異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です 作:八葉と黒神の剣聖
無事にサリオンに到着した私達は、シルビアおば様に連れて行かれたパパ達を救出するべく後を追うと、大きな和室に到着。和室ではパパ達以外にアレクおじ様とマリンおば様。セーラと護衛に来ていたミナト兄が仲良くお酒を飲んでいた。
「これは……」
「遅かったねアイカ。色々あったらしいじゃん」
「あ。お姉ちゃんも来てたんだ」
ひょこっと顔を見せるエリンお姉ちゃん。居る理由は察しがつくけどひとまず昼間の事を話しをする。聞いたお姉ちゃんは私の頭を撫でながら怪我の事とか心配してくれた。
「怪我はなさそうだね。服に関してはお父さんにお礼言った?」
「勿論。何か秘術とか聞いた」
「うん。先王様が編み出した錬成術の秘技。一度使うと術式は復活するまでの500年かかるらしいよ」
「成程。道理でソフィ姉がジト目だったわけだ。ソフィ姉は知ってた……あれ?」
隣にいたはずのソフィ姉がいつの間にか居ない。周りを見渡すと、アレクおじ様の近くでミナト兄やレンと一緒にお酒を飲みながら食事をしている。
「いつの間に……」
「うーんあれは大変そうだね。私行ってくるからアイカも適当に混じりなよ。まぁお父さんたちの所はお勧めしないけど」
「あの魔境はごめんだね」
パパはおば様に捕まり大変な状況だ。ママも混じっているから尚の事。おば様に限ってパパに手を出さないとは思うけど、あそこに混じるのはかなり勇気が必要だ。
「散歩でもしてくるかな。お酒飲みたくないし」
気付かれないようにこそっと部屋を出る。それから何処に行こうか考えていると、以前エルメシアに聞いた場所を思い出したのでそこに向かうことにした。
「確か城の回廊だったっけ?」
記憶を頼りに迷わないように城の回廊に向かうが、以前来たのが10年近く前なので案の定迷ってしまう。『さぁどうしよう』と思っていると、背後から誰かが来ていることに気付く。
(誰だろう…?)
「あら……?アイカ?」
「あ…この声は…」
聞き覚えのある声が聞こえてきて、暗闇から姿を表したのはエルメシアだった。そういえば和室に居なかったね。何で気付かなかったんだろう?
「迷子?もしかしておじ様達から逃げてきた?」
「そんなところだね。それと久しぶり」
にこっと微笑むとエルメシアも笑顔を返してくる。それから訳を話しながら例の回廊まで案内して貰う。
「本当に元気そうだね。色々大変らしいけど」
「えぇ。おじ様や陛下の気持ちが痛い程分かるわ。面倒なこととか押し付けたくなる」
「適材適所だよ。パパもある程度は皆に任せてるし、基本は監理業務に専念してるし」
「その辺りの話も聞きたいのよ。頼みもあるしね」
「また喧嘩?部屋掃除した方がいい?」
「最近はしてないわよ…」
それなら問題ない。エルメシアの反抗期が終わったとは言っても時々逃げてくるからね。事前に準備はしておかないと。
「さて…着いたわよ。ここでしょ?」
「あ、うん。ありがとう」
目的の場所に到着。ここから見える星空と月が物凄く綺麗って聞いていたけど、残念ながら曇り空で全く見えなかった。
「今日は曇ってるわね。また次の機会かしら?」
「……だね。次見れると良いな」
「こら、顔暗い」
「はうっ!」
両手で頬を引っ張ってくるエルメシア。そんなに暗い顔をしていたろうか?確かに夜空が見れなかったのは残念だけど、暗い顔をしていないと思うけどなぁ……。
「ねぇ。もしかして私の頬を触りたいだけとか?」
「そんなことないかしら?良い感触なのは事実だけど」
それ、本当のことを言っているようなものだけど?よし…たまには仕返ししよう。
「………えい!」
「むふぅ!」
エルメシアの頬を両手で挟み、とても面白い顔にする。思わず笑いそうになるけど、ぐっとこらえながら指で伸ばしたりする。
「面白い顔だねエルメシア。しかも少し筋肉がカチカチだから揉み解してあげないと」
「や、やってくれるじゃないのッ!」
「むみゅう」
手の平で頬を挟んでくる。それと同時にエルメシアはプッと笑った。それを見てカチンときた私は同じ様に思いっきり頬を挟む。
「にゅぐぅっ!?
「それは私にも言える事だから!」
そのままじゃれ合っていると、背後から誰かに見られているのにお互い気付き、私とエルメシアは視線を向けると、物陰に隠れているシルビアおば様と目が合った。
「おば様…?」
「……何見てるのよお母様」
キッとおば様に睨むエルメシア。おば様は慌てて逃走するも直ぐにエルメシアが追いかけて捕まえてしまう。それから話を聞くと、おば様はパパやアレクおじ様と話が終わったので、中々来ないエルメシアを探しに来たらしい。
確かにエルメシアの為にサリオンに来たのに当の本人が姿を現さないのはマズいよね。なので2人と一緒にパパ達の部屋に戻ると、エルメシアはおば様と一緒にアレクおじ様の所に行き、私は片隅で美味しいご飯を食べようとしたのだが……。
「えいっ!」
「あぅ!」
ママに背後から捕まえられてしまう。そのままパパとお姉ちゃん達の元に連行され、ママの膝の上に座らされて優しく頭を撫でられる。
「妾達に黙って何処に行っておったのかの?」
「別に何処でも良いじゃん」
「確かにそうだがせめて一言は欲しい」
「うっ。それはごめんなさい」
こそっと出たことは私が悪い。これぐらいならパパは何も言わないけど、ママは少し厳しい。もう少し甘くても良いのになぁ…と時々思う。
「まぁそう言うなよママ。アイカだってこういった場が嫌いかもしれない。無理する必要ないさ」
「……!(ナイスパパ!その通りだよ!そのままもっとママに言ってやって!)」
予想外のパパのフォローに心の中で喜ぶ。更なる追撃を期待していたけど、ママがジト目でパパを見たのを見て、『これは駄目だ』と早々に諦めてしまった。
「甘いぞホムラ。アイカがどのような道に進むか本人次第だが、妾達の娘であることには変わらぬ。このような場にも慣れる必要があるじゃろ」
「だとしても強要はダメ。俺なんかおっさんの誕生日会とか王国の建国記念際とか顔だしてねーぞ」
「……そういう所にアイカは似たのじゃな。全く…」
少し呆れつつも納得しているママ。今回は引き分けかな?たまにはパパに勝って欲しいけど。というかパパが勝った所見たことあったっけ?
「所でパパとママは明日どうするの?会合ってエルメシアの誕生会の前だっけ?」
「あぁ。でも俺は参加しなくて良いから宿でゆっくりしている。明日は……」
「妾とデートじゃ。無論エリンもいる」
「そっか…って。お姉ちゃんも?」
「そうだよ。ごめんねアイカだけ仲間外れで」
「……」
何か物凄くムカつくのは気のせいだろうか?まぁお姉ちゃんは多忙だしたまには良いと思うけど、言い方がちょっとだけムカつく。
「その代わりに今夜は沢山愛でてあげるぞアイカ」
「それは勘弁して欲しい。あと私の首見すぎ」
さっきからママの視線が私の首に向けられている。新しい服の影響か、首の露出範囲が広い。帰ったら何かしらの対応をしないと。
「かぷっていったら怒るから」
「むぅ。そんなに嫌か。なら仕方ない」
ママは私を解放すると直ぐにパパに抱き付いて胸に顔を埋める。パパは驚く様子も無く慣れた様子で優しくママの頭を撫でた。
「相変わらずラブラブっぷりね。見てるこっちが恥ずかしいわ」
「ん。そうだねエルメシア。所でおじ様と話しは終わった?」
「うん。だからこっちに来たけど……ちょっと待つわ。お母様も陛下の所だし、少ししたらルミナス様が寝るでしょ」
「…だと良いね(流石によく分かってるよエルメシア)」
付き合いの長さがよく分かる。彼女の言う通り、シルビアおば様が混じってたら突貫するしかないけど、今は居ないから少し待つ方がいい……と思っていた。
「あら?何イチャイチャしてるのよ二人とも」
「「あ……」」
最悪なことにおば様が気付いてしまった。それを見たエルメシアはとても大きな溜め息を吐きつつパパのところに向かう。
私は心の中で応援しながら談笑しているパパは達を見ていると、今度はシルビアおば様に捕まってしまった。
「相変わらず可愛いわねアイカちゃん。家の子にならない?」
「自分の娘すら躾られないおばちゃんの娘はやだ」
「グフッ!!」
物凄く痛いものが突き刺さったのだろう。よし、さらにおばちゃんに追撃しよう。
「おばちゃんはちょっとエルメシアにキツすぎ。もう少し優しく接してあげないと、パパに取られるかもね」
「そ、それは絶対ないわ!あの子が私を裏切る何てーーー」
「ねぇおじ様。エリンとアイカに弟出来ない?出来たら是非紹介して欲しいわ」
「「………」」
(うわー……言ったよエルメシア。絶対本気だよあれ)
(パパもめっちゃ困ってるよあれ……)
従姉故かエルメシアが本気で言っているのが分かる。パパの困った顔と、おば様の真っ白な顔が何よりの証拠だ。見てる私達はとても楽しいけど。
「あのなぁエル公。シルヴィだって苦労してるんだぞ。夫がどっかに行って女手一つでお前を育てたんだ。そんなこと言うな。あと子供は二人で十分」
「え?妾はあと一人ぐらい欲しいーーーむきゅぅ」
「はいはい。ルミナスは静かに」
ママの口を抑えて言葉を止めるパパ。聞いてはいけない事を聞いた気がするが聞かなかった事にしよう。
「大丈夫だ。あの野郎は帰って来る。お前は笑顔で出迎えてやれ。さて…俺はこの泥酔した姫を連れて行くか。じゃあまたな」
軽々とママを持ち上げて部屋を出ていくパパ。相変らず手慣れているというか、むしろ慣れてしまっているというか。皆アレを見ても無いも言わないしね。
「あんまりおじ様と話せなかったわ。仕方ない。一緒に寝ましょうアイカ。学校の話し聞かせてよ」
「勿論いいよ。行こうか。お姉ちゃんも」
「え?私も?私はお父さんを助けに……」
「邪魔しないのよエリン」
エリンの手を掴んで引っ張るエルメシア。私もその後を追い、別の部屋で夜が明けるまで色んな話で盛り上がった。