異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です   作:八葉と黒神の剣聖

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現れた歪み

「うぅ…何か冷たい…?」

 

 

 背中に感じる冷気で目を覚まし、顔を後ろに向けると、アル姉が抱き着いていた。

 そういえば少し前からミナト兄と一緒に来ているんだっけ。

 ママとユニ姉の喧嘩の方がやばくてすっかり忘れてた。

 

 

「まだ早いけど起きよう」

 

 

 アル姉を引きはがしてからベットを出て、ドレスチェンジという魔法で制服に着替え、いつものようにリビングに向かおうとすると、パパの書斎の前で、壁にもたれているママの姿があった。

 

 

「おはようママ。どうかした?」

「む…おはよう。パパの仕事が終わらないようでな。朝食をどうしようか考えていた」

「何で?普通に入って聞いたらいいと思うけど」

「……ちょっと気まずい」

「あー…そういうことね」

 

 

 多分ユニ姉との喧嘩が原因かな。

 結局、パパが間に割って入るまで続いてたし、その後はパパとママの会話も無ければ、ユニ姉も姿も見えないし。

 喧嘩に関しては、ラン姉やシン兄だってしょっちゅう喧嘩してるし、ソフィ姉だって笑顔でセーラに切れてるし。

 別に気にしなくていいと思うけどなぁ。

 

 

「パパは気にしてないと思うよ。いつも通り接したらいいと思う」

「それが一番大変なのだが…アイカの言う通りじゃの」

「ん。じゃあ行ってきます。今日は宮殿に泊まるから」

「分かった。小僧やマリンによろしくの」

「うん。よろしく言っておくね。んっ!」

 

 

 ママの頬にキスをしてから屋敷を出て学院に向かう。

 その道中で、夏季休暇中の旅に誰を連れていくか考えていると、右肩に誰かが座り、顔を向けると、ユニ姉が座っていた。

 どこか覇気がないし元気もない。

 ママと同様に、先日の喧嘩を引きずっているようだ。

 

 

「あまり引きずっていると、パパにまた言われるよ。仕事にも影響出るって」

「そこは大丈夫。仕事とプライベートは分けているから。挑発した私も悪いし」

「じゃあ挑発しなかったらいいのに」

「だってずるいじゃん。ルミナスばかりホムラを独占してさ」

 

 

 ぷくっと頬を膨らませるユニ姉。

 プライベートでパパを独占するのは奥さんの特権だし、適度に皆の相手をしているから、あまり文句とか言えないと思うけど…。

 

 

「たまには私だってデートしたいし」

「この間、買い物行ってなかった?」

「あれは仕事だから。私が言っているのは、もっとプライベートで……って。何言わせてるのかなアイカ?」

「ごめんなさい」

 

 

 強めの圧が飛んできたので素直に謝る。

 怒らせると大変な目に遭う(子供の頃は日常茶飯事だった)から。

 それにしても、ユニ姉は昔から全く変わらないね。

 

 

「そうだユニ姉。パパが勇者時代に行った場所って知ってる?」

「ホムラが言った場所?もちろん知ってる。後で地図に書いて持っていくよ。誰と行くの?」

「とりあえず私とセーラ。あとお姉ちゃんとマゴイチ先輩が付いて来てくれる」

「なんか微妙な編成だね……」

 

 

 言われてみればそうかもしれない。

 前衛は私で後衛はセーラとお姉ちゃん。

 マゴイチ先輩は両方こなせる器用貧乏。

 結構バランス悪いなぁ……。 

 

 

「ともあれ、地図は夏季休暇までに書いておくから、計画だけ考えていて」

「了解。じゃまた後で」

 

 

 ユニ姉の頬をムニムニと触ってから別れて学院に向かう。

 学院に到着してからは何時ものように授業を受けて、クラスメイト達と夏季休暇の事を話したりしているうちに、今日の授業が終わった。

 それから宮殿に向かうと、豪華な服装に身を包んだ人たちとすれ違う。

 

 

(……会議か何かかな?)

「あ。アイカ。ここにいたのね」

「セーラ?慌ててどうしたの?」

 

 

 慌てていうセーラが駆け寄ってきた。

 そういえば今日は学院で見なかったような気がする。

 どんなに忙しくても、学院には必ず顔を出していたのに。

 

 

「アイカ。おじ様は屋敷にいるかしら?」

「いるはずだよ。どうかした?」

「国境付近の洞窟に空間のひずみが現れたらしいの。だからすぐに対処して欲しいって」

「ひずみ…了解。直ぐに言ってくるよ。セーラは待ってて」

 

 

 直ぐに屋敷へと戻り、パパのいる仕事部屋に向かうと、仕事部屋では見覚えのある青い悪魔と話をしているパパとミナト兄の姿があった。

 

 

「あ…パパにミナト兄。今大丈夫?忙しいなら待つけど」

「大丈夫だ。何かあったか?」

「えっと…青い悪魔がいるなら多分同じ内容だと思う。セーラから伝言。ひずみの対処お願いだって」

「了解だ。行くぞレイン」

「え?」

 

 

 パパは目の前にいる青い悪魔のレインに言うが、彼女は『え?何で?』といった顔を浮かべる。

 その顔を見たパパは、やや怒った顔を浮かべつつ服の襟をつかんで持ち上げた。

 

 

「行くぞレイン。ギィの使いなら最後まで見届けな。不在の間は頼むぞミナト。アレクとベルも連れて行くから、いつも通りな」

「いや、あの、私はこのまま主の所に―――」

「いいから行くぞサボり悪魔。頼むだけ頼んでそのまま返すか。たまには最後までやり通せ。またギィに怒られたいか?今度こそクビ宣告されるぞ」

「そ、それは困ります!」

「そうならないためにも行くぞ」

 

 

 ズルズルとレインを引っ張って行くパパ。

 私は手を振って見送り、ミナト兄はどこかに連絡してから仕事部屋を出ていく。

 恐らく宮殿に言って皆に伝えに行ったのだろう。

 

 

「私は…どうしよう。今日は宮殿で止まる予定だったし……。一応ママの所に行こうかな」

 

 

 理由を聞かれる前に先手を打っておこう。

 直ぐにママのいるリビングに向かうと、とてもいい匂いと上機嫌な鼻歌が聞こえて来たので、台所の方を見ると、いつものドレス姿にエプロンを来たママが晩御飯の準備をしていた。

 

 

「ただいまママ。機嫌良いね。パパと話せた?」

「うん。ユニとも話しはした。お互い悪かったからの。ところで…今日は宮殿に泊まると言っていなかったか?」

「うん。ちょっとセーラに伝言頼まれたから帰ってきた。なんでも空間のひずみが現れたんだって」

「ひずみ…そうか。だからあの悪魔が…。全く…いいように使いよって」

 

 

 恐らくレインの主であるギィへの文句だろう。

 いつもパパの手が空いているときに物事を頼むことが多い。

 あの人も悪気はないと思うけど、何かと間が悪すぎる。

 

 

「まぁ良い。あ奴の事だからすぐに帰ってくるじゃろう。後でお弁当でも持っていくかの」

「いいんじゃない。おじ様とベル姉もいるみたいだし。お弁当箱取るね」

 

 

 近くに置いてある脚立を持って来て、それに乗ってから棚の扉を開け、弁当箱を取り出してママに渡すと、ママはテキパキと具材を詰めていく。

 横で水筒にお茶を淹れていると、ママはある方向に指を差し、その方向を見ると、土釜でご飯を炊いていた。

 蓋を開けると、白い煙と熱気が溢れ出てくる。

 思わず『熱ッ!』と言ってしまい、聞いていたママが慌てて駆け寄ってきた。

 

 

「大丈夫かアイカ!?」

「ん。大丈夫ママ。少し驚いただけ。おにぎり作るね」

「ちゃんと魔法で手を保護するのを忘れぬ様にな。あと具材は机の上に置いてある」

「了解。じゃあ愛情込めて作りますか」

 

 

 手を火傷しないように魔法で保護してからおにぎりを作って弁当箱に敷き詰めていく。

 その途中で遊びに来たホノカおばさんも加わり、テキパキと作っていく。

 

 

「しかし…また次元の歪みですか。早めに対処しないと大変ですね。姉様も行かれるのですか?」

「小僧やベルが向かっているなら妾は不要じゃ。むしろ邪魔じゃろうて」

「そんなことありませんよ。兄様のやる気があがります」

「そんな単純な男ではない。さっさと作ってしまわんか」

「……了解です」

(あながちあり得そうだけど……)

 

 

 ママとおばさんの話に耳を向けつつおにぎりを作り、ママが作ったお弁当と重ねて鞄に入れる。

 あとはこのお弁当を誰か持っていくかだけど…ここはおば様の方がいいのかな。

 

 

「よし…アイカを連れていきますね姉様」

「ん。よい勉強になるじゃろうし、無茶はしないようにな」

「はい。行きますよアイカ」

「う、うん」

 

 

 おば様と一緒に歪みの場所に向かう。

 そこは国の国境ギリギリにある山の中の洞窟で、禍々しい魔素が洞窟からあふれでている。

 どう見ても異常事態で、おば様も珍しく真剣な表情だ。

 

 

「では奧に進みましょう。何が起きるか分かりませんので油断しないように」

「了解」

 

 

 大きく深呼吸してから、おば様と一緒に洞窟に入っていった。

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