僕が私立百花王学園に編入する事になった経緯は簡単に言えば、親に『編入しろ』と言われたから。
自分の意志がないわけではないが明確した目標があるわけでもないし、この学校に編入したいとかがないのだから親に従うのが安全だろう。自分の未来なんてどう転んだとしても決して良いものではないのだから……どこに編入したからと言っても僕の将来は決して変わらない。
私立百花王学園に非日常を求める事は決してない。せめて最後ぐらいは非日常でない方が良い。
私立百花王学園に編入したがこれと言って変わった校風だとは思わない。
ギャンブルをしている人間もいるし、家畜のように扱われている人間もいる。別に僕はこの光景を見たとしてもそれほど変わった学校だとは思わなかった。
異常なのかもしれないがこういう環境には慣れている。編入当初は少し驚いた事もあったが……それも一時間もすれば慣れてしまう。僕が異常なのかもしれないけどな。
僕、個人としてはギャンブルとかは嫌いじゃないし、挑まれれば勿論受けるのもやぶさかではない。
だが、編入してから僕にギャンブルを持ち掛けてきたのは『一人』だけ。そんなに僕は近寄りがたい雰囲気を出しているのだろうか別に僕としては近づいてきて欲しいわけじゃないがギャンブルはもう何回かしてみたいと思っている自分がいる。
でも、挑まれないのなら仕方ない。自ら誰かに挑むことも出来るがそこまでしてまでやりたいとは思わない。
そして変化が訪れたのは僕がこの学校に編入て一週間が経った日だった。今日もいつものような何の変哲のない日々を過ごすと思っていた。僕はいつものように学校に来て、自分の席に座り、SHRが始まるのを静かに待っていた。
いつもだったらそこで誰かに話しかけられたりする事もなくSHRが始まる。
だが、今日に限っては違った。僕なんかに声を掛けてくる者がいた。後ろを振り向くとそこにいたのは……………
「桃喰綺羅莉」
編入した初日に僕にギャンブルを持ち掛けてきたのも桃喰綺羅莉。見た目だけで言えば誰もが憧れるような完璧な人物に映っているのだろう。
だが、僕からすれば彼女ほど頭がおかしい人物は見たことがない。これでも色々な大人に接してきたつもりだけど、どの大人と比べても彼女に敵うような奴は存在しない。
ギャンブルの本質は賭けることに対して快楽を得ること。今の人間はあんまり危機にさらされることが多くない。だからこそ、人間はギャンブルにハマってしまう。ギャンブルにおいて一秒後は絶望かもしれないし、希望かもしれない。
自分の人生を賭けるなんて狂気の沙汰だ。だが、それでも人間はギャンブルを止めることが出来ないのだろう。
そして彼女はそれらの人間の代表のような人物だと思った。
「私より強いあなたが生徒会に入らないなんてあり得ないわ」
今さっきの言葉からもわかるだろうが僕は桃喰綺羅莉にギャンブルで勝ってしまった。凄い悔しがるような人間なのかと思っていたが僕の予想は外れていたようで彼女は負けた瞬間に悔しがるわけでもなく、彼女は笑っていたのだ。
これこそ狂気の沙汰だと僕、個人的には思った。
「前も言ったよね。僕は生徒会に入る気なんてさらさらないって」
「日菜乃くんは私が唯一、認めた男で私がお仕えしている『主』なんですから」
本当に今さらだがこいつとギャンブルしなきゃ良かったと心の底から思う。
僕と桃喰綺羅莉が賭けたのは単純で負けたら勝った方の『犬』になるだった。普段は無表情の僕でさえも驚かずにはいられなかった。
だってこのギャンブルに負けただけで全てを失うと言ってもいいと思う。
幸い、僕は編入したばっかなので失うものがないと言えばないが桃喰綺羅莉はあるだろう。まだここに来てから一週間ぐらいしか経過していないけど桃喰綺羅莉がどれだけこの学校で色々なことを成し遂げたかを知っている。
もし、負けでもすれば今まで積み上げてきた全てのものが無駄になってしまう。そんなリスクを背負ってまで何故、僕とギャンブルがしたいのだろうか。
そして最終的に僕は勝利を収めてしまった。
あの日、以来、僕は桃喰綺羅莉と顔を会わせていなかった。あのギャンブルで賭けた内容は無効になったんだと思っていた。
桃喰綺羅莉がここに来たせいで周りから奇怪な目で見られている。僕としては一刻も早く
桃喰綺羅莉にはここを離れてもらいたい。
この人のせいで僕の平穏な日常が今にも壊れようとしている。
「早くこの場から離れたい」