異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です 作:八葉と黒神の剣聖
痕跡を辿っていた私達。途中で左右に分かれ道があり、事前に話していた通りのパーティに分かれて再度進む。途中でエルフの妨害があったが息を合わせて撃退。相手が1人だったのも影響しているだろう。
「ふぅ…流石に魔法が強烈ですね」
「どれも学院で定めている上位魔法。正確に対処しないとな」
「……そうだね(それにしても裏に誰がいるんだろう?ベティ姉も言っていたけどパパが嫌なら私を狙うはずなのに)」
ここがどうしても気になる。それにパパだけは嫌なのもだ。アレクおじ様…ルベリオスが嫌な訳でもないみたいだし。あの若い魔王の仕業でもなさそうだ。それにあの若い魔王はコソコソ動くタイプだし。
「お。扉が見えて来たぞ」
「やっと到着ですね。解錠をお願いしますアイカ」
「ん。任された」
扉に触れて魔法陣を顕現させ、それからレンに教わった解除魔法で魔法陣を破壊し扉を開ける。先に進むと、下に向かう螺旋階段があったので降りて行くと、大きく開けた部屋に到着する。
「なんか気味悪いな…」
「石造りの部屋…ですかかなり魔素に満ちてますね」
「…僅かにセーラの気配がする。あの先か」
部屋の最奥には扉があるが、かなり距離がある。このまますんなり奥に進める…筈も無く。ガタン!と大きな音が鳴ると同時に、私達を覆う様に宝珠が現れ、全長2メートル程のゴーレムが宝珠を中心に形成される。数は150体ぐらいか。
「おいおい…なんつー数だよ……」
「しかも完全に攻撃型ですね。まぁ…うちに比べたらまだマシかと」
「そうだね。1人当たり50体。行くよ」
それぞれ獲物を抜きゴーレムに立ち向かう。シドはハンマー。セシリアは槍。2人共正確に核を貫いてゴーレムを倒していく。私も太刀に赤い炎を纏って塵にして行く。
「数の割には耐久低いな!」
「以前の実習で嫌と言う程戦わされたお陰ですね!」
「それに動きもに鈍いし!」
ゴーレムの動きはとても鈍いし耐久も低い。以前試作で戦ったやつの方が数段強かった。なのでばっさばっさと倒していき、10分程度で全滅させる。
「うっし全滅っと。おいチビ助。姫さんはあの向こうか?」
「うん。あの奥から気配を…待って。誰かいる」
「誰かって…あれは!」
扉の前にはさっきセーラを攫ったエルフが居た。私達は得物を構えて警戒していると、エルフは小さく笑いながら黒い球体を取り出す。その球体からは得体の知れない気配を感じ、全身に悪寒が走る。
「フフフ…流石魔王の娘。魔術師殿の言った通りか。だが…ここまでだ!」
「!?」
黒い球体に魔素を流すと、周囲から禍々しい魔素が球体に集約されていき、全長3メートル程の8つの蛇のような頭を持った人型の魔獣が形成された。
「……何これ?」
「ちょいちょいちょい……」
「……冗談キツイでしょ」
目の前の現状に頭が追いつかない私達。魔物が作られたのもそうだが形が異常だ。どう考えても頭が8個もおかしいし、何よりも魔素量がとんでもない。サリオンに来る前に倒したケルベロスの残滓よりもはるかに上だ。
「フハハハハ!お前達にティアマトを倒せるかな?エリンやレンを抜きで!」
「っぅ…どうします2人共?一旦撤退して教官と交流しますか?」
「それは無理だね…後ろ見て」
「後ろって…マジか……」
後ろを見て言葉を失うシド。私達の背後は魔法陣があって扉を塞いでいてこの場から逃げる事が出来ない。しかも外と遮断されているみたいで思念伝達が出来ない。即ちーーー絶体絶命だ。
「さぁやれティアマト。忌々しい魔王の娘を殺すのだ」
ティアマトと呼ばれた魔物は、エルフの指示に従い大きな雄たけびを上げた後、私に襲い掛かってくる。8つの頭の口を大きく開け、風を纏った弾を放つ!。
「っ!避けた後に挟撃お願い!」
「おうさ!」
「お任せを!」
風の弾を回避してから奴の下に滑り込んで強烈なアッパーをお見舞い。ティアマトの体は軽く浮き、僅かに隙が生まれる。それから2人にアイコンタクトを送ると合わせるように技を放つ。
「金剛撃!」
「シャインクロス!」
思い一撃と鋭く速い一撃がティアマトに襲い掛かるが、奴は簡単にそれぞれの技を手で受け止める。技を止められた2人の動きが完全に止まり、そのまま軽軽と持ち上げられて振り回した後に投げ飛ばし、全身を壁に強打する。
「シド!?セシリア!?」
「すまねぇチビ助……っぅ…」
「ごめんなさいアイカ…死なないで…うぅ」
そのままゆっくりと地面に落ちて気絶する2人。その時ズキっと心臓に強い痛みの様な物が走り、感じたことの無いような何かが込み上げてくる。
「……ごめん2人共。直ぐに終わらせてママの所に運ぶから」
2人を結界で覆って巻き込まれないようにする。それから大きく深呼吸してからランタンの扉を開け、全身に力を入れて力を解放し、紫色の炎を全身に纏う。
「さぁ行くよ。直ぐに終わらせる」
ゆっくりと歩きながらティアマト距離を詰めつつ出方を伺うが、ティアマトは高く飛び上がり踏む潰そうと急落下するが、私は地面を叩いてソフィ姉から教わった錬金術で地面を隆起させて、奴の胴体を貫き天井に磔にする。
「まずは頭!」
炎を斬撃を放って頭を全て斬り落としてから胴体を殴って地面に叩きつける。完全に致命傷だが、確実に止めは刺すために、胴体に太刀を突き刺そうとした時だった。
「シャァァァァ!」
「!?」
全ての首が一瞬で再生する。再生出来ないように炎で覆っていたはずなのに。だが目の前で起きたことは事実だ。直ぐに切り替えて距離を取るが、8つの頭がそれぞれ複雑な動きで襲ってくる。
「くっ!複雑で統一性がない―――ぐふっ!」
そして頭の一つが脇腹に直撃し、その後に頭の一つが風の弾を放つが、それは斬り落として防ぐ。だがその僅かな隙を別の頭が逃す訳なく私の右足に噛みつき、牙が深く刺さって激痛が走る。
「痛ったいなぁっ!」
噛みついている頭に太刀を突き刺すべく腕を振り下ろすが、その腕も噛みつかれ牙が深く刺さる。ならママから託されたもう一本の小太刀…陽炎を抜こうと柄を掴むが抜けなかった。
(抜け…ない?凄く重い。何で……?)
まるで私に抜かれるのは嫌と伝えているようだ。今まで色んな武器を扱ってきたけど、こんなことは初めての事で理解が追いつかない。
「何でーーーううっ!」
急に体が引っ張られる。ティアマトが私を振り回しているようだ。視界がグルグル回り気持ち悪い。抜け出そうと藻掻く事も出来ず、私はそのまま地面に叩きつけられ、全身に強烈な激痛が走り、意識が飛びそうになる。
(これは…ダメだ。意識が……あ)
僅かに残っている意識で見た物は、ティアマトが大きく口を開いてエネルギーを集約している所。あぁ…アレはダメだ。無防備な状態でアレだけの一撃を喰らったらタダでは済まないだろう。
(私は結局…パパ達が居ないと何も出来ないのか……)
そう思いながら諦めようとした時だった。とても大きな声が響き渡ったのは。
「諦めるなんて貴女らしくないかしら!?」
(え…?)
大きな声の後に強烈な光弾が私の目の前を通り過ぎてティアマトに直撃。苦悶の声を上げながら膝を付く。一体何かと思っていると、目の前にとても元気そうなセーラの顔がひょこっと現れた。
「……セーラ?」
「はい。貴女の最初の親友のセーラよ。大丈夫?」
「……生きてる?」
「勿論。まさか気絶させられて誘拐された挙句に特殊な拘束具で縛られるとは思ってなかったけど。私もまだまだね。油断してたわ」
苦笑いを浮かべるセーラ。誘拐されたのは私の落ち度なのに責めてこない。寧ろ自分が悪いと言っている。悪いのは私なのに…怒られないといけないのに…セーラは言わない所か心配してくれる。その優しさが辛いのと同時に、ここがセーラの良い所だと痛感する。
「ではアイカ。私達四人であの魔獣をーーー」
「ば!馬鹿なっ!」
セーラの言葉を遮るようにエルフの怒号が響く。セーラを指さして体を震わせていた。まるでここに居るのがおかしいと言わんばかりに。セーラはキッとエルフを睨んでから魔力を顎にピンポイントに直撃させて意識を奪う。
「お邪魔虫には寝て貰いましょう。ヒーリング」
花弁が輝き、その光が私とシド達の傷を癒す。腕と足に力が入り飛び起きると、シド達もゆっくり起き上がって近づいてくる。
「いつつつつ…って姫さん!?」
「あぁ…無事でよかった…って。アイカの服も酷いよ」
「あー…うん。色々あってね。ちょっと待って着替えるから」
ママに教わったある魔法で制服からパパに貰った私服に着替える。心なしか制服よりも力が漲ってくる気がした。これが錬金術の力って奴か。
「よし…仕切り直してアイツを倒そう。シドとセシリアも行けるよね?」
「おう。さっきは一撃KOだが…」
「今度はそうはいきません。異世界人パワー見せますよ」
余程さっきの事が悔しいのだろう。メラメラと闘気が炎の様に燃え、2人の背中がとても大きく頼もしく見えた。他にも色々ありそうだけど。
「それでは後方支援は任せてください。シドはタンク。アイカとセシリアは前衛を頼みますわ」
「任せな。ヘマすんなよチビ助共」
「シドもきちんと肉壁になってね。ミスったら後ろから斬るから」
「それは良いですね。私は後ろから刺しましょう」
「相手間違えんなよ……」
「フフ……」
冗談も交えながら臨戦態勢に入る。律義に待っていたティアマトは倒れているエルフを見て大きな雄たけびを上げながら襲い掛かってきた。