みだし、あれぐらいの小型は倒せないと」

「だとしてもね…」

 

 

 魔物の数が多いって話も聞く。何かの予兆ではないことを祈りたい。例えばヴェルトラが来訪するとか。もしそんなことになれば堪ったものはないけど。

 

 

「ペースあげるぞ2人とも」

「いいよパパ。ちゃんと付いていくから」

「私も問題ありません」

 

 

 ペースをあげるパパ達の後を付いていくこと数分。今は採石場へとなった廃城に到着。

 そのまま地下に進み例の更に地下へと続く道に向かうと、大きな扉が見えてきて、その前ではパール姉とソフィ姉が待っていた。

 

 

「おはよう二人共。朝からご苦労」

「おはようホムラさん。今日は宜しくね」

「うん。所で仕事は?」

 

 

 ニコっと笑いながらソフィ姉に聞くパパ。聞かれたソフィ姉は何も答えずニコっと微笑んだ。というかソフィ姉が来るって言ってなかったよね?

 

 

「フレア様。ソフィにも息抜きが必要かと。色々と仕事を抱え込んでいますので」

「……今回だけな。ま、セーラの無茶振りもあったし多目に見よう」

「まぁ仕方ないよね。ぎゅー」

 

 

 ソフィ姉に抱きついて胸に顔を埋めると、ソフィ姉は涙目になりながら私の頭を撫で始める。

 

 

「うぅ…アイカは素直でいい子だね。どこかの殿下の娘とは大違い」

「そんなに無茶ぶりされたの?」

「そうだよ!」

 

 

 

 大きな声を上げるソフィ姉。そしてとても珍しいソフィ姉の愚痴が炸裂する。

 

 

「あの花弁の杖いつ言ってきたと思う!?入学式一週間前だよ!?しかもシンに頼まれて魔素で動くバイクの試作設計とかホムラさんの村正の点検とかでめっちゃ忙しい時に!なんでお抱えの鍛冶師じゃなくて私なの!?」

「そ、それだけ頼りにされてるって事だと思う」

「私はホムラさんとアイカの専属鍛冶師で錬金術師!王族には昔から仕えている人いるんだから!」

「ま。そっちに頼むのが普通だな」

 

 

 苦笑いを浮かべながら言うパパ。というかソフィ姉って私はパパの専属だったんだ。その話は初めて聞いた気がする。そうなると普段の仕事に加えて日々新しい物を編み出していく中で、セーラの無茶ぶりとか聞く余裕ないよね。

 

 

「まぁソフィ。その件に関してはマリン殿に雷を落としていただいたのでそれでよしとしましょう」

「お、おば様の雷……」

 

 

 きっとこってり絞られたと思う。あの人の雷はママとは別の意味で怖い。あの陛下に有無を言わせない程だから。

 

 

「よしソフィ。君もサリオンに行こう。どうせシルビアに捕まって宴会確定だし、ルミナスとシルビアが潰れた後に沢山愚痴を言ってくれ。いくらでも付き合うから」

「うん。折角だからお付き合いさせてもらおうかな」

「たまには息抜き大事だからね」

「……」

 

 

 話の流れでソフィ姉の同行も決まるのだが、さり気無くお酒のお誘いは良くないと思う。というかパパってお酒飲むイメージ無いんだけどどうなんだろう?ママは結構飲んでパパの膝を枕にして寝ているのはよく見かけるけど。

 

 

 

「それじゃあそろそろ行こうか。ソフィとパールさんは同行頼む」

「了解ホムラさん」

「お任せください」

「「「……」」」

 

 

 私達を置いて扉を開けようとするパパ。無論そんな事が許されるはずも無く、ママが『待った』と言い、腕を組みながら言った。

 

 

「妾とレンが置いて行かれるのは構わぬが、せめてアイカは連れてゆけ。これも勉強だ」

「それは良いけど…」

「じゃあ私残るよ。レンとお話ししたいし」

「そうか…じゃあ行こうかアイカ」

「う、うん」

 

 

 ママの一声でソフィ姉と交代。パパは扉を開けて中に入って行く。私はその後をパール姉と一緒に付いて行き暫く進むと開けた場所に出る。そこでパパは足を止めて下を見る。

 パパの視界の先には全長10メートル程の大きな穴。落ちないように覗き込むけど一面闇で地面は見えない。この下に4つの階層と地底湖があるって言ってたよね。結構探索大変だ。

 

 

「……この感じたことある気配は行くの嫌だなぁ」

「どういうこと?」

「言ってからのお楽しみだ。行くぞアイカ。パールさんも宜しく頼む」

「はい。慎重に降りましょう」

「おぅ。捕まってろアイカ」

 

 

 パパは私を右腕で持ち上げて穴に飛び込む。パール姉も付いてきて周りを警戒しながら降りていくと地面が見えてきたのでゆっくりと着地し、周りを見渡すパパ。

 

 

「以前の事を考えると近くに……あった。あれだな」

「あれは…扉?それにあの紋様って……」

 

 

 パパが指を指した先には大きな扉と謎の紋様。気になった私はパパの右腕から飛び降りて扉に触れる。

 

 

「何だろう。扉の向こうから大きな気配を感じる」

「大きな気配……どうやら何かいるのは間違いなさそうですね」

「……」

「……?フレア様?」

「パパ?」

 

 

 紋様をジーと見ているパパ。それだけではなく時折唇を動かして誰かと喋っているようだ。その誰かがとても気になるけど、もしかしたらユニ姉かもしれないから聞かないでおこう。

 

 

「行くぞ二人共……と言いたいが、ここからは俺一人で行く。前回はルミナスと一緒でも問題無かったが、今回は一人で来いって言ってる」

「一人でって…もしかして昔話してくれた試練って奴?」

「あぁ。悪いが待っててくれ。終わってから呼ぶ」

「承知しました。ここでお嬢様達とお待ちしてます」

「うん。じゃ行ってくる」

 

 

 パパは扉を開けて中に入ると、扉は自然と閉まり鎖で施錠され、それを見てから私は上で待っているママ達を呼んだ

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