異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です   作:八葉と黒神の剣聖

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力を合わせて

「キシャァァァァ!」

 

 

 咆哮と共に放たれる風弾。それをセーラが魔法で相殺し、その後に私とセシリアが両足を斬って体勢を崩す。それからシドが高く飛びながら斧を振り下ろそうとするが、ティアマトは首を不規則な動きをしながらシドに襲い掛かる。

 

 

「うぉ!なんだこの動き!?」

「そのまま突っ込んでください!」

 

 

 セーラは呪文を唱えてティアマトの頭を四角い結界で覆いつつ空間を固定して拘束する。それにより頭と首が固定されて動かせない。奴は足の傷を再生して藻掻くが、頭を拘束している結界は壊れず、その間にシドは斧に力を集約させる。

 

 

「さっきのお返しだぁっ!」

 

 

 シドの両腕に力が入り筋肉が隆起し力強い雄たけびを上げながら斧を振り下ろした。

 

 

「ビックバンッッ!」

 

 

 シドの大技がティアマトの胴体に直撃すると同時に、斧に蓄えれたエネルギーが解放され大爆発。ティアマトの体が地面に埋まった。そして追い打ちと言わんばかりにセーラが指を慣らして結界を爆発させた。

 

 

「……オーバーキル過ぎません?」

「これで倒せたらいいけど……」

 

 

 と思っていたがそうはいかず。ティアマトはゆっくりと起き上がりながら周囲から魔素を集めて傷を癒すが、結構なダメ―ジの様で、魔素が少し減少していた。

 

 

 

「おいおいおい。クリティカルヒットしただろうが!」

「恐らく魔素が満ちているので回復には困らないかと。やはりおじ様や剣星の皆様の様に肉体を消し飛ばしてから核を結界で閉じ込めないといけません」

「ま。特性じゃなくて属性特科なだけマシーーーっと。避けて!」

 

 

 ティアマトが風のブレスを放つ。私達は一旦散会してブレスを回避しながら迎撃するが、ティアマトは体を回転させて攻撃を弾く。よく見ると鱗一つ一つに僅かながら魔素が込められており、それが攻撃を弾いているようだ。

 

 

「どーするよチビ助!」

「取り合えず攻撃を止める!」

 

 

 太刀を鞘に納めて踏み込む。ティアマトの攻撃をミリ単位でかわしつつ奴の真下に潜り込み、胴体に向けてシン兄直伝の拳を放つ!

 

 

「破ッッ!」

「グギャァ!?」

 

 

 痛そうな声を上げるティアマト。攻撃も一旦止み皆体勢を立て直す中、セシリアはお返しを言わんばかりの連撃でティアマトの首を4つ斬り落とす。それを見た私とセーラはアイコンタクトで次どう動くか伝えて行動に移そうとした時、一瞬視界に映ったティアマトの状態を見て目を疑った。

 

 

(再生してない?)

 

 

 そう。斬り落とされた頭をティアマトは再生していなかった。一体どういうことかと思っていると、残り4つの頭がそれぞれ私達の方を向き、さっきと同じ風のブレスを放って来る。そのブレスはさっきより高威力で防ぐのが難しそうだ。それは他の皆も分かっていたようで回避行動に移る。ただ一人を除いて。

 

 

「同じことをしたって無駄---っとぉぉ!?」

「ちょ!シド!?」

「シドさん!?」

「何やってるんですか!?」

 

 

 ブレスを防ごうとしたのに直撃してド派手に吹っ飛ぶシド。流石に弁明の余地無しなので放置して回避に専念しつつ、ティアマトのある変化についてセーラたちと共有する。

 

 

「頭再生しない代わりに威力上がったね!」

「多分一定数減らないと再生しないのかも!」

「ではこのままの状況で討伐しましょう!少しだけ耐えてください!」

 

 

 セーラが少し距離を取ってから杖をティアマトに向ける。すると花弁が開いて赤い花が開き魔素が集約されていく。手数が少なくなった今の状況なら大技を叩き込めると判断したのだろう。なら私達はセーラを守る事に専念しないと!

 

 

「一旦足を止めて下さいアイカ!」

「りょーかい!」

 

 

 ティアマトとの間合いを一気に詰めるセシリア。それとほぼ同時に、近くの瓦礫を重力魔法で操り4つの頭にぶつけて怯ませる。それを確認したセシリアは、大きく深く深呼吸して槍を強く握る。

 

 

「ペネトレイト!」

 

 

 セシリアは一呼吸の間に超高速の連続突きを放ちティアマトの体を穴だらけにする。思わず『わぉ……』と声を漏らしてしまう程見えない技だった。初見では中々防げないだろうな。

 

 

「次!よろしくアイカ!」

「任せて!」

 

 

 セシリアと入れ替わり赤紫色の炎を大太刀に纏う。ティアマトは体を再生させる気配は無く、そのまま攻撃してくるが動きにキレがなく安易に読むことが出来る。

 

 

(右避けて左。そして下に潜り込む!)

「シャァァァァ!」

 

 

 そして読み通りの攻撃が来たので正確に回避して真下に潜り込む。奴は首を伸ばすがギリギリ届くことなく、私は大太刀を根元まで深々と刺し、炎を解き放つ。

 

 

「怨嵯豪炎撃!」

 

 

 赤紫色の炎がティアマトを覆って焼く。苦しそうに藻掻くが炎は消える事がない。私は大太刀を引き抜いて距離を取ると、セーラの目の前にバチバチと電気が迸る大きな槍が現れた。

 

 

「では―――止めです。神槍・グングニル!」

 

 

 ルベリオスの魔法使いでも限られた人した使えない最上位魔法を解き放つセーラ。放たれた槍はティアマトの核をいとも簡単に貫いてしまった。

 そして核を失ったティアマトの体はボロボロと崩れ、跡形も無く消えてしまった。再生する気配も復活する気配もない。多分大丈夫だ。

 

 

 

「……終わりだね。大丈夫セシリア?」

「大丈夫じゃないですよ……」

 

 

 大きく息を吐きながら座るセシリア。セーラもさっきの魔法で多くの魔素を消費したのか、杖を支えに何とか立っている。視線を送ると、ニコッと彼女は微笑んだので心配要らないだろう。

 

 

「で。シドも大丈夫?」

「超いてぇ」

「相手をよく見ないから」

 

 

 完全な自業自得なので手は貸さない。それよりも先にしないといけないことがある。あのエルフを捕まえないと。

 私は気を失っているエルフをきつーく縛り、簡単には抜け出せないようにする。ついでに拘束魔法で両手足も縛っておく。

 

 

「これでよし。後はおば様に渡そう。セーラもそれでいい?」

「えぇ。事を大きくするわけにはいかないわ。それと一つ聞いていいかしら?」

「いいけど?」

 

 

 セーラはキョロキョロと周りを確認しながら近づいてくる。誰かに聞かれるとまずいのだろうか?

 

 

「おじ様にバレてないよね?」

「それは大丈………夫」

「待って?とても間が長かった気がするけど?」

「その。お姉ちゃんに助け求めたし」

「絶対駄目ね。はぁぁぁ……ちょっと先に話してくるわ」

 

 

 重い足取りでパパの所に向かうセーラ。それとほぼ入れ違いでお姉ちゃんとレン、それとソフィ姉が入って来たので、私は手短に説明すると、お姉ちゃんとレンは早速この部屋と置くに繋がる扉を調べ始めた。

 

 

(何とかなった…けど)

 

 

 正直勝った気はしない。もっと上手に立ち回れたはず。何だったらセーラを誘拐されなかったらこんなことにはならなかった。きっとパパなら……。

 

 

(上手く倒すし、そもそもおじ様が誘拐されるような事はない。もっと…私がしっかりしていれば……)

 

 

 まだまだ未熟で力不足なのが痛いほど分かる。『サリオンだから問題ない』、『友好国であり同盟国だから何も起きない』、そこを突かれてしまった結果だ。

 

 

(もっと強くならないといけない。力とかそう言うのじゃなく、もっと別の……)

「大丈夫アイカ?」

「あ…お姉ちゃん」

 

 

 心配そうに声をかけてくるお姉ちゃん。調査していたはずだけど、一旦止めて私の所に来たみたいだ。

 

 

「怪我した?大分ヤバそうな奴だったみたいだし」

「ヤバいってレベルじゃない。死ぬかと思った」

「…そっか。核事壊してるし、そうじゃないかと思った。それとアイカ。あまり追い詰めないようにね。今回の件はお父さんも反省しているみたいだし」

「パパも…?」

 

  

 パパが反省……、かなり珍しいかも知れない。でも今回の件はパパだけが悪いわけでない。私もお姉ちゃんも皆甘く見ていたと思う。

 

 

「パパが…反省する必要ないと思う。もっと私が強かったら、こんな事にならなかった」

「そうかな?もしアイカが居なかったら皆やられていたかもしれない。セーラも最悪な事になっていたかもしれない」

「でも……」

「まぁ…あまり気負わない方が良いよ。抱え込む前に相談。いい?」

「うん。それは分かってる」

「うん。それじゃあ終わったら声をかけるから」

 

 

 そう言ってから調査を再開するお姉ちゃんだった。

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