皇さんとのギャンブルをしてから久し振りにギャンブルの楽しさを思い出した。やっぱり桃喰綺羅莉とギャンブルをするより泉さんの方が楽しいと感じた。それは妙なプレッシャーのようなものがないからかもしれない。
桃喰綺羅莉とギャンブルをするとプレッシャーのようなものがある。これに関しては彼女とギャンブルをしたことがある人にしか分からないと思うけどね。
今の時間は所謂、昼休み。学生のほとんどが食事をしている時間。僕も食事をするために校内のある一部屋に向かう。その部屋は学内の中でも知っている人間は限られている部屋。僕も桃喰綺羅莉に教えられるまではその存在を知らなかった。
そしてそんな事を考えているといつの間にか、その部屋に着いていた。ドアを開けると中には一人の白髪の女性がいた。この人は本当に時間ぴったりで僕より後にここに来た事はない。
「本当に君は早いね」
「私が主より遅く来るなんてあり得ないわ。主人より後に来る下僕は存在しない」
別に僕はこの人の主人になった覚えはないんだけどな。いつの間にか、そんな風に言われるのにも慣れてしまっていたがここら辺でもう一度訂正しておいた方が良いかもしれない。
「僕は君の主人じゃないからね」
「いや、あなたは私の『主人』です。逆にあなた以外に私の主が務まる人はいませんわ」
僕は君に何かそこまで慕われるようなことをした覚えは本当にない。それに君の主という座なら僕は喜んで誰かに譲りたい。
「そうかい……それじゃ話は食事中にしようかな」
「それもそうですね。それは食事を始めましょう!!」
最近の僕の食事は彼女が作ってくれている。所謂、手作り弁当のようで毎朝早く起きて作ってくれているらしい。僕なんかの為に料理を作ってくれるのは嬉しいことで本当に感謝しているのだけど……毎度のことながらこれだけはどうしても恥ずかしい。
「はい、お口を開けて」
言われるがままに僕は親鳥から餌を与えられるのを待っている小鳥のように口を開けている。この部屋に僕と彼女以外に誰も居ないからまだいいけど……もし、食堂でやるとなったら僕の顔は真っ赤になるのは避けられないことだろう。
「はい、どう美味しいかしら?」
彼女は卵を僕の口に運んでくれた。毎度のことながら本当に彼女の手料理は美味しい。僕はこれでもそれなりに一般的に見れば美味しいと言われている料理を食べてきたつもりだけどそのどれよりも美味しい。
「…うん。美味しいよ。本当にお世辞抜きでいつも思うけど美味しいよ。料理店を開けるぐらいのレベルだと僕は思っているよ」
「あなたにそこまで褒めていただけるとは光栄至極ですね」
そう言った彼女は満面の笑みを浮かべていた。ギャンブルの時に見る彼女の顔の何とも言えない顔と違って心の底から笑っているように僕には感じられた。この笑顔の方が彼女は皆に好かれるだろうに……と思ったがそれは口に出さなかった。