切に
今、私は過去の私を全力で殴りたい衝動に駆られている
ついでに当時の編集部も一緒にだが
私はしがない物書きである
ベストセラーや御大層な賞を貰えるわけでもなく、個人出版に毛が生えた程度のものしか書けない程度であると自分自身が痛感しているが
当時、私と編集部の皆はやけ酒に興じていたように思う
でなければ、あの様な本を出版しようなど、誰が考えるか?
誰だって考えない。俺たちもそうだろう。酔ってなければ、だが
『人生を豊かにする本』
まさしく我等が黒歴史である
御大層な題名であるが、殆どがギャグやダジャレばかりという『やっちまった』系の本である
当然普通であれば、出版に至れる筈もなかった
精々倉庫の隅で埃を被るか、何かを拭き取る程度の活躍しか出来ない筈であった
そう、筈なのだ
しかし、何の運命のいたずらか
この魔書は世に放たれた
関係者みな、この事実を理解して顔面蒼白になったのは記憶に新しい
あってはならないことだった
しかし、運命とはこうも私達を翻弄するものだ、と私は後に思い返す事になる
話を変えるが、この世間にはウマ娘と呼ばれる女性が存在する
見目麗しい彼女達の走りを見るために、そしてレース後のライブを観るために様々な人が競バ場へと足を運ぶ
私とて、そのレースに興味が無いわけでは無いし、編集部の中には熱狂的なファンもいる
なにやら頻りに「ライスちゃん」とか言っていたが、何のことか分からなかったが
さて、何故黒歴史確定の魔書の話にウマ娘を持って来たかというと
「シンボリルドルフ?
あの?」
そう様々な実績を残して今や世間で知らない者の方が少ないであろう、『皇帝』シンボリルドルフ
彼女からのファンレターだった
恐る恐る内容を読む
要約すると、素晴らしい本だとの事
コミュニケーションを円滑に取れたとの事
またシリーズが出るのであれば、是非購入したいとの事であった
編集部は沈黙した
あれは発禁レベルの魔書であり、密かに自主回収をすすめている
著者も全国を飛び回って回収に励んでいる
そんなレベルの本である
それが素晴らしい?
とてもではないが、信じられる話ではない
だが、文面から皮肉などの負の感情は読み取れない
彼等とて編集部。文面から読み取る能力は高い
その彼等をもってしても、皇帝の真意が賞賛以外にないと判断せざるを得なかった
これが、普通の本であれば、それこそ皇帝サイドにお願いしてでも宣伝しただろう
そうすれば、話題にはなるのだから
だが、編集部はおろか著者ですら、その様な話をしなかった
皇帝シンボリルドルフは寒いギャグが好き
誰がこの様な事を知りたがるのか?
誰が得をするというのか?
編集部達はこのファンレターを大事に保管する事に決めた
今日の事は忘れよう
そして、彼等は浴びるように酒を飲んだ
会長が例のアレを習得するにしても、ある程度の土台があるかなって
因みに趣味をすすめたトレーナーは後悔した模様
誤字訂正しました