異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です 作:八葉と黒神の剣聖
東へ向かい始めた俺とベル。すんなりと到着するかと思っていたが、途中で3体の魔獣と遭遇で足止め。一体をベルに任せて2体を引き受けていた。
「ガァァァァ!」
「ったく煩いな」
力強い咆哮を太刀で一刀両断。そのまま流れるように炎の斬撃を放って首を斬り落とす。確実に消滅させるために、斬り落とされた胴体に手の平サイズの太陽を放って圧縮して爆発。近くに居たもう一体の魔獣を巻き沿えにして倒す。
「あのサイズで半径10メートルか。もう少し加減しないと」
こればかりは慣れるしかないか。今まで使いなれていた『日輪の加護』は『太陽の加護』に進化して無くなったうえに、新たに獲得した『反転者』もまだ能力の詳細が分からないため、何処か試す必要がある。
「終わりましたフレア様」
「お疲れ。見てた?」
「ばっちりと。もしかして条件が無くなりましたか?」
「まぁね」
やっぱり気付かれるか。今更だが『日輪の加護』には使うのに条件がある。それは太陽の光か若しくは匹敵する程の強い光に当たる事。それに伴い、全ての耐性を得て、身体能力が上昇し、自身へのデメリットを相殺出来る。また最大で2000倍まで思考加速する。他にも光合成のような物も可能で、ルミナスから教わった魔法と複合すれば、魔法威力も向上する。
だが『太陽の加護』に変わり、太陽さえ存在すれば自動発動となり、新たに魔素上昇とエクストラスキルとして習得した『疑似太陽生成』が加わった。思考加速は1万倍まで上昇し光合成も最大量が増え、太陽光を魔素に変換して補充したり、ベルや先生といった魔人に分ける事が出来るようになった。
作った太陽は魔素の塊のため複数作り出せる。また分裂や爆発。周囲の魔素を吸収して膨張等も可能。『反転者』で作った太陽の特性を逆に変える事も可能。
「と言った感じだ。疑似太陽の調整はルミナスから教わった魔力調整で何時でも作れるから、上空に大型の疑似太陽を展開して一定時間なら夜でも全開で戦える。『反転者』は使いどころが難しい」
「と言うと?」
簡単に言うと自分が放つ魔法や触れた物の属性・特性を逆に変える事が出来る。それは相手が放つ魔法も同じ。
「その辺はぶっつけ本番。今はあそこに急ごう」
既に視界に映っている瘴気の結界。近づくにつれて狂暴な魔獣が増えている。途中で生存者を保護しつつ王国に行ったり来たりを繰り返している。
「しかし先生は何処に行った?」
「さぁ?フレア様を運んでから北に行きましたけど」
「……北って」
あまり考えないことにしよう。だが状況によれば出て来るのは確実か。やだなぁ……勇者を名乗ると因果が巡るってラミリス言ってたし、魔王と接点持ったり早死にしたり。俺の場合は魔人に進化してるし。後悔はしてないけど
「途中で巨人の国に寄るべきだったか」
「門前払いですよ。ただでさえ最近はいざこざがあるのに」
「うちは山に囲まれてあちらは平原だからね」
色々と国でも厄介事がある。その一つで俺もあの国で一番強い魔人と戦ったことがある。(その人物は後に魔王を名乗るのだが)
「手は考えてる。そう言ったのは種族や立場・身分関係なく共有しないといけない。今は問題が多いけど協力すれば乗り切れるさ」
「そうですね。その為にも」
「あぁ……着いたな」
王国全体を覆う瘴気。この王国は一度だけ来たことがある。まだこの世界に来て間もない頃にアレクと来たことがある。ヴェルダナーヴァと会ったのもその頃だ。
「うっし。気合い入れていきますか。ベルは周辺を宜しく」
「分かりました……え?お留守番?」
「当然。誰か来るかもしれないから頼んだ」
「……はい」
とても不満そうだ。顔を見ればよく分かるが、外から誰かが来るかしれない。その時に俺が入って行った事を話して貰う必要がある。
「じゃあな。帰って来なかったら
「……お気を付けてフレア様」
彼女に見送られて中に入り直ぐに足を止める。視界に映ったのは崩壊した建築物と王宮。以前訪れた時の綺麗な街並みは全くない。誰か生存者はいるかと思ったがそれ以前の問題だ。
「魔素が混じった瘴気が酷い。低級の魔人や人間は生きられないぞ」
この様子だと生存者はいない。魂も存在しない。仮に存在しているのなら鳥肌が立っている。霊感が強い影響だ。
「さて、その中心は……」
崩壊した建築物を乗り越え圧倒的な気配を放つ場所に。以前見た時とは全く別物の気配。噂で聞く3体の竜と全く引けを取らない。この世でただ一人の竜魔人だから類似しているのは当然だろう。だが俺が感じている気配はそれとは別の物。その姿を見た時確信に至る。
「この世界2人目の魔王か。名乗るかは別として、その力は原初の赤にして最初の魔王に匹敵する」
上空にいる1人の少女ミリム・ナーヴァ。竜の翼と角を顕現させ、右手には剣を持っている。近くに幼竜の遺体があり、無惨に殺されていた。
(どの世界でも人間の本質は変わらないか。ならその責任は俺が引き受けよう。ミリムを止める。それが俺の勇者として
強烈な殺気。ミリムがこちらを見下ろしてくる。自我があるかと思いきやそうではなさそうだ。目に光は灯っておらず、彼女を中心に魔素の瘴気が周囲に放たれている。
「さぁ行くぞミリム。俺の命が続く限りお前の怒りを受け止めてやる」
太刀を抜き全身に炎を纏う。幸いにも太陽の光はわずかに射しているから『太陽の加護』は発動する。アルティメットスキル持ちにユニークスキルで対抗できるか分からないが、やって見せよう。
「秘剣・炎神」
太刀に炎を纏いミリムに立ち向かう。後に俺が太古の魔王の1人に加えられる戦いの始まりだ。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「おいおい……ミリムの力は底なしかよ」
戦いが始まり数時間。俺はミリムの攻撃を流す事で精いっぱいだった。スキルの差。力の差。それらは技量で埋めれる。魔素量はあくまでも強さの基準。最終的に優越を付けるのは技量だ。
「一の太刀・螺旋昇」
炎の斬撃で螺旋を描きミリムの攻撃を防ぎつつ反撃するが、ミリムはお構いなしに螺旋を消し剣を振り下ろす。正面から受け止めつつ、刀身の角度を調整して力を逃がすが、簡単に薙ぎ払われる。
「くそ!出鱈目すぎるだろ!」
俺も『太陽の加護』で力は増幅しているはず。それでも上から圧倒的な力で押してくる。ここは一旦距離を取って体勢を整える。
「ソルフレア」
ミリムの目の前で疑似太陽を生成し爆発。彼女が一瞬防御に回ったのを確認してから後方に下がる。息を整え消費した魔素を瞬時に補充しつつ構えを変える。
「さてと、ここから切り替えて……え?」
ミリムの魔素が膨れ上がり一か所に集まる。あれはヤバい。似たような技を見たことだある。その前にアイツはこの一帯吹き飛ばすつもりか!?
「どのみち避ける事は出来ないな」
魔素の大半を使用して黒い太陽を2つ作り出す。これでアイツの一撃を吸収しつつ、もう一つの黒い太陽で放出させる。一気に集約するのではなく集めながら放つ。以前ルミナスの屋敷に飛ばされた際の魔法の応用だ。
「来るか!」
巨大な魔素の塊がレーザーのように放たれる。後にドラゴンノヴァと呼ばれる技を、黒い太陽で受け止める。それと同時にもう1つの黒い太陽でミリムに返そうとした時、受け止めていた黒い太陽にヒビが入る。
「ヤ、ヤバい!許容量を超える」
吸収するといっても限度がある。限度を超えるとどうなるか。それは簡単だ。爆発する。
「くそ上空に……あ」
時既に遅し。許容量を大幅に越え、黒い太陽がどんどん膨張していく。爆発まであと3……いやもう無理。太陽が破裂する。最後の足搔きとして上空に投げ飛ばすが、それと同時に爆発。結界を貼るが爆発に耐え切れず、巻き込まれて吹き飛ばされる。
「いつつ……もう少し加減しろよ……」
愚痴を吐きつつ瓦礫を動かしてゆっくりと立ち上がる。今ので魔素の大半を消費してしまった。正直体を動かすのもやっとだが、『太陽の加護』で直ぐに戻せる……あれ?戻らない?まさか……。
そう思って空を見上げると、太陽の光が射していない。辺りは薄暗くなっている。これは非常にまずいぞ。
「今ある魔素で疑似太陽を生成しても半分ぐらいしか戻らない。それでミリムを抑えるのはきついぞ」
何とか手段を考える必要がある。周辺の魔素を集めて大きな太陽を作る事も可能だが、アレ相手に出来る余裕もない。そもそもさせてくれないだろう。
「所であの野郎は……っ!」
背筋が凍る。まさかと思いつつ振りかえると、無傷のミリムが剣を振り上げて立っている。詰みだ。せめてかすり傷程度は負っていてもおかしく無いだろう。寧ろその方が俺の後に戦ってくれる誰かが戦いやすくなるし、少しはこちらが有利になるはず……多分。
(……ジ・エンドか)
剣を振り下ろすミリム。本気で諦めた時だった。
「おい。もう諦めるのか日輪の……いや太陽の勇者」
「!!!」
「ギィ・クリムゾン……遅くないか?」
「ふん。助けるつもりはなかったが、そこの妖精女王が煩かったからな」
「妖精って……」
ギィ・クリムゾンが視線を向けた先には、とても怒っているラミリスの姿。きっと俺が魔人になっているからだろう。というか魔王なのにラミリスの言いなりになるのかよ……。
「後でぶん殴るから覚えてなさいフレア」
「分かってる。で?どうやって止めるんだ?アイツの底知れぬ怒りが魔素に還元されて膨れ上がってる。加えて周囲の魔素も喰らってるし」
「オレに手がある。その前に……」
ギィ・クリムゾンはミリムの剣を弾き返して上空に蹴り飛ばし結界を粉砕する。おいおい、俺が一撃も入れれなかったのにあんなにも簡単に入れるのかよ。
「さっきの黒い太陽でアイツに吸収される前に魔素をお前が集めろ。瘴気はラミリスが上手くやれ」
「上手くって。どうやるのよこの子も大分魔素を消費してるし」
「了解だ。集めた魔素は?」
「好きにしろ。何だったら自分の力に変えてもいい。これだけあればお前のユニークスキルを進化出来るだろう」
「簡単に言うけど……分かった。周辺の魔素とミリムの攻撃で生じる魔素はこっちで何とかする。ついでに背中も護ってやる」
外套を脱ぎ捨て太刀を左手で持つ。それを見たギィ・クリムゾンはゆっくりと上空に向かって行き、ミリムとの決戦が始まる。
「よし。上手くやるぞラミリス。周囲の被害を最小限に抑える」
「了解。ってあら?あの2人西に行ったわよ」
「西!?何で!?って急いで追いかけるぞ!」
ラミリスの腕を掴み、あの2人を全力で追いかけるのであった。
戦いは続きます。西側ピンチですが……。