僕はこの学校に
だが、僕は本名を語るより偽名を語る方が今までの人生を振り返ってみると多い。それは僕が特殊な家に生まれてしまったから。でも、僕にとっては偽名の方が当たり前。
今まで知人の中には僕の名前を探して見つけられた者は存在しなかった。
そして、初めて僕は黄泉月るなに名前を調べ上げられ特定された。苗字に関しては未だに特定できていないだろうが……いつかは特定されるかもしれない。そして黄泉月は僕にギャンブルを持ち掛けてきた。こいつが何を目的としてギャンブルをしようとしているのかが分からない以上、安易にギャンブルをするのは後々、後悔する羽目になる可能性も大いにある。
「悪いが断るよ」
「なんで~?」
「君とのギャンブルはこちらが痛手を負う可能性があるからね。編入初日の時は断るに断れない状況を作られたから生徒会長とのギャンブルはしたが今回は違う。君たちのような異常者じゃない人たちとは喜んでギャンブルしたいが生徒会に所属しているような人間とギャンブルの快楽に落ちすぎている人間とはもうギャンブルはしないよ」
「失礼だな~香音くん。私は君とのギャンブルを楽しみにしているんだよ~君ほどギャンブルを愛している人間を私は今まで見たことがないよ」
黄泉月は少し笑みを浮かべながら口にした。これほど不気味な笑みを僕は見たことがないよ。見た目だけなら小学生と言っても良いが内面は社会に汚れてしまった大人よりも汚い。
「それは僕がギャンブルを楽しんでいると言っているのかい?」
「うん、そうだよ~香音くんは気付いていないだろうけど君はギャンブルをしている時に普段の時より少し口角が上がっていることに君は気付いていないでしょ?」
こいつは観察眼もあるのだろうか……余計に面倒な人間だな。会長の事を面倒だと考えていたがそれ以上に黄泉月は面倒かもしれない。
「ああ、気付いていなかったよ。これからはもっとそういうところにも気を付けなくちゃいけないね」
「え~~~面白いのにな~」
「それで僕はそろそろ教室に戻っていいかな?」
「今更、戻ってもどうせ後30分もすれば授業は終わるんだから、それなら私とギャンブルをした方が良いと思うけどな~」
こいつはどんな手段を使ってでも僕とギャンブルがしたいのだろうか。そう言えば、何で黄泉月は僕とギャンブルをしたいのだろうか。単純に会長に勝った僕への報復か、興味か、それともそれ以外に目的があるのか。
「聞きたい事があるんだが良いかい?」
「…何か知らないけどいいよ~」
「黄泉月は何で僕にギャンブルを申し込むの?遊び相手をお探しなら僕以外でも良いと思うけどな」
もし、遊び相手を探しているだけならここまで時間を取る必要がなかったな。それにこいつの遊び相手に時間を取られていたのだったら少々怒りを覚える。
「………聞きたい?」
「聞きたいな」
「それは………君のギャンブルが『綺麗』だからだよ~一度でも香音くんのギャンブルを見た者なら誰でも分かると思うけどね。香音くんは会長とギャンブルをする時もそうだけど…君は一度たりとも焦っていなかった。あれは自分が予想していた通りに全てのことがいっているような感じだったよね。全てが計算通り、こんな風にギャンブルをする人を私は初めて見たよ」
「別に普通にやっていただけだがな」
「もし、意識をせずにあんなギャンブルが出来ているのだとしたらそれは『才能』だよ。それ以外に言い表しようのない感じ」
誰かに自分のギャンブルを『綺麗』と言われたことは今までなかった。個人的には普通だから分からないが他人から見たらそんな風に僕のギャンブルは映っているのか。
「そうか。それでそれが君が僕とギャンブルをしたい理由?」
「そうだよ。もう一度、君のギャンブルが見てみたいんだよ」
それがこいつの本音なのかは分からないがどちらにせよ、ここでギャンブルをするのは止めておくべきだな。僕が黄泉月のギャンブルの理由を聞いたのは只、興味本位だ。黄泉月が僕にギャンブルをしようと迫るのは何か理由があるんじゃないかと思っていたが……答えは『綺麗』か。
「それじゃいつか、また機会があったらね」
僕は自分の教室がある方向へと歩き始めた。