異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です   作:八葉と黒神の剣聖

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父の秘密と仕返し

 次元の歪みが現れた洞窟に入って数分。

 私はいきなり窮地に陥っていた。

 その窮地とは、おば様とはぐれたこと。

 途中まで一緒だったのに気付けばいなくなっていたのだ。

 

 

「どうしよ…はぐれたんだけど……」

 

 

 回りを見渡してもおば様の姿はない。

 道中でかなりの魔物と遭遇したから、出来れば見付けたいところ。

 一旦戻るのも視野にいれても良いかもしれない。

 

 

「先に進むか戻るか……パパなら進むかな?でも無茶したらダメだし…ん?」

 

 

 奧の方から冷たい空気が漂ってくる。

 刀に手を置いて身構えると、地面から無数のアンデッドが現れる。

 あまりの多さに苦笑いを浮かべつつ抜刀し、迎撃体制を取ると、アンデッド達は一斉に襲ってくる。

 ひとまず逃げ道を作ろうとしたら、焔の斬撃が私の左右を通り過ぎてアンデッド達をなぎ払った。

 

 

「おや……会えたのはアイカか」

「…パパ」

 

 

 斬撃が飛んできた方向から姿を表したのは大好きなパパ。

 アレクおじ様とベル姉の姿がないのを見ると、別行動しているのかな?

 ともあれ、先行したパパと合流できたのはとても嬉しいので、軽く情報交換をしておこう。

 

 

「お弁当持ってきたけど、おば様とはぐれた」

「そうか。俺もアレクとベルとはぐれた」

「そっか………え?」

 

 

 聞いてはいけないような言葉をパパが言った。

 てっきり別行動かと思っていたから驚きを隠せない。

 それにしても、はぐれた割にはとても余裕な気がするのは気のせいかな?

 

 

「おじ様達大丈夫?探した方がよくない?」

「んー…洞窟の仕様的に難しいな。どのみち最奧で会えるだろ」

「えっとどういう事?洞窟の仕様的にって」

「あぁ。この洞窟は多次元構造なっててな。入った時点で同じ洞窟が複数形成され、ランダムに飛ばされる。俺がアレク達とはぐれたのとそう言うことだ」

「多次元構造……?」

 

 

 一体何それ?思ってしまうが、そういえば、学院の授業で習ったような気がする。

 ベル姉やユニ姉からも似たような事を教わったっけ?

 だけどかなり難しくて半分ぐらいしか理解出来なかった記憶がある。

 

 

「ま、簡単に言うと同じ空間が複数あって、それらが縦に並んでいる様なもの。こういうのは元を叩けばいい」

「元ってことは歪み?」

「もしくは別の要因か。どのみち先に進まないといけないから、前は任せるぞ」

「ん。任せた。じゃ行こう」

 

 

 パパと共に洞窟の一番奧に向けて進み始める。

 道中で色んな魔物が襲ってくるが、バッサバッサと斬っていく。

 その光景をパパがジーと見て来るのでちょっと恥ずかしいが、それだけパパの手が空いているのと、私の剣を見たいのだろう。

 なので我慢する……頑張って。

 

 

「陽炎は抜かないのか?」

「抜けない。とても重くてうんともすんとも言わない」

「ははっやっぱりか。俺やホノカは抜けたが、アイカやルミナスには難しいか」

「なんかむかつく」

 

 

 笑いながら言ったパパに少しだけイラっとしてしまう。

 そもそもな話、正宗みたいなヤバイ刀を振り回しているパパがおかしい。

 普通に考えてあんな化け物扱えないでしょ。

 

 

「ま、俺やホノカは妖様の末裔だから抜けて当然とはいえ、ホノカは血が薄いから真価を発揮しないし、体にも負担がかかる。俺も昔は無茶な使い方をしてアレクに怒られたものだ。特に…御師様の時はな」

「御師様ってパパの師匠?確かこの世界での戦い方とか魔法とか教えてもらった」

「そうそう。神聖魔術はルミナスに、錬金術とかは王国の魔術師に教わったが、殺し…戦闘に使える魔法やスキルの使い方は御師様だな。不老不死の魔女」

「ま…魔女…?」

 

 

 魔女って碌でもない奴ってミナト兄が言っていたような気がする。 

 プライドの塊で自己中心的。

 そしてとんでもないことをやらかす悪魔とか。

 隣で聞いていたソフィ姉や思いっきり睨んでいたけど。

 

 

「パパの師匠ってまともな人いないよね」

「え…エンブも御師様もまともだけど…。あぁ、御師様は不愛想だけでとても良い人だぞ。もしルミナスと会ってなかったら……っと。この話はママに内緒な。あの人の事はママも知らないから」

「内緒って…」

 

 

 あのパパがママに内緒にしている事なんて驚いた…というか、ママにバレてない方が驚きだ。

 そんなに隠さないといけないことなのだろうか?

 何か…大きな秘密でもあるのかな?

 

 

「御師様の件もそろそろ片を付けないといけないんだが、今の俺には挑戦権がないし…」

「挑戦権?」

「そう。あの人を森に縛り付けている怪異…む。待てよ…もしかして……」

 

 

 パパは何かを思いついたようで、腕を組んで考えつつ時折私を見てくる。

 大変嫌な予感がした私は、先にすすもうと提案。

 パパは小さく頷いたので再び奥に進み始める。

 

 

「アイカ。期末テストの結果次第では、長めの夏季休暇を取れたよな?」

「う、うん。3か月ぐらいかな」

「3か月…うん。アイカなら1か月ぐらいか。旅も1か月と半分ぐらいと聞いたし、少しは余裕があるか」

「あの…何か頼む気?私も自分の時間が欲しいというか…。記念祭だってあるし」

「分かってる。その辺りも考えて予定を…シッ!」

「ッゥ!」

 

 

 いきなり魔弾を放つパパ。

 その先には大型の魔物がいて脳天を貫かれたまま立っていた。

 全く音も気配もなかった相手に正確な一撃を撃ち込んでいる…けど、今の魔弾は何だろう?

 今まで見たことのない魔弾だ。

 

 

「御師様から教わった技だな。魔素を弾丸の様に放つ技。御師様は魔素の放出や、自分で作った器に魔素をつぎ込んで人形のように使役したりする。あと錬金術の祖だからそっち方面もヤバイ」

「そうなんだ。ということは、パパの魔法って、御師様から教わったのを元にしたアレンジ?」

「そ。後はシルヴィとかルミナスとかに教わったのを改良してるな。ちなみにユニを受肉させたのも御師様の技をパク…参考にした」

(今パクったって言いかけたよね?)

 

 

 言い直したけど私はちゃんと聞いていた。

 それは兎も角、パパの御師様の事はとても気になるし会って見たい。

 ママも知らない人みたいだし、今度パパに聞いてみよう。

 

 

「っと…やっと着いたな。アレを見てみろ。空間にヒビがあるだろ」

「あ…本当だ。それにこの場所は……」

 

 

 空間にヒビがある場所は洞窟の一番奥だった。

 この場所に続く道も私達か歩いてきた道しかない。

 ということは、他に皆も待っていたら来るのだろうか。

 

 

「よっし。サクッと消し飛ばしてしまおう。離れてろアイカ」

「消し飛ばすって。おじ様達は?」

「大丈夫だ。前方にぶっ放すだけだから問題ない」

「い、いや、だけど―――」

 

 

 静止しようとするけど、パパは聞く耳持たずで右手を開いて前に出す。

 淡い光がパパを覆って5枚の魔方陣が右手の前に現れた。

 あの魔法陣は知っている。

 あの魔法陣は加速の効果があり、そこになんでもいいから打ち込むと、凄まじい速度と威力で放出され、とんでもない威力になる。

 更にパパの究極能力の権能が加わるから、その威力に上限は無いとされてる。

 威力を特定するには展開している魔法陣を見れば分かるけど、どのみち撃ち込んだ対象で変わるから、防御するには受けてみないと分からない。

 

 

「出力固定。魔素収束。光粒子は…夜だから使えないっと。それじゃ…地平線の彼方に消し飛ばすついでに、いつの間にか消えていた青い悪魔の職務怠慢を主に伝えますか」

「青い悪魔って…待ってパパ!いくら何でもそれは―――」

 

 

 流石にまずいと思って全力で止めようとした時にはすでに遅く、パパの全身から凄まじい光が放出される。

 パパはそれから右手を強く握って振りかぶり、魔方陣に向けて拳を突き出すと同時に、拳から強烈な光破熱線が発射。

 光破熱線は5つの魔法陣を経由し、凄まじい威力とスピードでひずみと洞窟の一部完全に消し飛ばし、そのまま北の大地へと飛んで行った。

 

 

「こんなものかな。頑張って防ぐんだなギィ」

「………うわ」

 

 

 今頃北の大地はとんでもないことになっているのだろう。

 近い日にギィやヴェルザードが来た時は、喜んでパパを差し出すことにする。

 きっと誰も文句は言わないはず。

 

 

「さて…帰るか。きっとあいつらも…来た来た」

「あ……」

 

 

 アレクおじ様達が駆け足でやってくると同時に、洞窟の惨状を見て固まる。

 特にアレクおじ様は大きく口を開けて固まり、おば様は慌てて、ベル姉は頭を抱えて大きなため息を吐いている。

 様子を見る限り、今回が初犯ではなさそうだ。

 

 

「おいおい…穴の大きさと飛んで行った方角は……」

「どうしましょう陛下!どう考えてもギィの所ですよ!」

「どうも出来ねぇよ。何でレインの野郎は消えてるんだよ!絶対に狙ってるだろアイツ!そもそもホムラがサボる奴が嫌いって知ってるよな!?」

「絶対知ってますよ!知っててやってますよ!そうじゃなければ隙見て逃げませんから!」

「……」

 

 

 もしかしてレインさんは常習犯なのだろうか。

 いや、二人の会話を見ていると絶対に常習犯だ。

 となれば、さっきのパパはやって当然なのだろうか?

 だとしてもやりすぎな気が……。

 

 

「あーもう。とりあえず帰るぞ!何かあったら頼むからなフレア」

「分かってるよ。あとアレク。少し話があるから付き合って」

「お、おぅ。それじゃあ後処理は部隊に任せよう。頼んでいいかホノカ?」

「はい。ベルさんと残って対処します。アイカは?」

「その前にお弁当。食べちゃおう。折角作ったし」

 

 

 カバンの中からお弁当を取り出すと、それを見たベル姉は大きなシートを幻術で作り出す。

 そこにお弁当を並べていってそれぞれ食べ始めるなか、パパは少し離れた場所でおじ様と話をしている。

 話が気になって聞き耳を立てようとすると、おば様が後ろから抱きしめて来た。

 

 

「ダメだよアイカ。大事な話かもしれないから」

「かな…もしかすると御師様の事かも」

「……御師様?」

「それは……」

 

 

 御師様の事を口に出すと、おば様は首を傾げ、ベル姉は視線を外す。

 この様子だとおば様は知らなくてベル姉は知っている。

 なら…御師様の件はパパが勇者時代の話で、しかもママと会う前の事ということになる。

 となれば…その御師様ってパパの……これ以上はやめとこ。

 もしかすると修羅場に遭遇するかもしれないし。

 

 なので、ママが作ったお弁当を食べていると、話を終えたパパが来ておば様に声をかける。

 

 

「ホノカ。悪いが俺は行くところが出来た。すまないがルミナスに暫く帰らないと伝えて欲しい」

「分かりました。出来れば早めに帰ってきてください兄様」

「アイカも早めに帰るように。期末テストも近いからな」

「うん。で…どこに行くのパパ?」

 

 

 念のために行先を確認すると、パパは何も言わずに微笑んでから少年の姿に変わり、飛んで行ってしまうのであった。

 

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