異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です   作:八葉と黒神の剣聖

9 / 61
終戦とこれから

 リミットは一時間。それまでにミリムの力を出来る限り削らないといけない。それには暴走している原因である究極能力『憤怒之王』を止める必要がある。ミリムが怒っている限り魔素は上昇する。それが『憤怒乃王』の正体。

 ただでさえ竜種の時点で現存する3体の竜に匹敵する。いや、目の前のミリムは凌駕しているだろう。だからこそ流しつつ長期戦に持ち込みたかったのだが。

 

 

(どのみち何処かで本気を出す必要がある。そう言った意味では丁度いい)

 

 

 以前なら一瞬しか本気を出せなかった。それだけ『日輪の加護』は力が強すぎる。故に剣術を磨き、先生との戦いで『炎の加護』を得た。大概の魔獣と魔人はそれだけで葬ることが出来る。『日輪の加護』は能力を3割程まで抑えても問題は無かった。

 

 

(俺の究極能力は支援型だが、使い方によれば攻撃型になる)

 

 

 太刀に焔を纏い解き放つ。ミリムは回避するが演算予測で一歩先を読み焔で足を掴む。そのまま焔を蛇のように全身を巻きつかせ拘束。拘束から逃れる前に一撃を叩きこむ。

 

 

「三の太刀・焔華」

 

 

 『加速』を用いた神速の抜刀。手応えあり。ミリムから感じる魔素も少し弱まった。

 

 

(ん?という事は……)

 

 

 ゆっくりと振り返る。ミリムは斬られた箇所を押させ顔を歪めている。痛覚無効だと思っていたのだが効いているようだ。それに意識が向いたのか怒りが少し収まっている。

 

 

「あともう一押しという所で時間切れだ」

「分かってる。時間が経つのは早いな」

 

 

 周囲が暗くなっている。太陽は落ち、空には満月が輝いている。あとはギィに任せるか。後処理を含めて彼の仕事だろう。地上に降り太刀と小太刀を鞘に戻すと、ラミリスが近づいてくる。

 

 

「7日目でやっと収まったわね。あとはギィに任せなさい。それにしてもエルフの国はどうして幼竜を殺したのかしら?」

「エルフの国?」

「そうよ。アンタがミリムと最初に戦ったのもエルフの国。って、気付いてなかったの?」

「……」

 

 

 おかしい。俺が向かったのはミリムが住んでいた場所。それなのに戦っていたのはエルフの国だって?魔人に進化したばかりだったから認識が狂っていたのか?

 

 

「それにしてもヤバすぎるだろアレ」

「確かにヤバいけど、それでも魔王に開花はまだ(・・)してないわ」

「……は?」

 

 

 ラミリスの言った事に耳を疑ってしまう。どう考えてもアレは魔王と言っても過言では無いだろう。それにまだって事はこれからあり得るってことだよな。

 

 

「なら今のアイツは単純な竜種としてあれだけの力を持ってるのか。あの王国が一瞬で焦土化するわけだ」

 

 

 それだけ父親から継いだ力は強大だという事。それを知らずに手を出したエルフの国は壊滅。自業自得だし同情の余地も無いな。

 

 

「詳しくはミリムが正気に戻ったら聞こう。援護するぞ」

「あと一押しだから大丈夫……って聞かないわよねアンタ」

「分かってるじゃん」

 

 

 太刀を抜き焔の斬撃を放って牽制。ラミリスも魔法でギィが戦いやすいように支援。少しずつだがミリムの怒りが収まっていくのを肌で感じる。あともう一押しだ。

 

 

「隙を作る原初の赤。止めは頼むぞ」

「任せておけ。ヘマをするなよ」

「するわけ無いだろ。合わせろよラミリス」

「任せなさい!」

 

 

 太刀に光と焔を集約させ薙ぎ払う。それと同時に光と焔を光線のように解き放つ。

 

 

「プロミネンス・ノヴァ」

 

 

 広範囲を薙ぎ払う一撃だがミリムが難なく回避。それにラミリスが魔法で合わせて一撃入れ、ミリムの体勢を崩す。そこを逃すことなく止めの一撃をギィが完璧にミリムの鳩尾に入れる。

 

 

「決まったか!」

「完璧に入ったから決まらないと困るわよ!」

「必至だな……」

 

 

 多分限界も良い所なのだろう。その願いが届いたのかミリムは鳩尾を抑えながら墜落。ギィもゆっくりと降りてきて額の汗を拭う。

 

 

「ふぅ。苦戦させやがって」

「お疲れ様。さてと……」

「ちょっとフレア?」

 

 

 倒れているミリムの元に向かう。詳しい話を含めて言いたい事と聞きたい事は沢山あるからな。

 

 

「起きろミリム」

「うぅ……ん?」

 

 

 目を覚ますミリム。まだ痛みが残っているのか鳩尾を抑えながら立ち上がり周囲を見渡し、俺達の方を見る。

 

 

「お前は……日輪の勇者か。後ろにいるのはギィとラミリス……」

「そうだ。お前が怒りで我を忘れてここで俺達と戦ってた。覚えてるか?」

「……朧気だが覚えている。魔導大国があの子を殺して、それから……最初にお前と戦った」

「そうだな。その後はギィと戦って俺はこの周辺の連中に逃げるように伝えて周った。その途中でお前がサンフレア王国を吹き飛ばした」

「えぇ!?本当なのフレア!?」

 

 

 大きな声を上げ驚きながら聞いてくるラミリス。ミリムも心当たりがあるのか顔を俯かせる。どうやら正気を失っていたが何をしていたかは記憶に残っているのか。

 

 

「その事はもういい。守れなかったのは俺の責任だし死ぬまで背負う。それよりもこれからだ。責任取らせるよなギィ?」

「当たり前だ」

「了解。んじゃ帰るわ俺」

 

 

 指を鳴らして姿を切り替えると同時に究極能力に枷を掛ける。ミリムが正気に戻ったし後の事はギィに任せよう。

 

 

「ちょっと待て。お前魔王を名乗るのか?」

「名乗るわけ無いだろ。興味ないし。これから忙しいし」

「そうか。だが何かあれば頼む。お前のスキルは色々と使い道がある」

「コピーしたなら自分で何とかしろよ。ラミリスも元気で。落ち着いたら連絡する」

「あんまり無茶したらダメよ」

「ん。またな(・・・)皆」

 

 

 3人に手を振り焔の翼を羽ばたかせ王国へと戻る。その途中で王都に複数の光が灯っているのが見え、王都上空で停止して見下ろすと、瓦礫の回収作業や移動作業を始めていた。

 

 

「ルミナスの所に行かなかったのかよ……」

 

 

 少し呆れながらもゆっくりと降りる。作業をしているのは鉱山の作業員と軍人。指揮を執っているのはアレクだった。言う事を聞かなかった理由を問い質したいが、答えないだろうし聞かないでおこう。

 

 

「フレア様……?」

「お?ベルと……白狐か」

 

 

 ベルと白狐。一緒に居たのか。揃って俺を見て驚いているが、声を掛けてきた言う事は気配で気付いたかな。ともあれ一通り事情を話そう。半壊した王国と戦い。俺が真なる魔王に進化した事を全部話す。

 

 

「成程。だから私にも世界の言葉が聞こえて祝福(ギフト)が贈られたのですね」

「うん。ベルの力もかなり増幅してる」

「だと嬉しいです。それとこの子ですけどルミナスちゃんに渡されて」

「あぁ。保護したんだよ。折角だし名前を付けてあげよう。おいで」

 

 

 声をかけると白狐は飛びついて来たので受け止める。優しく撫でながらどんな名前が良いか考える。白い体に毛先は赤い。尻尾は3本。白と赤か……。

 

 

「良し。君は白焔(ハクエン)だ」

「……!」

「うお……!」

 

 

 ごそっと魔素を持っていかれハクエンを包み込み吸収されていく。3割ほど持っていかれたんですけど……。まだ慣れないなこの感覚は。などと思っていると進化が終わり、尻尾が9本に増えたハクエンが現れる。

 

 

「これは……九尾ですか」

「あぁ。とても強い力を感じる。よしよし」

 

 

 体をモフモフと撫でる。これでしゃべってくれたりしたら嬉しいけど流石に難しいか。念話とか出来たら意思疎通も出来るし楽なんだけど。思念伝達とか会得してないかな。

 

 

『フレア様。その……少しこそばゆいです』

「おっと。それは済まない……え?」

「あら……?」

 

 

 おや?頭に可愛らしい声が聞こえたのは気のせいだろうか。ベルに視線を向けると、少し驚いた表情を浮かべている。どうやら気のせいではなさそうだ。

 

 

『どうかなさいましたか?あぁ、お二方の頭に語り掛けているからですね。ごめんなさい』

「大丈夫だハク。気にしないで欲しい」

「少し驚いただけですから大丈夫です。これも進化した影響でしょうか」

『はい。元より狐種は賢い種族ですから。元々『思念伝達』は会得していましたし、また進化したことによりユニークスキル『打払者』を会得しました。流石に人型にはなれませんが大きくなれますよ』

「なる……ほど」

 

 

 名付けをするだけでこれだけ変わるのか。ルミナスから聞いたことがある。意味不明な進化をしたり新たなスキルを得たりすることもあるというが、確か強く願う必要があるんだっけ?詳しい事は分からない。分からないなら勉強するか。

 

 

「ふふ……。私も似たようなものですし、これからよろしくお願いしますハクエン」

『はいベル様』

「もう打ち解けてるし。まぁいいか。城に向かうぞベル。被害状況を改めて聞く」

「周知しました。それと明日で宜しいですが、エンブ様と彼の姉様と妹様にお会いになってください」

「そう言えばいるって言ってたか。了解」

 

 

 どんな人物か気になるところだ。出来れば先生のような方では無い事を祈ろう。聞けばもしもの事を備えて呼びに行っていたらしい。今は復旧作業を手伝っているらしく、国王にも許可は得ているとか。

 

 

「戻ったぞ国王」

「おお。無事だったかフレアよ。皆下がれ。これから彼等と話をする」

 

 

 玉座にいた主要人物を下がらせ、通り過ぎる人達に一礼してから国王の前で片膝を付く。それから戦いが終った事を報告。国王は安堵の息を漏らし微笑みを浮かべる。

 

 

「流石は国の名を背負う勇者……いや今は魔王か。ともあれ無事でよかった。これからが険しく大変な道だが、共に乗り越えて行こう」

「あぁ。俺がいた世界の技術で再現出来るものは惜しみなくお教えする」

「うむ。だが今は休む事だ。作業は明日から出構わない。ベル殿もゆっくり休んで欲しい」

「はい。お言葉に甘えて今日は休ませてもらう」

「お気遣いありがとうございます陛下」

 

 

 深く一礼し、自室に戻ろうと立ち上がった時だった。国王が軽く咳払いし、少し気まずそうに言った。

 

 

「フレアで合っておるよな?」

「………」

「いや、私は分かっておるぞ。何といってもそなたを呼んだ人物だからな!分からぬはず無いだろう!」

 

 

 うんうんと何度も頷く国王。割と本気で傷ついたわ俺。姿を切り替えていない俺も悪いが、せめて話しの前に聞くべきことだろう。同級生が俺と遊べず残念そうな顔をした時より傷ついたんだけど。

 

 

「……結構傷ついたわオッサン」

「うぐぅ!す、済まないフレア……いやホムラよ」

「本名で呼んでも許さん」

「そ、そこを何んとか……」

 

 

 両手を合わせて懇願してくる国王。こういった所がこの人の良い所なんだよね。因みに俺の本名は炎神焔(ホムラ・ホノカミ)と言う。本名で呼ぶのは国王とルミナスが虐めてくる時ぐらいか。

 

 

「次は無いからな。行くぞ2人共」

「あ、待ってください」

『では失礼します陛下』

「う、うむ。明日から頼むぞ」

 

 

 少し立ち直った国王に見送れて自室へと向かう。その途中でベルが、国王が俺の事をホムラと呼んだことを聞いてくる。そう言えばまだ話してなかったか。

 

 

「フレアってのはこの世界に来て国王が付けた名前。元の名はその時捨てたんだ。国王は拗ねた時呼んでくるけど。呼びたかったら好きに呼んでいい。ルミナスも時々読んでるし」

「では、そのお姿の時はそちらの名前で」

『私もそうしますホムラ様』

「ん。それじゃあお休み」

 

 

 部屋の前に到着。ハクエンをベルに渡して部屋に入りベットにダイブ。そしてすぐに眠りに落ちて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。