異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です 作:八葉と黒神の剣聖
頭に声が響くと同時に体が変わっていく。中身が作り替わっているのだろうか。途中から考えるのを辞めた。どのみち目を覚ませば分かる事。死なないだけマシだろう。問題は多いが仕方ない。ラミリスの拳骨と、ルミナスの魔法ぐらいは正面から受けて土下座して謝る。
(問題はあの瘴気。目が覚めた時どうなっているかだが……俺はアレを日輪で晴らすことが出来るのか?いや、やらないといけない)
原因を調べるのは当然として、晴らすことは出来なくても集めるか吸収して正常な魔素に変換しないといけない。それならば炎の加護で大丈夫。問題は集め方だ。
(そう言えば昔父さんが言ってたか。太陽は光と恵みをもたらすが、時に反転して黒く染まり、全てを飲み込むと。ん?待てよ。確か太陽って……)
記憶にある太陽の情報を洗い出す。確か強力な磁場や引力があって近づけば吸い寄せられたり、一定の距離を保ったり。なら疑似的な太陽を作ることが出来れば何とかなるか。そして反転させて黒い太陽に変えれば……。その前に今の力でどうやってやるかだが……
『ユニークスキル『反転者』を獲得……成功しました。エクストラスキル『疑似太陽生成』を獲得……成功しました。加えて『疑似太陽生成』を日輪の加護に融合させ新たにユニークスキル『太陽の加護』に変化し、能力が向上、新たな能力が追加しました』
(………は?)
待て、確かに今出来たら嬉しいと望んだが、スキルとして習得するとは聞いていないぞ。予定では加護二つと魔法で何とかするつもりだったんだけど。
(そう言えば進化している最中か。魔人に進化しているから決してあり得ない事ではないか)
この状況ならユニークスキルを進化させることも出来るだろう。だがそれは今では無い気がする。あの瘴気の正体が分かった時。恐らくはその時だろう。
(問題はこれでクリア。あとは実際にやってみよう。……そろそろか)
意識が少しずつ覚醒してくる。世界の声もいつの間にか聞こえなくなっていた。少し今の自分が怖い。全く違う自分に変わっていたらどうしようと。
そう思っている間にも、進化が終了し視界が明るくなってくる。目を開けて最初に映ったのはベルの顔と自室の天井。先生が運んだのか。
声を掛けようか考えていると、タイミングよくベルが顔をこちらに向けて視線が合う。
「おはようベル。あれからどれぐらいたった?」
「……っ。半日です。その……わたしーーー」
「大丈夫だ」
優しく頬に手を添えて落ち着かせる。そうしないと今にも泣きそうだ。泣かれると非常に困る。色々な意味で。
「君から見た俺はどうなってる?」
「感じている通りだと思います。進化は無事完了してます。魔素量も10倍程。ルミナスちゃんが取っていた良くない魔素も体に馴染んでます」
「そうか。取り合えず国王に会いに行くか。状況把握したいし」
「はい。現在分かっている事は道中で」
ゆっくりと起き上がって赤い外套を着てから刀を後ろ腰に携える。その時に鏡を見て自分の顔や体を確認したが特に変化はない。だからこそ怖いが。
「行くか。状況を教えてくれ」
「はい。では……」
玉座に行く途中で現状をベルに聞いた。あの瘴気は王国から東の方角から来た物。その正体はまだ分かっていないが、先生は心当たりがあるらしく様子を見に行っているらしい。また、その瘴気の影響で一部の魔獣が狂暴化しており、周辺の町や村に被害が出ている。
国王はその対応で追われ、アレクも部隊を率いて住民の保護や受け入れを行っている。最も周囲の大きな国には被害が出ていないらしい。ルミナスの王国も大丈夫だと連絡があったと。
「問題は東に行けば行くほど瘴気が濃くなって、魔獣が増えている事です。ですが魔獣たちもある場所……王国には近づいていないのです」
「それは瘴気の源か?」
「はい。瘴気が結界になって入れても出れない。故に魔獣は本能で近づいていないようです」
なら中に元凶がいる。そしてその元凶に先生は心当たりがある。大人しい魔獣が暴れていたのも東方面。それが予兆だとすれば、アレクが言っていたミリムの幼竜に手を出す話は本当だったのか?
「……ひとまず行ってみるか……ん?(あー……この顔は……)」
頭の中で考えを整理していると、隣にいるベルが何事か言いたげにしていた。
「どうかしたのか?ベル」
「…いえ、私もお供させて下さい」
「それは助かる。君の霧魔法は凄いからね」
ベルは霧を扱う魔人。なので相手を欺いたり惑わすことに慣れている。勿論俺やルミナスから魔法を教わって会得してるので、魔力の扱いは一流だ。
「で……魔人に進化して変わりましたか?」
「あぁ。疑似太陽が作れて反転させることが出来る」
「……はい?疑似太陽?反転?」
きょとんとした表情を浮かべるベル。実際に見せてやりたいが、制御に失敗してボンっと行くわけにはいかない。
「っと着いたが……うわぁ……」
玉座には人がごった返している。七賢者は当然として、王国軍の兵士や魔術師など慌ただしく移動している。俺が玉座に来た事も気付いていない程に。
「取り合えず行こうベル」
「はい。その……後でお時間貰えますか?」
「いいよ。後で作る」
約束してから人の波を掻い潜り国王のいる玉座の最奥に。視界に彼の姿が映るが忙しそうだ。一旦後に回そうと思った時に国王と視線が合う。
「今大丈夫か国王」
「問題ない。体は無事か?」
「まぁね。済まないな魔人になって」
「ん?何故謝る」
国王は俺の肩に手を置いて言った。
「むしろ進化してくれて嬉しい。我らサンフレア王国は長寿の種族。王家の人間は1000年から1500年。市民でも500年は生きる」
「あー……」
忘れてた。そう言えば一応魔人に分類されるんだったか。確か山の民だっけ。だからこそ不毛の大地の一部である荒れ狂った山脈に国を作ることが出来た。故に長寿だったな(今まで完全に忘れてた)。
「取り合えず本題だ。俺は東に……」
「うむ。その辺は頼んだぞ!日輪の勇者」
「……おい全投げかオッサン」
「宴の準備はしておく」
「その前に言いたい事が……」
「無事の帰還を祈る。お主の友として」
「……もういいわ」
溜息を付きつつ肩に置かれている手を払う。信じてくれているからこちらの話を聞かないのだろう……多分。
「それじゃあ事後報告で良いな?忙しいだろ?」
「あぁ。気をつけてな。ベル殿もよろしく頼む」
「承知しました陛下」
「んじゃ行ってきます」
手を振ってから離れて玉座を出る。瘴気の源はここから走って5日は掛かる。だが空を飛べば半日ほどで到着するがその前に行くところがある。
向かったのは国の西側にある魔鉱石を使用した道具を作っている工房で各部門に分かれている。俺の刀もここで作られたもので、その人物に会いに来ている。
「失礼します。刀匠さんいますかー」
大きな声で呼ぶと、中から大きな金槌持った中年男性が太刀を持って出て来る。この工房を担当している人で俺は刀匠さんと呼んでいる。
「おぅ小僧。丁度良かったな。ほらよ」
「おっと」
投げてきた太刀を受け取る。少しだけ抜き刀身を確認。薄紅色に輝き、強い力を感じる。流石魔鉱石100%。魔法闘気の調整もしやすいし、何より太陽の加護の力も最大限に引き出せる。
「いつもごめんなさい刀匠さん」
「気にするな。お前さんが魔人になった事は聞いていた。それを踏まえて調整してある」
「流石……。後で試すか」
「折るなよ」
「分かってます。では」
一礼して工房を出る。そのまま向かったのは外に繋がる大きな門。ここでは外から兵士や保護された住民が慌ただしく出入りしている。あまり邪魔をしない方が良いだろう。
「行こうベル。その前に時間が欲しいて言ってたな」
「はい。名前をもう一度付けて頂きたいと」
「そっか。今の俺は魔人だからな。了解だ。これからもよろしく頼むぞベル」
初めて会った時と同じ様に名前を呼ぶと、魔素が抜けベルの体に入って行く。これが名付けか、慣れるのに時間が掛かる。で、ベルはどうなって……ん?大して変わっていないような……。
「ベル?大丈夫か?」
「はい。霧魔人から幻霧魔人へ進化しました」
確かに魔素量が大幅に上昇している。何がどう変わってるかは道中聞くとしよう。太陽の加護についてもおさらいしたいし。
「んじゃ行くか。門をくぐって少し離れたら飛ぶぞ」
「了解しました」
気付かれないように門をくぐり、少し離れたところから炎の翼で東に向かった。
アニメ・漫画勢の自分ですが、最近はなろうの方を読んでます。途中矛盾点があれば少しずつ訂正していきます。